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265.夫婦(めおと)ごっこの始まり (蒼紫・夢主・翁・お増・操)
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「ん・・・・」
長かった夜。
様々な仕打ちと行為で武尊の身体は疲れ果てていたのだが何故かふと目が覚めた。
壁の隙間から日の光が白いカーテンの様に幾重にも射す。
焚火の火も小さくなっており、首元から入る冷気に思わず身を震わすと、
「寒いか?」
と、すぐ頭上で声がして肩の着物をかけ直された。
「蒼・・紫?」
少し寝ぼけている武尊が警戒心のないふにゃっとした声で蒼紫の名を呼ぶと、
「嗚呼。」
と少し嬉しそうな声が武尊の傍でしたと共に髪に柔らかい感触が押し当てられた。
それが蒼紫の唇だと分かり、また、昨晩の事の経緯が頭にさっと蘇り、武尊は触れている蒼紫の素肌の感触に恥ずかしさでモゾモゾと身を捩った。
「まだ寝ておけ。」
と、蒼紫は武尊をぎゅっと抱き直す。
「う・・ん・・。」
そうだ、『夫婦ごっこ』中なのだと思い出し何か言葉が出そうなのを飲み込んで武尊はそのまま固まった。
(これからど、どうしよう・・。)
あの場の打開策としてだが思わず提案した『夫婦ごっこ』。
蒼紫のご機嫌はそこそこ元に戻ったみたいだと思うもやはり操の事が気になる武尊だった。
(葵屋へ戻ったら大変だろうな・・戻らないで蒼紫と旅に出るっていうのはどうだろう・・いや、お金ないし・・ということはやっぱり葵屋に戻らないといけないんだろうな・・)
解決出来ない堂々巡りに武尊の意識は再び微睡の中に落ちて行った・・
(で、結局戻って来てしまった!)
今や武尊は蒼紫と葵屋の入り口に立っていた。
蒼紫が何事もなかったかのように中に入ろうとするが武尊の足は自然と躊躇してしまう。
「どうした。」
蒼紫が振り返って武尊を見た。
「う・・うん。」
極まり悪そうに俯く武尊の視界に蒼紫の手が入る。
「大丈夫だ。」
そう言って差し出された蒼紫の手を武尊は自然に取った。
暖かく力強い蒼紫の手に引かれるままに蒼紫について行く。
「あまり俺から離れるな。距離を取ると袖口から縄の痕が見える。」
蒼紫はそう言うと武尊の腰を抱き寄せた。
この距離感で、といわんばかりの距離で蒼紫は武尊を連れて行く。
そして裏庭に続くいつもの垣根の戸を押すと母屋の縁側に操の姿があった。
「蒼紫様!と、武尊さん!」
朝から二人の姿がなく、何処へ行っていたのか、そして心配したのだと操がそう言おうとした時、翁が姿を現した。
「翁。」
操が話しだす前に蒼紫が翁に口を開いた。
「俺と武尊は夫婦(めおと)になった。」
(ええっ!・・いきなり吐露する!!?しかも『ごっこ』という言葉は何処へ行ったの!)
武尊は蒼紫の突拍子もない行動に絶句するが蒼紫は堂々たる態度でそれがまた武尊の気をもむ。
武尊は操の方を心配してみると案の定ショックを受けて体が震えていた。
「嘘・・なんで・・蒼紫様・・。」
操が絞り出すような声で蒼紫に問うと蒼紫は、
「昨晩互いの気持ちを伝えあった結果だ。」
と普通に伝えたがそれは操にとっては冷静に聞くことが出来ない。
武尊は唇を噛みしめる操から気まずく翁の方へ眼をやると翁は何も言わず蒼紫を見ていた。
「少し休む。」
と蒼紫は二人にそう切り出し武尊の手を引いて自室に向かおうとした矢先、操が
「待って!」
と武尊の腕を掴もうとするが蒼紫に阻まれた。
「武尊は疲れている、話があるなら後にしろ。」
と言った。
「・・っ。」
何故、どうしてという目で操が目を見開いて武尊を見つめる視線が武尊を追いかける。
武尊は何か上手い言葉を見つけようと脳をフル回転するが見つからず、武尊の視線もまた操から目が離せなかった。
(操ちゃん、今はごめんっ!)
それだけ目で訴えて武尊は蒼紫に連れられて行った。
二人が縁側の角を曲がり姿が見えなくなると操はガクリを膝から崩れた。
「う・・そ・・。」
そして背後で黙っていた翁に気付き、
「どうして爺やは何も言わないの!」
と責めた。
「操や。蒼紫が誰を娶るかは蒼紫の意志じゃ。蒼紫を、そして土岐君を責めるでない。」
「でも・・。」
納得がいかない、自分が蒼紫様をずっと慕い続けていたことは翁は誰よりも知って・・理解してくれているとばかりに思っていたぶんだけ操は翁に裏切られた気分になった。
「爺やの馬鹿っ!!」
操は立ち上がると振り返らずに蒼紫とは反対側の廊下をダダダダと去って行った。
「やれやれ・・こりゃ伝令を出してやはり正解じゃったかの。」
と、大きくため息をついた。
2019.11.3
長かった夜。
様々な仕打ちと行為で武尊の身体は疲れ果てていたのだが何故かふと目が覚めた。
壁の隙間から日の光が白いカーテンの様に幾重にも射す。
焚火の火も小さくなっており、首元から入る冷気に思わず身を震わすと、
「寒いか?」
と、すぐ頭上で声がして肩の着物をかけ直された。
「蒼・・紫?」
少し寝ぼけている武尊が警戒心のないふにゃっとした声で蒼紫の名を呼ぶと、
「嗚呼。」
と少し嬉しそうな声が武尊の傍でしたと共に髪に柔らかい感触が押し当てられた。
それが蒼紫の唇だと分かり、また、昨晩の事の経緯が頭にさっと蘇り、武尊は触れている蒼紫の素肌の感触に恥ずかしさでモゾモゾと身を捩った。
「まだ寝ておけ。」
と、蒼紫は武尊をぎゅっと抱き直す。
「う・・ん・・。」
そうだ、『夫婦ごっこ』中なのだと思い出し何か言葉が出そうなのを飲み込んで武尊はそのまま固まった。
(これからど、どうしよう・・。)
あの場の打開策としてだが思わず提案した『夫婦ごっこ』。
蒼紫のご機嫌はそこそこ元に戻ったみたいだと思うもやはり操の事が気になる武尊だった。
(葵屋へ戻ったら大変だろうな・・戻らないで蒼紫と旅に出るっていうのはどうだろう・・いや、お金ないし・・ということはやっぱり葵屋に戻らないといけないんだろうな・・)
解決出来ない堂々巡りに武尊の意識は再び微睡の中に落ちて行った・・
(で、結局戻って来てしまった!)
今や武尊は蒼紫と葵屋の入り口に立っていた。
蒼紫が何事もなかったかのように中に入ろうとするが武尊の足は自然と躊躇してしまう。
「どうした。」
蒼紫が振り返って武尊を見た。
「う・・うん。」
極まり悪そうに俯く武尊の視界に蒼紫の手が入る。
「大丈夫だ。」
そう言って差し出された蒼紫の手を武尊は自然に取った。
暖かく力強い蒼紫の手に引かれるままに蒼紫について行く。
「あまり俺から離れるな。距離を取ると袖口から縄の痕が見える。」
蒼紫はそう言うと武尊の腰を抱き寄せた。
この距離感で、といわんばかりの距離で蒼紫は武尊を連れて行く。
そして裏庭に続くいつもの垣根の戸を押すと母屋の縁側に操の姿があった。
「蒼紫様!と、武尊さん!」
朝から二人の姿がなく、何処へ行っていたのか、そして心配したのだと操がそう言おうとした時、翁が姿を現した。
「翁。」
操が話しだす前に蒼紫が翁に口を開いた。
「俺と武尊は夫婦(めおと)になった。」
(ええっ!・・いきなり吐露する!!?しかも『ごっこ』という言葉は何処へ行ったの!)
武尊は蒼紫の突拍子もない行動に絶句するが蒼紫は堂々たる態度でそれがまた武尊の気をもむ。
武尊は操の方を心配してみると案の定ショックを受けて体が震えていた。
「嘘・・なんで・・蒼紫様・・。」
操が絞り出すような声で蒼紫に問うと蒼紫は、
「昨晩互いの気持ちを伝えあった結果だ。」
と普通に伝えたがそれは操にとっては冷静に聞くことが出来ない。
武尊は唇を噛みしめる操から気まずく翁の方へ眼をやると翁は何も言わず蒼紫を見ていた。
「少し休む。」
と蒼紫は二人にそう切り出し武尊の手を引いて自室に向かおうとした矢先、操が
「待って!」
と武尊の腕を掴もうとするが蒼紫に阻まれた。
「武尊は疲れている、話があるなら後にしろ。」
と言った。
「・・っ。」
何故、どうしてという目で操が目を見開いて武尊を見つめる視線が武尊を追いかける。
武尊は何か上手い言葉を見つけようと脳をフル回転するが見つからず、武尊の視線もまた操から目が離せなかった。
(操ちゃん、今はごめんっ!)
それだけ目で訴えて武尊は蒼紫に連れられて行った。
二人が縁側の角を曲がり姿が見えなくなると操はガクリを膝から崩れた。
「う・・そ・・。」
そして背後で黙っていた翁に気付き、
「どうして爺やは何も言わないの!」
と責めた。
「操や。蒼紫が誰を娶るかは蒼紫の意志じゃ。蒼紫を、そして土岐君を責めるでない。」
「でも・・。」
納得がいかない、自分が蒼紫様をずっと慕い続けていたことは翁は誰よりも知って・・理解してくれているとばかりに思っていたぶんだけ操は翁に裏切られた気分になった。
「爺やの馬鹿っ!!」
操は立ち上がると振り返らずに蒼紫とは反対側の廊下をダダダダと去って行った。
「やれやれ・・こりゃ伝令を出してやはり正解じゃったかの。」
と、大きくため息をついた。
2019.11.3