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222.氷雨 (お近、操、お増、翁、蒼紫、夢主)
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昼過ぎから徐々に厚くなった雲は、夕方近くになり雨を落とし始めた。
(降り始めたか・・。)
蒼紫はサーっという雨音に協調するように座禅を続けていたが頃合いを見て立ち上がった。
「今日もご苦労さんじゃったの。」
「有難うございました。」
蒼紫は帰りがけに会った和尚に会釈をすると帰路についた。
みぞれが混じりそうな冷たい雨。
蒼紫は時折傘から道端の雨に打たれ揺れる紅葉を視界に入れながら一文字に歩いた。
蒼紫の心は晴れていない。
ただ座禅で鎮静化しているだけなのは本人も分かっていた。
もちろん武尊の事以外にも蒼紫にはまとめるべき思案事項があったのだが、気を緩めるとすぐ武尊の事に後戻りしてしまうのだ。
(明日も来よう。)
こうでもしていないと胸の中に自然と湧き起る恋慕の炎を押さえられない気がするのだ。
(何をしている武尊・・早く来い・・。)
蒼紫はすれ違う傘の花の中に武尊がいないかと鋭く探した。
だがその中に武尊の姿はなかった。
葵屋の正面の道路に近づいた時、すでに暗くなった道の中央に蒼紫の視界に何か立っていると感知した瞬間、蒼紫はそれが武尊だと認識した。
(武尊!)
蒼紫は駆けだした。
「武尊!」
雨の所為か、蒼紫の声は武尊に聞こえてなかったようで武尊は葵屋の方を見たまま立ったままだった。
蒼紫はすぐさま傘を武尊の上にかざしてやった。
武尊はそれでようやく傘を自分にさしてくれた人の方を向いた。
「蒼・・紫・・。」
武尊はその人が蒼紫だと分かりびっくりして目を見開いた。
まさか、蒼紫が外出しているとは思っていなかったからだった。
この冷たい雨の中ずぶ濡れで、髪からも水が滴り落ちている武尊の唇は真っ青で、目は今にも泣きそうだった。
けれどもすぐに、ケロリとした顔を顔に戻って、
「あ、、荷物取りに来たの。着替えが入っているから。」
と作り笑顔をした。
「馬鹿な事を言うな!」
こんな冷たい雨に打たれて笑う武尊に蒼紫は苛立った。
「来い・・・!」
そう言って掴んだ武尊の手首は氷のように冷たく蒼紫は眉間にしわを寄せた。
「ちょっと蒼紫!何するの!」
武尊がそういうのも無視し、蒼紫は黙って武尊の手首を引きながら葵屋へ戻って行った。
2016.5.5
(降り始めたか・・。)
蒼紫はサーっという雨音に協調するように座禅を続けていたが頃合いを見て立ち上がった。
「今日もご苦労さんじゃったの。」
「有難うございました。」
蒼紫は帰りがけに会った和尚に会釈をすると帰路についた。
みぞれが混じりそうな冷たい雨。
蒼紫は時折傘から道端の雨に打たれ揺れる紅葉を視界に入れながら一文字に歩いた。
蒼紫の心は晴れていない。
ただ座禅で鎮静化しているだけなのは本人も分かっていた。
もちろん武尊の事以外にも蒼紫にはまとめるべき思案事項があったのだが、気を緩めるとすぐ武尊の事に後戻りしてしまうのだ。
(明日も来よう。)
こうでもしていないと胸の中に自然と湧き起る恋慕の炎を押さえられない気がするのだ。
(何をしている武尊・・早く来い・・。)
蒼紫はすれ違う傘の花の中に武尊がいないかと鋭く探した。
だがその中に武尊の姿はなかった。
葵屋の正面の道路に近づいた時、すでに暗くなった道の中央に蒼紫の視界に何か立っていると感知した瞬間、蒼紫はそれが武尊だと認識した。
(武尊!)
蒼紫は駆けだした。
「武尊!」
雨の所為か、蒼紫の声は武尊に聞こえてなかったようで武尊は葵屋の方を見たまま立ったままだった。
蒼紫はすぐさま傘を武尊の上にかざしてやった。
武尊はそれでようやく傘を自分にさしてくれた人の方を向いた。
「蒼・・紫・・。」
武尊はその人が蒼紫だと分かりびっくりして目を見開いた。
まさか、蒼紫が外出しているとは思っていなかったからだった。
この冷たい雨の中ずぶ濡れで、髪からも水が滴り落ちている武尊の唇は真っ青で、目は今にも泣きそうだった。
けれどもすぐに、ケロリとした顔を顔に戻って、
「あ、、荷物取りに来たの。着替えが入っているから。」
と作り笑顔をした。
「馬鹿な事を言うな!」
こんな冷たい雨に打たれて笑う武尊に蒼紫は苛立った。
「来い・・・!」
そう言って掴んだ武尊の手首は氷のように冷たく蒼紫は眉間にしわを寄せた。
「ちょっと蒼紫!何するの!」
武尊がそういうのも無視し、蒼紫は黙って武尊の手首を引きながら葵屋へ戻って行った。
2016.5.5