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202.カクニン (斎藤・夢主)
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武尊の強情な態度に斎藤は掴んだ片腕を自分の方へ引き寄せ、もう片方の手で武尊のあごを掴み自分の方へ向けた。
あっ、と思ったが武尊は斎藤の眼を見てしまった。
穏やかな時には見ることがない何故か金色に見える眼。
その眼の前では武尊は心臓を掴まれたように動けなくなってしまうのだ。
手足に力が入らなくなり抵抗できなくなった武尊を斎藤は冷たい甲板に押し倒した。
「うっ。」
小さく声を上げた武尊に構うことなく、
「誰に抱かれた。」
と斎藤は武尊に馬乗りになり、まるで事情が分かっているかのように武尊に問うた。
自分が斎藤から逃げたい一番の理由の確信を突かれ、武尊の心は凍りついた。
事情はどうであれ、別れて一ヶ月も経たないうちによりによって斎藤の気に入らない蒼紫に抱かれ、口付けまで受けたのだ。
言えるわけがないっと、武尊が奥歯を噛み締めるのを見て斎藤は、
「俺のやり方を忘れたのか。言わないのなら言えるようにするまでだ。」
やっぱりそう言うと思った!と思った武尊は咄嗟に、
「わかった、言う、言います!」
と声を振り絞った。
「・・ほぅ、誰だ。言ってみろ。」
斎藤の鋭い眼が武尊を射抜く。
「一の知らない人だから言っても分からないだろうけど・・。」
「構わん、言え。」
もとより簡単に斎藤の尋問から逃れられると思っていなかったが知らない人の人間の名前を言えば切り抜けられるかもと思い、武尊は咄嗟に浮かんだ名前を口にした。
「塚山・・由太郎。一と別れて横浜でうろうろしていた時に親しくなった青年実業家なの。ドイツに旅立つ前にどうしても思い出を作りたいって・・。」
斎藤の動きが止まった。
武尊はもしかして即効の作り話を信じてくれた?!と少しばかり期待をして斎藤を見た。
斎藤は武尊の顔をじっと見ていたがフッと口角を上げて笑った。
その瞬間に武尊は全身鳥肌だった。
「ほぅ・・塚山由太郎か。確か俺もそんな名前を聞いた事があるな。確か塚山財閥の・・。」
「そ・・そう。一、知ってるの?」
武尊はまさか斎藤が塚山由太郎を知っているとは思わなかったのでどう取り繕うかと焦った。
「独逸へ行ったことは間違いない・・が、お前があんなガキなど相手に出来るか。」
「が・・ガキ!?」
武尊の頭に弥彦の言葉がさっと流れた。
『由太郎は・・独逸(ドイツ)だ。今は来れねぇ。』
なんでため口なのかその時はあれっと思った武尊だったが弥彦と同じぐらいの歳だったならばため口もありかと武尊は気づいたがそんな事を追及する時間はない。
何よりもこうしている間に何か言いたげな斎藤の視線が突き刺さってくる。
「ごめん・・本当の名前を言うと一が焼もちを焼いてその人に危害が・・。」
と言うと斎藤がにいぃと更に口角を上げた。
「ほぅ・・まるで俺が嫉妬でそいつを殺りそうとでも言いたげだな。だが、言ったはずだ、俺が認めるような男なら許すと。」
そんなに都合のいい相手なんかそうそういるわけないじゃない、と武尊は突っ込みたかったがそんな暇もなく、
「言えないなら言えるようにしてやるしかないな。」
と斎藤が言うので武尊は、
「言います言います!言いますってばー!」
と斎藤の下でもがいた。
とは言ったものの適当な名前なんてそう簡単には思い浮かばない。
「・・言え。」
斎藤の重い言葉が武尊にのしかかる。
「ドイツへ行った実業家っていうのは間違いない・・名前は・・。」
名前は・・名前は・・さあどうする。
武尊は一世一代の芝居を打たなければと脳をフル回転させて名前を考えた。
「・・山田・・太郎。」
斎藤は武尊の答えに沈黙した。
武尊は斎藤を真剣な眼差しで見つめた。
そもそもこんな事で冷や汗をかきたいわけじゃないと武尊はそんな思いを込めた。
自分は斎藤を想いながらもすぐに他人に抱かれる軽い女なのだと斎藤を裏切った気持ちでいっぱいで、せっかくの美しい思い出を踏みにじったのだと、だから穢れた自分に触れて欲しくなかったのだ。
蒼紫に抱かれた事は仕方がないと言ってもその事実は変わらない。
けれども、よもやすると昨晩の口づけで一瞬でも蒼紫に心をゆだねようとしたことは自分の中では嘘はつけなかった。
武尊が斎藤を見つめ続けていると斎藤は、
「阿呆が・・俺が武尊の心の内に気がつかないとでも思っているのか。」
と、冷笑を止めてため息をついた。
「え?」
武尊は斎藤の言った意味が分からず聞き返した。
「だが俺に嘘はつけんという事はすっかり忘れているようだな。分かっているな武尊。」
と言うと武尊の両腕を武尊頭上で掴み片手で押さえた。
「一!」
まさかまさかまさか・・いくら何でもこんな公衆の場で?!と危い予感が武尊の胸をよぎった。
それだけは勘弁と斎藤の良心に賭けたい武尊だった。
その時斎藤の空いた片手が武尊の頬を、そしてそのまま唇をそっと撫でた。
2015.9.18
あっ、と思ったが武尊は斎藤の眼を見てしまった。
穏やかな時には見ることがない何故か金色に見える眼。
その眼の前では武尊は心臓を掴まれたように動けなくなってしまうのだ。
手足に力が入らなくなり抵抗できなくなった武尊を斎藤は冷たい甲板に押し倒した。
「うっ。」
小さく声を上げた武尊に構うことなく、
「誰に抱かれた。」
と斎藤は武尊に馬乗りになり、まるで事情が分かっているかのように武尊に問うた。
自分が斎藤から逃げたい一番の理由の確信を突かれ、武尊の心は凍りついた。
事情はどうであれ、別れて一ヶ月も経たないうちによりによって斎藤の気に入らない蒼紫に抱かれ、口付けまで受けたのだ。
言えるわけがないっと、武尊が奥歯を噛み締めるのを見て斎藤は、
「俺のやり方を忘れたのか。言わないのなら言えるようにするまでだ。」
やっぱりそう言うと思った!と思った武尊は咄嗟に、
「わかった、言う、言います!」
と声を振り絞った。
「・・ほぅ、誰だ。言ってみろ。」
斎藤の鋭い眼が武尊を射抜く。
「一の知らない人だから言っても分からないだろうけど・・。」
「構わん、言え。」
もとより簡単に斎藤の尋問から逃れられると思っていなかったが知らない人の人間の名前を言えば切り抜けられるかもと思い、武尊は咄嗟に浮かんだ名前を口にした。
「塚山・・由太郎。一と別れて横浜でうろうろしていた時に親しくなった青年実業家なの。ドイツに旅立つ前にどうしても思い出を作りたいって・・。」
斎藤の動きが止まった。
武尊はもしかして即効の作り話を信じてくれた?!と少しばかり期待をして斎藤を見た。
斎藤は武尊の顔をじっと見ていたがフッと口角を上げて笑った。
その瞬間に武尊は全身鳥肌だった。
「ほぅ・・塚山由太郎か。確か俺もそんな名前を聞いた事があるな。確か塚山財閥の・・。」
「そ・・そう。一、知ってるの?」
武尊はまさか斎藤が塚山由太郎を知っているとは思わなかったのでどう取り繕うかと焦った。
「独逸へ行ったことは間違いない・・が、お前があんなガキなど相手に出来るか。」
「が・・ガキ!?」
武尊の頭に弥彦の言葉がさっと流れた。
『由太郎は・・独逸(ドイツ)だ。今は来れねぇ。』
なんでため口なのかその時はあれっと思った武尊だったが弥彦と同じぐらいの歳だったならばため口もありかと武尊は気づいたがそんな事を追及する時間はない。
何よりもこうしている間に何か言いたげな斎藤の視線が突き刺さってくる。
「ごめん・・本当の名前を言うと一が焼もちを焼いてその人に危害が・・。」
と言うと斎藤がにいぃと更に口角を上げた。
「ほぅ・・まるで俺が嫉妬でそいつを殺りそうとでも言いたげだな。だが、言ったはずだ、俺が認めるような男なら許すと。」
そんなに都合のいい相手なんかそうそういるわけないじゃない、と武尊は突っ込みたかったがそんな暇もなく、
「言えないなら言えるようにしてやるしかないな。」
と斎藤が言うので武尊は、
「言います言います!言いますってばー!」
と斎藤の下でもがいた。
とは言ったものの適当な名前なんてそう簡単には思い浮かばない。
「・・言え。」
斎藤の重い言葉が武尊にのしかかる。
「ドイツへ行った実業家っていうのは間違いない・・名前は・・。」
名前は・・名前は・・さあどうする。
武尊は一世一代の芝居を打たなければと脳をフル回転させて名前を考えた。
「・・山田・・太郎。」
斎藤は武尊の答えに沈黙した。
武尊は斎藤を真剣な眼差しで見つめた。
そもそもこんな事で冷や汗をかきたいわけじゃないと武尊はそんな思いを込めた。
自分は斎藤を想いながらもすぐに他人に抱かれる軽い女なのだと斎藤を裏切った気持ちでいっぱいで、せっかくの美しい思い出を踏みにじったのだと、だから穢れた自分に触れて欲しくなかったのだ。
蒼紫に抱かれた事は仕方がないと言ってもその事実は変わらない。
けれども、よもやすると昨晩の口づけで一瞬でも蒼紫に心をゆだねようとしたことは自分の中では嘘はつけなかった。
武尊が斎藤を見つめ続けていると斎藤は、
「阿呆が・・俺が武尊の心の内に気がつかないとでも思っているのか。」
と、冷笑を止めてため息をついた。
「え?」
武尊は斎藤の言った意味が分からず聞き返した。
「だが俺に嘘はつけんという事はすっかり忘れているようだな。分かっているな武尊。」
と言うと武尊の両腕を武尊頭上で掴み片手で押さえた。
「一!」
まさかまさかまさか・・いくら何でもこんな公衆の場で?!と危い予感が武尊の胸をよぎった。
それだけは勘弁と斎藤の良心に賭けたい武尊だった。
その時斎藤の空いた片手が武尊の頬を、そしてそのまま唇をそっと撫でた。
2015.9.18