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277.生きている幸せ
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遥か古の頃、十六夜丸がまだ神だった頃、十六夜丸にとって、厩戸皇子は初めて自分を見て話しかけてきた人間だった。
何度も話を交わすうちに厩戸皇子は十六夜丸が心を許せる唯一の存在になっていた。
ただ、神であるが故、まだ神として若かった十六夜丸の胸の内に湧いた小さな感情がその時は何なのか分からなかった。
・・相手を慕った、離れることなど考えられないくらいに。
・・相手を乞うた、狂おしい程に落ちたのは恋だった。
・・相手が男であろうが関係ない。
ただ、永遠に共に有りたいと思った。
ただそう願っただけだった。
厩戸皇子の死が自然の摂理に沿ったものであるなら十六夜丸もその死を受け入れることができたのだろうが、その原因が妻の嫉妬による呪詛だった。
大切な人を殺されたという悲しみと怒りが神でありながらその手で人を殺めた。
その罰として神としての地位を奪われ、呪詛の手先として人間に使役され続けるうちに人の世の繁栄を祈っていた頃とは心も姿も変わり果ててしまった。
そんな自分の姿を見てくれるなと十六夜丸は早くこの場から早く去りたかった。
反面、唯一の願いはいつか転生してくる厩戸皇子に逢う事だったのに、
その胸は会えた嬉しさではちきれそうなのに、
神とは間違っても言えない恐ろしい悪鬼と化した自分を十六夜丸は恥じてすぐさま姿を消したかった。
その十六夜丸の必死の力が遂に武尊の身体から抜け出ることに成功した。
「あっ!」
ずるりと抜け出た十六夜丸を掴もうと手を伸ばすがその手は空を切った。
体勢を崩し、そのまま前のめりに転びそうになるのを誰かが武尊の手を掴んで引き起こした。
「もう大丈夫です。」
凛と答えたその声の主を武尊が見上げると厩戸皇子が静かに頷いた。
そして武尊が厩戸皇子を見た時、皇子のもう一方の手は十六夜丸の手首を掴んでいた。
皇子は武尊の手を放すと十六夜丸の方へ向いた。
十六夜丸は厩戸皇子に背を向けたままだった。
そんな十六夜丸に厩戸皇子は問うた。
「私は貴方にずっとお会いしたかった。貴方は違うのですか。」
十六夜丸は沈黙した。
が、その沈黙の後にこちらを向かずにこう答えた。
「俺にはもうお前と話す資格などない・・お前に触れる資格もない。この穢れた手を掴むな。」
十六夜丸はグッと手を引くが皇子はその手を放さない。
「・・確かに貴方は多くの罪を犯しました。だがもとはと言えば私に原因がある。貴方に贈り物をする事に浮かれて妻にちゃんと説明をしなかったが故に招いた事。私が貴方の全てを奪ったのだ。悪いのは私だ。私が貴方の罪を負って地獄へ落ちよう。」
皇子の言葉に焦った十六夜丸が振り向いた。
「馬鹿な!何故お前がっ・・多くの人間の命を奪ったのは俺だ!この穢れた俺の手だ!」
その顔を見た皇子は微笑んで言った。
「ほら・・貴方は何も変わっていない・・。」
皇子は空いている片方の手で十六夜丸の頬に軽く触れた。
「長い年月を経た今もこうして私を心配してくれる、貴方の心は何も変わってはいない。貴方の目の色が何色に染まろうとも私にとって貴方の存在は変わらない。」
十六夜丸はもはや顔を背けなかったが目を伏せた。
『穢れ』となった自分が魂まで輝く厩戸皇子にどう向き合っていいのか分からないからだ。
「十六夜雷大神、さあ、私と一緒に参りましょう。」
厩戸皇子の優しい声が静かに響く。
「行けぬ・・。」
十六夜丸はそう呟いて頭を垂れた。
やはり自分は行けないというように。
すると武尊が、
「十六夜丸!」
と叫んだ。
「一緒に行きなよ!行きたかったんでしょ!ずっと会いたかったんでしょ!」
「お前に何が分かる!」
武尊の言葉に本当の気持ちを見透かされそうで十六夜丸は否定の言葉で食って掛かった。
だが武尊も引かない。
「分かるよ!そんな顔をされたら誰でも分かる!それに・・。」
と、武尊は息を大きく息を吸い込んで言葉に力を込めて一気に言った。
「自分の心に嘘をつくな!一番大事な人の手を振り払ってまた独りぼっち?それでいいの?それが貴方の願いなの?違うでしょ?」
武尊は十六夜丸に自分の心を訴えた。
そして言葉を続けた。
「貴方のしたことは確かに酷い事だと思う。でも・・私にした事は許す、許すわ!それに酷い事ばかりじゃない、貴方は母成峠で沢山の人を救ってくれた。」
「それは単なる気まぐれだ・・。」
「気まぐれでも、よ。私は・・私だけじゃない、貴方に助けられた人は貴方に感謝している!」
「だが俺はお前の命を奪った。」
「どっちにしろ寿命だったんでしょ?それに比古さんに殺してもらうようにお願いしたのは私の方だし・・。」
武尊は十六夜丸とのやり取りの間十六夜丸の目をずっと見ていた。
武尊は自分の死に対してあ、やっぱり自分は死んだのだと思うと思わずため息が出た。
「それに私は貴方の孤独な旅をここで終わらせたい。あの術は誰も幸せにならない。不幸の連鎖を断ち切り、貴方の本当の望みが叶うならそれでいい。」
それは武尊の嘘一つない本音だった。
何度も話を交わすうちに厩戸皇子は十六夜丸が心を許せる唯一の存在になっていた。
ただ、神であるが故、まだ神として若かった十六夜丸の胸の内に湧いた小さな感情がその時は何なのか分からなかった。
・・相手を慕った、離れることなど考えられないくらいに。
・・相手を乞うた、狂おしい程に落ちたのは恋だった。
・・相手が男であろうが関係ない。
ただ、永遠に共に有りたいと思った。
ただそう願っただけだった。
厩戸皇子の死が自然の摂理に沿ったものであるなら十六夜丸もその死を受け入れることができたのだろうが、その原因が妻の嫉妬による呪詛だった。
大切な人を殺されたという悲しみと怒りが神でありながらその手で人を殺めた。
その罰として神としての地位を奪われ、呪詛の手先として人間に使役され続けるうちに人の世の繁栄を祈っていた頃とは心も姿も変わり果ててしまった。
そんな自分の姿を見てくれるなと十六夜丸は早くこの場から早く去りたかった。
反面、唯一の願いはいつか転生してくる厩戸皇子に逢う事だったのに、
その胸は会えた嬉しさではちきれそうなのに、
神とは間違っても言えない恐ろしい悪鬼と化した自分を十六夜丸は恥じてすぐさま姿を消したかった。
その十六夜丸の必死の力が遂に武尊の身体から抜け出ることに成功した。
「あっ!」
ずるりと抜け出た十六夜丸を掴もうと手を伸ばすがその手は空を切った。
体勢を崩し、そのまま前のめりに転びそうになるのを誰かが武尊の手を掴んで引き起こした。
「もう大丈夫です。」
凛と答えたその声の主を武尊が見上げると厩戸皇子が静かに頷いた。
そして武尊が厩戸皇子を見た時、皇子のもう一方の手は十六夜丸の手首を掴んでいた。
皇子は武尊の手を放すと十六夜丸の方へ向いた。
十六夜丸は厩戸皇子に背を向けたままだった。
そんな十六夜丸に厩戸皇子は問うた。
「私は貴方にずっとお会いしたかった。貴方は違うのですか。」
十六夜丸は沈黙した。
が、その沈黙の後にこちらを向かずにこう答えた。
「俺にはもうお前と話す資格などない・・お前に触れる資格もない。この穢れた手を掴むな。」
十六夜丸はグッと手を引くが皇子はその手を放さない。
「・・確かに貴方は多くの罪を犯しました。だがもとはと言えば私に原因がある。貴方に贈り物をする事に浮かれて妻にちゃんと説明をしなかったが故に招いた事。私が貴方の全てを奪ったのだ。悪いのは私だ。私が貴方の罪を負って地獄へ落ちよう。」
皇子の言葉に焦った十六夜丸が振り向いた。
「馬鹿な!何故お前がっ・・多くの人間の命を奪ったのは俺だ!この穢れた俺の手だ!」
その顔を見た皇子は微笑んで言った。
「ほら・・貴方は何も変わっていない・・。」
皇子は空いている片方の手で十六夜丸の頬に軽く触れた。
「長い年月を経た今もこうして私を心配してくれる、貴方の心は何も変わってはいない。貴方の目の色が何色に染まろうとも私にとって貴方の存在は変わらない。」
十六夜丸はもはや顔を背けなかったが目を伏せた。
『穢れ』となった自分が魂まで輝く厩戸皇子にどう向き合っていいのか分からないからだ。
「十六夜雷大神、さあ、私と一緒に参りましょう。」
厩戸皇子の優しい声が静かに響く。
「行けぬ・・。」
十六夜丸はそう呟いて頭を垂れた。
やはり自分は行けないというように。
すると武尊が、
「十六夜丸!」
と叫んだ。
「一緒に行きなよ!行きたかったんでしょ!ずっと会いたかったんでしょ!」
「お前に何が分かる!」
武尊の言葉に本当の気持ちを見透かされそうで十六夜丸は否定の言葉で食って掛かった。
だが武尊も引かない。
「分かるよ!そんな顔をされたら誰でも分かる!それに・・。」
と、武尊は息を大きく息を吸い込んで言葉に力を込めて一気に言った。
「自分の心に嘘をつくな!一番大事な人の手を振り払ってまた独りぼっち?それでいいの?それが貴方の願いなの?違うでしょ?」
武尊は十六夜丸に自分の心を訴えた。
そして言葉を続けた。
「貴方のしたことは確かに酷い事だと思う。でも・・私にした事は許す、許すわ!それに酷い事ばかりじゃない、貴方は母成峠で沢山の人を救ってくれた。」
「それは単なる気まぐれだ・・。」
「気まぐれでも、よ。私は・・私だけじゃない、貴方に助けられた人は貴方に感謝している!」
「だが俺はお前の命を奪った。」
「どっちにしろ寿命だったんでしょ?それに比古さんに殺してもらうようにお願いしたのは私の方だし・・。」
武尊は十六夜丸とのやり取りの間十六夜丸の目をずっと見ていた。
武尊は自分の死に対してあ、やっぱり自分は死んだのだと思うと思わずため息が出た。
「それに私は貴方の孤独な旅をここで終わらせたい。あの術は誰も幸せにならない。不幸の連鎖を断ち切り、貴方の本当の望みが叶うならそれでいい。」
それは武尊の嘘一つない本音だった。