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201.船上のサプライズ (夢主・山本少尉・カフェおじさん・オンナスキー)
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まさかこんな気持ちでこんな事情で横浜に来るなんて思わなかった、と武尊は駅に降りたった。
目に映る景色すべてに懐かしさがこみ上げる。
過ぎ去った時間というものはなんて惨酷なんだろうと思う。
ないものねだりをしても仕方がないのにと思うのに武尊は斎藤の姿を無意識に探していた。
「どうかしましたか。」
「・・いいえ、何も。」
武尊は山本少尉の声に現実に引き戻された。
そして、
「急いで横浜まで来た理由、そろそろ教えてもらえませんか。」
と本題を切り出した。
「ええ、分かりました。そうですね、ここからも見えますし。」
と言い山本少尉は沖に停泊している大きな船を指差した。
「あれは?」
なんとなく見慣れない形の船だった。
「この間お話した露西亜船です。」
「へぇ・・もう港に着いたんだ。でも向こうは商船なんだから横浜でいろいろ用事とかあるんじゃないの?勝負は予定通り十日なんじゃないの?」
「それが今朝方露西亜の使いが鎮守府の方へ来て食糧を調達後、明日の夜には出港すると通知が来て我々は慌てているのです。」
「じゃあ、勝負はなくなったってこと?だったら私はいらないんじゃない?」
「いえ、露西亜船が出ていく前に拳銃を買い上げないといけません。その為に貴方を迎えに行ったのです。貴方が会津から戻っていて本当によかった。」
「先日戻って来たばかりですけどね・・。」
「さ、急いで行きましょう。」
「行きましょうってどこへ?」
「もちろん露西亜商船です。私は今回の拳銃の買い上げについての全権を任されています、なんとしてでも任務を果たさなければ。小舟はすでに用意してあります。」
「私も!?」
「その為にお連れしたのです。我らが拳銃を買い上げる条件には貴方が必要なんですから。」
武尊はむぅと唸ったが、電話さえないこの時代のコミュニケーションが上手くいかない事もあるというのは十分考えられることだと渋々と山本少尉と共に準備された小舟に乗っり込むと露西亜商船へ向かった。
そこで乗船を許されたのは山本少尉と武尊だけ。
武尊達は客室へ通されてそこで相手を待った。
武尊にしてみれば周りはすべてアンティークのかたまり。
未来でもめったにお目にかかる事が出来ない帝政ロシア時代のものと思われる机や装飾品に目移りしながら険しい顔の山本少尉とは対照的に興味深々に室内をうろうろしていた。。
しばらくすると誰かが部屋に入って来た。
アメリカ人ともオランダ人とも違う異人の顔。
(この船はロシア船ってことはこの人はロシア人なんだろうな・・ぅわぁ・・本当にロシア人ぽい顔してるな、誰だろう。)
と武尊が思っているとその異人が口を開いた。
「コレハシバラク、ヤマモト。」
聞こえたのは紛れもない日本語で武尊はビックリして目を丸くした。
そんな武尊の顔を見て異人は、
「コチラハ?」
と、山本少尉に尋ねた。
「先日話した拳銃の購入条件の勝負をする土岐というものだ。」
と山本少尉は武尊を紹介した。
「ホォォ。」
異人は意外だと言わんばかりの声をあげ右手を武尊に差し出した。
「ヨウコソ、ワガ ショウセンヘ。ワタシハ アレクサンドル・スケベヴィッチ・オンナスキー デス。」
つい右手を出されると反射的に立ち上がって自分も右手を差し出す武尊だった。
こうして握手をする習慣も懐かしいと思いつつも武尊は聞こえた名前に耳を疑って握手をしながら大きなロシア人を見上げた。
(【すけべびっち・おんなすきー】だって?冗談みたいな名前でしょ。)
武尊の心の声が聞こえたかのようにアレクサンドルは武尊に、
「コノナマエハ ニホンジン スグオボエル、シゴト タスカル。」
と武尊に言った。
だがそのすぐ後にアレクサンドルは、
「ヤマモト、ジョウキョウハ カワッタ。ケンジュウハ アナタニハ ウレナイ。」
と言った。
「なんだと!約束が違うではないか。」
「カクヤクハシテイナイハズダ、ソウダロ、ヤマモト。セッカクキテモラッテワルイガ オヒキトリヲ。」
自分も射撃の腕はかなりのものだと自負する山本少尉だがその自分の腕よりも上をいく武尊の射撃の腕ならば拳銃は間違いなく買う事が出来ると思っていた故に山本少尉は寝耳がごとく、アレクサンドルの言葉に動揺を隠せなかった。
「いくらだ、いくら出せば売るんだ!」
山本少尉は憤慨をもらしながらアレクサンドルに言ったがアレクサンドルは黙ったままだった。
「・・わかった、もう少し金が用意できるかいったん戻って海軍省に交渉してこよう。それまで土岐を船に残す、私が戻るまで待っていてくれ。」
とアレクサンドルに言った。
「え!?」
驚いたのは武尊の方だった。
射撃の勝負がないなら自分は関係ない、自分こそとっとと船を下りて帰るのが話の筋というものではないかと思った。
アレクサンドルは山本少尉に、
「オスキナヨウニ。」
と言っただけだった。
さっそく部屋を出ようとする山本少尉に、
「山本少尉!」
と呼びかけるが山本は、
「すまないがよろしく頼む、土岐殿。今日本は富国強兵の大事な時なんだ、土岐殿なら分かるだろう?」
と言うと乗って来た小舟で横浜へと戻って行った。
(ああ~~~なんてこった!)
なんだか面倒なことに巻き込まれたと武尊はため息をついた。
なんでこうなるのかなぁ、と思いつつも視線を感じてその方向へ顔を向けるとアレクサンドルが武尊をじっとみていたのであった。
「・・どうかいたしましたか?」
と武尊が問うと、
「イエ、アナタハ ナゼカ ホカノ ニホンジントハチガウ カンジガ シタノデ ツイ ミイッテシマイマイシタ。」
と言った。
変に勘のいいロシア人だと武尊は少し警戒しながら、
「私からするとあなたがそんなに日本語を話すのが不思議ですけどね。」
と言った。
アレクサンドルは口髭を撫でながら、
「ムカシカラ ニホントハ イロイロ ショウバイヲシマシタカラネ。ハコダテモ ナガク タイザイシマシタ。」
と、手振りを加えて武尊に話した。
「だからそんなに日本語が上手なんですか。」
「ジョウズカドウカ ワカリマセンガ アルテイドワカリマス。オット、キャクジンニ オチャモダサナイナンテ コレハシツレイ。ナターシャニ オコラレル。」
「ナターシャ?」
いきなり第三者の名前が出てきて武尊が思わず聞き返すと、アレクサンドルは、
「ナターシャハ ジナーデス・・ニホンデハ【カナイ】ト イウンダッタカナ。トニカク オチャヲ モッテコサセヨウ。」
と、言って部屋を出て行った。
すぐにお茶が運ばれてきた。
紅茶だった。
武尊は紅茶を運んで来るのはアレクサンドルの奥さんかなと思っていたけれども運んできたのは普通に男の給仕だった。
だが武尊はそんなことよりもこの時代に初めて紅茶を見たと心喜びを隠せなかった。
御丁寧にジャムまで添えてあった。
お茶を持って来た給仕はすぐに下がってしまったので武尊は部屋に一人きりになったが、その方が気兼ねしなくていいとリラックスできた。
「本物の紅茶だ!いいなぁ~この香り。コーヒーもいいけど紅茶がいいっていうのもわかるなぁ!」
と、ジャムをスプーンにすくってチョビチョビ食べては紅茶を飲んだ。
ティーカップの他にお湯が入ったポットもあったので武尊はお代わりも楽しんでゆっくり暇な時間を楽しんでいると20分も経ったころだろうか、部屋が細かく振動し始めた。
その振動は徐々に大きくなっていった。
「まさか・・!」
武尊は客室を飛び出した。
「うあっ!」
ドアを開けて武尊は思わず叫んだ。
外は一面ひどい霧がかかっていたからだ。
10m先は白い世界に飲み込まれてしまっていた。
もともと天気が悪かったと思っていた日だったが武尊が外へ出た時間は昼過ぎにもかかわらず暗く、雨が降り出しそうな感じにもとれた。
武尊は海に落ちないように手すりにつかまり海面を見下ろしたが下も真っ白だった。
間違いなく船のエンジンはかかっており、その大きな音にまぎれて船が進む時の独特の波の音が微かに聞こえた。
「まさかと思うけどもしかして船、動いてる?!」
武尊は青くなった。
確かこの船の出港は明日の夕方だと聞いた。
そしてさっきアレクサンドルはロシアのどこかの町に帰るといった。
まさかのまさかだと思うけれども自分を乗せたままロシアに向かってるのではと思わざるを得ない状況に武尊は、
「うっそ・・信じられない・・。」
と、目の前の光景に目を皿のようにした。
帰ろうにもこの霧の中、陸がどちらとも分からないのに海に飛び込むわけにはいかなかったし、飛び込むにしても今は十一月だ。
いかに横浜沖とは言えども海水浴には寒すぎる。
武尊はどうする事も出来ず、ただ手すりにつかまって海の向こう、白い霧を茫然と眺めていた。
目に映る景色すべてに懐かしさがこみ上げる。
過ぎ去った時間というものはなんて惨酷なんだろうと思う。
ないものねだりをしても仕方がないのにと思うのに武尊は斎藤の姿を無意識に探していた。
「どうかしましたか。」
「・・いいえ、何も。」
武尊は山本少尉の声に現実に引き戻された。
そして、
「急いで横浜まで来た理由、そろそろ教えてもらえませんか。」
と本題を切り出した。
「ええ、分かりました。そうですね、ここからも見えますし。」
と言い山本少尉は沖に停泊している大きな船を指差した。
「あれは?」
なんとなく見慣れない形の船だった。
「この間お話した露西亜船です。」
「へぇ・・もう港に着いたんだ。でも向こうは商船なんだから横浜でいろいろ用事とかあるんじゃないの?勝負は予定通り十日なんじゃないの?」
「それが今朝方露西亜の使いが鎮守府の方へ来て食糧を調達後、明日の夜には出港すると通知が来て我々は慌てているのです。」
「じゃあ、勝負はなくなったってこと?だったら私はいらないんじゃない?」
「いえ、露西亜船が出ていく前に拳銃を買い上げないといけません。その為に貴方を迎えに行ったのです。貴方が会津から戻っていて本当によかった。」
「先日戻って来たばかりですけどね・・。」
「さ、急いで行きましょう。」
「行きましょうってどこへ?」
「もちろん露西亜商船です。私は今回の拳銃の買い上げについての全権を任されています、なんとしてでも任務を果たさなければ。小舟はすでに用意してあります。」
「私も!?」
「その為にお連れしたのです。我らが拳銃を買い上げる条件には貴方が必要なんですから。」
武尊はむぅと唸ったが、電話さえないこの時代のコミュニケーションが上手くいかない事もあるというのは十分考えられることだと渋々と山本少尉と共に準備された小舟に乗っり込むと露西亜商船へ向かった。
そこで乗船を許されたのは山本少尉と武尊だけ。
武尊達は客室へ通されてそこで相手を待った。
武尊にしてみれば周りはすべてアンティークのかたまり。
未来でもめったにお目にかかる事が出来ない帝政ロシア時代のものと思われる机や装飾品に目移りしながら険しい顔の山本少尉とは対照的に興味深々に室内をうろうろしていた。。
しばらくすると誰かが部屋に入って来た。
アメリカ人ともオランダ人とも違う異人の顔。
(この船はロシア船ってことはこの人はロシア人なんだろうな・・ぅわぁ・・本当にロシア人ぽい顔してるな、誰だろう。)
と武尊が思っているとその異人が口を開いた。
「コレハシバラク、ヤマモト。」
聞こえたのは紛れもない日本語で武尊はビックリして目を丸くした。
そんな武尊の顔を見て異人は、
「コチラハ?」
と、山本少尉に尋ねた。
「先日話した拳銃の購入条件の勝負をする土岐というものだ。」
と山本少尉は武尊を紹介した。
「ホォォ。」
異人は意外だと言わんばかりの声をあげ右手を武尊に差し出した。
「ヨウコソ、ワガ ショウセンヘ。ワタシハ アレクサンドル・スケベヴィッチ・オンナスキー デス。」
つい右手を出されると反射的に立ち上がって自分も右手を差し出す武尊だった。
こうして握手をする習慣も懐かしいと思いつつも武尊は聞こえた名前に耳を疑って握手をしながら大きなロシア人を見上げた。
(【すけべびっち・おんなすきー】だって?冗談みたいな名前でしょ。)
武尊の心の声が聞こえたかのようにアレクサンドルは武尊に、
「コノナマエハ ニホンジン スグオボエル、シゴト タスカル。」
と武尊に言った。
だがそのすぐ後にアレクサンドルは、
「ヤマモト、ジョウキョウハ カワッタ。ケンジュウハ アナタニハ ウレナイ。」
と言った。
「なんだと!約束が違うではないか。」
「カクヤクハシテイナイハズダ、ソウダロ、ヤマモト。セッカクキテモラッテワルイガ オヒキトリヲ。」
自分も射撃の腕はかなりのものだと自負する山本少尉だがその自分の腕よりも上をいく武尊の射撃の腕ならば拳銃は間違いなく買う事が出来ると思っていた故に山本少尉は寝耳がごとく、アレクサンドルの言葉に動揺を隠せなかった。
「いくらだ、いくら出せば売るんだ!」
山本少尉は憤慨をもらしながらアレクサンドルに言ったがアレクサンドルは黙ったままだった。
「・・わかった、もう少し金が用意できるかいったん戻って海軍省に交渉してこよう。それまで土岐を船に残す、私が戻るまで待っていてくれ。」
とアレクサンドルに言った。
「え!?」
驚いたのは武尊の方だった。
射撃の勝負がないなら自分は関係ない、自分こそとっとと船を下りて帰るのが話の筋というものではないかと思った。
アレクサンドルは山本少尉に、
「オスキナヨウニ。」
と言っただけだった。
さっそく部屋を出ようとする山本少尉に、
「山本少尉!」
と呼びかけるが山本は、
「すまないがよろしく頼む、土岐殿。今日本は富国強兵の大事な時なんだ、土岐殿なら分かるだろう?」
と言うと乗って来た小舟で横浜へと戻って行った。
(ああ~~~なんてこった!)
なんだか面倒なことに巻き込まれたと武尊はため息をついた。
なんでこうなるのかなぁ、と思いつつも視線を感じてその方向へ顔を向けるとアレクサンドルが武尊をじっとみていたのであった。
「・・どうかいたしましたか?」
と武尊が問うと、
「イエ、アナタハ ナゼカ ホカノ ニホンジントハチガウ カンジガ シタノデ ツイ ミイッテシマイマイシタ。」
と言った。
変に勘のいいロシア人だと武尊は少し警戒しながら、
「私からするとあなたがそんなに日本語を話すのが不思議ですけどね。」
と言った。
アレクサンドルは口髭を撫でながら、
「ムカシカラ ニホントハ イロイロ ショウバイヲシマシタカラネ。ハコダテモ ナガク タイザイシマシタ。」
と、手振りを加えて武尊に話した。
「だからそんなに日本語が上手なんですか。」
「ジョウズカドウカ ワカリマセンガ アルテイドワカリマス。オット、キャクジンニ オチャモダサナイナンテ コレハシツレイ。ナターシャニ オコラレル。」
「ナターシャ?」
いきなり第三者の名前が出てきて武尊が思わず聞き返すと、アレクサンドルは、
「ナターシャハ ジナーデス・・ニホンデハ【カナイ】ト イウンダッタカナ。トニカク オチャヲ モッテコサセヨウ。」
と、言って部屋を出て行った。
すぐにお茶が運ばれてきた。
紅茶だった。
武尊は紅茶を運んで来るのはアレクサンドルの奥さんかなと思っていたけれども運んできたのは普通に男の給仕だった。
だが武尊はそんなことよりもこの時代に初めて紅茶を見たと心喜びを隠せなかった。
御丁寧にジャムまで添えてあった。
お茶を持って来た給仕はすぐに下がってしまったので武尊は部屋に一人きりになったが、その方が気兼ねしなくていいとリラックスできた。
「本物の紅茶だ!いいなぁ~この香り。コーヒーもいいけど紅茶がいいっていうのもわかるなぁ!」
と、ジャムをスプーンにすくってチョビチョビ食べては紅茶を飲んだ。
ティーカップの他にお湯が入ったポットもあったので武尊はお代わりも楽しんでゆっくり暇な時間を楽しんでいると20分も経ったころだろうか、部屋が細かく振動し始めた。
その振動は徐々に大きくなっていった。
「まさか・・!」
武尊は客室を飛び出した。
「うあっ!」
ドアを開けて武尊は思わず叫んだ。
外は一面ひどい霧がかかっていたからだ。
10m先は白い世界に飲み込まれてしまっていた。
もともと天気が悪かったと思っていた日だったが武尊が外へ出た時間は昼過ぎにもかかわらず暗く、雨が降り出しそうな感じにもとれた。
武尊は海に落ちないように手すりにつかまり海面を見下ろしたが下も真っ白だった。
間違いなく船のエンジンはかかっており、その大きな音にまぎれて船が進む時の独特の波の音が微かに聞こえた。
「まさかと思うけどもしかして船、動いてる?!」
武尊は青くなった。
確かこの船の出港は明日の夕方だと聞いた。
そしてさっきアレクサンドルはロシアのどこかの町に帰るといった。
まさかのまさかだと思うけれども自分を乗せたままロシアに向かってるのではと思わざるを得ない状況に武尊は、
「うっそ・・信じられない・・。」
と、目の前の光景に目を皿のようにした。
帰ろうにもこの霧の中、陸がどちらとも分からないのに海に飛び込むわけにはいかなかったし、飛び込むにしても今は十一月だ。
いかに横浜沖とは言えども海水浴には寒すぎる。
武尊はどうする事も出来ず、ただ手すりにつかまって海の向こう、白い霧を茫然と眺めていた。