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224.陳皮の香り (夢主・蒼紫・操・翁)
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外は雨。
翁は縁側に近い部屋で一人碁を打っていた。
「翁。」
「おお、蒼紫、戻ったか・・、何じゃその濡れ様は。」
「少し濡れただけだ。それよりも翁の寝巻を貸してくれ。」
翁は片側だけ濡れた蒼紫、それも戻って来たなり突然不可解な申し出に驚いた。
すると蒼紫は、
「武尊が戻ってきたが酷い濡れようで風呂に入れた。武尊の着替えが欲しい。」
と言うではないか。
「む、うむ、、分かった。」
翁は直ぐに立ち上がり、箪笥から寝巻を取り出した。
「え、武尊さん帰ってきたの!?」
操も武尊の事を聞いて驚いた。
蒼紫が再び東京へ武尊を迎えに行ったと聞いた時も驚いたが、結局一緒に帰って来たわけではなかった。
正直、操は武尊の事はもう葵屋にはもどって来ないと考えていた。
「ほら、蒼紫様が迎えにいかなくても自力で京都に帰ってこれたじゃない。」
少し腹ただしげに言った操の言葉に蒼紫は耳を傾けることなく、自分の部屋へと向かった。
「蒼紫様!」
「操。」
操はまた蒼紫の後を追いかけようとしたが翁がすぐに呼び止めた。
「爺や!」
「待ちなさい操、何か聞きたいことがあるのであれば後でゆっくり聞けばよいではないか。」
「でも・・。」
「操、操が土岐君の立場だったらどうする。せっかくこの葵屋を訪ねて来たんじゃ、まずは落ち着きなさい。」
操はまだ納得いかない顔をしたが、仕方なく翁の部屋へ入り翁の横に座った。
翁は操が座るといったん碁盤に向かい、パチンと碁石を置いた。
「ねぇ爺や・・。」
「何じゃ。」
操は元気なく肩をすぼめると、
「蒼紫様・・最近何か変。ううん、東京から帰って来てからなんか御様子が変。」
「ん?そうかのぅ、儂にはよく分からんが少なくとも・・緋村君が東京へ帰った直後の事を思えば蒼紫は随分と元気になったと思うぞ。」
翁は言葉を選びながら話を濁した。
「そりゃ、私もその時に比べれば蒼紫様は確かにお元気になられたって思うけど・・。以前の蒼紫様ならいくら優しくても人に直接御自分で何かをするってこと・・なかった気がする。」
翁は操の呟きに、
(フム、よく見ておるわ伊達に蒼紫の後をついて回っておったわけではないな。)
と頷きながらも、
「そりゃ、今は般若も式尉もおらんからの。しかし良いではないか。これからの世はいつまでも【隠密御庭番衆の御頭】ではいられんのじゃ、葵屋のためにも多少なりとも世話好きになってもらわんと困る。」
と言うと操は腕を組みうなずいて、
「そうよね、蒼紫様は確かに完璧だけど真面目すぎるから。作り笑いでもいいからせめて緋村の半分ぐらいは愛想良くないとお客様がねぇ~。」
と、将来葵屋の若旦那となった蒼紫とお客とのやり取りを想像してため息をついた。
そしてその光景の中、蒼紫の後ろに若女将としての自分を見つけ目を輝かせた。
翁はそのギラついた操の眼に一瞬ギョっとなった。
それはもちろん操の考えた事が分かったからだったが、ここは黙認することにした。
翁は咳払いをして、
「それよりこの茶をさげてくれんか。客が帰ってからずっとそこにあるんじゃ。今はお近もお増もおらんからの。」
とお願いすると操は、
「爺やがさげればいいじゃない。だってずっと囲碁してるんだし、一番暇なのは爺やじゃない。」
と言い立ち上がると、
「私、蒼紫様のところに行ってこよ~っと!」
と言うが早いがタタタタタと行ってしまった。
「操!」
と翁が呼び止めようとした時はすでに遅し。
聞く耳持たずとばかり操はすでに遠くだった。
2016.5.22
翁は縁側に近い部屋で一人碁を打っていた。
「翁。」
「おお、蒼紫、戻ったか・・、何じゃその濡れ様は。」
「少し濡れただけだ。それよりも翁の寝巻を貸してくれ。」
翁は片側だけ濡れた蒼紫、それも戻って来たなり突然不可解な申し出に驚いた。
すると蒼紫は、
「武尊が戻ってきたが酷い濡れようで風呂に入れた。武尊の着替えが欲しい。」
と言うではないか。
「む、うむ、、分かった。」
翁は直ぐに立ち上がり、箪笥から寝巻を取り出した。
「え、武尊さん帰ってきたの!?」
操も武尊の事を聞いて驚いた。
蒼紫が再び東京へ武尊を迎えに行ったと聞いた時も驚いたが、結局一緒に帰って来たわけではなかった。
正直、操は武尊の事はもう葵屋にはもどって来ないと考えていた。
「ほら、蒼紫様が迎えにいかなくても自力で京都に帰ってこれたじゃない。」
少し腹ただしげに言った操の言葉に蒼紫は耳を傾けることなく、自分の部屋へと向かった。
「蒼紫様!」
「操。」
操はまた蒼紫の後を追いかけようとしたが翁がすぐに呼び止めた。
「爺や!」
「待ちなさい操、何か聞きたいことがあるのであれば後でゆっくり聞けばよいではないか。」
「でも・・。」
「操、操が土岐君の立場だったらどうする。せっかくこの葵屋を訪ねて来たんじゃ、まずは落ち着きなさい。」
操はまだ納得いかない顔をしたが、仕方なく翁の部屋へ入り翁の横に座った。
翁は操が座るといったん碁盤に向かい、パチンと碁石を置いた。
「ねぇ爺や・・。」
「何じゃ。」
操は元気なく肩をすぼめると、
「蒼紫様・・最近何か変。ううん、東京から帰って来てからなんか御様子が変。」
「ん?そうかのぅ、儂にはよく分からんが少なくとも・・緋村君が東京へ帰った直後の事を思えば蒼紫は随分と元気になったと思うぞ。」
翁は言葉を選びながら話を濁した。
「そりゃ、私もその時に比べれば蒼紫様は確かにお元気になられたって思うけど・・。以前の蒼紫様ならいくら優しくても人に直接御自分で何かをするってこと・・なかった気がする。」
翁は操の呟きに、
(フム、よく見ておるわ伊達に蒼紫の後をついて回っておったわけではないな。)
と頷きながらも、
「そりゃ、今は般若も式尉もおらんからの。しかし良いではないか。これからの世はいつまでも【隠密御庭番衆の御頭】ではいられんのじゃ、葵屋のためにも多少なりとも世話好きになってもらわんと困る。」
と言うと操は腕を組みうなずいて、
「そうよね、蒼紫様は確かに完璧だけど真面目すぎるから。作り笑いでもいいからせめて緋村の半分ぐらいは愛想良くないとお客様がねぇ~。」
と、将来葵屋の若旦那となった蒼紫とお客とのやり取りを想像してため息をついた。
そしてその光景の中、蒼紫の後ろに若女将としての自分を見つけ目を輝かせた。
翁はそのギラついた操の眼に一瞬ギョっとなった。
それはもちろん操の考えた事が分かったからだったが、ここは黙認することにした。
翁は咳払いをして、
「それよりこの茶をさげてくれんか。客が帰ってからずっとそこにあるんじゃ。今はお近もお増もおらんからの。」
とお願いすると操は、
「爺やがさげればいいじゃない。だってずっと囲碁してるんだし、一番暇なのは爺やじゃない。」
と言い立ち上がると、
「私、蒼紫様のところに行ってこよ~っと!」
と言うが早いがタタタタタと行ってしまった。
「操!」
と翁が呼び止めようとした時はすでに遅し。
聞く耳持たずとばかり操はすでに遠くだった。
2016.5.22