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244.操、帰還する (蒼紫・操・斎藤・夢主・翁)
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蒼紫が斎藤と武尊を連れて行ったのはほどしばらく歩いた所にある竹藪に囲まれた小さな小屋だった。
「明治になってから殆ど使ってないからな。」
そう言いつつ蒼紫は入り口の戸をガタガタといわせながら開けた。
土埃が積もった小屋の中、斎藤は少し誇り払いをすると担いでいた武尊を自分の腿の上に降ろしコートをかけてやった。
蒼紫は武尊が少しでも寒くないようにと囲炉裏に火を付けた。
斎藤も蒼紫も無言だった。
時折湿気た薪がパチっと爆ぜた。
斎藤は武尊を険しい目で見つめていた。
ここに来るまでに斎藤は蒼紫にあの雨の日の続きを初めて聞いたのだ。
事故とは言え二人で武尊の身体を貫き、死の淵まで追い込んだ。
その後斎藤は任務を果たすためだとはいえ武尊を蒼紫に任せ、自分は張の所へ戻った。
その後の話だ。
ただ診療所で回復を待っていたとばかり思っていたのに・・。
武尊の身に起こった忌まわしい出来事。
それを考えると斎藤は複雑な気持ちでいっぱいになった。
知らなかったとはいえ、信じ難いことだった。
(武尊は【薬】を飲まされる度にそんな状況になっていたのか。相手は誰だ・・十六夜丸か?・・奴は一体何なのだ、闇の亡者なのか、それとも人に仇をなす妖・物の怪か。)
しかし幽霊や物の怪など果たしてそんな物がこの世に本当にいるのかと斎藤は自問自答する。
神や仏を信じてはいるが成仏出来ない亡者など見たこともないし、まして妖怪など尚更だと斎藤は思いながらまだ武尊をじっと見つめていた。
(だが紛れもなく【薬】を飲んだ武尊は十六夜丸なる。)
人格の変貌だけなら何らかの強い暗示が作り上げたという可能性も否定出来ないが、ずばぬけた戦闘能力や奇跡とも思える治癒能力がその時だけ発動するなど通常では有り得ない。
無言で武尊を見つめる斎藤に蒼紫は、
「・・九条を追わなくていいのか。」
と沈黙を破って聞いた。
「お前こそ葵屋に戻った方がいいんじゃないか。」
と答え、更に斎藤は武尊の髪を優しく撫でながら
「さっきも言ったが俺は武尊の伝言であのアジトを調べに来たようなもんだ。影宮らしき男はアジトでは見なかったし炎も収まりきってない穴倉に戻っても仕方がないだろう。それとも俺がこうやっ武尊の傍にいることが気に入らないのか。」
と、最後の方はご丁寧に蒼紫を挑発するような言い方で答えた。
(当たり前だ。)
蒼紫は声には出さないが斎藤からすれば蒼紫の身体が発している【斎藤退散】の雰囲気ほど分かりやすいものはない。
だが斎藤も蒼紫に言われた九条の行方というのが気にならないわけではない。
此処に来るまでに斎藤と蒼紫は互いの情報交換をした。
斎藤は何故武尊が九条の事を知っているのかをどうしても知りたかったし、この事件の全貌を見るには蒼紫の情報も得たかったからだ。
蒼紫が追いかけて来た馬車。
それが何故中途半端な処に止まっていたのか。
屋敷を見張っていた蒼紫や警官の目を欺く為に誰も乗っていない馬車を猛スピードで走らせたというのか。
だとしても御者は何処へ行ったのか。
謎を解くために斎藤が思案していると、阿片の効果が切れてきたのか武尊が苦しそうに呻いた。
「武尊、気が付いたか。」
斎藤はすかさず呼びかけ蒼紫はその様子をじっと見守った。
武尊はなかなか目を開けず、眉を寄せ呼吸が乱し始めた。
そして時々声を押し殺すように息を吐いた。
斎藤はこれが十六夜丸に喰われるという事なのかと思ったが想像していたのと少し違う、と思っていると武尊の唸り声がだんだん苦し気になって来てついに、
「だめっ、もう・・抑えられない・・。」
と額に汗をにじませながら片手を伸ばした。
手を伸ばしながらゆっくりと武尊の目が開く。
そこで武尊は暗い小屋の中の景色にハッとし、自分を呼ぶ二人の声に振り向いた。
「一・・蒼紫・・!?」
ここはどこだと言わんばかりの武尊の目。
なぜ斎藤と蒼紫が一緒にいるのか状況が理解できない武尊だったがそれよりも湧き溢れる力が自分の意思に反して暴れそうだと、そしてそれを何とか封じ込めようと自らの胸倉をぎゅっと掴み、
「一も蒼紫も私から離れて!!すぐに!早く!!」
暗闇の中で武尊の眼の色が真紅だったのは囲炉裏の炎を映したからかもしれない。
と、斎藤と蒼紫もそう思いたかったが武尊の尋常でなく強い言葉にどうしようかと迷った。
「早く!私は大丈夫だからっ・・!」
武尊の叫ぶような二度目の声で後ろ髪を引かれるような思いで小屋を出た。
「もっと!もっと遠くに!」
小屋から出てもなお武尊は斎藤と蒼紫の距離を見て叫んだ。
斎藤と蒼紫は仕方なくじりじりと後ろへ下がっているとパシッ、パシッとまるで竹藪の竹が割れるような音が周りに響いた。
斎藤と蒼紫は十六夜丸がやっているのかと思わず顔を見合わせた時地面が不気味な音と共に揺れ始めた。
「明治になってから殆ど使ってないからな。」
そう言いつつ蒼紫は入り口の戸をガタガタといわせながら開けた。
土埃が積もった小屋の中、斎藤は少し誇り払いをすると担いでいた武尊を自分の腿の上に降ろしコートをかけてやった。
蒼紫は武尊が少しでも寒くないようにと囲炉裏に火を付けた。
斎藤も蒼紫も無言だった。
時折湿気た薪がパチっと爆ぜた。
斎藤は武尊を険しい目で見つめていた。
ここに来るまでに斎藤は蒼紫にあの雨の日の続きを初めて聞いたのだ。
事故とは言え二人で武尊の身体を貫き、死の淵まで追い込んだ。
その後斎藤は任務を果たすためだとはいえ武尊を蒼紫に任せ、自分は張の所へ戻った。
その後の話だ。
ただ診療所で回復を待っていたとばかり思っていたのに・・。
武尊の身に起こった忌まわしい出来事。
それを考えると斎藤は複雑な気持ちでいっぱいになった。
知らなかったとはいえ、信じ難いことだった。
(武尊は【薬】を飲まされる度にそんな状況になっていたのか。相手は誰だ・・十六夜丸か?・・奴は一体何なのだ、闇の亡者なのか、それとも人に仇をなす妖・物の怪か。)
しかし幽霊や物の怪など果たしてそんな物がこの世に本当にいるのかと斎藤は自問自答する。
神や仏を信じてはいるが成仏出来ない亡者など見たこともないし、まして妖怪など尚更だと斎藤は思いながらまだ武尊をじっと見つめていた。
(だが紛れもなく【薬】を飲んだ武尊は十六夜丸なる。)
人格の変貌だけなら何らかの強い暗示が作り上げたという可能性も否定出来ないが、ずばぬけた戦闘能力や奇跡とも思える治癒能力がその時だけ発動するなど通常では有り得ない。
無言で武尊を見つめる斎藤に蒼紫は、
「・・九条を追わなくていいのか。」
と沈黙を破って聞いた。
「お前こそ葵屋に戻った方がいいんじゃないか。」
と答え、更に斎藤は武尊の髪を優しく撫でながら
「さっきも言ったが俺は武尊の伝言であのアジトを調べに来たようなもんだ。影宮らしき男はアジトでは見なかったし炎も収まりきってない穴倉に戻っても仕方がないだろう。それとも俺がこうやっ武尊の傍にいることが気に入らないのか。」
と、最後の方はご丁寧に蒼紫を挑発するような言い方で答えた。
(当たり前だ。)
蒼紫は声には出さないが斎藤からすれば蒼紫の身体が発している【斎藤退散】の雰囲気ほど分かりやすいものはない。
だが斎藤も蒼紫に言われた九条の行方というのが気にならないわけではない。
此処に来るまでに斎藤と蒼紫は互いの情報交換をした。
斎藤は何故武尊が九条の事を知っているのかをどうしても知りたかったし、この事件の全貌を見るには蒼紫の情報も得たかったからだ。
蒼紫が追いかけて来た馬車。
それが何故中途半端な処に止まっていたのか。
屋敷を見張っていた蒼紫や警官の目を欺く為に誰も乗っていない馬車を猛スピードで走らせたというのか。
だとしても御者は何処へ行ったのか。
謎を解くために斎藤が思案していると、阿片の効果が切れてきたのか武尊が苦しそうに呻いた。
「武尊、気が付いたか。」
斎藤はすかさず呼びかけ蒼紫はその様子をじっと見守った。
武尊はなかなか目を開けず、眉を寄せ呼吸が乱し始めた。
そして時々声を押し殺すように息を吐いた。
斎藤はこれが十六夜丸に喰われるという事なのかと思ったが想像していたのと少し違う、と思っていると武尊の唸り声がだんだん苦し気になって来てついに、
「だめっ、もう・・抑えられない・・。」
と額に汗をにじませながら片手を伸ばした。
手を伸ばしながらゆっくりと武尊の目が開く。
そこで武尊は暗い小屋の中の景色にハッとし、自分を呼ぶ二人の声に振り向いた。
「一・・蒼紫・・!?」
ここはどこだと言わんばかりの武尊の目。
なぜ斎藤と蒼紫が一緒にいるのか状況が理解できない武尊だったがそれよりも湧き溢れる力が自分の意思に反して暴れそうだと、そしてそれを何とか封じ込めようと自らの胸倉をぎゅっと掴み、
「一も蒼紫も私から離れて!!すぐに!早く!!」
暗闇の中で武尊の眼の色が真紅だったのは囲炉裏の炎を映したからかもしれない。
と、斎藤と蒼紫もそう思いたかったが武尊の尋常でなく強い言葉にどうしようかと迷った。
「早く!私は大丈夫だからっ・・!」
武尊の叫ぶような二度目の声で後ろ髪を引かれるような思いで小屋を出た。
「もっと!もっと遠くに!」
小屋から出てもなお武尊は斎藤と蒼紫の距離を見て叫んだ。
斎藤と蒼紫は仕方なくじりじりと後ろへ下がっているとパシッ、パシッとまるで竹藪の竹が割れるような音が周りに響いた。
斎藤と蒼紫は十六夜丸がやっているのかと思わず顔を見合わせた時地面が不気味な音と共に揺れ始めた。