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279.その後(蒼紫の場合 後編)
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年が明けて、
まるで武尊さんのいた気配など感じないくらいに蒼紫様も爺やもみんなも、普通な感じに過ごしている・・
と、操は感じていた。
ただ一つのことを除いて。
それはあれ程牛肉食べることに抵抗を見せていた蒼紫が黒が作った牛肉料理を口にしていたのだ。
もちろんその料理は今まで食べたことがないほど美味しいものであったが、それよりも蒼紫が牛肉を食べたという事の方がは操にとっては驚愕だった。
また、葵屋の厨房に蒼紫がこれほどまでに出入りしているのにも驚くことだった。
そして今日もまた、えも言えぬほどいい匂いがして操が厨房にフラフラと引き寄せられると蒼紫を発見したのだった。
「黒、どうだこの料理は。」
「いいですね、御頭の御提案の通りに造ってみました。」
大鍋を前にそんな会話をしていると操の姿が二人の視界に入る。
「蒼紫様、すごくいい匂いですが何を作っているのですか?」
「牛肉のしぐれ煮だ。」
「しぐれ煮?」
「そうですよお嬢。本来時雨煮(しぐれ煮)とは蛤の生姜煮なんですが御頭が蛤の代わりに牛肉で試してみろとおっしゃってくれて。」
と代わりに黒が説明する。
すっかり大鍋に目が釘付けの操に黒は小皿に少し入れて差し出した。
「よかったらお嬢も試食してくださいよ。」
「もちろんよ!」
と試食中に翁も勝手場へやって来た。
「何やらいい匂いに誘われたわい。」
「翁も試食して下さいよ、例のしぐれ煮です。」
「おお、そうか、どれ・・(もぐもぐ)・・っ!何と美味!」
「本当、これならご飯が何杯でもいける!」
と翁も操もべた褒めだった。
「で、爺や。『例の』って何のこと?」
「うむ、先日皆で食べた『牛肉の朴葉焼き』で使いきれんかった肉をどうするかということじゃったんだが、こうして『しぐれ煮』とやらにすると大量に消費出来るでの。これだけ上出来じゃと仕出しの新めにゅうに取り入れられるほどじゃ。日持ちもするし手土産にええかの。」
と、翁は満悦至極とばかりに頷いた。
「翁、後でそれをお近とお増にも食べてもらえ。年末年始は忙しくさせた。牛肉は滋養にもいいからな。」
「そうであるか。うむ、分かった。」
翁が頷くと蒼紫は、
「では禅寺へ行って来る。」
と、言い出て行こうとするが足を止め、
「・・翁、本日亥の刻全員集合だ。話がある。」
というと今度こそ出て行った。
外は今日も曇天から雪が舞う。
途中、蒼紫は鴨川にかかる橋の上から天ヶ岳の方を少しだけ仰ぎ見た。
山は薄っすら白くなっていた。
想い人は彼の山の向こうに。
その山の峰から流れ来る水の流れに視線を寄せたのは一瞬。
蒼紫はまた歩き出すのだった。
まるで武尊さんのいた気配など感じないくらいに蒼紫様も爺やもみんなも、普通な感じに過ごしている・・
と、操は感じていた。
ただ一つのことを除いて。
それはあれ程牛肉食べることに抵抗を見せていた蒼紫が黒が作った牛肉料理を口にしていたのだ。
もちろんその料理は今まで食べたことがないほど美味しいものであったが、それよりも蒼紫が牛肉を食べたという事の方がは操にとっては驚愕だった。
また、葵屋の厨房に蒼紫がこれほどまでに出入りしているのにも驚くことだった。
そして今日もまた、えも言えぬほどいい匂いがして操が厨房にフラフラと引き寄せられると蒼紫を発見したのだった。
「黒、どうだこの料理は。」
「いいですね、御頭の御提案の通りに造ってみました。」
大鍋を前にそんな会話をしていると操の姿が二人の視界に入る。
「蒼紫様、すごくいい匂いですが何を作っているのですか?」
「牛肉のしぐれ煮だ。」
「しぐれ煮?」
「そうですよお嬢。本来時雨煮(しぐれ煮)とは蛤の生姜煮なんですが御頭が蛤の代わりに牛肉で試してみろとおっしゃってくれて。」
と代わりに黒が説明する。
すっかり大鍋に目が釘付けの操に黒は小皿に少し入れて差し出した。
「よかったらお嬢も試食してくださいよ。」
「もちろんよ!」
と試食中に翁も勝手場へやって来た。
「何やらいい匂いに誘われたわい。」
「翁も試食して下さいよ、例のしぐれ煮です。」
「おお、そうか、どれ・・(もぐもぐ)・・っ!何と美味!」
「本当、これならご飯が何杯でもいける!」
と翁も操もべた褒めだった。
「で、爺や。『例の』って何のこと?」
「うむ、先日皆で食べた『牛肉の朴葉焼き』で使いきれんかった肉をどうするかということじゃったんだが、こうして『しぐれ煮』とやらにすると大量に消費出来るでの。これだけ上出来じゃと仕出しの新めにゅうに取り入れられるほどじゃ。日持ちもするし手土産にええかの。」
と、翁は満悦至極とばかりに頷いた。
「翁、後でそれをお近とお増にも食べてもらえ。年末年始は忙しくさせた。牛肉は滋養にもいいからな。」
「そうであるか。うむ、分かった。」
翁が頷くと蒼紫は、
「では禅寺へ行って来る。」
と、言い出て行こうとするが足を止め、
「・・翁、本日亥の刻全員集合だ。話がある。」
というと今度こそ出て行った。
外は今日も曇天から雪が舞う。
途中、蒼紫は鴨川にかかる橋の上から天ヶ岳の方を少しだけ仰ぎ見た。
山は薄っすら白くなっていた。
想い人は彼の山の向こうに。
その山の峰から流れ来る水の流れに視線を寄せたのは一瞬。
蒼紫はまた歩き出すのだった。