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217.着いていない船 (斎藤・夢主・張)
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斎藤につかまりながら歩くのもおぼつかない武尊の姿に張は本当に武尊の身体の具合が悪いのかと思っていた。
「布団・・一つしかあらへんけど気にせんと寝といてぇや。」
と、張は自分の寝室に斎藤と武尊を案内した。
「む。」
武尊の目に入ったのは室内に置いてある天蓋付のベッドで真っ赤なビロードの布団がかけてあった。
「貴様がこんな趣味だったとはおもわなかったぞ。」
斎藤は少し呆れ気味に言った。
「何勘違いしてまんねん、この家借りた時に最初から置いてあっただけでそれ使っとるだけや。はよ、横になり。」
「うん、ありがと。本当に助かる・・。」
そう言って武尊はベッドに横にならせてもらった。
「少し寝るね。」
武尊は斎藤にそう伝えると斎藤は武尊の髪をそっと撫でた。
「嗚呼、俺は少し出てくる。ついでに何か買ってくるか。腹が減っては力も出んだろうしな。」
「ありがと、うん、何か買ってきて。」
武尊は斎藤にそう言うと目を閉じてすぐにスースーと静かな寝息をたて始めた。
斎藤と武尊の関係があからさまに自分にとって好ましくない状況であったが武尊の疲弊しきった様子が張は心配で、
「ほんまに大丈夫なんか武尊は。流行り病にでもかかったんか。」
と、斎藤に聞いた。
「一晩休めば大丈夫だろう。」
斎藤の答えに張は多少安堵したものの、
「せやかて何でだんなと武尊が一緒におんねん。確か武尊は警官やめたんちゃうんか。」
と、最初から疑問に思ったことを聞いた。
「ま、いろいろと、な。」
斎藤は別に張に話す必要などないと思いそう答えた。
「かー!また始まりおったわ、だんなの秘密主義が。たまらんわー、どうせわいなんか最初からカヤの外さかいにな。せやけど何で今時分にこないなとこ歩いてんねん。そもそもだんなは北海道行ったんちゃうんか。」
張の疑問はもっともだった。
武尊が一緒だったのも不思議だったがそもそも斎藤は北海道へ赴任したはずだったのは張も知っている。
それが今こうして神戸にいるのだから疑問に思っても当然だ。
「もしかして、というか、おそらくやろうけど何かの任務ちゅーことなんやろな。まぁ聞いても教えてくれへんやろうけど。」
「察しの通りだ。少しは頭が回るようになったんじゃないのか。」
「へぇへぇ、どうせわいなんか抜刀斎にやられてからろくな扱い受けたらへんさかいに、なんぼボロカス言われてももう慣れましたわ。」
斎藤の態度はますますこき使われた密偵時代を思いだし張は口をへの字に曲げた。
なので斎藤に、
「そういえば何でお前はここにいるんだ。」
と言われたが答える気にならない。
「そないなことだんなに関係あらへんさかいに答える義理なんかあらへんわ。先に言うとくけどな、わいは何も警察に目つけられるような事はやってへんで。」
と張は一人テンションをあげていった。
斎藤はもとより張がここにいることに興味があまりないので張の返答は軽く流した。
「・・まあいい、武尊を一人にしておくにはここの方が他より安全のようだからな。それより美味い蕎麦屋はこの辺にないか。」
「蕎麦屋?あかんて、こないな異人はんがぎょーさんおるところに蕎麦屋なんてあらへんで。」
「なら飯屋はあるのか?」
「飯屋はより洋食屋はどうや。だんなライスカレーなんて食べたことないやろ。なんならわいが連れて行ってやっても・・。」
「自分で探したほうが良さそうだな。・・いや、やはり案内しろ。ただし普通の飯屋だ。」
斎藤はむしろ張を残していくことの方が嫌だと言い直した。
武尊に何かされてはと考えただけでも腹が立つ。
ならば一緒に連れ出した方が得策だと斎藤は踏んだのだ。
「だんなも相変わらず強情なやっちゃ、せっかく神戸におるっちゅうのに洋食食わへんのはもったいないちゅーの。」
「阿呆、こっちは三日も洋食を食べたんだ、これ以上は御免こうむる。」
「なんやてーぇ!」
斎藤の予想外の返答に張はアゴがはずれるかと思うぐらい驚いた。
中身が【かけ蕎麦】で出来ているのかと思うぐらいの蕎麦好きが三日も洋食を食べたとはとてもじゃないが信じがたい。
そんなことが本当にあるのかと口をパクパクさせていると斎藤は、
「露西亜船に乗ってきたんだからな、別に驚くことじゃない。」
「露西亜船やて!?」
張は更に驚いた。
口どころか目までも見開いて斎藤を見たのだった。
「函館から出港する船が露西亜船ではそんなにおかしいか。」
あまりの阿呆面をする張に斎藤はそう言った。
張は数回瞬きをして、
「確かに函館に露西亜船がおってもおかしくはあらへんけど何で異国の船なんや。普通に日本の船に乗ればええさかいに。」
と言うと斎藤は、
「わけありだと言っただろうが。」
と答えた。
「そりゃまぁそうやねんけど・・。」
そう言って張はベッドの武尊の顔をちらっと見た。
「ほな・・武尊もさっき着いた船に乗って来たっちゅうことやな。」
「そうだ。だが何故先程着いたと分かるんだ。そうか、汽笛か。それで分かるんだな。」
「せや、よう聞こえるで。お陰でいろいろ都合がええ。」
張の返答に斎藤はハタと思い浮かんだことがあった。
「そういえば俺達の前に着いた船があると思うんだが何時頃だか覚えてるか。」
「着いたのちゅーたら・・。」
張はアゴに手をやり首を傾け前の汽笛を思い出していた。
「・・せやなぁ、ここ二、三日は着いた船はだんなの船以外あらへんわ。」
と言った張の返事に斎藤は驚いた。
「そんなはずはないだろう。少なくとも半日ぐらい前に日本の商船が着いたはずだ。」
と、斎藤は函館での事件を振り返っていた。
影宮を乗せたであろう船が出港してからあの露西亜船は半日以内に出港した。
異国から来たあの大きな船が日本の商船よりも遅いという事は考えにくい。
「なんや、わいが嘘言うとんやないかと疑ってんねんか。ここでだんなに嘘言うても何の特にもならへんのに嘘言うわけあらへんやろ!
・・ちゅうかだんな、今日本の商船言うたな。ここは外国船専用の港やで。日本の船いうたらたぶん大坂着いたんちゃうか。」
「!」
斎藤はハッとした。
言われてみればその通りだ。
函館であの船が神戸へ向かったと言われたその言葉を鵜呑みにして何一つ疑わなかった自分のミスに斎藤はチッと舌打ちした。
が、今となってはもうどうしようもない。
次の手はどうするか、と、腕を組もうとした時に目に入ったのは武尊の寝顔。
「・・ひとまず飯だな。」
今慌ててもどうにもならないと斎藤は張と飯に出かけたのだった。
「布団・・一つしかあらへんけど気にせんと寝といてぇや。」
と、張は自分の寝室に斎藤と武尊を案内した。
「む。」
武尊の目に入ったのは室内に置いてある天蓋付のベッドで真っ赤なビロードの布団がかけてあった。
「貴様がこんな趣味だったとはおもわなかったぞ。」
斎藤は少し呆れ気味に言った。
「何勘違いしてまんねん、この家借りた時に最初から置いてあっただけでそれ使っとるだけや。はよ、横になり。」
「うん、ありがと。本当に助かる・・。」
そう言って武尊はベッドに横にならせてもらった。
「少し寝るね。」
武尊は斎藤にそう伝えると斎藤は武尊の髪をそっと撫でた。
「嗚呼、俺は少し出てくる。ついでに何か買ってくるか。腹が減っては力も出んだろうしな。」
「ありがと、うん、何か買ってきて。」
武尊は斎藤にそう言うと目を閉じてすぐにスースーと静かな寝息をたて始めた。
斎藤と武尊の関係があからさまに自分にとって好ましくない状況であったが武尊の疲弊しきった様子が張は心配で、
「ほんまに大丈夫なんか武尊は。流行り病にでもかかったんか。」
と、斎藤に聞いた。
「一晩休めば大丈夫だろう。」
斎藤の答えに張は多少安堵したものの、
「せやかて何でだんなと武尊が一緒におんねん。確か武尊は警官やめたんちゃうんか。」
と、最初から疑問に思ったことを聞いた。
「ま、いろいろと、な。」
斎藤は別に張に話す必要などないと思いそう答えた。
「かー!また始まりおったわ、だんなの秘密主義が。たまらんわー、どうせわいなんか最初からカヤの外さかいにな。せやけど何で今時分にこないなとこ歩いてんねん。そもそもだんなは北海道行ったんちゃうんか。」
張の疑問はもっともだった。
武尊が一緒だったのも不思議だったがそもそも斎藤は北海道へ赴任したはずだったのは張も知っている。
それが今こうして神戸にいるのだから疑問に思っても当然だ。
「もしかして、というか、おそらくやろうけど何かの任務ちゅーことなんやろな。まぁ聞いても教えてくれへんやろうけど。」
「察しの通りだ。少しは頭が回るようになったんじゃないのか。」
「へぇへぇ、どうせわいなんか抜刀斎にやられてからろくな扱い受けたらへんさかいに、なんぼボロカス言われてももう慣れましたわ。」
斎藤の態度はますますこき使われた密偵時代を思いだし張は口をへの字に曲げた。
なので斎藤に、
「そういえば何でお前はここにいるんだ。」
と言われたが答える気にならない。
「そないなことだんなに関係あらへんさかいに答える義理なんかあらへんわ。先に言うとくけどな、わいは何も警察に目つけられるような事はやってへんで。」
と張は一人テンションをあげていった。
斎藤はもとより張がここにいることに興味があまりないので張の返答は軽く流した。
「・・まあいい、武尊を一人にしておくにはここの方が他より安全のようだからな。それより美味い蕎麦屋はこの辺にないか。」
「蕎麦屋?あかんて、こないな異人はんがぎょーさんおるところに蕎麦屋なんてあらへんで。」
「なら飯屋はあるのか?」
「飯屋はより洋食屋はどうや。だんなライスカレーなんて食べたことないやろ。なんならわいが連れて行ってやっても・・。」
「自分で探したほうが良さそうだな。・・いや、やはり案内しろ。ただし普通の飯屋だ。」
斎藤はむしろ張を残していくことの方が嫌だと言い直した。
武尊に何かされてはと考えただけでも腹が立つ。
ならば一緒に連れ出した方が得策だと斎藤は踏んだのだ。
「だんなも相変わらず強情なやっちゃ、せっかく神戸におるっちゅうのに洋食食わへんのはもったいないちゅーの。」
「阿呆、こっちは三日も洋食を食べたんだ、これ以上は御免こうむる。」
「なんやてーぇ!」
斎藤の予想外の返答に張はアゴがはずれるかと思うぐらい驚いた。
中身が【かけ蕎麦】で出来ているのかと思うぐらいの蕎麦好きが三日も洋食を食べたとはとてもじゃないが信じがたい。
そんなことが本当にあるのかと口をパクパクさせていると斎藤は、
「露西亜船に乗ってきたんだからな、別に驚くことじゃない。」
「露西亜船やて!?」
張は更に驚いた。
口どころか目までも見開いて斎藤を見たのだった。
「函館から出港する船が露西亜船ではそんなにおかしいか。」
あまりの阿呆面をする張に斎藤はそう言った。
張は数回瞬きをして、
「確かに函館に露西亜船がおってもおかしくはあらへんけど何で異国の船なんや。普通に日本の船に乗ればええさかいに。」
と言うと斎藤は、
「わけありだと言っただろうが。」
と答えた。
「そりゃまぁそうやねんけど・・。」
そう言って張はベッドの武尊の顔をちらっと見た。
「ほな・・武尊もさっき着いた船に乗って来たっちゅうことやな。」
「そうだ。だが何故先程着いたと分かるんだ。そうか、汽笛か。それで分かるんだな。」
「せや、よう聞こえるで。お陰でいろいろ都合がええ。」
張の返答に斎藤はハタと思い浮かんだことがあった。
「そういえば俺達の前に着いた船があると思うんだが何時頃だか覚えてるか。」
「着いたのちゅーたら・・。」
張はアゴに手をやり首を傾け前の汽笛を思い出していた。
「・・せやなぁ、ここ二、三日は着いた船はだんなの船以外あらへんわ。」
と言った張の返事に斎藤は驚いた。
「そんなはずはないだろう。少なくとも半日ぐらい前に日本の商船が着いたはずだ。」
と、斎藤は函館での事件を振り返っていた。
影宮を乗せたであろう船が出港してからあの露西亜船は半日以内に出港した。
異国から来たあの大きな船が日本の商船よりも遅いという事は考えにくい。
「なんや、わいが嘘言うとんやないかと疑ってんねんか。ここでだんなに嘘言うても何の特にもならへんのに嘘言うわけあらへんやろ!
・・ちゅうかだんな、今日本の商船言うたな。ここは外国船専用の港やで。日本の船いうたらたぶん大坂着いたんちゃうか。」
「!」
斎藤はハッとした。
言われてみればその通りだ。
函館であの船が神戸へ向かったと言われたその言葉を鵜呑みにして何一つ疑わなかった自分のミスに斎藤はチッと舌打ちした。
が、今となってはもうどうしようもない。
次の手はどうするか、と、腕を組もうとした時に目に入ったのは武尊の寝顔。
「・・ひとまず飯だな。」
今慌ててもどうにもならないと斎藤は張と飯に出かけたのだった。