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239.アジトの裏口 (白衣の男・操・斎藤・夢主・観柳)
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「ま・・!」
『待て』と言おうとした斎藤は思わず口から煙草が落ちそうになった。
蒼紫が最後に言った『これを伝える事は武尊の希望でもある』という言葉はどういう意味なのか。
しかしその刹那の間にも蒼紫の姿はすでに疾風のごとく消えていた。
(まさか武尊が九条の事を知っているというのか?)
信じがたいと斎藤は険しい顔つきになった。
一体この京都で何がどうなっているというのか。
京都入りしたのは武尊とほぼ同時期のはずだった。
自分より早く武尊が九条と接触を持ったとは考えにくく、また二人の接点に全く見当つかない斎藤は困惑した。
更に京都での九条の行先は別宅だけだと思っていた斎藤だったが志々雄のアジトに九条が出入りしていると知った今は少なくとも見張らなければいけない場所が二か所になってしまった。
志々雄と違って正当に九条を追撃する理由がない斎藤はこれ以上警官の数を自分に割いてもらうことは出来ず困った。
そしてこんな時に限っていつもの斎藤の勘がさえるというか胸騒ぎがするのだ。
九条の周りには函館で対峙した御庭番衆のような特異な能力を持った正体不明の輩がいるのは確かで、その者らが他に複数京都にいるとるすと場合によれば自分一人では手に余る可能性がある。
九条屋敷に行ったと思われる操が間抜けな真似をしなければいいと思いつつ、武尊が今ごろ何をしているのか非常に気になる斎藤だった。
武尊の事を気にかけつつ、斎藤は志々雄のアジトに向かう事にした。
九条屋敷の監視の方は選りすぐった警官を何人か充ててあるので彼らに任せることにしたのだ。
アジトに向かいながら斎藤は過去・・幕末のあの時の事を思い出していた。
あの時とは斎藤が初めて十六夜丸と会った時のことだったがそれがあの九条屋敷があった場所だったのだ。
今は当時の面影もなく思いっきり洋風な造りになっているが、斎藤は今でもあの月夜の光景をくっきり思い出せる。
(確かあの屋敷は有栖川宮家のものだったはず・・そういえば九条の奴、函館にも有栖川宮卿の代理とかで来ていたな・・何関係があるのか?)
斎藤は紫煙をくゆらせながら空を仰ぎ見た。
有栖川宮熾仁親王といえば幕末親長州派の代表ともいえる公家だった。
大叔母は長州藩主毛利斉房の正室というのもあったのだろうか有栖川宮熾仁親王は三条実美と並び長州系攘夷派の急先鋒だったのだ。
(というよりも一般的には和宮を徳川家茂に取られた悲恋話で知られているがな・・。)
斎藤は自分の回想に突っ込みを入れながら思案を続けた。
禁門の変の前夜、実は熾仁親王は他の尊王攘夷派と共に反勢力を宮中から一掃しようと工作をし、孝明天皇に松平容保の追放を迫ったのだが一橋慶喜や開国派の公家や武家により阻止されその計画は失敗に終わったのだった。
そして禁門の変後、長州は朝敵となり長州派である有栖川宮熾仁親王とその父は孝明天皇の怒りを買い謹慎・蟄居となった。
その命令を下した孝明天皇はその後すぐ亡くなってしまったため二人の蟄居は明治天皇が践祚(せんそ=即位のこと)するまで続いたという。
「そんな奴も今は陸軍大将か。」
ここでまた斎藤はフッと笑った。
「・・全く、世の中というものはだな。」
明治になって早、十一年。
昨日までは罪人と言われた輩が今は英雄。
世の中はほんの一部の者の決め事で手のひらを返したように立場が変わる。
ただひたすら誠実に日々勤めをこなしていただけなのに日が変われば朝敵になっていた・・。
そんな昔の光景がふっと浮かぶのも、此処が京都なのだからかと斎藤の目が遠くを見る。
昨年の西南戦争でようやく反体制派を鎮圧し、いよいよこれから新たな国の基盤を固めようとしている時によくもまぁ次から次へとこれだけ膿が出るものだと斎藤は半ば呆れる。
新時代の到来の裏には涙も血になるような苦しみがあったのだ。
ようやく得た平和な時代を下衆な輩の自由にさせるわけにはいかないと斎藤は眼光を鋭くさせるのだった。
(したがって、阿片などもっての他だ。)
斎藤は回想がひと段落ついたら本題だと話を元に戻した。
もともと影宮(九条)を追ってここまで来たのは北の地に広まりつつある阿片・・新型蜘蛛の巣を取り締まる為、すなわちその密売のドンともいえる影宮を捕らえるため。
阿片といえば最近は実業家が本業を隠れみのに阿片を製造していたという話もあったが、こちらは斎藤が手を下す前に片付いてしまったのだ。
(所詮武田観柳も黒星もしみったれた金の亡者に過ぎなかったが・・。)
だが新型阿片の元締めと思われる影宮は何が目的なのか、斎藤にもさっぱり読めないのである。
まだ明治政府にを倒し再び動乱の世を作ろうとした志々雄真実の方が動機は明快だった。
証拠不十分、政府のTOPでなくとも公家という身分のそれなりの役人。
真向勝負が不利なのは明らかだった。
だが己の悪・即・斬を貫く斎藤はこの勝負を降りる気はない。
良き日の本の未来の為には相手が誰であろうが牙を突き立てるのみ。
それが自分が生きる道なのだと斎藤は思った。
『待て』と言おうとした斎藤は思わず口から煙草が落ちそうになった。
蒼紫が最後に言った『これを伝える事は武尊の希望でもある』という言葉はどういう意味なのか。
しかしその刹那の間にも蒼紫の姿はすでに疾風のごとく消えていた。
(まさか武尊が九条の事を知っているというのか?)
信じがたいと斎藤は険しい顔つきになった。
一体この京都で何がどうなっているというのか。
京都入りしたのは武尊とほぼ同時期のはずだった。
自分より早く武尊が九条と接触を持ったとは考えにくく、また二人の接点に全く見当つかない斎藤は困惑した。
更に京都での九条の行先は別宅だけだと思っていた斎藤だったが志々雄のアジトに九条が出入りしていると知った今は少なくとも見張らなければいけない場所が二か所になってしまった。
志々雄と違って正当に九条を追撃する理由がない斎藤はこれ以上警官の数を自分に割いてもらうことは出来ず困った。
そしてこんな時に限っていつもの斎藤の勘がさえるというか胸騒ぎがするのだ。
九条の周りには函館で対峙した御庭番衆のような特異な能力を持った正体不明の輩がいるのは確かで、その者らが他に複数京都にいるとるすと場合によれば自分一人では手に余る可能性がある。
九条屋敷に行ったと思われる操が間抜けな真似をしなければいいと思いつつ、武尊が今ごろ何をしているのか非常に気になる斎藤だった。
武尊の事を気にかけつつ、斎藤は志々雄のアジトに向かう事にした。
九条屋敷の監視の方は選りすぐった警官を何人か充ててあるので彼らに任せることにしたのだ。
アジトに向かいながら斎藤は過去・・幕末のあの時の事を思い出していた。
あの時とは斎藤が初めて十六夜丸と会った時のことだったがそれがあの九条屋敷があった場所だったのだ。
今は当時の面影もなく思いっきり洋風な造りになっているが、斎藤は今でもあの月夜の光景をくっきり思い出せる。
(確かあの屋敷は有栖川宮家のものだったはず・・そういえば九条の奴、函館にも有栖川宮卿の代理とかで来ていたな・・何関係があるのか?)
斎藤は紫煙をくゆらせながら空を仰ぎ見た。
有栖川宮熾仁親王といえば幕末親長州派の代表ともいえる公家だった。
大叔母は長州藩主毛利斉房の正室というのもあったのだろうか有栖川宮熾仁親王は三条実美と並び長州系攘夷派の急先鋒だったのだ。
(というよりも一般的には和宮を徳川家茂に取られた悲恋話で知られているがな・・。)
斎藤は自分の回想に突っ込みを入れながら思案を続けた。
禁門の変の前夜、実は熾仁親王は他の尊王攘夷派と共に反勢力を宮中から一掃しようと工作をし、孝明天皇に松平容保の追放を迫ったのだが一橋慶喜や開国派の公家や武家により阻止されその計画は失敗に終わったのだった。
そして禁門の変後、長州は朝敵となり長州派である有栖川宮熾仁親王とその父は孝明天皇の怒りを買い謹慎・蟄居となった。
その命令を下した孝明天皇はその後すぐ亡くなってしまったため二人の蟄居は明治天皇が践祚(せんそ=即位のこと)するまで続いたという。
「そんな奴も今は陸軍大将か。」
ここでまた斎藤はフッと笑った。
「・・全く、世の中というものはだな。」
明治になって早、十一年。
昨日までは罪人と言われた輩が今は英雄。
世の中はほんの一部の者の決め事で手のひらを返したように立場が変わる。
ただひたすら誠実に日々勤めをこなしていただけなのに日が変われば朝敵になっていた・・。
そんな昔の光景がふっと浮かぶのも、此処が京都なのだからかと斎藤の目が遠くを見る。
昨年の西南戦争でようやく反体制派を鎮圧し、いよいよこれから新たな国の基盤を固めようとしている時によくもまぁ次から次へとこれだけ膿が出るものだと斎藤は半ば呆れる。
新時代の到来の裏には涙も血になるような苦しみがあったのだ。
ようやく得た平和な時代を下衆な輩の自由にさせるわけにはいかないと斎藤は眼光を鋭くさせるのだった。
(したがって、阿片などもっての他だ。)
斎藤は回想がひと段落ついたら本題だと話を元に戻した。
もともと影宮(九条)を追ってここまで来たのは北の地に広まりつつある阿片・・新型蜘蛛の巣を取り締まる為、すなわちその密売のドンともいえる影宮を捕らえるため。
阿片といえば最近は実業家が本業を隠れみのに阿片を製造していたという話もあったが、こちらは斎藤が手を下す前に片付いてしまったのだ。
(所詮武田観柳も黒星もしみったれた金の亡者に過ぎなかったが・・。)
だが新型阿片の元締めと思われる影宮は何が目的なのか、斎藤にもさっぱり読めないのである。
まだ明治政府にを倒し再び動乱の世を作ろうとした志々雄真実の方が動機は明快だった。
証拠不十分、政府のTOPでなくとも公家という身分のそれなりの役人。
真向勝負が不利なのは明らかだった。
だが己の悪・即・斬を貫く斎藤はこの勝負を降りる気はない。
良き日の本の未来の為には相手が誰であろうが牙を突き立てるのみ。
それが自分が生きる道なのだと斎藤は思った。