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248.長き夢 (厩戸皇子・十六夜丸・中臣鎌足・夢主)
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中臣鎌足は明日香時代に蘇我入鹿と共に秀才として少しは知られた人物だった。
鎌足の父は推古天皇崩御後、蘇我蝦夷らと共に山背大兄王様を自害へ追い込みライバルの田村皇子(のちの舒明天皇)を即位させた。
鎌足の実家の中臣家は代々神祇伯(じんぎはく)を就任することが多かったのだがこの秀才はそれを辞退して一つの計画を立てていた。
神祇伯とは、日本の律令官制における神祇官の長官であり、宮中の神祇(神に対する儀式)や占い、神祇に関わる事務等々を行うトップであるがあくまで裏方である。
鎌足は今後、中臣家が生き残る為には父の様に政治的に表舞台から実権を握ることが必要と考えていたのだった。
今の世は、山背大兄王(用明天皇の直系)でさえ時の権力者(この場合は蘇我蝦夷)の采配次第で抹殺される・・皇族でない自分達が生き残るのは更に難しいのだ。
一豪族にしかなかった鎌足は一族の生き残りを賭け、表面的には表、そして極秘裏に裏の中の裏・・つまり呪術という禁忌の外法に手をつけたのだ。
中臣の千年栄華の夢を果たす為には薄っぺらな犬神や狐神ではなく知的で力のある神が必要だった。
鎌足の外法は十六夜丸の気を封じ込めた髑髏を秘術により細かい粉にし、それを約耳かき三杯分を使役する側の血に混ぜ対象人物に飲ませることで発動する。
十六夜丸が呼び出すことが出来るのは十六夜から新月前までなど細かな規制がある事がわかったが鎌足は上手く利用し着々と千年栄華への道を進んだ。
そして次の時代を担うのは中大兄皇子と狙いをつけ、山背大兄王が自害した二年後の645年には最大権力を持っていたの蘇我入鹿を葬ることに成功したのだった。
しばらく武尊は漆黒の世界と現実の世界を交互に、まるで3D映画を見ているように十六夜丸の記憶を見た。
呼び出された十六夜丸の用事は簡単なものから暗殺まで多種多様だった。
だがこのパターンを見て武尊は一つの不安を持った。
十六夜丸は女が依り代になった時は必ずその女をこの漆黒の世界で犯すのだ。
(まさか私も・・?)
そう思うと背筋が寒くなる。
しかも回を重ねるごとに女の身体をもてあそぶことも覚えている気がすると武尊は思った。
それとともに十六夜丸の表情が今の表情に近くなってきていることも。
最初は使役に対して嫌な気持ちを持っていたはずの十六夜丸は次第に文句も言わず淡々と仕事をこなすようになっていったのだ。
何度か見ているうちに光景がどんどんビデオの早送りのようになっていき、ヒュンヒュンと時間が進んでいく。
見ることのない時代の移り変わりが走馬灯のように流れていく。
そしてしばらく経った後、突然プツンとまた漆黒の闇の中に戻った。
急激な光の映像が無くなり一瞬武尊は何も見えなくなった。
その時頭上から雨粒がぽつんと一つ落ちてきた。
その雨粒は暖かかった。
気配で他のところにもその粒は落ちている気がして、武尊は何となく手でそれを受けようとした。
すると暖かいぬるっとした感触のものが手の中に入ってきた。
目も暗闇に慣れてくるとそれが何であるか武尊は分かった。
(鉄の臭いがする・・血だ・・)
思った通りだと武尊は驚かなかった。
長い乗っ取り生活の中で十六夜丸は人間が覚えた技・・つまり刀をも覚え、徐々に吸い取った人の精気を自分の力に変え、人では有り得ない力と速さで相手を斬って斬って斬りまくっていたからだ。
リアル画像のように飛ぶ血飛沫、断末魔のような相手の悲鳴。
そんなものを見た後では武尊の心は麻痺してしまったのだろう。
「どうだ、面白かったか。」
いつの間にか武尊の横に立ち十六夜丸楽しそうに言った。
(面白いわけがないじゃない・・)
何人殺した、何人死んだ、浴びる様に血飛沫がかかるのを見るのだけが不快じゃない。
(でも・・この物語で一番悲しいのは貴方だよ・・)
人を殺めるのに後悔も戸惑いもなく、やがて楽しみさえ覚えていくようになっていった貴方が一番悲しいよ、武尊はそう思うのだった。
そして、
「私も・・あなたに犯されてるの?」
と聞いた。
十六夜丸は武尊の正面に立つと顎を引き、上目使いで武尊を見てチロっと舌舐めずりをした。
「嗚呼、寝てる間に記憶を消すから覚えちゃいないだろうがしっかりな。褒める訳じゃないがお前、今までの女で一番美味い【気】を持っているぜ。それに・・ククッ、俺の方が狼の時よりいい声だすぜ。」
と言うと顔をいっそう武尊に近づけ、
「今俺は死にぞこないのお前の身体を治して腹が減ってんだ、お前を喰わせろ!」
と詰め寄った。
まさに物の怪の形相で近寄られた武尊は心臓がバクバクして身動き出来なくなった。
十六夜丸の目から視線を離せない、そんな状況でも武尊はふと考えついたことがあった。
(今までの経緯から行くと十六夜丸は成功報酬として薬を飲んだ者の【気】を吸っている、だけど今回私は十六夜丸に新型阿片で影響が出た身体を治してくれと本人に頼んでない・・もしかしたらあの時打たれた新型阿片は致死量で、一や蒼紫に斬られた時のように私(依り代)の命に係わるような状態だった・・そんな時は言われなくても(依り代を)治してくれているのかも。)
それは成功報酬をもらう為に依り代に死なれたら【気】を吸えずただ働きになってしまうからではと武尊は考えた。
だとすると阿片の効果を無くして欲しいと願って飲んだ自分の願いは完了していないことになり十六夜丸は自分に手が出せないのではないかという推論に至る。
ならば犯されることはないはずだと武尊は気を奮い立たせて少し声を震わせながら十六夜丸に言った。
「で・・出来ないくせに!」
十六夜丸は更に目を大きく見開き武尊の顔スレスレまでに自分の顔を近づけると武尊の瞳を無言で覗き込んだ。
武尊も気力で十六夜丸の目から目を逸らさなかった。
「・・・。」
十六夜丸は諦めたのか元の位置に体を引くと腕を組んで武尊から視線をずらし、
「・・続きを見せてやる。」
と言った。
2017.4.12
鎌足の父は推古天皇崩御後、蘇我蝦夷らと共に山背大兄王様を自害へ追い込みライバルの田村皇子(のちの舒明天皇)を即位させた。
鎌足の実家の中臣家は代々神祇伯(じんぎはく)を就任することが多かったのだがこの秀才はそれを辞退して一つの計画を立てていた。
神祇伯とは、日本の律令官制における神祇官の長官であり、宮中の神祇(神に対する儀式)や占い、神祇に関わる事務等々を行うトップであるがあくまで裏方である。
鎌足は今後、中臣家が生き残る為には父の様に政治的に表舞台から実権を握ることが必要と考えていたのだった。
今の世は、山背大兄王(用明天皇の直系)でさえ時の権力者(この場合は蘇我蝦夷)の采配次第で抹殺される・・皇族でない自分達が生き残るのは更に難しいのだ。
一豪族にしかなかった鎌足は一族の生き残りを賭け、表面的には表、そして極秘裏に裏の中の裏・・つまり呪術という禁忌の外法に手をつけたのだ。
中臣の千年栄華の夢を果たす為には薄っぺらな犬神や狐神ではなく知的で力のある神が必要だった。
鎌足の外法は十六夜丸の気を封じ込めた髑髏を秘術により細かい粉にし、それを約耳かき三杯分を使役する側の血に混ぜ対象人物に飲ませることで発動する。
十六夜丸が呼び出すことが出来るのは十六夜から新月前までなど細かな規制がある事がわかったが鎌足は上手く利用し着々と千年栄華への道を進んだ。
そして次の時代を担うのは中大兄皇子と狙いをつけ、山背大兄王が自害した二年後の645年には最大権力を持っていたの蘇我入鹿を葬ることに成功したのだった。
しばらく武尊は漆黒の世界と現実の世界を交互に、まるで3D映画を見ているように十六夜丸の記憶を見た。
呼び出された十六夜丸の用事は簡単なものから暗殺まで多種多様だった。
だがこのパターンを見て武尊は一つの不安を持った。
十六夜丸は女が依り代になった時は必ずその女をこの漆黒の世界で犯すのだ。
(まさか私も・・?)
そう思うと背筋が寒くなる。
しかも回を重ねるごとに女の身体をもてあそぶことも覚えている気がすると武尊は思った。
それとともに十六夜丸の表情が今の表情に近くなってきていることも。
最初は使役に対して嫌な気持ちを持っていたはずの十六夜丸は次第に文句も言わず淡々と仕事をこなすようになっていったのだ。
何度か見ているうちに光景がどんどんビデオの早送りのようになっていき、ヒュンヒュンと時間が進んでいく。
見ることのない時代の移り変わりが走馬灯のように流れていく。
そしてしばらく経った後、突然プツンとまた漆黒の闇の中に戻った。
急激な光の映像が無くなり一瞬武尊は何も見えなくなった。
その時頭上から雨粒がぽつんと一つ落ちてきた。
その雨粒は暖かかった。
気配で他のところにもその粒は落ちている気がして、武尊は何となく手でそれを受けようとした。
すると暖かいぬるっとした感触のものが手の中に入ってきた。
目も暗闇に慣れてくるとそれが何であるか武尊は分かった。
(鉄の臭いがする・・血だ・・)
思った通りだと武尊は驚かなかった。
長い乗っ取り生活の中で十六夜丸は人間が覚えた技・・つまり刀をも覚え、徐々に吸い取った人の精気を自分の力に変え、人では有り得ない力と速さで相手を斬って斬って斬りまくっていたからだ。
リアル画像のように飛ぶ血飛沫、断末魔のような相手の悲鳴。
そんなものを見た後では武尊の心は麻痺してしまったのだろう。
「どうだ、面白かったか。」
いつの間にか武尊の横に立ち十六夜丸楽しそうに言った。
(面白いわけがないじゃない・・)
何人殺した、何人死んだ、浴びる様に血飛沫がかかるのを見るのだけが不快じゃない。
(でも・・この物語で一番悲しいのは貴方だよ・・)
人を殺めるのに後悔も戸惑いもなく、やがて楽しみさえ覚えていくようになっていった貴方が一番悲しいよ、武尊はそう思うのだった。
そして、
「私も・・あなたに犯されてるの?」
と聞いた。
十六夜丸は武尊の正面に立つと顎を引き、上目使いで武尊を見てチロっと舌舐めずりをした。
「嗚呼、寝てる間に記憶を消すから覚えちゃいないだろうがしっかりな。褒める訳じゃないがお前、今までの女で一番美味い【気】を持っているぜ。それに・・ククッ、俺の方が狼の時よりいい声だすぜ。」
と言うと顔をいっそう武尊に近づけ、
「今俺は死にぞこないのお前の身体を治して腹が減ってんだ、お前を喰わせろ!」
と詰め寄った。
まさに物の怪の形相で近寄られた武尊は心臓がバクバクして身動き出来なくなった。
十六夜丸の目から視線を離せない、そんな状況でも武尊はふと考えついたことがあった。
(今までの経緯から行くと十六夜丸は成功報酬として薬を飲んだ者の【気】を吸っている、だけど今回私は十六夜丸に新型阿片で影響が出た身体を治してくれと本人に頼んでない・・もしかしたらあの時打たれた新型阿片は致死量で、一や蒼紫に斬られた時のように私(依り代)の命に係わるような状態だった・・そんな時は言われなくても(依り代を)治してくれているのかも。)
それは成功報酬をもらう為に依り代に死なれたら【気】を吸えずただ働きになってしまうからではと武尊は考えた。
だとすると阿片の効果を無くして欲しいと願って飲んだ自分の願いは完了していないことになり十六夜丸は自分に手が出せないのではないかという推論に至る。
ならば犯されることはないはずだと武尊は気を奮い立たせて少し声を震わせながら十六夜丸に言った。
「で・・出来ないくせに!」
十六夜丸は更に目を大きく見開き武尊の顔スレスレまでに自分の顔を近づけると武尊の瞳を無言で覗き込んだ。
武尊も気力で十六夜丸の目から目を逸らさなかった。
「・・・。」
十六夜丸は諦めたのか元の位置に体を引くと腕を組んで武尊から視線をずらし、
「・・続きを見せてやる。」
と言った。
2017.4.12