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212.がけっぷち (蒼紫・剣心・薫・斎藤・夢主)
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(遅くなった・・。)
会津の東山温泉で出会った怪しい政府の高官、九条道明の事を調べていた蒼紫が神谷道場へ戻って来たのは日付が変わる頃。
自分達(蒼紫と武尊)の部屋へ戻って来てみるとすでに行燈の灯はなく、武尊はすでに寝てしまったのかと少しがっかりした蒼紫だった。
(俺は武尊に起きて待っていて欲しかったのか・・。)
そんな淡い自分の気持ちに空虚しく蒼紫は障子を開けた。
だがそこには寝ている武尊の姿どころか布団さえ敷いていない。
蒼紫は月明かりに部屋を瞬時に見渡した。
そこには武尊の荷物はそのままにあった。
(武尊は・・何処だ!)
--嫌な予感がした。
蒼紫はそのまま剣心の部屋へ急いだ。
部屋は行燈が点いており、神谷薫の楽しそうな笑い声が庭にまで漏れていた。
障子を開けた蒼紫の姿に剣心は、
「蒼紫、おかえりでござる。遅かったでござるな。」
といつもの笑みをたたえた。
「武尊は何処だ。」
武尊がいない理由にまったく見当がつかない蒼紫は剣心にたたみかける様に言うと剣心は、
「武尊は山本少尉と昼前に出たきりでござる。急ぎの用と言っていたでござるが何やら手間取っているのかもござらんな。拙者達も武尊と蒼紫を待っていたのでござるが武尊はまだ帰ってないでござるよ。」
と言った。
「!」
蒼紫は以前山本少尉が海軍が何らかの用事の為に武尊が必要だと言っていたのを思い出した。
急ぎというからには何らかの理由で日付に変更があったのだろうと蒼紫は推測したがこんな時間までかかるとは、と、蒼紫は武尊の事が気になった。
「今日は遅いから一晩泊って来るのかもしれんでござる、何、左之の拳をかわす武尊でござるから心配はいらぬと思うでござるよ。それより蒼紫と武尊の夕餉はちゃんと取っているでござ・・」
と剣心が喋っている最中に蒼紫は姿を消した。
「おろ~。」
剣心は目を丸くして外を見た。
「『おろ~』じゃないわよ剣心、あの蒼紫さんの態度・・気になるわよ。まさか蒼紫さんに限って・・。」
「薫殿・・蒼紫の事は蒼紫に任せるでござるよ。」
「でも・・。」
薫は不安を口にした。
あの葵屋で座禅を組んでいた蒼紫を見て、それからこの間操ちゃんとうちにいた蒼紫を見て、少しだけ蒼紫が自分達の前にいる同じ人間なんだと感じることが出来たけど、すれ違いざまに感じる【気】が明らかに違っていた。
御庭番衆にだけは心をちょっとだけ許したような・・と薫が感じるぐらいだったのに武尊の場合はまるで違うのが薫にも分かる。
(これじゃぁ操ちゃんは・・・。)
操とは愛する人を信じて一緒に闘った仲間。
薫にとって武尊の事は別に剣心が言うほど嫌いや苦手な感情はないが応援したいのは操の方だ。
俯いた薫に剣心はポンと薫の肩を叩いた。
「夜風は冷たいでござるな。」
薫が顔をあげるとそこにはいつもの剣心のはにかんだ笑顔があった。
「蒼紫の帰るところは操殿のところしかないでござる、心配ないでござるよ。」
「剣心・・。」
いつもと変わらない剣心の微笑みに薫は安堵し笑みを返した。
剣心は薫の笑顔にいっそう笑みを深めて静かに
「拙者が帰るところは・・薫殿のところでござる。」
と言うと薫をそっと抱きしめた。
その数分後、剣心の部屋の灯りは消えた。