掃除機に吸い込まれてそのまま何処かに飛んで行っているようだ・・っ！


と、武尊が感じたのは体感三十秒ぐらいだっただろうか・・












武尊はいつの間にか広い夜の平地に立っていた。



雲一つない夜の空には大きな十六夜の月が真上に輝き静かな光を地に降り注いでいた。


深い紺色の空に金の光。


突然空から金の光がシャワーのごとく降り注ぎ始めるとその中心に人影が現れ始めた。



（【デジャヴ】？この景色前に見たことがあるような・・。）



そう、以前武尊が夢の中で見た景色が今目の前で再現されているのだ。


あの時は後ろ姿しか見えなかったが今の自分は・・というとどうやら意識だけがこの世界に存在しているようで武尊はあの人の顔が見たいと思っただけでその人の前まで行けた。






「十六夜丸・・」



武尊は驚きのあまり口を開いたが声にならなかった。


只、先ほど暗い世界で見た十六夜丸とは違い、この十六夜丸は紅い眼でなく綺麗な金色だということ。


それはすべてを包み込むような優しい金の色。




十六夜丸は夜空を仰ぎ、ゆっくりと両手を広げると月の光に包まれたその草原はサワサワと心地良い音をたてて揺れた、いつまでもいつまでも。