（何処へ行った、操の奴は・・。）



蒼紫は最近操が行ったと思われる当たりを探した。


錦市場から高瀬川を通り、鴨川の河川敷へ。


此処からは連なる東山周辺の紅葉が美しく見える。


その紅葉を眺めながらすれ違う観光客に紛れ操がいないか蒼紫は視線を巡らせた。


やがて蒼紫は人だかりを見つけた。


そこで操の言った吸血鬼話を思い出した蒼紫は操がまた野次馬に行っているのではないかと思い、そこに近寄った。


人だかりの中心にあったのはやはり流れて来た死体だった。


だが蒼紫はその死体の顔を見た瞬間目を見張はり、喉の奥でうなった。


なぜならばその男も蒼紫の顔見知り・・武田観柳に雇われた私兵団の一人だったからだ。



（何なんだ・・。）



死んでいるとはいえ、この間の九条邸といい、今日といい、武田観柳に雇われていた男を立て続けに見るのは単なる偶然なのか、と疑問に思った。


すると回りがざわついた。



「どけどけー！これより先は我らが取り調べる！」



大きな声をあげ、近づいてきたのは数人の警官だった。


警察も連続する死体流れ着き事件に対し巡察を強化していたのですぐに駆け付けて来たのだ。



（・・・。）



蒼紫は遠巻きに警官と死体を見ている人だかりに紛れて野次馬の中に操がいなか探した。


だが操はいないようだった。


そして再び検分されている死体を見た時、まくられた着物の袖から内出血を起こした腕が見えた。


と、その瞬間鋭く自分を射る視線に蒼紫はバッっと振り返った。


その視線は予測した通り・・斎藤だった。




斎藤は少し遠くから煙草をふかしながらその人だかりの中の・・蒼紫を見ていた。




蒼紫はもう一度死体に目をやると静かにその群衆を離れた。