暦はすでに十一月中旬になろうとしている。


日はあっという間に西の空に姿を隠し空はオレンジと青のグラデーションを描く。


途中の駅の周り以外は畑さえない自然の山や平地の景色を見ながら武尊は軽くため息をついた。



「京都・・か。」



京都の町といえば、ついこの間過ごした時のことよりも幕末の頃の京都が目に浮かぶ。


屋台蕎麦屋を手伝ったあの頃の日々。



「あの時はあんな生活だったけど・・楽しかった・・。」



もっと深く思い出したいのか、思い出したくないのか、武尊はボーっとガラスに映る自分を見ていたが、目を閉じてあまり考えないようにしているとガタンガタンというリズミカルな揺れにいつの間にか眠りに落ちていった。







しばらくすると頬に何か伝う濡れた感触に武尊は雨漏りかと思いその水を拭うとぬるりとした独特の触感と手についたそのモノの臭いに武尊はハッとした。



（鉄の臭い・・・！）



驚いて自分の手を見ればはらわたに手を突っ込んだように指先が血まみれになっていた。



「！！」



ビクっと武尊は身を震わせて身体を仰け反らせた瞬間汽車はブレーキをかけ、今までの加速が重力となって武尊の身体を座席に押し付けた。



「・・夢、か。。」



背中に嫌な汗をかいた武尊を乗せた汽車は京都へ着いたのだった。


すでに外は暗く、駅の周りにはちらほらと赤ちょうちん。



高級料亭・兼旅籠の葵屋へ行けば綺麗なお布団に美味しい食事があるのだろうが・・。



「ううっ、京都寒っ！」



武尊は京都の風の冷たさに一言呟くと夜の街へ消えて行った。