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267.葵屋、夜の前哨戦 (蒼紫・夢主・翁・葵屋の皆)
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「ん・・。」
武尊は小さく呻いて目を覚ました。
(・・今何時だろ・・でもよく眠れたな。やっぱりちゃんとしたお布団は眠り心地がいいのかな・・。)
なんて思うも京都へ戻って来てからも数日連夜、自分に起きた事を振り返るとこうやって気を抜いて目が覚めた事はなかったと武尊は息を大きく吐いた。
とは言え、横になって丸まった姿勢から背中を伸ばすように上を向いて天井を見上げると今置かれた状況が少しづつ思い出される。
(そっか・・ここ、蒼紫の部屋だ・・連れられるまま来ちゃったけど・・。)
自ら蒼紫の心に【夫婦ごっこ】という楔を打ち込んでしまった責任は自分にある、蒼紫の心を自分に繋いだのは自分自身。
(責任は私にある、今なら出来る・・いや、何としてもやり遂げなければ・・一のことも比古さんのことも封印して・・蒼紫だけを見るんだ・・。)
と、武尊が覚悟を再度自分の心に言い聞かせていると障子が静かに開いた。
「・・蒼紫。」
「嗚呼。」
蒼紫が薄暗い部屋に行燈を点けるとほんのりとした明るさが輝く。
「少しは休めたか?」
と、蒼紫は武尊の傍に座ると武尊の頬をそっと撫でた。
「うん、今目が覚めたとこだけどぐっすりだったよ。・・あ・・、蒼紫の手冷たい・・。」
いつもは暖かい手がひんやりとするなんて珍しいと思った気持ちがポロリと口に出た。
「嗚呼、千枚漬けの仕込み具合をみて来たからな。すまん、冷たかっただろう。」
と、蒼紫は引っ込めた。
「ううん、大丈夫。私千枚漬け好きだし。それに蒼紫の手作りだなんてすごいと思うよ。」
武尊が素直に思った事を言うと蒼紫は、
「別にすごいことではない。だがお前に喜んでもらえるのは悪い気はしない。」
と、胸に湧き上がる嬉しさを押さえてふいっと顔を背けた。
そして、
「夕餉を持って来た。食べよう。」
と、言い持って来たお膳を二膳自分と武尊の前に置いた。
「あ、ごめん。すぐ布団たたむね!」
「後でまた敷くからその隅にでも置いておけばいいだろう。」
「う、うん・・。」
後でまた敷くだなんてなんか生々しいと思いつつもありつける美味しい食事に本当に感謝しかないと思う武尊だった。
「頂きます・・。」
武尊はまず暖かい味噌汁に口を付け、そして千枚漬けを口に運んだ。
「ん、美味しい。」
そういう武尊の顔を蒼紫は鋭く観察した。
「美味しいという割には何か今一つ納得していないようだな。」
「!」
美味しいには美味しい。確かに美味しいことには間違いないが強いて言えばと思っていたところをズバリ指摘されたようで武尊はビックリした。
「ど、どうして分かったの!?」
「言わずとも顔を見れば分かる。」
さすが蒼紫鋭いな、と思いつつ武尊は、
「うーん、あのね、あくまでもこれは私の好みだと思うんだけど。」
と前置きして、
「お酢の味が直接的というか・・もっとまろやかさが欲しいなって思うのと味に深みがもう少し欲しいなって思うのと、もうちょっと唐辛子効いてもいいのかなって思うのと・・。」
っと、もごもごしながら蒼紫をちらりと見る。
蒼紫は千枚漬けを食しながら、
「なるほど、一理あるな。」
と、武尊に同意した。
「折角作ってくれてるのにうるさいこと言ってごめん。」
「いや、そう言った率直な意見は大事だ。早速明日改良しよう。」
など話ながら二人は普通に食事を終えた。
「じゃ、私はこれ片付けてくるね。」
と、お膳を二人分持って行こうとすると蒼紫は武尊を制し、
「これは俺が持って行く。皆が風呂を終えた頃だ。冷める前に先に行け。」
「だめだよ、持って来てもらったんだから片付けぐらいは私が・・。」
「いや、今夜ぐらいは俺がやる。」
蒼紫はそう言って御膳を持ちさっさと立ち上がった。
そして、
「それに少しやらなければならないことがあるからな。」
と言い勝手場へ行ってしまったのだ。