※1 記憶を失っている時の名前は変換できません。
249.記憶の洪水 (十六夜丸、夢主、過去の九条、蒼紫)
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「何てことを!」
武尊は横で同じように記憶を見ている十六夜丸に拳を震わせながら叫んだ。
十六夜丸は涼しい顔で、
「続き始まってるぜ、見といた方がいいんじゃないのか。」
と武尊の怒りを軽く流した。
武尊は見たくなかったが自分がずっと知りたかった過去がここにあり見ないわけにはいかなかった。
先程の言葉が女との仮契約みたいなものだったのだろうか、十六夜丸は女の周りまで意識を伸ばすことが出来たようで血を吐いた女に誰かが駆け寄って来たシーンが見えていた。
「兄・・様・・。」
「兄様!」
その男の顔を見て記憶の中の女と武尊が同時に叫んだ。
駆け寄ってきた男は市彦だった。
武尊は唖然としながらも食い入るように市彦を見た。
(この人が蘭子さんだったんだ・・この人とこんなに私が似ているから兄様は私に・・)
武尊は自分が市彦の事を兄様と呼ぶと市彦どこか嬉しく、悲しく、懐かしむような目で自分を見る理由を今理解した。
蘭子は市彦の腕の中で息を引き取った。
市彦は蘭子を抱きしめ男泣きに泣いた。
武尊はいたたまれなくなり目を閉じた。
そんな武尊に十六夜丸は言った。
「俺その後この女の代わり身を探し続けた。そして約百五十年後、お前を京で見つけ過去に連れて来たわけだ。やっと分かったか?」
十六夜丸の言葉に武尊はハッとして尋ねた。
「まさか・・あの薬は蘭子さん・・」
「そうだな、安西が上手くやったようだ。しかしあいつ(ここで十六夜丸はクッと笑い)、使う事にビビリやがって市彦に使わせやがった。ハハ!市彦もまさかこの薬が最愛の妹から作られてるとは知らずに何度も何度も使ったってのは笑えるな、ハハハハハハ!」
高笑いする十六夜丸に思わず武尊は掴みかかった。
「貴方って人は!」
十六夜丸の胸倉をつかんだ武尊の手からは青いオーラが噴出している。
「生憎俺は薄汚い【人間】なんて生きものじゃないんでね!そんな人間の力など・・」
金色のオーラを強くした十六夜丸の手が武尊の手を握り潰すぐらいの力で武尊の手を引き離した。
「くっ・・。(まだオーラの力が足りないのか・・)」
悔しいが力比べではまだ十六夜丸の方が上だと武尊の手は引き離された。
「名残惜しいだろうがそろそろ時間だ・・ここまで見ればもういいだろう。」
「何の時間?」
「『何の』ってお前が目覚める時間に決まっているだろ。俺がこの闇の中で支配できる時間は日が昇ってから約十二時間だ。その時間が来たということだ。」
「もうそんな時間なの!?」
武尊はそんなに時間が経っていると思わず驚いた。
そんな武尊に十六夜丸は、
「もう少し時間ああれば初めて狼に会った時の狼の間抜けな面や俺に逃げられて悔しがる四乃森の顔も見せてやれたのに残念だ。」
と笑った。
が、その笑いもすぐ十六夜丸の顔から消え今度は真面目な声で、
「分かっていると思うがあの新型阿片はヤバかった。放って置けばお前の心の臓があっという間に止まっていた代物だ。助けてやったのはお前が死ねば俺の食い物が無くなるからだ。だが今後一切手出しはしない。早く俺に命令し、そして【気】を吸いつくされて死ね。」
と言った。
今までは武尊が致命傷を負ったら必死で直し餌の確保に努めていた十六夜丸だったのに、だ。
武尊は今まで見た記憶の中には依り代となった者が何らかの事情で薬の秘密を知り、自分の願いをかなえようと薬を盗んで自分で飲んだ結末も映っていた。
武尊はそれを思い出して固まった。
「何だ、【死ね】と言われてビビッてるのか?自分で薬を飲んだ依り代はその願いを俺が叶えてやったらその瞬間契約は履行とみなされ【気】・・つまり命をすべて吸いつくされて死ぬだけだ。どのみちお前の寿命などあまり残ってないんだ、どっちを選んでもあまり変わらないぜ。」
契約履行の場合は自分の身がどうなるのか、知っただけでも心臓が凍るような思いなのに自分の寿命が残り少ないなんて言われると武尊は頭が真っ白になった。
「え・・。」
「これは外法だ。この術は一回使うごとに依り代のひと月分の寿命が減る。代償なしに無敵になれたりするような都合の良いことなどあるわけないだろう。それに元よりお前の寿命はそんなに長くない。あれだけ俺を使えばそりゃ命も縮むってわけだ。どうせ死ぬなら願いを叶えて死んだほうがいいんじゃないか。」
十六夜丸はまたククっと喉を鳴らしたが目は笑っていなかった。
折角この世が見える依り代を見つけたのにそれを自らの手で潰すようなことを言ったのは十六夜丸なりの理由があったのだ。
彼は待つことを諦めたのだ。
千三百年心の底で持ち続けた小さな願い。
いつか斑鳩に帰るという願い。
いつか斑鳩に戻って来るという厩戸皇子の言葉の為にこの世に出る手段が唯一依り代に薬を飲ませることしかないのであれば、その手段を依り代を失うわけにはいかなかった。
だがどうにも今のこの状況(武尊が2回目に過去に来た今)は過去の状況とはまるで勝手が違い十六夜丸の思った通りには事は運ばない。
それに、よくもまあ世代が代われど人間という生き物は飽くなき欲望に貪欲でその為にはどんな汚い事でも平気でやる、そんな人間を十六夜丸は心から軽蔑し飽き飽きしていた。
嫌いな人間を苦しめ殺すことは十六夜丸にとって楽しみであり喜びになっていた。
新しい依り代もどう使い捨ててやろうかと思っていたのに・・武尊は違った。
そして狼も。
そんな二人を見ていると十六夜丸は遥か古(いにしえ)の気持ちを思い出したのだ。
そして変わり果てた自分自身の姿にへきえきしたのだ。
出来れば自分自身を抹殺したかった、しかし十六夜丸は死ねないのだ。
闇の世界で永遠を独りで存在し続けなければならない。
そんなことは耐えられないと思っていたがこれが自ら人間を手にかけ神格を失った罪に気付かず、人間の企みに気が付かなかったとはいえ更なる罪を犯した罰なのだと・・今ようやく十六夜丸はそれに気が付いたのだった。
たとえそれが永遠の苦しみであってもそれが神として生まれた責任だと十六夜丸は決意したのだ。
だからもう武尊は必要でなくなったのだ。
(考えればこの女(武尊のこと)も憐れだったな、人の世などに光などないのだ・・)
十六夜丸は僅かな気持ちではあったが武尊の出生と運命を憐れんだ。
一方、武尊は十六夜丸から寿命宣告されて動揺していた。
(いつ・・いつ死ぬの私?)
もとより武尊は長生きしようなんて考えていない。
むしろ呪われた自分の身の上に自ら命を絶とうとしていたぐらいで・・いや、今もその心の枷は外れていない。
だが今すぐなんて死ねない、と思った。
その一方で、
(比古さんにはごめんね、という事にしておいて今自分が死んだら蒼紫は心置きなく操ちゃんとくっつく・・だとすれば今すぐ死ぬっていうのもあり・・。)
という思いが脳裏をよぎる。
すると目の前に赤い眩しい光が急に差し込んで来た・・
武尊は横で同じように記憶を見ている十六夜丸に拳を震わせながら叫んだ。
十六夜丸は涼しい顔で、
「続き始まってるぜ、見といた方がいいんじゃないのか。」
と武尊の怒りを軽く流した。
武尊は見たくなかったが自分がずっと知りたかった過去がここにあり見ないわけにはいかなかった。
先程の言葉が女との仮契約みたいなものだったのだろうか、十六夜丸は女の周りまで意識を伸ばすことが出来たようで血を吐いた女に誰かが駆け寄って来たシーンが見えていた。
「兄・・様・・。」
「兄様!」
その男の顔を見て記憶の中の女と武尊が同時に叫んだ。
駆け寄ってきた男は市彦だった。
武尊は唖然としながらも食い入るように市彦を見た。
(この人が蘭子さんだったんだ・・この人とこんなに私が似ているから兄様は私に・・)
武尊は自分が市彦の事を兄様と呼ぶと市彦どこか嬉しく、悲しく、懐かしむような目で自分を見る理由を今理解した。
蘭子は市彦の腕の中で息を引き取った。
市彦は蘭子を抱きしめ男泣きに泣いた。
武尊はいたたまれなくなり目を閉じた。
そんな武尊に十六夜丸は言った。
「俺その後この女の代わり身を探し続けた。そして約百五十年後、お前を京で見つけ過去に連れて来たわけだ。やっと分かったか?」
十六夜丸の言葉に武尊はハッとして尋ねた。
「まさか・・あの薬は蘭子さん・・」
「そうだな、安西が上手くやったようだ。しかしあいつ(ここで十六夜丸はクッと笑い)、使う事にビビリやがって市彦に使わせやがった。ハハ!市彦もまさかこの薬が最愛の妹から作られてるとは知らずに何度も何度も使ったってのは笑えるな、ハハハハハハ!」
高笑いする十六夜丸に思わず武尊は掴みかかった。
「貴方って人は!」
十六夜丸の胸倉をつかんだ武尊の手からは青いオーラが噴出している。
「生憎俺は薄汚い【人間】なんて生きものじゃないんでね!そんな人間の力など・・」
金色のオーラを強くした十六夜丸の手が武尊の手を握り潰すぐらいの力で武尊の手を引き離した。
「くっ・・。(まだオーラの力が足りないのか・・)」
悔しいが力比べではまだ十六夜丸の方が上だと武尊の手は引き離された。
「名残惜しいだろうがそろそろ時間だ・・ここまで見ればもういいだろう。」
「何の時間?」
「『何の』ってお前が目覚める時間に決まっているだろ。俺がこの闇の中で支配できる時間は日が昇ってから約十二時間だ。その時間が来たということだ。」
「もうそんな時間なの!?」
武尊はそんなに時間が経っていると思わず驚いた。
そんな武尊に十六夜丸は、
「もう少し時間ああれば初めて狼に会った時の狼の間抜けな面や俺に逃げられて悔しがる四乃森の顔も見せてやれたのに残念だ。」
と笑った。
が、その笑いもすぐ十六夜丸の顔から消え今度は真面目な声で、
「分かっていると思うがあの新型阿片はヤバかった。放って置けばお前の心の臓があっという間に止まっていた代物だ。助けてやったのはお前が死ねば俺の食い物が無くなるからだ。だが今後一切手出しはしない。早く俺に命令し、そして【気】を吸いつくされて死ね。」
と言った。
今までは武尊が致命傷を負ったら必死で直し餌の確保に努めていた十六夜丸だったのに、だ。
武尊は今まで見た記憶の中には依り代となった者が何らかの事情で薬の秘密を知り、自分の願いをかなえようと薬を盗んで自分で飲んだ結末も映っていた。
武尊はそれを思い出して固まった。
「何だ、【死ね】と言われてビビッてるのか?自分で薬を飲んだ依り代はその願いを俺が叶えてやったらその瞬間契約は履行とみなされ【気】・・つまり命をすべて吸いつくされて死ぬだけだ。どのみちお前の寿命などあまり残ってないんだ、どっちを選んでもあまり変わらないぜ。」
契約履行の場合は自分の身がどうなるのか、知っただけでも心臓が凍るような思いなのに自分の寿命が残り少ないなんて言われると武尊は頭が真っ白になった。
「え・・。」
「これは外法だ。この術は一回使うごとに依り代のひと月分の寿命が減る。代償なしに無敵になれたりするような都合の良いことなどあるわけないだろう。それに元よりお前の寿命はそんなに長くない。あれだけ俺を使えばそりゃ命も縮むってわけだ。どうせ死ぬなら願いを叶えて死んだほうがいいんじゃないか。」
十六夜丸はまたククっと喉を鳴らしたが目は笑っていなかった。
折角この世が見える依り代を見つけたのにそれを自らの手で潰すようなことを言ったのは十六夜丸なりの理由があったのだ。
彼は待つことを諦めたのだ。
千三百年心の底で持ち続けた小さな願い。
いつか斑鳩に帰るという願い。
いつか斑鳩に戻って来るという厩戸皇子の言葉の為にこの世に出る手段が唯一依り代に薬を飲ませることしかないのであれば、その手段を依り代を失うわけにはいかなかった。
だがどうにも今のこの状況(武尊が2回目に過去に来た今)は過去の状況とはまるで勝手が違い十六夜丸の思った通りには事は運ばない。
それに、よくもまあ世代が代われど人間という生き物は飽くなき欲望に貪欲でその為にはどんな汚い事でも平気でやる、そんな人間を十六夜丸は心から軽蔑し飽き飽きしていた。
嫌いな人間を苦しめ殺すことは十六夜丸にとって楽しみであり喜びになっていた。
新しい依り代もどう使い捨ててやろうかと思っていたのに・・武尊は違った。
そして狼も。
そんな二人を見ていると十六夜丸は遥か古(いにしえ)の気持ちを思い出したのだ。
そして変わり果てた自分自身の姿にへきえきしたのだ。
出来れば自分自身を抹殺したかった、しかし十六夜丸は死ねないのだ。
闇の世界で永遠を独りで存在し続けなければならない。
そんなことは耐えられないと思っていたがこれが自ら人間を手にかけ神格を失った罪に気付かず、人間の企みに気が付かなかったとはいえ更なる罪を犯した罰なのだと・・今ようやく十六夜丸はそれに気が付いたのだった。
たとえそれが永遠の苦しみであってもそれが神として生まれた責任だと十六夜丸は決意したのだ。
だからもう武尊は必要でなくなったのだ。
(考えればこの女(武尊のこと)も憐れだったな、人の世などに光などないのだ・・)
十六夜丸は僅かな気持ちではあったが武尊の出生と運命を憐れんだ。
一方、武尊は十六夜丸から寿命宣告されて動揺していた。
(いつ・・いつ死ぬの私?)
もとより武尊は長生きしようなんて考えていない。
むしろ呪われた自分の身の上に自ら命を絶とうとしていたぐらいで・・いや、今もその心の枷は外れていない。
だが今すぐなんて死ねない、と思った。
その一方で、
(比古さんにはごめんね、という事にしておいて今自分が死んだら蒼紫は心置きなく操ちゃんとくっつく・・だとすれば今すぐ死ぬっていうのもあり・・。)
という思いが脳裏をよぎる。
すると目の前に赤い眩しい光が急に差し込んで来た・・