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217.着いていない船 (斎藤・夢主・張)
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ドンドンドン。
木の扉の重い音が響いた。
だが中からは返事はなく斎藤は数度音を響かせた。
少し遅れて奥の方から足音がすると、ガタガタと音がして引き戸が20cmぐらい開いた。
「なんやねん、今日はもう店じまいやさかい・・
げーーーーぇ!!」
店の男はつっけんどんな返事から突如品のない叫び声をあげた。
無理もない、20cmの隙間の向こうには忘れたいが忘れていなかった細い眼が自分を睨みつけていたからだ。
「阿呆が。相変わらずうるさいやつだ。」
斎藤の目の前に現れたのは予感の通りの男、沢下条張だった。
「だ、だ、だんな!?ほんまに?」
張は目の玉が飛び出しそうな顔で信じたくない現実に嫌~な顔をした。
斎藤は無言で張を見ている。
張は心理的に追い込まれてしまう。
「なんやねん、黙りおって。けったいな。わ、わいが何かしでかしおったとでも思うとんなら大きな間違いやで。」
心臓がバクバクしながら張は斎藤に言い訳した。
張の心の中でやましい(自分的には全然やましくないが警察からするとやましいことかもと思わないでもない事)ことなどないと言い聞かせながら斎藤に気迫をぶつけた。
斎藤は加えていた煙草をスーッと吸い、フーっと煙を細く吐き出し口元をゆるめて張に言った。
「フン、いかにも何かを隠していると言わんばかりだな。」
「アホちゃうか、別に何も隠してへんわ!」
「ならいい、今晩泊めてくれ。」
「はぁ!?」
二度と会いたくもない上司に泊めろと言われてはっきり言ってお断りの張はしっしっと斎藤を手で払いのけるようなジェスチャーをし、
「何言うてまんねん。あんさん金もっとんやろ。普通の宿泊りぃや、わいは忙しいねん。」
と張は東京でのこき使われ時代を思いだしながら即行断った。
斎藤は、
「残念だな、せっかく楽しい話でもしようかと思ったのにな。」
と、全然心にもないことを言ってフンと笑った。
「せやな、わいも残念やけどな。」
と扉に手をかけ、ガタガタ、ピシャッっと戸を閉めた。
「だそうだ。仕方がない、行くか武尊。」
張が戸を閉めた瞬間、張の耳に斎藤が確かにそう言ったのが聞こえた。
「何やて!」
ガガガッツっと再び引き戸が開いた。
張の目は周囲を瞬時に周回し、すぐさま人力車に乗った武尊を見つけた。
武尊は張を見てフッと微笑んで軽く手を振った。
「武尊か!?」
張は武尊の姿に目を丸くした。
「行くぞ。」
張が武尊の名前を呼んだのが聞こえないかのように斎藤はその場を去ろうとした。
「待ったぁ!」
張は慌てて家の前に飛び出した。
「何だ。」
「あんたらせっかく神戸来たんやったらちょっと休んでいかへんか、ええやろ。どうせ今日は宿行って泊るだけなんやろ。」
「忙しいんじゃなかったのか。」
「い、忙しいんは明日やったさかいに今日は暇やった。」
張の見え透いた言い訳に斎藤は少し考える振りをしてからおもむろに言った。
「武尊を少し休ませたいんだ。早めに宿に入りたい、こんな所で道草くってるばあいじゃないんだ。じゃあな、邪魔をした。」
と、斎藤はあっさり言うと踵を返した。
「分かった分かった、分かったさかい、今日はとりあえず泊ってき。武尊もな、そないしたほうがええんやろ。」
武尊は張にそう言われてまた軽く笑みを返した。
斎藤も武尊を見て、
「どうする。」
と聞いた。
武尊は張に、
「本当にいいの?迷惑じゃない?泊めてくれるのならとても助かるんだけど・・。」
と言った。
「どないしたんや、その声は!」
と、張は武尊のかすれ声て疲れた声を聞いてびっくしりた。
「どこか悪いんか武尊。」
張は武尊に駆け寄った。
「少し・・疲れてるだけ・・あとちょっと熱っぽいかな。」
と武尊は答えて力なくへへへと笑った。
「あほちゃうか、具合悪いんなら先にいわんとあかんやろ。はよ入り。」
「そっちの申し出だから宿代はなしでいいな。」
「かーっ!そないな事言うとる場合やあらへんやろ!」
ということで、斎藤は車夫に少し多めに運賃を支払い、武尊と張の店に入った。
木の扉の重い音が響いた。
だが中からは返事はなく斎藤は数度音を響かせた。
少し遅れて奥の方から足音がすると、ガタガタと音がして引き戸が20cmぐらい開いた。
「なんやねん、今日はもう店じまいやさかい・・
げーーーーぇ!!」
店の男はつっけんどんな返事から突如品のない叫び声をあげた。
無理もない、20cmの隙間の向こうには忘れたいが忘れていなかった細い眼が自分を睨みつけていたからだ。
「阿呆が。相変わらずうるさいやつだ。」
斎藤の目の前に現れたのは予感の通りの男、沢下条張だった。
「だ、だ、だんな!?ほんまに?」
張は目の玉が飛び出しそうな顔で信じたくない現実に嫌~な顔をした。
斎藤は無言で張を見ている。
張は心理的に追い込まれてしまう。
「なんやねん、黙りおって。けったいな。わ、わいが何かしでかしおったとでも思うとんなら大きな間違いやで。」
心臓がバクバクしながら張は斎藤に言い訳した。
張の心の中でやましい(自分的には全然やましくないが警察からするとやましいことかもと思わないでもない事)ことなどないと言い聞かせながら斎藤に気迫をぶつけた。
斎藤は加えていた煙草をスーッと吸い、フーっと煙を細く吐き出し口元をゆるめて張に言った。
「フン、いかにも何かを隠していると言わんばかりだな。」
「アホちゃうか、別に何も隠してへんわ!」
「ならいい、今晩泊めてくれ。」
「はぁ!?」
二度と会いたくもない上司に泊めろと言われてはっきり言ってお断りの張はしっしっと斎藤を手で払いのけるようなジェスチャーをし、
「何言うてまんねん。あんさん金もっとんやろ。普通の宿泊りぃや、わいは忙しいねん。」
と張は東京でのこき使われ時代を思いだしながら即行断った。
斎藤は、
「残念だな、せっかく楽しい話でもしようかと思ったのにな。」
と、全然心にもないことを言ってフンと笑った。
「せやな、わいも残念やけどな。」
と扉に手をかけ、ガタガタ、ピシャッっと戸を閉めた。
「だそうだ。仕方がない、行くか武尊。」
張が戸を閉めた瞬間、張の耳に斎藤が確かにそう言ったのが聞こえた。
「何やて!」
ガガガッツっと再び引き戸が開いた。
張の目は周囲を瞬時に周回し、すぐさま人力車に乗った武尊を見つけた。
武尊は張を見てフッと微笑んで軽く手を振った。
「武尊か!?」
張は武尊の姿に目を丸くした。
「行くぞ。」
張が武尊の名前を呼んだのが聞こえないかのように斎藤はその場を去ろうとした。
「待ったぁ!」
張は慌てて家の前に飛び出した。
「何だ。」
「あんたらせっかく神戸来たんやったらちょっと休んでいかへんか、ええやろ。どうせ今日は宿行って泊るだけなんやろ。」
「忙しいんじゃなかったのか。」
「い、忙しいんは明日やったさかいに今日は暇やった。」
張の見え透いた言い訳に斎藤は少し考える振りをしてからおもむろに言った。
「武尊を少し休ませたいんだ。早めに宿に入りたい、こんな所で道草くってるばあいじゃないんだ。じゃあな、邪魔をした。」
と、斎藤はあっさり言うと踵を返した。
「分かった分かった、分かったさかい、今日はとりあえず泊ってき。武尊もな、そないしたほうがええんやろ。」
武尊は張にそう言われてまた軽く笑みを返した。
斎藤も武尊を見て、
「どうする。」
と聞いた。
武尊は張に、
「本当にいいの?迷惑じゃない?泊めてくれるのならとても助かるんだけど・・。」
と言った。
「どないしたんや、その声は!」
と、張は武尊のかすれ声て疲れた声を聞いてびっくしりた。
「どこか悪いんか武尊。」
張は武尊に駆け寄った。
「少し・・疲れてるだけ・・あとちょっと熱っぽいかな。」
と武尊は答えて力なくへへへと笑った。
「あほちゃうか、具合悪いんなら先にいわんとあかんやろ。はよ入り。」
「そっちの申し出だから宿代はなしでいいな。」
「かーっ!そないな事言うとる場合やあらへんやろ!」
ということで、斎藤は車夫に少し多めに運賃を支払い、武尊と張の店に入った。