※1 記憶を失っている時の名前は変換できません。
211.悪趣味 (斎藤・夢主・マーティン)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
斎藤に寄り掛かりながらあの小さな船室へ戻って来た武尊は簡易ベッドに突っ伏しそのまま動かなくなった。
「せめて脱いで寝ろよ。」
ぼやきながらも仕方がないなと斎藤は武尊の緋色のドレスを脱がし楽にさせた。
毛布を掛け、しばらく武尊の寝顔を見ていた斎藤はそっと部屋を出た。
真っ暗な海に月の光が降り注ぐ。
その中で斎藤は月を見ながら煙草をふかした。
「フジタ。」
斎藤が振り向けばそこにはマーティンの姿があった。
「カノジョハ ダイジョウブデスカ。」
斎藤は怪訝にマーティンを見て、
「何故貴様がそこまで武尊を気にする、一連の話は武尊から聞いているが少々気にかけすぎだな。」
と言った。
「アナタガ ホントウニ カノジョヲ アイシテイルノハ ワカル、ケレドモ ワタシモ アイシテイル。」
まさか老人にまでこうしつこく付きまとわれるとは、しかもアイシテイルなどと言われ斎藤は苦々しくマーティンを見た。
「悪いな、武尊はすでに俺のものだ。」
仮にも亭主と名乗っている男の前でイケシャアシャアと、と思う気持ちで斎藤は不愉快千万だった。
するとマーティンはそんな斎藤の心の内を読んだのか、
「ニホンジンノ キミニハ リカイシガタイトオモウガ ワタシノ アイハ イツクシミノアイダヨ、ワカルカネ。ダカラコノフネニ キミガイテ ヨカッタ。」
と、両腕を広げるジェスチャーをした。
とりあえず自分は恋敵なのかと思った斎藤は何故自分がこの船に乗って良かったと言われなければならないのか腑に落ちなかった。
武尊に会えてよかったと思うのは自分であって自分が乗船したことがマーティンによかったと思われる理由が斎藤には分からなかった。
「その理由を聞こう。」
するとマーティンはツカツカと歩いて斎藤の正面の手すりに肘をかけると、サンタのような笑みを浮かべ、
「ヒトツハ カノジョノ トビッキリノエガオガ ミレタ。モウヒトツハ オンナスキーカラ カノジョヲ マモルコトガデキタ。」
なるほど、一つ目の理由は斎藤にも納得出来た。
「二つ目の意味が分からんが。言っておくがあんな肥えた中年男が何かしでかそうとしても武尊が本気をだせば痛い目に合うのは向こうだぞ。」
「タトエ ソウデアッテモ ココハ リクカラハナレタ ウミノウエ。ソレバカリハ ドウニモナラナイ。カノジョハ・・ワタシノ シテキ カンジョウヲ ヌキニシテモ ジュウブン カチガアル・・ト、ワタシノ ショウニントシテノ カンガ ソウ ササヤクノダ。」
二人の間に沈黙と紫煙が流れた。
マーティンは話を続けた。
「カノジョニハ ナニカ トクベツナモノヲ カンジル。ソレガナニカト トワレレバ ドウセツメイシテイイノカ ムズカイイトコロナノダガ・・ ナントイッテ イイノカ、ソウ、【ダイヤノゲンセキ】ダ。」
「【ダイヤノゲンセキ】?」
斎藤は初耳な言葉を鋭い目つきで聞き返した。
(たかが夜会で出会った・・いや、こいつと武尊は何度か会って話をしている。だがそれだけで武尊が秘めている何かに感づいたというのか。)
斎藤は自分だけが気がついていたと思っていた事をマーティンが言ったので少々驚いていたのだ。
それは十六夜丸のことではない。
ごく普通の時の武尊に関して斎藤は気になることがあった。
それは時折感じる【違和感】だ。
明治になって再会してから時々武尊に垣間見るちぐはぐな受け答え。
まるで武尊一人だけこの時代の空気から浮いているような感じがすると斎藤は感じることがあったのだ。
そして武尊もその【違和感】とやらを自覚していると斎藤は感じていた。
何故ならば斎藤が怪しいと思った時は必ず武尊はそれを取り繕うような言動をするからだ。
そういう時は斎藤は武尊をそれ以上追及しなかった。
【してはいけない】、斎藤の本能が斎藤にそう呼びかけたからだ。
だからその【違和感】の正体を斎藤は明確には知らない、そしてその【違和感】を目の前のマーティンは【ダイヤノゲンセキ】と呼んだ。
(気に入らんな・・そして数度しか会っていない異人にさえそれを気取られてしまうほどとはな。)
斎藤は眉間に皺を深く寄せてマーティンを見詰めた。
「ダイヤトハ ダイヤモンド、トイウウツクシイ イシダ。ニホンジンハ オソラクミタコトガ ナイダロウガ ソレハミゴトナマデニ ウツクシク カガヤク イシナノダ。カノジョニハ・・ダイヤトオナジヨウニ トテツモナイ カチガ アルヨウニオモエテナラナイ。ソレハ ワタシノ ナガネンノ ショウニントシテノカン ガソウイワセルノダ。オンナスキーモ カノジョノ カチ ニ キガツイタ。ロシアニ ツレテイク カノウセイガアッタ。」
「人さらいか・・聞き捨てならんな。お前はそれを容認するということなんだな。」
斎藤がそう聞くとマーティンは、
「ワタシモ ヒトノコダ。コノトシニナッテカラ イウノモナンダガ・・イヤ、コノトシダカラカ、カゾクガ ホシイノダヨ。」
と答えた。
それは武尊を家族というかたちであっても、自分のものにしたいというマーティンの欲望であった。
斎藤は乗せてもらった恩義はあるものの、このような輩の欲望に武尊が巻き込まれなくてよかったと心底思った。
と同時にそれほどまでに執着するマーティンの娘とはどのような娘だったのか斎藤は少し気になった。
軽蔑の眼差しをマーティンに向けながらも、
「【家族】、か。武尊の話では、貴様の娘がたいそう武尊に似ているそうだな。写真はあるのか。」
と言った。
マーティンは懐から以前武尊に見せた写真を取り出し斎藤に手渡した。
満月に向かう太った月は武尊を見るには十分な明るさをもっていた。
「せめて脱いで寝ろよ。」
ぼやきながらも仕方がないなと斎藤は武尊の緋色のドレスを脱がし楽にさせた。
毛布を掛け、しばらく武尊の寝顔を見ていた斎藤はそっと部屋を出た。
真っ暗な海に月の光が降り注ぐ。
その中で斎藤は月を見ながら煙草をふかした。
「フジタ。」
斎藤が振り向けばそこにはマーティンの姿があった。
「カノジョハ ダイジョウブデスカ。」
斎藤は怪訝にマーティンを見て、
「何故貴様がそこまで武尊を気にする、一連の話は武尊から聞いているが少々気にかけすぎだな。」
と言った。
「アナタガ ホントウニ カノジョヲ アイシテイルノハ ワカル、ケレドモ ワタシモ アイシテイル。」
まさか老人にまでこうしつこく付きまとわれるとは、しかもアイシテイルなどと言われ斎藤は苦々しくマーティンを見た。
「悪いな、武尊はすでに俺のものだ。」
仮にも亭主と名乗っている男の前でイケシャアシャアと、と思う気持ちで斎藤は不愉快千万だった。
するとマーティンはそんな斎藤の心の内を読んだのか、
「ニホンジンノ キミニハ リカイシガタイトオモウガ ワタシノ アイハ イツクシミノアイダヨ、ワカルカネ。ダカラコノフネニ キミガイテ ヨカッタ。」
と、両腕を広げるジェスチャーをした。
とりあえず自分は恋敵なのかと思った斎藤は何故自分がこの船に乗って良かったと言われなければならないのか腑に落ちなかった。
武尊に会えてよかったと思うのは自分であって自分が乗船したことがマーティンによかったと思われる理由が斎藤には分からなかった。
「その理由を聞こう。」
するとマーティンはツカツカと歩いて斎藤の正面の手すりに肘をかけると、サンタのような笑みを浮かべ、
「ヒトツハ カノジョノ トビッキリノエガオガ ミレタ。モウヒトツハ オンナスキーカラ カノジョヲ マモルコトガデキタ。」
なるほど、一つ目の理由は斎藤にも納得出来た。
「二つ目の意味が分からんが。言っておくがあんな肥えた中年男が何かしでかそうとしても武尊が本気をだせば痛い目に合うのは向こうだぞ。」
「タトエ ソウデアッテモ ココハ リクカラハナレタ ウミノウエ。ソレバカリハ ドウニモナラナイ。カノジョハ・・ワタシノ シテキ カンジョウヲ ヌキニシテモ ジュウブン カチガアル・・ト、ワタシノ ショウニントシテノ カンガ ソウ ササヤクノダ。」
二人の間に沈黙と紫煙が流れた。
マーティンは話を続けた。
「カノジョニハ ナニカ トクベツナモノヲ カンジル。ソレガナニカト トワレレバ ドウセツメイシテイイノカ ムズカイイトコロナノダガ・・ ナントイッテ イイノカ、ソウ、【ダイヤノゲンセキ】ダ。」
「【ダイヤノゲンセキ】?」
斎藤は初耳な言葉を鋭い目つきで聞き返した。
(たかが夜会で出会った・・いや、こいつと武尊は何度か会って話をしている。だがそれだけで武尊が秘めている何かに感づいたというのか。)
斎藤は自分だけが気がついていたと思っていた事をマーティンが言ったので少々驚いていたのだ。
それは十六夜丸のことではない。
ごく普通の時の武尊に関して斎藤は気になることがあった。
それは時折感じる【違和感】だ。
明治になって再会してから時々武尊に垣間見るちぐはぐな受け答え。
まるで武尊一人だけこの時代の空気から浮いているような感じがすると斎藤は感じることがあったのだ。
そして武尊もその【違和感】とやらを自覚していると斎藤は感じていた。
何故ならば斎藤が怪しいと思った時は必ず武尊はそれを取り繕うような言動をするからだ。
そういう時は斎藤は武尊をそれ以上追及しなかった。
【してはいけない】、斎藤の本能が斎藤にそう呼びかけたからだ。
だからその【違和感】の正体を斎藤は明確には知らない、そしてその【違和感】を目の前のマーティンは【ダイヤノゲンセキ】と呼んだ。
(気に入らんな・・そして数度しか会っていない異人にさえそれを気取られてしまうほどとはな。)
斎藤は眉間に皺を深く寄せてマーティンを見詰めた。
「ダイヤトハ ダイヤモンド、トイウウツクシイ イシダ。ニホンジンハ オソラクミタコトガ ナイダロウガ ソレハミゴトナマデニ ウツクシク カガヤク イシナノダ。カノジョニハ・・ダイヤトオナジヨウニ トテツモナイ カチガ アルヨウニオモエテナラナイ。ソレハ ワタシノ ナガネンノ ショウニントシテノカン ガソウイワセルノダ。オンナスキーモ カノジョノ カチ ニ キガツイタ。ロシアニ ツレテイク カノウセイガアッタ。」
「人さらいか・・聞き捨てならんな。お前はそれを容認するということなんだな。」
斎藤がそう聞くとマーティンは、
「ワタシモ ヒトノコダ。コノトシニナッテカラ イウノモナンダガ・・イヤ、コノトシダカラカ、カゾクガ ホシイノダヨ。」
と答えた。
それは武尊を家族というかたちであっても、自分のものにしたいというマーティンの欲望であった。
斎藤は乗せてもらった恩義はあるものの、このような輩の欲望に武尊が巻き込まれなくてよかったと心底思った。
と同時にそれほどまでに執着するマーティンの娘とはどのような娘だったのか斎藤は少し気になった。
軽蔑の眼差しをマーティンに向けながらも、
「【家族】、か。武尊の話では、貴様の娘がたいそう武尊に似ているそうだな。写真はあるのか。」
と言った。
マーティンは懐から以前武尊に見せた写真を取り出し斎藤に手渡した。
満月に向かう太った月は武尊を見るには十分な明るさをもっていた。