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214.星の海、輝く水面(みなも) (夢主・斎藤)
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「ここにいたのか。」
それは斎藤の声だった。
武尊を抱いた相手が蒼紫だと知った斎藤は胸の中にどす黒いモヤが渦巻き、その気持ちを整理するために少し風に当たってきたのだった。
煙草を三本ほど消費し冷静になって戻って見れば武尊はいなかった。
ベッドの温もりもすでになく斎藤は武尊がどういう行動をとったかのか斎藤には容易に予測がついたので探していたのだった。
武尊はもちろん声でそれが斎藤だと分かったのだったけれども胸がつまって下を向くことが出来なかった。
斎藤は少し困った笑いをし、自分の身長の二倍ほどの高さにいる武尊の所まで途中の段差を利用して二蹴りで同じマストまで来た。
マストの支柱を挟んで互いにそこに立っていた。
マストへの着地音がしたためについ斎藤の方を見てしまった。
きっと怒っている、不機嫌だ、と思っていた斎藤の顔は優しさをにじませた顔だった。
武尊はそれが不思議で少し口を開けたまま斎藤を見つめた。
『どうして・・?』
と武尊の眼が語っていた。
斎藤は、
「家内を迎えに来たまでだ。」
と、より優しい眼で武尊にそう言った。
斎藤は正面に向き直り武尊が見ていた方向を見るとより遠くが見えるその景色に目を遠くした。
「良い眺めだな。」
武尊もその言葉を聞いて正面に向き直り斎藤と同じ景色を見た。
空いっぱいの星、波の形もわかるほど明るい海。
圧倒的な星のスペクタクルの中に二人が浮かんでいるような気がした。
そんな時マストの支柱に当てていた自分の片手に触れるものがあり武尊はハッとし手をみると斎藤の手が重ねられていた。
「随分と冷たくしたものだ。」
その言葉に武尊はうつむいた。
そしてまた信じがたい言葉を武尊は耳にした。
「俺が悪かった。」
えっ!と驚いて武尊は再び斎藤を見た。
『俺が悪かった』だなんて、そんな言葉は聞いた事がなかったからだ。
だけど今この空気、どこかで感じたことがある・・と武尊は思った。
思った矢先、
「戻るぞ。」
と言われ武尊の身は空に浮いた。
「!!」
瞬時に武尊は自分の身に起こったことに気がつき身体を少しねじり浮遊感の中、斎藤にしがみついた。
次の瞬間には斎藤の足は甲板の上にあった。
斎藤は武尊をお姫様抱っこに抱えて下へ降りたのだった。
斎藤はそっと武尊を下ろし手を取ると自分の方に引き寄せ武尊をそっと抱きしめた。
「機嫌を損ねるな、」
「だって・・他の男に抱かれた私が嫌なんでしょ?無理・・しなくていいよ。」
やっと言葉を紡いだ武尊だったが最後の方はは胸が詰まって言うのが苦しかった。
「阿呆が・・誰が武尊を嫌いだと言った。」
その言葉にいつもの皮肉は一切入っていなかった。
穏やかで優しい物言い、それが誰に対して言っているのか武尊は思い出した。
ついこの間まで藤田家で自然に聞こえてきた言葉。
夫が妻に言う言葉。
そう、斎藤が時尾と話す口調はまさにこれだったのだ。
武尊は抱きしめられながらその発見に戸惑っていた。
すると斎藤は言葉を続けた。
「武尊があまりにも可愛いすぎて虐めたくなるのも事実だ、これは治りそうにもないがやり過ぎた。」
謝罪の言葉を素直に口にするなんてあれだけ傍にいた上司からは聞いたことがなかった言葉だった。
「だから機嫌を直せ。」
武尊はようやくおずおずと斎藤を目で見上げた。
上目使いのその目は斎藤の言葉の真意を確かめるように真っ直ぐに斎藤を見た。
斎藤は武尊の視線を受け止め更に優しく微笑んだ。
強面なのに安心させるその笑顔に武尊は自分の居場所が準備されているような気がした。
そう思うと自然に武尊に両腕を斎藤の背中に回して抱きついた。
言葉は出なかった。
出せなかった。
2016.02.20
それは斎藤の声だった。
武尊を抱いた相手が蒼紫だと知った斎藤は胸の中にどす黒いモヤが渦巻き、その気持ちを整理するために少し風に当たってきたのだった。
煙草を三本ほど消費し冷静になって戻って見れば武尊はいなかった。
ベッドの温もりもすでになく斎藤は武尊がどういう行動をとったかのか斎藤には容易に予測がついたので探していたのだった。
武尊はもちろん声でそれが斎藤だと分かったのだったけれども胸がつまって下を向くことが出来なかった。
斎藤は少し困った笑いをし、自分の身長の二倍ほどの高さにいる武尊の所まで途中の段差を利用して二蹴りで同じマストまで来た。
マストの支柱を挟んで互いにそこに立っていた。
マストへの着地音がしたためについ斎藤の方を見てしまった。
きっと怒っている、不機嫌だ、と思っていた斎藤の顔は優しさをにじませた顔だった。
武尊はそれが不思議で少し口を開けたまま斎藤を見つめた。
『どうして・・?』
と武尊の眼が語っていた。
斎藤は、
「家内を迎えに来たまでだ。」
と、より優しい眼で武尊にそう言った。
斎藤は正面に向き直り武尊が見ていた方向を見るとより遠くが見えるその景色に目を遠くした。
「良い眺めだな。」
武尊もその言葉を聞いて正面に向き直り斎藤と同じ景色を見た。
空いっぱいの星、波の形もわかるほど明るい海。
圧倒的な星のスペクタクルの中に二人が浮かんでいるような気がした。
そんな時マストの支柱に当てていた自分の片手に触れるものがあり武尊はハッとし手をみると斎藤の手が重ねられていた。
「随分と冷たくしたものだ。」
その言葉に武尊はうつむいた。
そしてまた信じがたい言葉を武尊は耳にした。
「俺が悪かった。」
えっ!と驚いて武尊は再び斎藤を見た。
『俺が悪かった』だなんて、そんな言葉は聞いた事がなかったからだ。
だけど今この空気、どこかで感じたことがある・・と武尊は思った。
思った矢先、
「戻るぞ。」
と言われ武尊の身は空に浮いた。
「!!」
瞬時に武尊は自分の身に起こったことに気がつき身体を少しねじり浮遊感の中、斎藤にしがみついた。
次の瞬間には斎藤の足は甲板の上にあった。
斎藤は武尊をお姫様抱っこに抱えて下へ降りたのだった。
斎藤はそっと武尊を下ろし手を取ると自分の方に引き寄せ武尊をそっと抱きしめた。
「機嫌を損ねるな、」
「だって・・他の男に抱かれた私が嫌なんでしょ?無理・・しなくていいよ。」
やっと言葉を紡いだ武尊だったが最後の方はは胸が詰まって言うのが苦しかった。
「阿呆が・・誰が武尊を嫌いだと言った。」
その言葉にいつもの皮肉は一切入っていなかった。
穏やかで優しい物言い、それが誰に対して言っているのか武尊は思い出した。
ついこの間まで藤田家で自然に聞こえてきた言葉。
夫が妻に言う言葉。
そう、斎藤が時尾と話す口調はまさにこれだったのだ。
武尊は抱きしめられながらその発見に戸惑っていた。
すると斎藤は言葉を続けた。
「武尊があまりにも可愛いすぎて虐めたくなるのも事実だ、これは治りそうにもないがやり過ぎた。」
謝罪の言葉を素直に口にするなんてあれだけ傍にいた上司からは聞いたことがなかった言葉だった。
「だから機嫌を直せ。」
武尊はようやくおずおずと斎藤を目で見上げた。
上目使いのその目は斎藤の言葉の真意を確かめるように真っ直ぐに斎藤を見た。
斎藤は武尊の視線を受け止め更に優しく微笑んだ。
強面なのに安心させるその笑顔に武尊は自分の居場所が準備されているような気がした。
そう思うと自然に武尊に両腕を斎藤の背中に回して抱きついた。
言葉は出なかった。
出せなかった。
2016.02.20