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205.イキサツ(2) (斎藤・夢主)
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「で、『後日』 とはいつの事なんだ。」
「後日って?」
「さっき自分で言っただろ、『後日娘の写真を見た』と。あの老人とのことはすべて話せ。」
「一って・・マーティンに興味があるの?・・嘘!冗談だって!」
武尊が慌てて訂正したのは斎藤がジロリと武尊を睨んだから。
真面目な話の途中でチャチャを入れて大抵後から大変な目に合うのは自分の方だと分かっていても斎藤相手だとついそんな事も言ってしまう。
「ええと・・マーティンとは不思議な縁というか、・・。」
と言いつつ武尊はマフラーを手に入れる交換条件として翌週教会で歌ったことはなんとなく伏せておきたかった。
どうせ、というかこればかりは楽器は三味線や鼓、歌は歌ではなく唄で『高砂~~』のようなものしか知らない江戸明治の日本人にああいう文化が理解できるかどうか非常に悩むところだったからだ。
「一が船で行ってしまった後東京に帰ろうとしていたら横浜駅でまたマーティンに会ったの。」
「ほぉ。」
斎藤は妙な含みを持たせた相槌を打った。
武尊はそれをちょっと気にしながらも、
「きっと私が落ち込んでいることに気がついたんだと思う・・また自宅に誘ってくれてコーヒーを飲ませてくれたの。・・コーヒーの香りは気持ちを落ち着かせてくれるから・・。
写真もそこで見せてもらった。その時にもう日本に帰るからってお別れにこの洋服を頂いたの。東京に着てきた時の服は薄かったからとても助かってる。」
斎藤は武尊の話を聞きながら武尊の洋服にじっと目をやった。
斎藤のこの間までは持っていなかった洋服を着ている武尊。
確かに警察官の服は女ながらも武尊に良く似合っていたと思ったが今の洋服も男物。
斎藤は武尊の上から下まで目を往復させて洋服を見てみたが違和感は感じられないという感想を持った。
むしろ似合っているとも。
確かにもらい物なら女物がいいと文句もつけられまいが横浜で十年ぶりの再会をした時も男物の着流しだった。
(これまで武尊の女物を着たのは見たことがないな。)
髪が短い所為もあるのだが、幕末以来ずっと見たのは男装の武尊に違和感がないと思う自分の考えもなんだが斎藤は武尊の女装・・いや、本来の服を着ればどのような姿になるのだろうと武尊を凝視した。
斎藤にじっと見つめられて武尊はちょっと目のやり場に困った。
(何をじろじろ見てるんだろう、変な事言ったかなぁ・・私、日本語的には嘘は言ってないからね・・。)
本当はマーティンからもらった洋服はコートだけだったがその他の洋服は教会で歌った事につながるのでそこはグレーにしたけれどもそれくらいはいいだろうと武尊は思った。
「あ、それとこれも。」
と武尊はコートのポケットに手を入れ、チューリップの花が彫ってあるロケットペンダントを取り出して斎藤に見せた。
「靴から洋服からそんな物まで、、よくよくあの老人は武尊を気に入っているようだな。」
気にくわないオーラを全開にして斎藤はぼやいた。
「溺愛している娘さんに似てるって思っているんだからそりゃ、しょうがないよ・・。一がこの船に乗っていたのも驚いたけど、日本を離れたと思っていたマーティンがこの船に乗っていたなんて本当びっくりしたんだから。この船どこから来たんだろ?一はどこから乗ったの?」
「何処から来たのかは知らん。俺は函館で乗船した。」
「そっか、開国した港は函館だったね・・。まさか一が乗ってるだなんて・・。」
「俺もまさか武尊が乗っているとは夢にも思いもしなかったぞ。」
二人は再会した瞬間を思い出してそれを口にした。
本当に・・。
偶然?
それとも奇跡?
二度目にタイムスリップをして斎藤と再会できたのが最大の奇跡だと思っていたのに何故またこうやって二人は引き合ったのだろう。
(もう、死ぬまで会えないと思っていたのに・・。)
けれども現実斎藤は武尊の目の前にいる。
これが万に一つの偶然でも奇跡でもそのどちらでもいい、斎藤とのまさかの再会に武尊は胸がいっぱいだった。
斎藤が目の前で自分を見ている。
斎藤の眼には自分が映っている。
血が流れるこの身があるうちに斎藤の姿を見ることが出来ようとは武尊は本当に夢にも思っていなかった。
(神様・・・。)
武尊は別にどの神様を信じているという訳ではないが、目の前の斎藤がいるという奇跡の現実に感謝した。
斎藤と別れて何をしても心はガランとし乾いていたのにこうやって姿を見ているだけで心は満ち潤っていく。
神戸までの短い時間しかこの再会はない。
それでも再会しないで一生を終えるよりも、やっぱり会えてよかった、嬉しいと武尊は思った。
募る想いがまたぐっと込み上げて武尊は胸を詰まらせた。
「あの老人のことは大体分かった。・・武尊、立て。」
「は、はい!」
感傷に浸っている最中に不意に立てと言われて武尊は反射的に立ち上がった。
何?と思った瞬間斎藤が次の命令を下した。
「そのまま三歩前へ進め。」
いち、に、さん。
武尊が言われるがままに三歩歩くと、狭い部屋の中、斎藤の目の前に来た。
武尊は椅子に座った斎藤を見下ろすかたちになった。
丁度この角度は警視庁の斎藤の部屋で斎藤が机で書類に目を通している角度に似ていると武尊は記憶をよみがえらせていた。
「武尊。」
「はい。」
「そのまま後ろを向け。」
「はい・・。」
何だろう、と思いながらも武尊はそのまま回れ右をした。
すると背中に何かが触れる、と思った瞬間後ろから斎藤に抱きつかれていた。
「!」
武尊は声をあげる間もなく、斎藤に引っ張られ、共に椅子に座る事となった。
「後日って?」
「さっき自分で言っただろ、『後日娘の写真を見た』と。あの老人とのことはすべて話せ。」
「一って・・マーティンに興味があるの?・・嘘!冗談だって!」
武尊が慌てて訂正したのは斎藤がジロリと武尊を睨んだから。
真面目な話の途中でチャチャを入れて大抵後から大変な目に合うのは自分の方だと分かっていても斎藤相手だとついそんな事も言ってしまう。
「ええと・・マーティンとは不思議な縁というか、・・。」
と言いつつ武尊はマフラーを手に入れる交換条件として翌週教会で歌ったことはなんとなく伏せておきたかった。
どうせ、というかこればかりは楽器は三味線や鼓、歌は歌ではなく唄で『高砂~~』のようなものしか知らない江戸明治の日本人にああいう文化が理解できるかどうか非常に悩むところだったからだ。
「一が船で行ってしまった後東京に帰ろうとしていたら横浜駅でまたマーティンに会ったの。」
「ほぉ。」
斎藤は妙な含みを持たせた相槌を打った。
武尊はそれをちょっと気にしながらも、
「きっと私が落ち込んでいることに気がついたんだと思う・・また自宅に誘ってくれてコーヒーを飲ませてくれたの。・・コーヒーの香りは気持ちを落ち着かせてくれるから・・。
写真もそこで見せてもらった。その時にもう日本に帰るからってお別れにこの洋服を頂いたの。東京に着てきた時の服は薄かったからとても助かってる。」
斎藤は武尊の話を聞きながら武尊の洋服にじっと目をやった。
斎藤のこの間までは持っていなかった洋服を着ている武尊。
確かに警察官の服は女ながらも武尊に良く似合っていたと思ったが今の洋服も男物。
斎藤は武尊の上から下まで目を往復させて洋服を見てみたが違和感は感じられないという感想を持った。
むしろ似合っているとも。
確かにもらい物なら女物がいいと文句もつけられまいが横浜で十年ぶりの再会をした時も男物の着流しだった。
(これまで武尊の女物を着たのは見たことがないな。)
髪が短い所為もあるのだが、幕末以来ずっと見たのは男装の武尊に違和感がないと思う自分の考えもなんだが斎藤は武尊の女装・・いや、本来の服を着ればどのような姿になるのだろうと武尊を凝視した。
斎藤にじっと見つめられて武尊はちょっと目のやり場に困った。
(何をじろじろ見てるんだろう、変な事言ったかなぁ・・私、日本語的には嘘は言ってないからね・・。)
本当はマーティンからもらった洋服はコートだけだったがその他の洋服は教会で歌った事につながるのでそこはグレーにしたけれどもそれくらいはいいだろうと武尊は思った。
「あ、それとこれも。」
と武尊はコートのポケットに手を入れ、チューリップの花が彫ってあるロケットペンダントを取り出して斎藤に見せた。
「靴から洋服からそんな物まで、、よくよくあの老人は武尊を気に入っているようだな。」
気にくわないオーラを全開にして斎藤はぼやいた。
「溺愛している娘さんに似てるって思っているんだからそりゃ、しょうがないよ・・。一がこの船に乗っていたのも驚いたけど、日本を離れたと思っていたマーティンがこの船に乗っていたなんて本当びっくりしたんだから。この船どこから来たんだろ?一はどこから乗ったの?」
「何処から来たのかは知らん。俺は函館で乗船した。」
「そっか、開国した港は函館だったね・・。まさか一が乗ってるだなんて・・。」
「俺もまさか武尊が乗っているとは夢にも思いもしなかったぞ。」
二人は再会した瞬間を思い出してそれを口にした。
本当に・・。
偶然?
それとも奇跡?
二度目にタイムスリップをして斎藤と再会できたのが最大の奇跡だと思っていたのに何故またこうやって二人は引き合ったのだろう。
(もう、死ぬまで会えないと思っていたのに・・。)
けれども現実斎藤は武尊の目の前にいる。
これが万に一つの偶然でも奇跡でもそのどちらでもいい、斎藤とのまさかの再会に武尊は胸がいっぱいだった。
斎藤が目の前で自分を見ている。
斎藤の眼には自分が映っている。
血が流れるこの身があるうちに斎藤の姿を見ることが出来ようとは武尊は本当に夢にも思っていなかった。
(神様・・・。)
武尊は別にどの神様を信じているという訳ではないが、目の前の斎藤がいるという奇跡の現実に感謝した。
斎藤と別れて何をしても心はガランとし乾いていたのにこうやって姿を見ているだけで心は満ち潤っていく。
神戸までの短い時間しかこの再会はない。
それでも再会しないで一生を終えるよりも、やっぱり会えてよかった、嬉しいと武尊は思った。
募る想いがまたぐっと込み上げて武尊は胸を詰まらせた。
「あの老人のことは大体分かった。・・武尊、立て。」
「は、はい!」
感傷に浸っている最中に不意に立てと言われて武尊は反射的に立ち上がった。
何?と思った瞬間斎藤が次の命令を下した。
「そのまま三歩前へ進め。」
いち、に、さん。
武尊が言われるがままに三歩歩くと、狭い部屋の中、斎藤の目の前に来た。
武尊は椅子に座った斎藤を見下ろすかたちになった。
丁度この角度は警視庁の斎藤の部屋で斎藤が机で書類に目を通している角度に似ていると武尊は記憶をよみがえらせていた。
「武尊。」
「はい。」
「そのまま後ろを向け。」
「はい・・。」
何だろう、と思いながらも武尊はそのまま回れ右をした。
すると背中に何かが触れる、と思った瞬間後ろから斎藤に抱きつかれていた。
「!」
武尊は声をあげる間もなく、斎藤に引っ張られ、共に椅子に座る事となった。