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219.うさぎ (張・夢主・斎藤)
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「武尊のお陰で仕事が早う片付いたわ。」
「そう?私は何もしてないけど。」
武尊はただ見てるだけだったが張にしてみれば武尊が見ているというだけで自然に張り切れたわけで、
「せや、昼はわいのおごりで【ライスカレー】でも食わへんか。美味いで~。」
「カレーライス!?本当!?食べる食べるー!」
まさか文明開化の波がここまできたとは、と武尊は明治のカレーライスにピピピとアンテナが立った。
「ちゃうちゃう、ライスカレーや。何や、武尊はライスカレー知っとんか?」
武尊にライスカレーを見せて驚かそうと思っていた張は面白ろうないと口を尖らせた。
「(やばっ!つい言っちゃった。)ううん、張がおすすめって言うからきっと美味しいに違いないんじゃないかな~と思っただけ。儲かっているみたいだから遠慮なく御馳走になっちゃおうかな。」
武尊はフフッ、と満面の作り笑顔を張に返した。
いったいどんなカレーなのかと想像するだけでも楽しい。
明治初期にはじゃがいもや西洋人参はまだなかったはず、と思えば具材がとても気になった。
こじゃれた赤レンガ造りの建物の洋食屋にカレーのメニューがあり武尊は大いに驚き喜んだ。
そして珈琲の文字もメニューに見つけ武尊はそれも注文した。
牛肉となぜかネギが入っているカレー(他の具材はよく分からない)を美味しく頂き、食後の珈琲をで飲みながら武尊は・・斎藤の事は少し忘れてその香りを楽しんでいた。
ずっと武尊を見ていた張は武尊に言った。
「なんかえろう飲み慣れとる感じやな。こないに苦いもん何でそんなに普通に飲めんねん。」
「そう?ちょっと苦いだけじゃない。美味しいよ。張は珈琲飲まないの?」
「わいはビールでええねん。それより武尊はこれからどうすんねん、時間あるなら他におもろいとこ案内するで。」
折角武尊に会えたのだ。
邪魔な斎藤もいない。
もちろん武尊が自分に気を移すことなどないと分かっていても出来る限り長く武尊といたいと思う張であった。
「うーん、さっき歩きながら町は少し見れたからもういいかな。それより・・」
武尊は出発前の斎藤からくれぐれも夕方前には張の所から去るように言われていたのだ。
「それより大阪に行くから道教えてくれる?」
「大阪行って何するんや、別に急ぎやなかったらもっと神戸でゆっくりして行けばええやんか。」
「陸蒸気に乗るからあまり遅くない方がいい。」
「せやか、ほな・・大阪から陸蒸気いうたら京都へ行くんか。」
行先をズバリ当てられて武尊は少し口ごもった。
「ま、まあね・・。」
「ほな、わいが大阪まで一緒に行ってやるわ。」
「え、でも。」
道を聞いても方向音痴だと自覚する武尊にとって張が一緒に行ってくれるのはとてもありがたい。
神戸から大阪、約33km。
今から頑張って歩けば夕方遅くぐらいに着けるはずだと武尊は算段した・・ただし迷子にならなければの話だが。
「・・でも悪いよ、私なんかの為に・・。張は仕事で忙しいんでしょ。」
「かまへん。わいも近いうちに大阪行こう思うとったさかい。」
「え?本当?」
「せや、それともわいが一緒なんは嫌や言うんか。」
またちょっとした圧力を片目ウインクでかけてくる張だった。
「いや、そういうわけじゃなくて本当、忙しい張の邪魔になりたくないから・・。」
と武尊が申し訳なさそうに言うと張は懐をごそごそとやって何かを取り出し武尊の前にゴトっと置いた。
「何これ。」
武尊は置かれたものを手に取った。(張の肌で温められたそれは多少生温かったが)
武尊の手のひらに収まった金属のそれは、厚さ4mmぐらいで円くて黒くて真ん中に縦長の細い三角の穴があった。
表には可愛いうさぎの模様がついていた。
「刀の鍔(つば)や。どや、なかなかええやろ。」
「えー!鍔にこんなのがあるの!?うそー!」
人を斬る道具にどうしてこんなに可愛らしいうさちゃんの彫り物がしてあるのかと武尊は目を疑った。
「まだまだあるで~。」
武尊が驚いたのに気を良くした張は他にも生温かい鍔を3つほど出して武尊に見せた。
「すごい!これは菖蒲・・こっちは龍と鳳凰、これはトンボ?!」
どれも見事な細工で龍と鳳凰には金箔も貼られていた。
武尊は刀の鍔をこんなにじっくり見たことがなく正直驚きだった。
「これって実際使ってたの?」
「何言ってまんねん、刀の鍔ちゅうたらある意味お洒落度を競うとこやねん・・ま、だんな見たいに実用ひと筋なもんを使っとる人も多いねんけどな。せやけど、ええやろ。」
「うん、すっごい芸術品!」
武尊は本当に感心した。
「でもな、今はお侍もおらへんし、廃刀令出てからほんま刀は売れんようになってしもうた。刀匠もそうやけどこないな見事なもん作る職人もぎょーさん減ってもうてな。早よ手に入れんかったらこの先手に入らへんようになるさかい、わいも大阪行ってまた仕入しようかと思うとったんや。」
真面目にそう話した張の言葉に武尊は、
「それなら一緒に行ってもらっていい?張って偉いね。見直したよ。」
と、武尊は大阪への道案内を張にお願いした。
向こうにも用事があるなら心苦しくもなく、それに武尊は本当に張の心がけにとても感心したからだ。
張は目からハートが飛び出るくらいに嬉しかったがちょっと格好もつけたかった。
「別に偉いことなんかあらへんさかい、わいが好きでやってることやねん。・・せや、これ武尊にやるわ。」
と、張は武尊が一番目を輝かせたうさぎの鍔を武尊の手のもとにスッと差し出した。
「え!?だめだよ、こんな高価なもの。」
武尊は即座にうさぎの鍔を張に返そうとしたがその手首を張がぐっと押さえた。
「このうさぎもきっとわいより可愛い武尊の方がええ思うとるさかい。わいも武尊に会えて嬉しかったさかいに記念にもろうといてや。」
「でも・・」
「ええって。」
張はそう言って癖のウインクをお茶目に武尊にかました。
「武尊は欲が無さすぎなんや。こないなときは『おおきに』言うて素直にもろうとくも、ん、や。ま、いらへんかったらいらへん言うてくれてええけどな。」
いらないわけがない。
このうさぎは本当に可愛いのだ。
刀には複雑な思いがある武尊だが、こうして鍔単品を見てみれば本当に美術品としかいえない。
武尊は十秒ほど何か言おうとしたまま張を見つめた。
張は笑顔で頷いた。
それでやっと武尊は、
「ありがと・・。」
と言った。
「なんや、そないに遠慮せんでええで。これは武尊のもんや。」
「私、こういうのに慣れてなくって・・なんて言っていいのか・・。」
そう言って武尊はもらった鍔のうさぎを指先で何度も撫でた。
「ありがとう、張。私、大事にするね!」
「せやせや、それでええねん。ほな、ぼちぼちいこか。」
こうして武尊と張は店を出た。
「そう?私は何もしてないけど。」
武尊はただ見てるだけだったが張にしてみれば武尊が見ているというだけで自然に張り切れたわけで、
「せや、昼はわいのおごりで【ライスカレー】でも食わへんか。美味いで~。」
「カレーライス!?本当!?食べる食べるー!」
まさか文明開化の波がここまできたとは、と武尊は明治のカレーライスにピピピとアンテナが立った。
「ちゃうちゃう、ライスカレーや。何や、武尊はライスカレー知っとんか?」
武尊にライスカレーを見せて驚かそうと思っていた張は面白ろうないと口を尖らせた。
「(やばっ!つい言っちゃった。)ううん、張がおすすめって言うからきっと美味しいに違いないんじゃないかな~と思っただけ。儲かっているみたいだから遠慮なく御馳走になっちゃおうかな。」
武尊はフフッ、と満面の作り笑顔を張に返した。
いったいどんなカレーなのかと想像するだけでも楽しい。
明治初期にはじゃがいもや西洋人参はまだなかったはず、と思えば具材がとても気になった。
こじゃれた赤レンガ造りの建物の洋食屋にカレーのメニューがあり武尊は大いに驚き喜んだ。
そして珈琲の文字もメニューに見つけ武尊はそれも注文した。
牛肉となぜかネギが入っているカレー(他の具材はよく分からない)を美味しく頂き、食後の珈琲をで飲みながら武尊は・・斎藤の事は少し忘れてその香りを楽しんでいた。
ずっと武尊を見ていた張は武尊に言った。
「なんかえろう飲み慣れとる感じやな。こないに苦いもん何でそんなに普通に飲めんねん。」
「そう?ちょっと苦いだけじゃない。美味しいよ。張は珈琲飲まないの?」
「わいはビールでええねん。それより武尊はこれからどうすんねん、時間あるなら他におもろいとこ案内するで。」
折角武尊に会えたのだ。
邪魔な斎藤もいない。
もちろん武尊が自分に気を移すことなどないと分かっていても出来る限り長く武尊といたいと思う張であった。
「うーん、さっき歩きながら町は少し見れたからもういいかな。それより・・」
武尊は出発前の斎藤からくれぐれも夕方前には張の所から去るように言われていたのだ。
「それより大阪に行くから道教えてくれる?」
「大阪行って何するんや、別に急ぎやなかったらもっと神戸でゆっくりして行けばええやんか。」
「陸蒸気に乗るからあまり遅くない方がいい。」
「せやか、ほな・・大阪から陸蒸気いうたら京都へ行くんか。」
行先をズバリ当てられて武尊は少し口ごもった。
「ま、まあね・・。」
「ほな、わいが大阪まで一緒に行ってやるわ。」
「え、でも。」
道を聞いても方向音痴だと自覚する武尊にとって張が一緒に行ってくれるのはとてもありがたい。
神戸から大阪、約33km。
今から頑張って歩けば夕方遅くぐらいに着けるはずだと武尊は算段した・・ただし迷子にならなければの話だが。
「・・でも悪いよ、私なんかの為に・・。張は仕事で忙しいんでしょ。」
「かまへん。わいも近いうちに大阪行こう思うとったさかい。」
「え?本当?」
「せや、それともわいが一緒なんは嫌や言うんか。」
またちょっとした圧力を片目ウインクでかけてくる張だった。
「いや、そういうわけじゃなくて本当、忙しい張の邪魔になりたくないから・・。」
と武尊が申し訳なさそうに言うと張は懐をごそごそとやって何かを取り出し武尊の前にゴトっと置いた。
「何これ。」
武尊は置かれたものを手に取った。(張の肌で温められたそれは多少生温かったが)
武尊の手のひらに収まった金属のそれは、厚さ4mmぐらいで円くて黒くて真ん中に縦長の細い三角の穴があった。
表には可愛いうさぎの模様がついていた。
「刀の鍔(つば)や。どや、なかなかええやろ。」
「えー!鍔にこんなのがあるの!?うそー!」
人を斬る道具にどうしてこんなに可愛らしいうさちゃんの彫り物がしてあるのかと武尊は目を疑った。
「まだまだあるで~。」
武尊が驚いたのに気を良くした張は他にも生温かい鍔を3つほど出して武尊に見せた。
「すごい!これは菖蒲・・こっちは龍と鳳凰、これはトンボ?!」
どれも見事な細工で龍と鳳凰には金箔も貼られていた。
武尊は刀の鍔をこんなにじっくり見たことがなく正直驚きだった。
「これって実際使ってたの?」
「何言ってまんねん、刀の鍔ちゅうたらある意味お洒落度を競うとこやねん・・ま、だんな見たいに実用ひと筋なもんを使っとる人も多いねんけどな。せやけど、ええやろ。」
「うん、すっごい芸術品!」
武尊は本当に感心した。
「でもな、今はお侍もおらへんし、廃刀令出てからほんま刀は売れんようになってしもうた。刀匠もそうやけどこないな見事なもん作る職人もぎょーさん減ってもうてな。早よ手に入れんかったらこの先手に入らへんようになるさかい、わいも大阪行ってまた仕入しようかと思うとったんや。」
真面目にそう話した張の言葉に武尊は、
「それなら一緒に行ってもらっていい?張って偉いね。見直したよ。」
と、武尊は大阪への道案内を張にお願いした。
向こうにも用事があるなら心苦しくもなく、それに武尊は本当に張の心がけにとても感心したからだ。
張は目からハートが飛び出るくらいに嬉しかったがちょっと格好もつけたかった。
「別に偉いことなんかあらへんさかい、わいが好きでやってることやねん。・・せや、これ武尊にやるわ。」
と、張は武尊が一番目を輝かせたうさぎの鍔を武尊の手のもとにスッと差し出した。
「え!?だめだよ、こんな高価なもの。」
武尊は即座にうさぎの鍔を張に返そうとしたがその手首を張がぐっと押さえた。
「このうさぎもきっとわいより可愛い武尊の方がええ思うとるさかい。わいも武尊に会えて嬉しかったさかいに記念にもろうといてや。」
「でも・・」
「ええって。」
張はそう言って癖のウインクをお茶目に武尊にかました。
「武尊は欲が無さすぎなんや。こないなときは『おおきに』言うて素直にもろうとくも、ん、や。ま、いらへんかったらいらへん言うてくれてええけどな。」
いらないわけがない。
このうさぎは本当に可愛いのだ。
刀には複雑な思いがある武尊だが、こうして鍔単品を見てみれば本当に美術品としかいえない。
武尊は十秒ほど何か言おうとしたまま張を見つめた。
張は笑顔で頷いた。
それでやっと武尊は、
「ありがと・・。」
と言った。
「なんや、そないに遠慮せんでええで。これは武尊のもんや。」
「私、こういうのに慣れてなくって・・なんて言っていいのか・・。」
そう言って武尊はもらった鍔のうさぎを指先で何度も撫でた。
「ありがとう、張。私、大事にするね!」
「せやせや、それでええねん。ほな、ぼちぼちいこか。」
こうして武尊と張は店を出た。