※1 記憶を失っている時の名前は変換できません。
218.キーワード (斎藤・夢主・張)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
最近の流行だろうか、朝餉はテーブルの上にそれぞれの分が並べられていた。
斎藤はここを出たら大阪港へ行こうと考えていた。
影宮が大阪港へ到着したと思われる時刻からはすでにかなり時間が経っており、到底そこに影宮がいる可能性はなかったが足取りがつかめるかもしれないと斎藤は思ったからだ。
そんな斎藤を武尊と張はちらちら見ながら稲荷ずしを口に運ぶ。
「張、昨日から斎藤さんこんな感じだったの?」
「せや、夕飯食べに出てわいが志々雄様の話をした時からずっとこうやねん。わい、そないな大した事言うとらへんのやけどな。」
「ふーん。」
武尊は志々雄のことはほとんど知らない。
張からご飯をおごってもらったついでに聞いたのが少しと斎藤から大久保暗殺の首謀者という事とは聞いていたが斎藤の部下になりたての武尊には仕事をするのが精一杯でその事件の事については詳しく調書を読む時間はなかったのだ。
相槌を打った武尊に張は、
「まあ、だんなも警察やさかいに世の中の悪には事欠かへんさかいな。いったい誰なんやろうな~次の可哀想な奴ちゃは。」
と嫌味を込めて言った。
斎藤のしつこさを十分分かっての言葉だった。
「ま、、まぁそう言わずに。(そんな事一の目の前で言ったら張が一のターゲットになりかねないよっ!)」
武尊は苦笑いしながら張に言った。
そして、
「でもさ、斎藤さんが終わった事件のことでこんなに悩んでる顔するの珍しいね。」
と呟いた。
「せやろ?わい昨日ーーー
稲荷を食べながら考え事をしていた斎藤が何気に聞こえた張の言葉を聞いてハッとした時はすでに遅かった。
ーー影宮の事しか言うとらへんのやけどな。」
斎藤が武尊に聞かせたくないと思ったキーワードを張はサラッと口にしたのだった。
斎藤は武尊が聞き流してくれるように祈ったがそれはやはり無理だった。
武尊はすかさずその言葉に喰いついたのだった。
「【影宮】?何、それ。」
『阿呆が!』と斎藤は今すぐ張を斬りたかったがここで自分が反応すれば自分が何を追っているのか感づかれてしまう。
奥歯でギリギリと米粒を噛みしめながら武尊の様子を伺った。
「裏の社会ではかなりの大物らしいちゅうだけで正体不明や。以前志々雄様と新政府倒すのに手組まへんかちゅうたらしい以外はわいも知らへんさかい。」
「ふーん・・。」
そのとき【宮】という言葉の連想だからだろうか、何故か武尊の脳裏にある情景が浮かんだ。
初めて市彦に薬を飲まされた夜。
お目通りがなんとか、ともったいぶられて通されて見た本物の公家。
畳一枚高いところに座って偉そうにしていたそいつを『麻呂じゃん!』と内心思ったことまで思い出した。
「・・【宮】ってつくぐらいだから公家なのかなぁ?なんだか偉そうな名前だね。」
「偉いかどうかは分からへんで。ちょっと大げさに言うた方がカッコつくさかいにな。」
「例えば・・、【十本刀】の張、とか?」
「なんでわいの事が出てくんねん、わいのは大げさでもカッコ付けでもあらへんで。」
張はそう言って片方の眉毛を吊り上げた。
「ごめんごめん、張の凄いのは分かったてるから。」
「適当な事いうたらあかへんで。武尊は何もわいの凄いとこ見たとこあらへんのやろ。」
「うっ。・・でも、ほら、張が刀が大好きで詳しいのは知ってるから・・。」
張にじろっと見られて武尊は話題をちょっと変えようとした。
「ところで張は今何やってるの?まさか神戸にいると思わなかったな。」
ふーんと腕を組んで張は武尊を見ながら少し鼻高になった。
「わいか?わいは・・看板通りや。これまで集めた刀を異人さんに高こう売ってまんねん。まぁ在庫が無くなったら終わりやねんけどな。」
すると今までずっと黙っていた斎藤が口をはさんだ。
「どうせ鳥羽伏見の際に躯の傍から拾いまくったというとこか。大阪にいたお前ならやりそうなことだ。」
「・・一はそれを知ってて張を咎めないの?」
斎藤は武尊の興味が影宮から離れたことを少し安堵しながら質問に答えた。
「勝者が敗者から使えそうなものを奪うのはああいう状況では特別なことではない・・。」
張は斎藤の言葉に自分の行動が肯定されたと少し得意気になった。
「せやろ?わいはそんな刀を拾って大事~にしてただけや。」
だが張の言葉にムッときた斎藤は、
「おまえの場合はただの火事場泥棒だろうが。」
と一喝した。
張は固まった。
武尊が固まった張をほぐすように、
「・・で、たくさん持ってたんだ。」
と話かけた。
「せや。だんなからもやっと自由になったさかいに、残しとったもん売って少しは身軽にせなあかん思うたんや。志々雄様と新政府とのドンパチのうなったさかい、ええもんだけ残して後は売るちゅうわけや。」
斎藤の顔色を少し伺いながら張は武尊に説明した。
没収と言われたらかなわないからだ。
ところが斎藤の口からは、
「・・好きにしろ。」
という張の予想を大いに裏切る返事が返ってきた。
「へ?」
張は思わず気が抜けた返事をした。
「ええんか?ほんまに。」
「くどい、俺に聞くな。」
明治政府の帯刀警官や軍の士官には未だ刀を軍刀としてぶら下げている。
鳥羽伏見の戦いで死んだ仲間の事を思えば、敵の腰に守り刀としてぶら下がるという屈辱はどうかと思ったのかもしれない。
斎藤は張の仕事に口を出さなかった。
斎藤はここを出たら大阪港へ行こうと考えていた。
影宮が大阪港へ到着したと思われる時刻からはすでにかなり時間が経っており、到底そこに影宮がいる可能性はなかったが足取りがつかめるかもしれないと斎藤は思ったからだ。
そんな斎藤を武尊と張はちらちら見ながら稲荷ずしを口に運ぶ。
「張、昨日から斎藤さんこんな感じだったの?」
「せや、夕飯食べに出てわいが志々雄様の話をした時からずっとこうやねん。わい、そないな大した事言うとらへんのやけどな。」
「ふーん。」
武尊は志々雄のことはほとんど知らない。
張からご飯をおごってもらったついでに聞いたのが少しと斎藤から大久保暗殺の首謀者という事とは聞いていたが斎藤の部下になりたての武尊には仕事をするのが精一杯でその事件の事については詳しく調書を読む時間はなかったのだ。
相槌を打った武尊に張は、
「まあ、だんなも警察やさかいに世の中の悪には事欠かへんさかいな。いったい誰なんやろうな~次の可哀想な奴ちゃは。」
と嫌味を込めて言った。
斎藤のしつこさを十分分かっての言葉だった。
「ま、、まぁそう言わずに。(そんな事一の目の前で言ったら張が一のターゲットになりかねないよっ!)」
武尊は苦笑いしながら張に言った。
そして、
「でもさ、斎藤さんが終わった事件のことでこんなに悩んでる顔するの珍しいね。」
と呟いた。
「せやろ?わい昨日ーーー
稲荷を食べながら考え事をしていた斎藤が何気に聞こえた張の言葉を聞いてハッとした時はすでに遅かった。
ーー影宮の事しか言うとらへんのやけどな。」
斎藤が武尊に聞かせたくないと思ったキーワードを張はサラッと口にしたのだった。
斎藤は武尊が聞き流してくれるように祈ったがそれはやはり無理だった。
武尊はすかさずその言葉に喰いついたのだった。
「【影宮】?何、それ。」
『阿呆が!』と斎藤は今すぐ張を斬りたかったがここで自分が反応すれば自分が何を追っているのか感づかれてしまう。
奥歯でギリギリと米粒を噛みしめながら武尊の様子を伺った。
「裏の社会ではかなりの大物らしいちゅうだけで正体不明や。以前志々雄様と新政府倒すのに手組まへんかちゅうたらしい以外はわいも知らへんさかい。」
「ふーん・・。」
そのとき【宮】という言葉の連想だからだろうか、何故か武尊の脳裏にある情景が浮かんだ。
初めて市彦に薬を飲まされた夜。
お目通りがなんとか、ともったいぶられて通されて見た本物の公家。
畳一枚高いところに座って偉そうにしていたそいつを『麻呂じゃん!』と内心思ったことまで思い出した。
「・・【宮】ってつくぐらいだから公家なのかなぁ?なんだか偉そうな名前だね。」
「偉いかどうかは分からへんで。ちょっと大げさに言うた方がカッコつくさかいにな。」
「例えば・・、【十本刀】の張、とか?」
「なんでわいの事が出てくんねん、わいのは大げさでもカッコ付けでもあらへんで。」
張はそう言って片方の眉毛を吊り上げた。
「ごめんごめん、張の凄いのは分かったてるから。」
「適当な事いうたらあかへんで。武尊は何もわいの凄いとこ見たとこあらへんのやろ。」
「うっ。・・でも、ほら、張が刀が大好きで詳しいのは知ってるから・・。」
張にじろっと見られて武尊は話題をちょっと変えようとした。
「ところで張は今何やってるの?まさか神戸にいると思わなかったな。」
ふーんと腕を組んで張は武尊を見ながら少し鼻高になった。
「わいか?わいは・・看板通りや。これまで集めた刀を異人さんに高こう売ってまんねん。まぁ在庫が無くなったら終わりやねんけどな。」
すると今までずっと黙っていた斎藤が口をはさんだ。
「どうせ鳥羽伏見の際に躯の傍から拾いまくったというとこか。大阪にいたお前ならやりそうなことだ。」
「・・一はそれを知ってて張を咎めないの?」
斎藤は武尊の興味が影宮から離れたことを少し安堵しながら質問に答えた。
「勝者が敗者から使えそうなものを奪うのはああいう状況では特別なことではない・・。」
張は斎藤の言葉に自分の行動が肯定されたと少し得意気になった。
「せやろ?わいはそんな刀を拾って大事~にしてただけや。」
だが張の言葉にムッときた斎藤は、
「おまえの場合はただの火事場泥棒だろうが。」
と一喝した。
張は固まった。
武尊が固まった張をほぐすように、
「・・で、たくさん持ってたんだ。」
と話かけた。
「せや。だんなからもやっと自由になったさかいに、残しとったもん売って少しは身軽にせなあかん思うたんや。志々雄様と新政府とのドンパチのうなったさかい、ええもんだけ残して後は売るちゅうわけや。」
斎藤の顔色を少し伺いながら張は武尊に説明した。
没収と言われたらかなわないからだ。
ところが斎藤の口からは、
「・・好きにしろ。」
という張の予想を大いに裏切る返事が返ってきた。
「へ?」
張は思わず気が抜けた返事をした。
「ええんか?ほんまに。」
「くどい、俺に聞くな。」
明治政府の帯刀警官や軍の士官には未だ刀を軍刀としてぶら下げている。
鳥羽伏見の戦いで死んだ仲間の事を思えば、敵の腰に守り刀としてぶら下がるという屈辱はどうかと思ったのかもしれない。
斎藤は張の仕事に口を出さなかった。