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247.千三百年前の出会い (蒼紫・斎藤・夢主・十六夜丸)
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場面は一転し武尊はハッとした。
辺り一面、げろげろげろと蛙の鳴き声が辺り一面に聞こえて武尊はとまどった。
続けて注意深く周囲を見回すと、目の前は田んぼだろうか稲が青々と伸び、空には形を変えた下弦の月が出ていた。
『これもみんな十六夜丸様のお陰。』
と、何処からともなく声がした。
「うるさいぞ、祈りの邪魔だ。」
『口が悪いのが治らないのはどうしてだ。』
一瞬むすっとした十六夜丸だったがすぐに端整な顔に戻り再び夜空の月に向かい両手を広げて祈りを捧げる。
その姿はさっき見たのと同じだと思いながら武尊は十六夜丸の姿を見続けた。
その時だった、十六夜丸が何かを感じて祈りを止め、一方を見た。
すると蛙たちも一斉に静かになった。
何事かと武尊がじっと十六夜丸が見ている方向を見ていると影が三体近づいてくるのが分かった。
そのうちの真ん中の、一人だけ馬に乗っている男が満足そうにこう言った。
「ここは何と素晴らしく豊かな土地なんだ。」
月明りは十分で武尊はその三人の姿も良く見えた。
武尊は彼らの服装に驚いた。
彼らは古代日本・・つまり奈良時代よりも古い貴族のような服装をしているのだ。
そこに先ほどのお喋り蛙が、
『そりゃ十六夜丸様がこうして天にお祈りしてるからこの地は豊かであるんですよ、ケロケロ。』
ケロケロだって?と、武尊はさっきからこの声の主は誰なんだと周囲を見回し驚いた。
まさかと思ったがやっぱり蛙が喋っているのだ!
「おや、そうなのかい。」
三人の男の真ん中に居た男が蛙に言葉を返し、そして十六夜丸を真っ直ぐに見た。
十六夜丸はギョッとしたようだった。
「私の姿が見えるのか?」
十六夜丸が尋ね返すと同時に男の御供の者が、
「また皇子の独り言が始まった。」
「いや、皇子には見えているのだろう。何しろ皇子には我々には見えぬものが見え、聞こえぬ声が聞こえるらしいからな。」
と言うと、やれやれまた始まったとばかりに二人して肩をすくめた。
男は馬を降りると優しく微笑みを十六夜丸に返し、
「私は 厩戸皇子 (うまやどのおうじ)。明日香に近いところで住むところに良い場所を探している。貴方の御名前は?」
と言った。
『こら人間、十六夜丸様に向かって馴れ馴れしいぞ!こちらは十六夜雷大神(いざよいいかづちのおおかみ)様でござる、人間よ、頭が高ーい!』
十六夜丸の代わりに蛙が大きな声で叫んだ。
「雷大神か・・道理で米がよく育っている。」
厩戸皇子と名乗ったその男は水田を見てうんうんと感心した。
本当に見えているんだと十六夜丸は驚きながら、
「初めてだ・・私を見て、話しかけてきた人間は・・。」
と、素直に言った。
厩戸皇子は笑みを絶やさず喋った蛙に向かってしゃがみ込みながら手を伸ばした。
「私は生まれた時から普通の者が見えぬものが見え聞こえる体質のようでね。」
指先が蛙に触れようとした時、蛙はチャポーンっと、水に飛び込んで逃げた。
厩戸皇子は再び立ち上がると、
「決めた、私は此処に近々私の宮殿を建てるぞ!貴方がいればこの土地が枯れることはあるまい、ではまた来る。今日はこっそり豊浦宮(明日香にある天皇の宮殿全般)を抜け出してきたのでな。」
と十六夜丸に一礼すると再び馬に乗り供を連れ戻って行ったのだった。
武尊は目を丸くして、
(厩戸皇子・・て聖徳太子だよね!?て・・えー!まさか本物?)
と驚いていたのだ。
辺り一面、げろげろげろと蛙の鳴き声が辺り一面に聞こえて武尊はとまどった。
続けて注意深く周囲を見回すと、目の前は田んぼだろうか稲が青々と伸び、空には形を変えた下弦の月が出ていた。
『これもみんな十六夜丸様のお陰。』
と、何処からともなく声がした。
「うるさいぞ、祈りの邪魔だ。」
『口が悪いのが治らないのはどうしてだ。』
一瞬むすっとした十六夜丸だったがすぐに端整な顔に戻り再び夜空の月に向かい両手を広げて祈りを捧げる。
その姿はさっき見たのと同じだと思いながら武尊は十六夜丸の姿を見続けた。
その時だった、十六夜丸が何かを感じて祈りを止め、一方を見た。
すると蛙たちも一斉に静かになった。
何事かと武尊がじっと十六夜丸が見ている方向を見ていると影が三体近づいてくるのが分かった。
そのうちの真ん中の、一人だけ馬に乗っている男が満足そうにこう言った。
「ここは何と素晴らしく豊かな土地なんだ。」
月明りは十分で武尊はその三人の姿も良く見えた。
武尊は彼らの服装に驚いた。
彼らは古代日本・・つまり奈良時代よりも古い貴族のような服装をしているのだ。
そこに先ほどのお喋り蛙が、
『そりゃ十六夜丸様がこうして天にお祈りしてるからこの地は豊かであるんですよ、ケロケロ。』
ケロケロだって?と、武尊はさっきからこの声の主は誰なんだと周囲を見回し驚いた。
まさかと思ったがやっぱり蛙が喋っているのだ!
「おや、そうなのかい。」
三人の男の真ん中に居た男が蛙に言葉を返し、そして十六夜丸を真っ直ぐに見た。
十六夜丸はギョッとしたようだった。
「私の姿が見えるのか?」
十六夜丸が尋ね返すと同時に男の御供の者が、
「また皇子の独り言が始まった。」
「いや、皇子には見えているのだろう。何しろ皇子には我々には見えぬものが見え、聞こえぬ声が聞こえるらしいからな。」
と言うと、やれやれまた始まったとばかりに二人して肩をすくめた。
男は馬を降りると優しく微笑みを十六夜丸に返し、
「私は 厩戸皇子 (うまやどのおうじ)。明日香に近いところで住むところに良い場所を探している。貴方の御名前は?」
と言った。
『こら人間、十六夜丸様に向かって馴れ馴れしいぞ!こちらは十六夜雷大神(いざよいいかづちのおおかみ)様でござる、人間よ、頭が高ーい!』
十六夜丸の代わりに蛙が大きな声で叫んだ。
「雷大神か・・道理で米がよく育っている。」
厩戸皇子と名乗ったその男は水田を見てうんうんと感心した。
本当に見えているんだと十六夜丸は驚きながら、
「初めてだ・・私を見て、話しかけてきた人間は・・。」
と、素直に言った。
厩戸皇子は笑みを絶やさず喋った蛙に向かってしゃがみ込みながら手を伸ばした。
「私は生まれた時から普通の者が見えぬものが見え聞こえる体質のようでね。」
指先が蛙に触れようとした時、蛙はチャポーンっと、水に飛び込んで逃げた。
厩戸皇子は再び立ち上がると、
「決めた、私は此処に近々私の宮殿を建てるぞ!貴方がいればこの土地が枯れることはあるまい、ではまた来る。今日はこっそり豊浦宮(明日香にある天皇の宮殿全般)を抜け出してきたのでな。」
と十六夜丸に一礼すると再び馬に乗り供を連れ戻って行ったのだった。
武尊は目を丸くして、
(厩戸皇子・・て聖徳太子だよね!?て・・えー!まさか本物?)
と驚いていたのだ。