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220.悩める翁の妙案 (夢主・操・翁・お近・お増・白・黒・蒼紫)
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「すまんが誰か茶でも・・。」
と翁が静かに頭を下げ、勝手場入口の暖簾を手で分けたところ、
「翁、どいて!」
と、お近の一喝があった。
「おおっ!?」
思わず目を皿にして一歩翁が退くと御膳を七つも重ねて持ったお近とお増が急ぎばやに勝手場を出てきた。
通り道をあけ二人を見送れば御膳を揺れなしでスススと運ぶ見事な仕草に翁はうんうんと頷いた。
改めて翁が勝手場へ入ると、
「翁、お茶ぐらい今は自分で入れて下さいよ。我々も今手が離せませんから。」
と白が翁を冗談ぽくたしなめるように言った。
「お嬢は蒼紫様のところですか。」
と黒が訪ねた。
「そりゃ、もちろん。」
と、翁はとコポコポとお茶を湯呑に注いだ。
「これでやっと翁も隠居準備が出来ますね。」
これで葵屋は安泰だといわんばかりに黒が言った。
「何を言うとんじゃ。そんなことじゃからお前は状況判断が甘いと言われるんじゃ。」
翁に痛いところを突かれ黒はうっ、唸った。
「と言ってもこればかりはお前達にもどうにもならん。なんせこれは蒼紫自身のことじゃからのぅ。」
翁は勝手場の隅にある小上がりに腰をかけ、ずずーっとお茶をすするとまたため息をついた。
「御頭は立ち直ったんじゃないんですかい。」
「むろん立ち直っとるぞ、隠密御庭番衆【御頭】としてはな。じゃが【四乃森蒼紫】という一人の男としては揺れておる。」
翁の言葉に白と黒は顔を見合わせた。
年下と言えどもあの完璧な御頭が立ち直っても揺れているなんて二人には想像がつかなかったのである。
翁はぽんっと手を打ち、
「そうじゃ、この先葵屋を安泰にさせる良い方法を思いついた!黒、」
「はっ。」
「お前が操と夫婦(めおと)になり葵屋を継げばよい。ここは年長者のお前が一番ふさわしいじゃろ!」
「えーーっ!」
ダン!という大きな音とともに黒は握っていた菜包丁で手を切りそうになった。
「翁!冗談もほどほどにしてくださいよ!」
黒は顔を真っ赤にして言った。
「なんじゃ、先代御頭の孫娘の操では不服か。」
翁は意地悪そうに片方の眉毛をあげて黒を見た。
「おお、そうか。黒は操を気に入らんか。では、白。お前にやるぞ。」
「ぉっとおっ!」
そんな話を自分に振られなくてよかったと安心していた白は今度は自分に振られて持っていた大皿を落としそうになった。
「お前なら細かに気も回るし女子(おなご)にも優しい。操にはお前のような男が似おうとるかもしれん。」
「ちょっと待って下さい!」
白は慌てて答えた。
「なんじゃ、白も先代御頭の孫娘はもらえぬというのか。そうか、そうか、、先代が聞いたらなんと申すかのぅ。それに実質操の親代わりの儂の言うことが聞けぬと申すか。」
「いや、、。」
返答に困って白は下を向いてしまった。
翁は白から黒に顔を向けると黒も翁と目を合わさないように俯いた。
「なんじゃ、二人ともだらしないのぅ。女子一人娶ることもできんのか。」
「・・翁、そういう事じゃなくて俺らは操の気持ちを考えると・・。」
「フン、今までお庭番衆の中で好いた相手と添え遂げられるような我が通るのは御頭以外誰もおらんかったわい。」
「それはそうですが・・。」
と、白も黒も返答に困り押し黙ってしまった。
「まあいい。じゃが今の話はあながち冗談ではないからの、お前達も心の隅に止めとくんじゃな。」
と、翁は湯呑を置いて戻っていった。
と翁が静かに頭を下げ、勝手場入口の暖簾を手で分けたところ、
「翁、どいて!」
と、お近の一喝があった。
「おおっ!?」
思わず目を皿にして一歩翁が退くと御膳を七つも重ねて持ったお近とお増が急ぎばやに勝手場を出てきた。
通り道をあけ二人を見送れば御膳を揺れなしでスススと運ぶ見事な仕草に翁はうんうんと頷いた。
改めて翁が勝手場へ入ると、
「翁、お茶ぐらい今は自分で入れて下さいよ。我々も今手が離せませんから。」
と白が翁を冗談ぽくたしなめるように言った。
「お嬢は蒼紫様のところですか。」
と黒が訪ねた。
「そりゃ、もちろん。」
と、翁はとコポコポとお茶を湯呑に注いだ。
「これでやっと翁も隠居準備が出来ますね。」
これで葵屋は安泰だといわんばかりに黒が言った。
「何を言うとんじゃ。そんなことじゃからお前は状況判断が甘いと言われるんじゃ。」
翁に痛いところを突かれ黒はうっ、唸った。
「と言ってもこればかりはお前達にもどうにもならん。なんせこれは蒼紫自身のことじゃからのぅ。」
翁は勝手場の隅にある小上がりに腰をかけ、ずずーっとお茶をすするとまたため息をついた。
「御頭は立ち直ったんじゃないんですかい。」
「むろん立ち直っとるぞ、隠密御庭番衆【御頭】としてはな。じゃが【四乃森蒼紫】という一人の男としては揺れておる。」
翁の言葉に白と黒は顔を見合わせた。
年下と言えどもあの完璧な御頭が立ち直っても揺れているなんて二人には想像がつかなかったのである。
翁はぽんっと手を打ち、
「そうじゃ、この先葵屋を安泰にさせる良い方法を思いついた!黒、」
「はっ。」
「お前が操と夫婦(めおと)になり葵屋を継げばよい。ここは年長者のお前が一番ふさわしいじゃろ!」
「えーーっ!」
ダン!という大きな音とともに黒は握っていた菜包丁で手を切りそうになった。
「翁!冗談もほどほどにしてくださいよ!」
黒は顔を真っ赤にして言った。
「なんじゃ、先代御頭の孫娘の操では不服か。」
翁は意地悪そうに片方の眉毛をあげて黒を見た。
「おお、そうか。黒は操を気に入らんか。では、白。お前にやるぞ。」
「ぉっとおっ!」
そんな話を自分に振られなくてよかったと安心していた白は今度は自分に振られて持っていた大皿を落としそうになった。
「お前なら細かに気も回るし女子(おなご)にも優しい。操にはお前のような男が似おうとるかもしれん。」
「ちょっと待って下さい!」
白は慌てて答えた。
「なんじゃ、白も先代御頭の孫娘はもらえぬというのか。そうか、そうか、、先代が聞いたらなんと申すかのぅ。それに実質操の親代わりの儂の言うことが聞けぬと申すか。」
「いや、、。」
返答に困って白は下を向いてしまった。
翁は白から黒に顔を向けると黒も翁と目を合わさないように俯いた。
「なんじゃ、二人ともだらしないのぅ。女子一人娶ることもできんのか。」
「・・翁、そういう事じゃなくて俺らは操の気持ちを考えると・・。」
「フン、今までお庭番衆の中で好いた相手と添え遂げられるような我が通るのは御頭以外誰もおらんかったわい。」
「それはそうですが・・。」
と、白も黒も返答に困り押し黙ってしまった。
「まあいい。じゃが今の話はあながち冗談ではないからの、お前達も心の隅に止めとくんじゃな。」
と、翁は湯呑を置いて戻っていった。