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277.生きている幸せ
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「・・・。」
意識を取り戻した武尊は耳元でとても苦しそうな嗚咽が微かに聞こえてくることに気が付いた。
その声には聞き覚えがある・・。
胸が締め付けられるほど苦しい・・。
そして物理的に苦しい・・。
比古は横たわった武尊の上半身をぎゅううっと抱きかかえ顔を押し付けて武尊の死を悲しんでいたのだった。
トントントン!と武尊はその背を叩いた。
はっとした比古が武尊の顔をのぞきこんだ。
目を合わせた二人は数秒見つめ合っていたが武尊が比古の頭を引き寄せ比古の瞼にそっとキスをした。
右目に左目・・
薄っすら塩味のするその瞼。
比古は武尊のするがままにされている。
二か所のキスが終わると武尊は再び比古の目を見つめた。
「・・戻って来たよ比古さん。」
「嗚呼。」
「・・話したいことがたくさんあるの。」
「嗚呼。」
「ただいま、比古さん・・。」
武尊はそう比古に伝えると会いたかった、ずっと会いたかった人をぎゅうっと抱きしめ、比古の匂いを鼻腔いっぱいに吸い込んだ。
比古は確かに自分が殺したはずの武尊が息を吹き返して動くなど有り得ない・・でなければ夢か幻か?とも思ったが、自分の疑問よりも先に腕が武尊をかき抱いた。
「馬鹿野郎、心配させやがって・・。」
「ごめん・・。」
「勝手に逝くんじゃねぇ。」
「うん、、ごめん、、。」
「後できっちり説明してもらうからな。」
「うん・・。」
「・・・おかえり、武尊。」
再び抱きしめられた比古の腕の中で武尊は満点の夜空を見上げた。
どことなく落ちてきた小さな雪の欠片が武尊の目じりに落ちた。
(生きてる・・私・・生きてるんだ・・嬉しい、、)
凍てつく夜空に満天の星。
シンとした夜の森
。
その中に抱きしめ合う血の通った命が二つ。
武尊は今ここに生きている運命に全力で感謝をしたのだった。
2023.1.21