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278.その後(蒼紫の場合:前編)
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膳を持っていつものように三人で夕餉をとる。
「緋村・・ありがとう。私あのままじゃどうしていいか分からなかった。」
「考えをまとめる時間が出来てよかったでござる。」
「うん・・。」
蒼紫から武尊は帰ったと聞いた時、操は少しホッとした。
それなら葵屋に自分の居場所があるのではないかと思ったからだ。
(じゃあどうしてあの時蒼紫様は武尊さんと夫婦になったって言ったの?)
操にとってそこが分からない。
そしていつの間にか比古清十郎の処へ帰っただなんて・・。
操は心が浮かないまま食事を終えた。
三人が食事を終えた後、薫は四人分のお茶を用意し、剣心が蒼紫を呼びに行った。
すぐに剣心が戻り、続いて蒼紫が部屋に入って来た。
入って正面左に薫、その隣に操。
薫の前に剣心、そして操の前に蒼紫が座った。
「まあ蒼紫、お茶でも飲みながら先程の話を詳しく話して欲しいでござるよ。」
と、剣心は蒼紫の座布団の前に置いてあるお茶をすすめた。
胡坐をかき、腕を組んだ蒼紫は「人前で話すことではないが」と前置きした後、
「武尊と夫婦になったとは言ったが、実際は・・俺が一方的に武尊を好きになり比古清十郎の処へ武尊を帰したくなかったが故、武尊の大事な荷を隠し、返して欲しくば、暫しの間、夫婦のふりをしろと武尊に強要していた・・。という訳だ。」
と言った。
そんな子供じみた手段をあの蒼紫が使ったのかと剣心も薫もそこを突っ込みたかった。
蒼紫は言葉を続けた。
「だが、一向に振り向いてもらえなかった俺は諦めて武尊を帰した、ということだ。これで納得したか操。」
蒼紫に問われても操は膝の上に乗せた手を握りしめたまま震わせていた。
そして絞り出すように言った。
「蒼紫様は・・武尊さんのどこがよかったの。」
「操はどう感じた。緋村のように先入観を持たずに武尊と接した操になら分かるはずだ。」
蒼紫にそう言われて操は武尊と出会った頃のことを記憶の底から引っ張り出した。
夫婦宣言を聞いてから蒼紫に対する絶望は武尊に対する嫉妬に変わり、更に今では憎しみに近い感情を持つようになっていた操は武尊との思い出は忘れようとしていたのだった。
清水寺へ行ったこと。船旅を一緒にしたこと。チョコレートをもらったこと。御札をもらったこと。そして何より新型阿片事件の時に命を賭してまでしても助けてもらったこと。
「うっ・・。」
操は声を漏らして涙をこぼした。
あんなに仲良く話をしていたはずだったのにいつの間にか心の中で大っ嫌いにしていた。
そしてすっかり忘れていた、武尊が優しくてとてもいい人だったこと・・。
「蒼紫様、緋村、薫さん、ちょっと頭冷やしてくる、ごめんなさい!」
操は突然立ち上がって部屋をバタバタと出て行った。
「あ、操ちゃん・・っ!」
薫は膝を立て、思わず片手を伸ばすが開けて出て行った障子の向こうからは小さくなっていく足音だけが聞こえてくる。
「剣心・・私ちょっと行って来る。」
と蒼紫に会釈をして立ち上がった薫は操を追って出て行った。
剣心は薫の出て行った方を目で追いつつ、
「そういう事でござったか。蒼紫は操殿と一緒になるものだと思っていたでござるから最初は驚いたでござるよ。しかし事の真相が分かって納得いったでござる。これで操殿もひと安心でござるな。」
と言った。
蒼紫は剣心の言葉を黙って聞いていたが勝手に操と一緒になると思われていたことが心にもやっときて・・
そしてボソッと、
「俺が武尊を好く理由など緋村が神谷薫を好く理由と左程変わらんと思うが。」
と切り返したのだった。
「おろ。」
直球で切り込まれて剣心は焦るがその焦りを誤魔化すように一つ咳払いをし、
「ところで、でござるが、以前武尊が海軍少尉について行く前に武尊と少し話したのでござるが・・」
「武尊の問いには答えられたか?」
「ああ、少しは答えられたと思うでござる。」
「そうか。」
それならばあの時神谷道場に寄って良かったと蒼紫は思った。
だが剣心の話は続いた。
「拙者は武尊が女と知った時、武尊は十六夜丸ではないと確信したのでござるが武尊と話をしたその時、武尊は自分が十六夜丸と言ったでござる。拙者、それだけはどうしてもよく分からないでござる。蒼紫は何か知っているでござるか?」
剣心の言葉に蒼紫は少し考え、
「・・これは独り言だ。他言無用。」
と断わりを入れ、
「信じるか信じないかは勝手だが、武尊は十六夜丸だ・・いや、十六夜丸は武尊だ。だが、緋村、お前のように別名を抜刀斉といった類ではない。武尊はある呪術によってのみ十六夜丸となることができる・・しかしその間武尊には記憶がない。十六夜丸になった時に人を殺したことを知った時、しかも己の手で人の死を楽しむように殺したと、そう知って同じ人斬りと異名をとったお前に何かを聞きたかったのではないか。」
そうだったのかと剣心は驚いた。
そう仮定すると武尊の初日の言葉も理解できると剣心は思った。
だがそんな呪術が存在するなど・・
と剣心が思っているのを見透かすように、
「そんなことが現実に起こるなど、この俺でさえ最初は到底信じられぬことだと思っていた」
と蒼紫が言った。
「だが、大丈夫だ。・・もうその呪術が行われることは二度と・・ない。」
と蒼紫は外法は滅したのだと断ち切るように言ったのだった。
「緋村・・ありがとう。私あのままじゃどうしていいか分からなかった。」
「考えをまとめる時間が出来てよかったでござる。」
「うん・・。」
蒼紫から武尊は帰ったと聞いた時、操は少しホッとした。
それなら葵屋に自分の居場所があるのではないかと思ったからだ。
(じゃあどうしてあの時蒼紫様は武尊さんと夫婦になったって言ったの?)
操にとってそこが分からない。
そしていつの間にか比古清十郎の処へ帰っただなんて・・。
操は心が浮かないまま食事を終えた。
三人が食事を終えた後、薫は四人分のお茶を用意し、剣心が蒼紫を呼びに行った。
すぐに剣心が戻り、続いて蒼紫が部屋に入って来た。
入って正面左に薫、その隣に操。
薫の前に剣心、そして操の前に蒼紫が座った。
「まあ蒼紫、お茶でも飲みながら先程の話を詳しく話して欲しいでござるよ。」
と、剣心は蒼紫の座布団の前に置いてあるお茶をすすめた。
胡坐をかき、腕を組んだ蒼紫は「人前で話すことではないが」と前置きした後、
「武尊と夫婦になったとは言ったが、実際は・・俺が一方的に武尊を好きになり比古清十郎の処へ武尊を帰したくなかったが故、武尊の大事な荷を隠し、返して欲しくば、暫しの間、夫婦のふりをしろと武尊に強要していた・・。という訳だ。」
と言った。
そんな子供じみた手段をあの蒼紫が使ったのかと剣心も薫もそこを突っ込みたかった。
蒼紫は言葉を続けた。
「だが、一向に振り向いてもらえなかった俺は諦めて武尊を帰した、ということだ。これで納得したか操。」
蒼紫に問われても操は膝の上に乗せた手を握りしめたまま震わせていた。
そして絞り出すように言った。
「蒼紫様は・・武尊さんのどこがよかったの。」
「操はどう感じた。緋村のように先入観を持たずに武尊と接した操になら分かるはずだ。」
蒼紫にそう言われて操は武尊と出会った頃のことを記憶の底から引っ張り出した。
夫婦宣言を聞いてから蒼紫に対する絶望は武尊に対する嫉妬に変わり、更に今では憎しみに近い感情を持つようになっていた操は武尊との思い出は忘れようとしていたのだった。
清水寺へ行ったこと。船旅を一緒にしたこと。チョコレートをもらったこと。御札をもらったこと。そして何より新型阿片事件の時に命を賭してまでしても助けてもらったこと。
「うっ・・。」
操は声を漏らして涙をこぼした。
あんなに仲良く話をしていたはずだったのにいつの間にか心の中で大っ嫌いにしていた。
そしてすっかり忘れていた、武尊が優しくてとてもいい人だったこと・・。
「蒼紫様、緋村、薫さん、ちょっと頭冷やしてくる、ごめんなさい!」
操は突然立ち上がって部屋をバタバタと出て行った。
「あ、操ちゃん・・っ!」
薫は膝を立て、思わず片手を伸ばすが開けて出て行った障子の向こうからは小さくなっていく足音だけが聞こえてくる。
「剣心・・私ちょっと行って来る。」
と蒼紫に会釈をして立ち上がった薫は操を追って出て行った。
剣心は薫の出て行った方を目で追いつつ、
「そういう事でござったか。蒼紫は操殿と一緒になるものだと思っていたでござるから最初は驚いたでござるよ。しかし事の真相が分かって納得いったでござる。これで操殿もひと安心でござるな。」
と言った。
蒼紫は剣心の言葉を黙って聞いていたが勝手に操と一緒になると思われていたことが心にもやっときて・・
そしてボソッと、
「俺が武尊を好く理由など緋村が神谷薫を好く理由と左程変わらんと思うが。」
と切り返したのだった。
「おろ。」
直球で切り込まれて剣心は焦るがその焦りを誤魔化すように一つ咳払いをし、
「ところで、でござるが、以前武尊が海軍少尉について行く前に武尊と少し話したのでござるが・・」
「武尊の問いには答えられたか?」
「ああ、少しは答えられたと思うでござる。」
「そうか。」
それならばあの時神谷道場に寄って良かったと蒼紫は思った。
だが剣心の話は続いた。
「拙者は武尊が女と知った時、武尊は十六夜丸ではないと確信したのでござるが武尊と話をしたその時、武尊は自分が十六夜丸と言ったでござる。拙者、それだけはどうしてもよく分からないでござる。蒼紫は何か知っているでござるか?」
剣心の言葉に蒼紫は少し考え、
「・・これは独り言だ。他言無用。」
と断わりを入れ、
「信じるか信じないかは勝手だが、武尊は十六夜丸だ・・いや、十六夜丸は武尊だ。だが、緋村、お前のように別名を抜刀斉といった類ではない。武尊はある呪術によってのみ十六夜丸となることができる・・しかしその間武尊には記憶がない。十六夜丸になった時に人を殺したことを知った時、しかも己の手で人の死を楽しむように殺したと、そう知って同じ人斬りと異名をとったお前に何かを聞きたかったのではないか。」
そうだったのかと剣心は驚いた。
そう仮定すると武尊の初日の言葉も理解できると剣心は思った。
だがそんな呪術が存在するなど・・
と剣心が思っているのを見透かすように、
「そんなことが現実に起こるなど、この俺でさえ最初は到底信じられぬことだと思っていた」
と蒼紫が言った。
「だが、大丈夫だ。・・もうその呪術が行われることは二度と・・ない。」
と蒼紫は外法は滅したのだと断ち切るように言ったのだった。