操は驚いた。


隣の部屋はまるで牢獄のように扉の代わりに柵があり、その中に五、六人の男が入れられていた。


先ほど『助けてくれ』と叫んでいたのはこの男たちに間違いない。


誰もがチンピラみたいだったが何故ここに捕まって入れられてるのだろうかと操は不思議に思った。


操が目を見開いて男達を見ているのを見て観柳は先ほどより少し強い口調で、



「さあ、選びなさい。」



と、操に命じた。


すると一人の男が先ほどと同じように、



「助けてくれ！俺を選ばないでくれ！」



と柵を握りしめながら操に命乞いをした。


すると次々に皆が両手に柵を持ち体を揺らしながら全力で命乞いを始めた。



「な・・何をするつもりなの・・。」



操は恐ろしくなって観柳を見た。


観柳は、



「別に、今はあなたには何もしませんよ。ですから早く誰か選んでください。

それとも・・選べないというのならここであなたを全裸にひん剥いてあの男達の中に放り込んでもいいんですよ。あなたもそこまで子供じゃないんでしょうからどうなるのか想像つきますよね。」



と、にんまり笑って操に言った。


観柳の言ったとおり、操もそこまで子供じゃなかった。



「あ・・蒼紫様・・。」



操は蒼紫意外の男に触れられると考えただけでも鳥肌が立った。


蚊の鳴くような声で蒼紫の名前をつぶやくと強く目をつぶり、他所をむいて適当に指をさした。



「お～！お前に決まりだ、おめでとう！もと小姓隊の坂口君！」



観柳はニコニコ顔で手をたたいてまるで本当に喜んでいるようにその男をたたえた。


指名された男は真っ青になってへたりこんだ。


それでも最後まで、やめてくれ、助けてくれと叫ぶ。


観柳は、



「選んだのはこの小娘だ。こう見えても御庭番衆だそうだ。恨むなら御庭番衆、いや、四乃森蒼紫を恨め。ハーハハハハ！」



と、勝利を宣言するように高らかに笑うとまた操を引きずり、また他の部下に指名された男を引きずり出すように命じて先ほどの部屋へ戻った。