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236.或る人の名 (蒼紫・夢主・影宮・観柳・操)
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「着いた・・疲れた・・。」
とにかく無事葵屋へ戻って来れたと武尊は一気に気が抜け部屋へ着くなり寝ころんだ。
そして高く見える天井に向かい、ふぅ~っと息を吐いた時、
「武尊さん!」
と大きな声がした。
慌てて武尊が起き上がって座ると目の前には操がいた。
蒼紫と二人きりで出かけたことがばれた・・気を悪くしてはいないかと武尊は内心後ろめたい気持ちになったが務めて冷静に振る舞った。
操はそんな武尊の心配事など無用の明るい声で、
「ったく、朝早くからどこへ行ってたのよ。一人で出かけるなんて水臭いじゃない。京都の観光なら私と爺やに任せてって言ってるじゃないの。」
と言った。
どこへ行っていたのかと聞かれ慌ててどう言い訳しようかと焦っていると操は続けて、
「って言っても禅寺へ行こうとした蒼紫様にその場を見られて着いて来てもらったんだって?そうじゃなかったら武尊さん、迷子になってたって蒼紫様が言ってたわよ。」
流石蒼紫・・、帰って来るなり操や翁に『そういうことだった』って情報を流したのね・・と、武尊は蒼紫の手際の良さに舌を巻いた。
そういう理由なら二人で計画的にお出かけしたということにならないから操の機嫌も悪くはならないということを蒼紫は考えていたのだろうか。
ともかくこの場はしのいだと武尊がホッとした時、操はとんでもない情報を口にしたのだった。
「蒼紫様も武尊さんもいなくてつまらないから私、一人でまた鴨川沿いを歩いていたのね、そしたらまた河原に人だかりが出来てて私嫌~な予感がしたの、・・ほら、今吸血鬼騒ぎが起きてるでしょ。私の勘っていうか・・気になるのよね、ああいうの。
・・そしたらその中に何人か警官がいたから『ああ、また誰かが亡くなったんだわ』って思った時、いたのよ!!あの中に!!」
突然声を荒げた操は興奮していて、聞いてた武尊の方がビックリするほどだった。
「『いた』・・って誰が?」
京都に自分の知ってる人はいないはずだと、一瞬九条かという思いが脳裏をかすめたが操が九条を知るはずないと武尊が否定した時、
「斎藤よ!」
と操が叫んだ。
その名前に武尊はビクッと身を震わせた。
と、同時に廊下にあるもう一つの気配にハッとしてその方向を振り向くと蒼紫が立っていた。
きっと最初は操の大きな声に反応して様子を見に来たのだろうが、今の話は蒼紫に聞かれたくなかったと武尊は思った。
案の定、蒼紫の顔は無表情の中にも緊迫した雰囲気を漂わしていることが武尊には分かった。
ただ操だけが自分の斜め後ろに立っている蒼紫に気が付かず話を続けた。
「本当、あの不良警官の姿を見て何であいつがここにって思ったわ!また東京からやってきて京都に変な騒ぎを起こさなきゃいいんだけど。」
と操は不機嫌そうにそう言った。
別に斎藤が京都に変な事件を巻き起こしたわけではないのだが操にとっては東京での印象がよほど悪かったのか、【悪即斬】どころか【悪即斎藤】になっているらしい。
それはともかく、その話は武尊にとっても信じられなかったらしく、
「嘘・・斎藤さんが京都に?」
と少し声を震わせて操に聞いた。
「海を漂う機雷を正確にクナイで射貫くこの操様の両目が見たものに間違いはないわよ!あれは間違いなく斎藤だったわ。ま・・忙しそうだったから声なんかかけなかったけど。」
と言ったところで何かの気配に気が付いたのかハッと後ろを振り向き、
「蒼紫様!?」
と叫んだ。
そしてソワソワし始め、
「てなわけで、武尊さん。観光するなら今度こそ私が案内するからいつでも言ってね~。」
と、言うとぴゅーっと何処かへ行ってしまった。
蒼紫は軽くため息をつき、
「操はこの半月風呂焚き当番だ・・この時間ぐらいから始めないと間に合わん。」
とぼそっと言った。
蒼紫の説明になるほどと武尊は思った。
確かに好きな人に【おさぼり】していると思われたくない気持ちは分かる。
だから操は蒼紫の前から気まずそうに消えてしまったと武尊が思っていると蒼紫は操が行った方をちらっと見て悩み深き顔をした。
思わず武尊が、
「蒼紫?」
と尋ねると蒼紫は、
「操は何か隠しているな・・。」
と言った。
「隠しているって何を?」
「それは分からん。だがあの態度・・よからぬ事を考えてなければよいのだが。」
蒼紫はそう言ってまた軽くため息をついた。
何だかんだと言いつつも操の事を心配している蒼紫を見て武尊は内心ニコニコだった。
そんな武尊の内心など知る由もなく蒼紫は、
「武尊。」
と呼びかけた。
その顔はすでにいつもの蒼紫。
「今夜の九条の屋敷の探索、、やはり俺一人で行こう。」
「え?兄様があそこにいるのだったら私も・・。」
「いや、あそこが本当に九条の屋敷だとすると京に来ている九条が滞在する可能性は非常に高い。やつと今は鉢合わせになるのは非常にまずい。」
武尊の事は自分が守る、守れる自信もある。
蒼紫はそう思うのだが、その場は逃げきれたとしても相手はかなり剛腕と思われる明治政府の役人。
後後の事を考えると武尊が京都にいることが相手にバレるのは得策ではないと蒼紫は考えるのだった。
「分かった・・。」
武尊も蒼紫の考えることが分かる。
焦る気持ちを抑えて蒼紫の考えに同調したのだった。
結局九条の屋敷の事は悩んだ挙句、蒼紫にお願いする結果になってしまったと武尊は自分の意思の弱さが情けなく思えたが、失敗なく調べるには自分より蒼紫の方が適任だという現実には勝てなかった。
とにかく無事葵屋へ戻って来れたと武尊は一気に気が抜け部屋へ着くなり寝ころんだ。
そして高く見える天井に向かい、ふぅ~っと息を吐いた時、
「武尊さん!」
と大きな声がした。
慌てて武尊が起き上がって座ると目の前には操がいた。
蒼紫と二人きりで出かけたことがばれた・・気を悪くしてはいないかと武尊は内心後ろめたい気持ちになったが務めて冷静に振る舞った。
操はそんな武尊の心配事など無用の明るい声で、
「ったく、朝早くからどこへ行ってたのよ。一人で出かけるなんて水臭いじゃない。京都の観光なら私と爺やに任せてって言ってるじゃないの。」
と言った。
どこへ行っていたのかと聞かれ慌ててどう言い訳しようかと焦っていると操は続けて、
「って言っても禅寺へ行こうとした蒼紫様にその場を見られて着いて来てもらったんだって?そうじゃなかったら武尊さん、迷子になってたって蒼紫様が言ってたわよ。」
流石蒼紫・・、帰って来るなり操や翁に『そういうことだった』って情報を流したのね・・と、武尊は蒼紫の手際の良さに舌を巻いた。
そういう理由なら二人で計画的にお出かけしたということにならないから操の機嫌も悪くはならないということを蒼紫は考えていたのだろうか。
ともかくこの場はしのいだと武尊がホッとした時、操はとんでもない情報を口にしたのだった。
「蒼紫様も武尊さんもいなくてつまらないから私、一人でまた鴨川沿いを歩いていたのね、そしたらまた河原に人だかりが出来てて私嫌~な予感がしたの、・・ほら、今吸血鬼騒ぎが起きてるでしょ。私の勘っていうか・・気になるのよね、ああいうの。
・・そしたらその中に何人か警官がいたから『ああ、また誰かが亡くなったんだわ』って思った時、いたのよ!!あの中に!!」
突然声を荒げた操は興奮していて、聞いてた武尊の方がビックリするほどだった。
「『いた』・・って誰が?」
京都に自分の知ってる人はいないはずだと、一瞬九条かという思いが脳裏をかすめたが操が九条を知るはずないと武尊が否定した時、
「斎藤よ!」
と操が叫んだ。
その名前に武尊はビクッと身を震わせた。
と、同時に廊下にあるもう一つの気配にハッとしてその方向を振り向くと蒼紫が立っていた。
きっと最初は操の大きな声に反応して様子を見に来たのだろうが、今の話は蒼紫に聞かれたくなかったと武尊は思った。
案の定、蒼紫の顔は無表情の中にも緊迫した雰囲気を漂わしていることが武尊には分かった。
ただ操だけが自分の斜め後ろに立っている蒼紫に気が付かず話を続けた。
「本当、あの不良警官の姿を見て何であいつがここにって思ったわ!また東京からやってきて京都に変な騒ぎを起こさなきゃいいんだけど。」
と操は不機嫌そうにそう言った。
別に斎藤が京都に変な事件を巻き起こしたわけではないのだが操にとっては東京での印象がよほど悪かったのか、【悪即斬】どころか【悪即斎藤】になっているらしい。
それはともかく、その話は武尊にとっても信じられなかったらしく、
「嘘・・斎藤さんが京都に?」
と少し声を震わせて操に聞いた。
「海を漂う機雷を正確にクナイで射貫くこの操様の両目が見たものに間違いはないわよ!あれは間違いなく斎藤だったわ。ま・・忙しそうだったから声なんかかけなかったけど。」
と言ったところで何かの気配に気が付いたのかハッと後ろを振り向き、
「蒼紫様!?」
と叫んだ。
そしてソワソワし始め、
「てなわけで、武尊さん。観光するなら今度こそ私が案内するからいつでも言ってね~。」
と、言うとぴゅーっと何処かへ行ってしまった。
蒼紫は軽くため息をつき、
「操はこの半月風呂焚き当番だ・・この時間ぐらいから始めないと間に合わん。」
とぼそっと言った。
蒼紫の説明になるほどと武尊は思った。
確かに好きな人に【おさぼり】していると思われたくない気持ちは分かる。
だから操は蒼紫の前から気まずそうに消えてしまったと武尊が思っていると蒼紫は操が行った方をちらっと見て悩み深き顔をした。
思わず武尊が、
「蒼紫?」
と尋ねると蒼紫は、
「操は何か隠しているな・・。」
と言った。
「隠しているって何を?」
「それは分からん。だがあの態度・・よからぬ事を考えてなければよいのだが。」
蒼紫はそう言ってまた軽くため息をついた。
何だかんだと言いつつも操の事を心配している蒼紫を見て武尊は内心ニコニコだった。
そんな武尊の内心など知る由もなく蒼紫は、
「武尊。」
と呼びかけた。
その顔はすでにいつもの蒼紫。
「今夜の九条の屋敷の探索、、やはり俺一人で行こう。」
「え?兄様があそこにいるのだったら私も・・。」
「いや、あそこが本当に九条の屋敷だとすると京に来ている九条が滞在する可能性は非常に高い。やつと今は鉢合わせになるのは非常にまずい。」
武尊の事は自分が守る、守れる自信もある。
蒼紫はそう思うのだが、その場は逃げきれたとしても相手はかなり剛腕と思われる明治政府の役人。
後後の事を考えると武尊が京都にいることが相手にバレるのは得策ではないと蒼紫は考えるのだった。
「分かった・・。」
武尊も蒼紫の考えることが分かる。
焦る気持ちを抑えて蒼紫の考えに同調したのだった。
結局九条の屋敷の事は悩んだ挙句、蒼紫にお願いする結果になってしまったと武尊は自分の意思の弱さが情けなく思えたが、失敗なく調べるには自分より蒼紫の方が適任だという現実には勝てなかった。