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214.星の海、輝く水面(みなも) (夢主・斎藤)
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武尊は小用を済ませた後も部屋には戻らなかった。
ふらりと甲板を歩いているうちになんとなくマストが目に留まった。
武尊はマストを少し登ったところに腰を掛け星と星明りに浮かぶ海面を遠く見ることにした。
風は吹いて寒かったが武尊の心はその寒さも気にならなかった、いや、寒かったからこそここにいたかったのだ。
もし部屋へ戻って斎藤に口をきいて貰えなかったりしたらその場になんていられないと思ったからだ。
その事を思うと少し胸が痛い。
しかし海を見ているうちに武尊の心は落ち着いてきた。
そして呟いた。
「でも・・もし一が私の事を嫌いになってくれたんだったらそれはそれでいい・・。」
自分のことなんかすっぱり忘れて史実どおり時尾さんや家族に囲まれて明治の世を生きてくれさえすればそれでいい。
それでいいんだ・・、と武尊は波揺らぐ海面に目をやった。
そして、
(死んじゃおうかな・・。)
と、武尊は小さく呟いた。
(生きるってなんだろう。)
武尊は自分に問うてみた。
(どうしてみんな毎日普通に生きているられるんだろう。悲しいとか寂しいとかっていう感情の中で生きるってつらいのに・・つらいのに生きていられるのはどうしてなんだろう・・。)
武尊は海を見ながら足をぶらつかせ考えてみた。
(人生上手くいかないことだってあるのは昔も今も変わらないはずなのに。)
生活面や差別でいえば明治のほうがあからさまで酷いと武尊は思った。
明治(めいじ)時代じゃなくていじめ時代だ、なんて思いついたごろ合わせにちょっとだけ笑った武尊だったがすぐに面白くないやと却下した。
そして本題についてまた考えた。
(人は・・きっとその先に希望や夢があるから頑張れるんだな・・。)
武尊はそう思った。
昔の人は本当に辛抱強いしちょっとやそっとじゃ諦めなかったのだろう・・と。
そして自分の事を考えた。
(でも私には夢も希望も・・・ない・・・。)
一度は生きるのがつらくて崖から身を投げた身だ。
この世に未練・・ましてなんのしがらみもないこの明治において生きる意味などあるのかと武尊は自問した。
「もし神様がいて、出来損ないの私に憐みをかけて下さって【愛】を教えてくれたのならもう十分・・・私は幸せだったと胸を張って言えるわ。」
武尊はこんな自分の人生でも悪くはなかったとマストの上に立ち上がった。
視線が更に高くなって遠くまで見渡せる。
冷たい風が下から吹あげ武尊の髪を揺らしたが武尊は遠くを見つめたままだった。
想うのは自分に幸せをくれた斎藤の事。
部屋を無言で出て行った後ろ姿を思い出せば武尊の胸は締め付けられるように痛む。
自分を愛してくれた貴重な人・・を悲しませるくらいなら最初から出会わなければよかった、と武尊は思った。
「一を傷つけるぐらいだったら、私が【愛】を知らずに孤独で死んだ方がよかった、・・もともと【私】なんて存在しなかったんだから。」
時々思いが強すぎて本人の自覚なしに言葉がこぼれる。
作られた存在だったら人形でいればよかった。
何も考えず何も感じない人形だったらよかったと武尊は思った。
武尊は再び海を見た。
じっと見ていた。
今は十六夜丸のことなどどうでもよかった。
というよりすっかり忘れていた。
頭の中に【枷】という言葉がふと浮かんで武尊は比古の言葉から連鎖的に十六夜丸の事を思いだしたのだった。
(確かに枷を外すためには十六夜丸の事を知って解決策を探さないといけないと思っていたけど死ぬんだったらどうでもいいよね、もうそんな事は。)
もう十一月も半ばに近いのに十六夜丸の手がかりの決定打はない。
確かに最初に比べると小さな手がかりは幾つか手に入った。
けれどもこの調子では比古との期限、年末までに解決出来るなんて思えなかった。
今までは比古との約束を何とか果たそうと気持ちを奮い立たせてきたけれど、今は何もする気が起きないのだ、たった一つの情景、斎藤が無言で出ていく後ろ姿がいつまでも武尊のまぶたに焼き付いて。
そして武尊はふと思った。
「こんなところ(過去)に来ているなんて・・やっぱり現実的じゃないよね、もしかして私はすでに死んでてあの世に行く刹那こんな夢でも見てるのかもしれないし、もしかして私なんか最初から存在してなくてこれは誰かの夢の中かもしれない・・。」
どちらにしても武尊にはもうこの世界に未練なんてなかった。
比古との約束も遠い記憶の向こうにあって今の武尊にはどうでもよくなっていた。
「でもなぁ・・海に飛び込むっていう気分じゃないんだよね、今は。死ぬんだったらこのまま比古さんのところへ帰って怒らせて切ってもらったほうが比古さんも私なんてつまらない存在を忘れてくれるんじゃないのかな。」
と自嘲し、武尊はなんとなく片手を伸ばしてその手に気を込めた。
手に浮き上がる青い焔・・・いや、オーラと呼ぶべきか。
今では集中するとかなり自由に出来るようになっていた。
武尊は手首を返したりしてオーラをながめた。
あの左之助の拳を受け止めて以来、武尊はなんとなく使い方が分かってきた。
ガードするときは相手の威力を少なくできるし、攻撃するときは握った拳にオーラをまとわせれば威力は増す・・。
と武尊はそう思ったが斎藤に対し抵抗する時に使おうなんて思ったことなどなかった。
「まあ・・一の前では気持ちを集中させる暇なんかないんだけどね、アハハ。」
乾いた笑いをしてオーラを消した武尊はまた海を見ようとした時、下の方から声がした。
ふらりと甲板を歩いているうちになんとなくマストが目に留まった。
武尊はマストを少し登ったところに腰を掛け星と星明りに浮かぶ海面を遠く見ることにした。
風は吹いて寒かったが武尊の心はその寒さも気にならなかった、いや、寒かったからこそここにいたかったのだ。
もし部屋へ戻って斎藤に口をきいて貰えなかったりしたらその場になんていられないと思ったからだ。
その事を思うと少し胸が痛い。
しかし海を見ているうちに武尊の心は落ち着いてきた。
そして呟いた。
「でも・・もし一が私の事を嫌いになってくれたんだったらそれはそれでいい・・。」
自分のことなんかすっぱり忘れて史実どおり時尾さんや家族に囲まれて明治の世を生きてくれさえすればそれでいい。
それでいいんだ・・、と武尊は波揺らぐ海面に目をやった。
そして、
(死んじゃおうかな・・。)
と、武尊は小さく呟いた。
(生きるってなんだろう。)
武尊は自分に問うてみた。
(どうしてみんな毎日普通に生きているられるんだろう。悲しいとか寂しいとかっていう感情の中で生きるってつらいのに・・つらいのに生きていられるのはどうしてなんだろう・・。)
武尊は海を見ながら足をぶらつかせ考えてみた。
(人生上手くいかないことだってあるのは昔も今も変わらないはずなのに。)
生活面や差別でいえば明治のほうがあからさまで酷いと武尊は思った。
明治(めいじ)時代じゃなくていじめ時代だ、なんて思いついたごろ合わせにちょっとだけ笑った武尊だったがすぐに面白くないやと却下した。
そして本題についてまた考えた。
(人は・・きっとその先に希望や夢があるから頑張れるんだな・・。)
武尊はそう思った。
昔の人は本当に辛抱強いしちょっとやそっとじゃ諦めなかったのだろう・・と。
そして自分の事を考えた。
(でも私には夢も希望も・・・ない・・・。)
一度は生きるのがつらくて崖から身を投げた身だ。
この世に未練・・ましてなんのしがらみもないこの明治において生きる意味などあるのかと武尊は自問した。
「もし神様がいて、出来損ないの私に憐みをかけて下さって【愛】を教えてくれたのならもう十分・・・私は幸せだったと胸を張って言えるわ。」
武尊はこんな自分の人生でも悪くはなかったとマストの上に立ち上がった。
視線が更に高くなって遠くまで見渡せる。
冷たい風が下から吹あげ武尊の髪を揺らしたが武尊は遠くを見つめたままだった。
想うのは自分に幸せをくれた斎藤の事。
部屋を無言で出て行った後ろ姿を思い出せば武尊の胸は締め付けられるように痛む。
自分を愛してくれた貴重な人・・を悲しませるくらいなら最初から出会わなければよかった、と武尊は思った。
「一を傷つけるぐらいだったら、私が【愛】を知らずに孤独で死んだ方がよかった、・・もともと【私】なんて存在しなかったんだから。」
時々思いが強すぎて本人の自覚なしに言葉がこぼれる。
作られた存在だったら人形でいればよかった。
何も考えず何も感じない人形だったらよかったと武尊は思った。
武尊は再び海を見た。
じっと見ていた。
今は十六夜丸のことなどどうでもよかった。
というよりすっかり忘れていた。
頭の中に【枷】という言葉がふと浮かんで武尊は比古の言葉から連鎖的に十六夜丸の事を思いだしたのだった。
(確かに枷を外すためには十六夜丸の事を知って解決策を探さないといけないと思っていたけど死ぬんだったらどうでもいいよね、もうそんな事は。)
もう十一月も半ばに近いのに十六夜丸の手がかりの決定打はない。
確かに最初に比べると小さな手がかりは幾つか手に入った。
けれどもこの調子では比古との期限、年末までに解決出来るなんて思えなかった。
今までは比古との約束を何とか果たそうと気持ちを奮い立たせてきたけれど、今は何もする気が起きないのだ、たった一つの情景、斎藤が無言で出ていく後ろ姿がいつまでも武尊のまぶたに焼き付いて。
そして武尊はふと思った。
「こんなところ(過去)に来ているなんて・・やっぱり現実的じゃないよね、もしかして私はすでに死んでてあの世に行く刹那こんな夢でも見てるのかもしれないし、もしかして私なんか最初から存在してなくてこれは誰かの夢の中かもしれない・・。」
どちらにしても武尊にはもうこの世界に未練なんてなかった。
比古との約束も遠い記憶の向こうにあって今の武尊にはどうでもよくなっていた。
「でもなぁ・・海に飛び込むっていう気分じゃないんだよね、今は。死ぬんだったらこのまま比古さんのところへ帰って怒らせて切ってもらったほうが比古さんも私なんてつまらない存在を忘れてくれるんじゃないのかな。」
と自嘲し、武尊はなんとなく片手を伸ばしてその手に気を込めた。
手に浮き上がる青い焔・・・いや、オーラと呼ぶべきか。
今では集中するとかなり自由に出来るようになっていた。
武尊は手首を返したりしてオーラをながめた。
あの左之助の拳を受け止めて以来、武尊はなんとなく使い方が分かってきた。
ガードするときは相手の威力を少なくできるし、攻撃するときは握った拳にオーラをまとわせれば威力は増す・・。
と武尊はそう思ったが斎藤に対し抵抗する時に使おうなんて思ったことなどなかった。
「まあ・・一の前では気持ちを集中させる暇なんかないんだけどね、アハハ。」
乾いた笑いをしてオーラを消した武尊はまた海を見ようとした時、下の方から声がした。