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209.ナターシャ (斎藤・夢主・オンナスキー・ナターシャ・マーティン)
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「ヤレヤレ、ニホンジンノショクジハ ドウシテ ソンナニ セッカチナノダ。マダ サケ モ タクサンアル、カシ モ アル。ソレニ スバラシイ バイオリニストモ イル。オオ・・ソウダ!」
オンナスキーはそう言って手を打った。
斎藤と武尊は顔を見合わせて、それからオンナスキーを見た。
「キミタチモ オドラナイカ。 ワタシタチハ サクバンモ オドッタ。マーティンノ バイオリンデ オドルナンテ ゼイタクダゾ。」
オンナスキーは楽しげに斎藤と武尊にそう提案した。
武尊は確かにあれだけ音楽に精通するマーティンのバイオリンならさぞかしいい音色なんだろうなと思ったが、
(踊る?踊るってワルツか何かかな?斎藤さんが?ワルツ?・・・ププッ。)
と、眉間にシワを寄せてクルクル回る斎藤の姿を想像しただけで思わず吹きそうになった。
(いやいや、笑っちゃいけないよね。実際もう多くの上流階級の日本人の男女が夜会で踊ってるんだから一が躍ったっておかしくないよね。)
それにしてもなぁ、と武尊は斎藤の顔を見てニコッと笑った。
「何だ、その意味のある笑いは。」
「笑ってないって。一は踊るの?」
と言いつつも妄想が楽しすぎて笑ってないなんて嘘はバレバレだった。
「阿呆、何が悲しくて西洋かぶれの踊りを踊る必要がある、行くぞ。」
斎藤はそう言って席を立った。
武尊も斎藤が立ったので自分も立ち上がった。
「あ・・。」
酔ってはいないはずだが度数の強いウオッカが少し入ったからだろうか、武尊は自分の足が少しふわっとした気がしてよろけた。
斎藤がすかさず武尊を支えた。
「大丈夫か。」
「うん、私お酒に弱いからもしかして足に少しきたかも。」
武尊がそう言って歩き出そうとした時、マーティンが
「フジタ、カナイト オドリタクナイノカ。」
と声をかけた。
斎藤はマーティンの方を振り返った。
するとオンナスキーも、
「ヨケレバ ナターシャノ フクヲカソウ。オトコノ フクデハ オモシロクナイダロウ。」
と言い、ナターシャにロシア語で何か話した。
ナターシャはそれを聞いてフッっと笑って口角を上げた。
オンナスキーが斎藤に再び、
「ナターシャモ イイトイッテイル。ドウダネ。」
と問いかけると武尊は、
「行こう一。踊るなんて・・。」
と斎藤の背中を押した。
社交ダンスも教育の一環として受けた武尊は簡単なのは踊れると思うのであるが、斎藤が踊れるはずはなく、どうみても気の進むようには見えないダンスに無縁の【武士】にそれを強要するのは武尊は忍びなかったからだ。
ところが武尊が斎藤を押しても斎藤はびくとも動かなかった。
「一?」
あれ?っと思った武尊が斎藤を見上げると斎藤はオンナスキーにまた厳しい目を向けていた。
そして、
「武尊に女物の服だと?」
とオンナスキーに念を押すように問うとオンナスキーは、
「アア、セタケハソレホド カワラナイ、ダイジョウブダロウ。」
と言った。
斎藤は、
「武尊に女物の洋服か・・見て置いて損はないか。」
と呟いた。
「ええーっ!」
予想だにしなかった斎藤の答えに武尊は大きな声をあげた。
どういう心境の変化よ!と武尊が思う反面、斎藤としては今生の思い出として武尊の服を着た武尊を見納めて置きたいという気持ちが湧いてきたからだ。
「着物でなくて悪いがな。」
斎藤はそう武尊に言い、二、三歩歩いて壁にもたれ煙草に火を点けた。
「私・・女物は・・。」
武尊の服に抵抗がある武尊は困惑して早く帰ろうと斎藤に詰め寄った。
するとナターシャがおもむろに立ち上がり、パンパンと手を打つと横の扉が開き、侍女であろうか、年増から若い子までの女が5人ほど出てきた。
そしてナターシャが彼女たちに何か言うと、侍女たちはワラワラと武尊の所にやって来て取り囲んだ。
「な・・なに・・?」
武尊は嫌な予感がして斎藤に引っ付いた。
「おそらく武尊を着替えさせてくれるんじゃないか。」
斎藤は余裕の笑みを浮かべてにやっと笑った。
「笑ってる場合じゃないでしょ!戻ろうよ!」
武尊がそう抗議すると斎藤は煙草を口に咥え、武尊の両肩をポンと叩き肩を掴むとクルっと武尊を反転させた。
「一!」
「いいから言って来い、俺に一度は女物を着ている所を見せろ。」
と武尊の背を押した。
武尊は侍女にあっという間に取り囲まれた。
そして武尊はワラワラと引きずられるように奥へと連れて行かれた。
「一の馬鹿ぁ~!」
それが侍女控え室へと連れ去られる武尊の最後の言葉となった。
雑学余談:
ニコライフスクは明治2年にはロシア側の樺太開拓基地として栄えた重要な町でした。
流氷が生まれるというあのアムール川沿いにあります。
そしてここには武器製造工場もあったということです。
オンナスキーが拳銃を含む武器も商売に取り入れていたかどうかは定かではありませんがその可能性もありますね。(長編ではそこらへんは追及しません、たぶん)
それが丁度この明治11年(1878年)海軍施設がウラジオストックに移り急速にさびれた町になったそうです。
ウラジオストックといえば、ほとんどの日本人が聞いた事のある町の名前ですが、もともとここはロシアの土地ではなく、中国(当時は清、満州の一部)でした。
るろうに剣心でもちらっと出てきた(と思う)アヘン戦争の後に起こったアロー戦争の後の紛争(イギリス・フランスと中国)の仲裁をロシアがしてその時に締結した北京条約によってロシアが獲得した満州の一部を得ました。
ロシアにとっては冬でも凍らない不凍港を手に入れることは悲願でもあり早速ここにロシア帝国の海軍の基地をつくったのであります。
その後ニコライフスクの町は金鉱・漁業で復活しますがロシア革命後赤軍バルチザンによる住民虐殺事件(尼港事件)が起きてます。
※尼港=ニコライフスクのこと
開国後、日本を取り巻く国際情勢はあまり教えられない事が多いのですが本当、知っておかなければならないと思う事っていっぱいあるんだな、と今回も痛感しました。
るろうに剣心に出会って知識が増えていく!
2015.12.8