なにも言わずに部屋を出て行かれ、残った武尊は何とも言いようがない不安感に襲われた。


今までこんな事はなかった。


気に入らない男に抱かれた自分に愛想が尽きたのだろうか、と武尊は思った。


斎藤と別れてからも心の底ではずっと斎藤に会いたいと想い焦れていて、そして奇跡の第二段のような再会に浮かれていた気持ちが嘘のように冷えていると武尊は感じた。


自分の行動が斎藤を悲しませたのなら再会などしなければよかった・・・永遠に、と武尊は思った。



（でも・・蒼紫は一つも悪くない。）



武尊は目を閉じて会津の蒼紫の姿を思い出した。


無銭では京都に帰ってこれないのではないかと心配し東京、そして会津まで探しに来てくれた蒼紫。


しかも自分は不慣れな山の中ですっころんで頭を打ち気絶していた最中で運よく蒼紫に発見されて本当に命拾いしたのだ。



（温泉宿で変な薬を飲まされた後も・・・。）



あんなことを蒼紫にさせてしまったのは結局自分の所為で・・と武尊はため息をついた。


けれどもどんな手法であろうとも間違いなくそれは【まぐあう】という行為で痴態と振りまいたことには変わりない。



「でももう二度と一に会えるなんて思ってもいなかったしこんなことを知られるなんてそれ以上に考えてもいなかった。

　自分をまだ愛してくれているから他の男に抱かれたという事を知って傷ついた・・のかな？普通の女だったらここは嬉しいと思うところなのかな・・、私は全然嬉しくないんだけど。」



と武尊は呟いて扉に目をやったが斎藤が帰ってくる気配はない。



「嫌われちゃったかな。」



武尊は少しうるっときたが目頭を両手でぐっと押さえると立ち上がって服を着た。


そして武尊も部屋を出た。