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272.蒼紫の選択 (蒼紫・夢主・白・黒・翁・お増)
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蒼紫は部屋を出ると翁の部屋へ向かった。
その廊下がとても長く感じた。
「翁。」
「何じゃ蒼紫。」
一人碁をやっていた翁は蒼紫が障子を開け、閉める間に翁はちらりと外の雪を見た。
「なかなか止まんのぅ・・。で、武尊はどうじゃ。」
朝になっても目を覚まさない武尊を傍で蒼紫がずっと見守っていたのは翁も承知のこと。
蒼紫が来たということは武尊が目を覚ましたのではないかと翁はそう思ったのだ。
「嗚呼、今しがた目が覚めた。」
「そうか、よかったの。」
翁はホッとし、先程入れてもらったお茶をずずっと飲んで息をついた。
だが良い知らせのはずなのに蒼紫は障子の内側に黙って立ったままだった。
「どうしたんじゃ蒼紫。」
「翁・・。」
珍しく歯切れが悪く沈黙する蒼紫を翁は不審に思った時、
「・・明日武尊を山に帰す。」
と蒼紫が言った。
「おー、そうかそうか。武尊を山にのぅ・・って、何じゃと!?」
思わず相槌を打った翁だったが事の重大さに気付いて思わず立ち上がった。
「蒼紫、お前自分で何を言っているのか分かっておるのか!」
「・・嗚呼。」
沈んだ声なれど迷いのない返事に翁の声が震えだす。
「何故じゃ蒼紫・・。」
翁は蒼紫の目をじっと見つめたが蒼紫の目には一点の曇りもなかった。
だから尚更その訳を問いたかった。
操には気の毒だが、傍から見ても互いを思いやる良い夫婦にしか見えなかった。
何より蒼紫が人として生き生きとしているのが翁には何より嬉しく喜ばしいと思っていたのに、だ。
それなのに『何故?』。
「翁・・俺は今でも生涯の伴侶は武尊しかいないと思っている。武尊は妻として俺の望みに応えてくれた。ならば俺も夫として妻の望みを叶えてやらなければならぬ。」
「武尊の望みじゃと?」
「嗚呼・・。武尊には守りたい約束事がある。それに元より俺達の夫婦としての生活は『ごっこ』にすぎぬ。」
「は?『ごっこ』じゃと?」
「これは、あの日・・武尊を肉人形にしてもこの手に落とすと決めた日に決めた俺と武尊の約束だ。年末までは夫婦でいようとな。」
「武尊の守りたい約束事とはその事か?それにしてもまだ日はあるじゃろうが。」
「いや、武尊の守りたい約束事とは今年中に比古のところへ帰る、という事だ。」
「そのことは儂も気にはなっておったがお主と夫婦になったことでもう終わった事だと思っておったわい。」
「兎も角・・その『夫婦ごっこ』は終わったということだ。だが遊びではなかった。互いに身も心も捧げた・・なんら本物と変わりなかった。」
蒼紫は腕を組んで武尊のいる方に顔を向けフッと笑った。
「これで良い。十分だ・・。」
「蒼紫や・・。」
「・・何も言うな。もう決めた事だ。」
翁は懐から手ぬぐいを取り出すとぶびびび~っと鼻をかみ目尻を押さえた。
蒼紫の言葉に翁は何も言えなかった。
皆には山から戻った後に説明するから今はまだ言うな、と、そう言って蒼紫は翁の部屋を後にした。
その廊下がとても長く感じた。
「翁。」
「何じゃ蒼紫。」
一人碁をやっていた翁は蒼紫が障子を開け、閉める間に翁はちらりと外の雪を見た。
「なかなか止まんのぅ・・。で、武尊はどうじゃ。」
朝になっても目を覚まさない武尊を傍で蒼紫がずっと見守っていたのは翁も承知のこと。
蒼紫が来たということは武尊が目を覚ましたのではないかと翁はそう思ったのだ。
「嗚呼、今しがた目が覚めた。」
「そうか、よかったの。」
翁はホッとし、先程入れてもらったお茶をずずっと飲んで息をついた。
だが良い知らせのはずなのに蒼紫は障子の内側に黙って立ったままだった。
「どうしたんじゃ蒼紫。」
「翁・・。」
珍しく歯切れが悪く沈黙する蒼紫を翁は不審に思った時、
「・・明日武尊を山に帰す。」
と蒼紫が言った。
「おー、そうかそうか。武尊を山にのぅ・・って、何じゃと!?」
思わず相槌を打った翁だったが事の重大さに気付いて思わず立ち上がった。
「蒼紫、お前自分で何を言っているのか分かっておるのか!」
「・・嗚呼。」
沈んだ声なれど迷いのない返事に翁の声が震えだす。
「何故じゃ蒼紫・・。」
翁は蒼紫の目をじっと見つめたが蒼紫の目には一点の曇りもなかった。
だから尚更その訳を問いたかった。
操には気の毒だが、傍から見ても互いを思いやる良い夫婦にしか見えなかった。
何より蒼紫が人として生き生きとしているのが翁には何より嬉しく喜ばしいと思っていたのに、だ。
それなのに『何故?』。
「翁・・俺は今でも生涯の伴侶は武尊しかいないと思っている。武尊は妻として俺の望みに応えてくれた。ならば俺も夫として妻の望みを叶えてやらなければならぬ。」
「武尊の望みじゃと?」
「嗚呼・・。武尊には守りたい約束事がある。それに元より俺達の夫婦としての生活は『ごっこ』にすぎぬ。」
「は?『ごっこ』じゃと?」
「これは、あの日・・武尊を肉人形にしてもこの手に落とすと決めた日に決めた俺と武尊の約束だ。年末までは夫婦でいようとな。」
「武尊の守りたい約束事とはその事か?それにしてもまだ日はあるじゃろうが。」
「いや、武尊の守りたい約束事とは今年中に比古のところへ帰る、という事だ。」
「そのことは儂も気にはなっておったがお主と夫婦になったことでもう終わった事だと思っておったわい。」
「兎も角・・その『夫婦ごっこ』は終わったということだ。だが遊びではなかった。互いに身も心も捧げた・・なんら本物と変わりなかった。」
蒼紫は腕を組んで武尊のいる方に顔を向けフッと笑った。
「これで良い。十分だ・・。」
「蒼紫や・・。」
「・・何も言うな。もう決めた事だ。」
翁は懐から手ぬぐいを取り出すとぶびびび~っと鼻をかみ目尻を押さえた。
蒼紫の言葉に翁は何も言えなかった。
皆には山から戻った後に説明するから今はまだ言うな、と、そう言って蒼紫は翁の部屋を後にした。