※1 記憶を失っている時の名前は変換できません。
232.最大の難題 (蒼紫・夢主)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「やっぱり何でもない!」
武尊は心のもやもやを吹っ切るように蒼紫に言った。
「・・・。」
武尊の様子をずっと伺ってきた蒼紫は口を閉じて黙った。
「どうしたの?蒼紫、そんなに真剣に考えなくていいよ、九条の事がこんなに詳しく分かったんだもの、ありがとう。お礼を言わなくっちゃね。」
武尊はいつものように笑って言った。
「何を考えている・・。」
武尊に出会って三ヶ月以上になる。
蒼紫にも武尊の性格や思考が分かるようになっていた。
武尊の表情から武尊が何かを抱えている事は蒼紫にはお見通しなのだ。
「別に何にも。さてっと、服が乾いたら早く操ちゃんと美味しいものめぐりに行きたいなぁ。」
と言って武尊は空になった湯呑をお盆に乗せて、ついでに勝手場へ持って行って洗おうと、
「お茶、御馳走様でした。」
と言いながら蒼紫の湯呑を片付けようと手を伸ばしたその時、
「まだ話しは終わっていない。」
と、蒼紫に伸ばした手を掴まれた。
反射的に手を引っ込めようとしたがそれは無駄だった。
見開いた武尊の瞳はより近くなった蒼紫の顔を見ることになった。
「武尊の兄が持っているという例の薬、何故武尊が持っていた。」
「!」
武尊はまずい事をきかれたと見開いた瞳を更に見開いた。
どう誤魔化すか、言い訳するかを必死で考えた。
「少し預かってくれって言われてたの、兄から・・。私は使い方を知らなかったし、他に使える人はいないと思っていたから特に何も考えてなかった。」
【言葉の中に少しでも本当の事が混じれば嘘がばれにくい】
嘘が下手で正直過ぎる武尊に斎藤が教えた言葉の技法だ。
【そしてしっかり相手の目を見ろ】
武尊は教わった通りに蒼紫の目を真っ直ぐ見つめた。
蒼紫は掴んだ武尊の手の力を少しだけ緩めた。
「・・まだ他に薬は持っているのか。」
「あの時に斎藤さんに全部持っていかれたっきり返してもらってない。」
「・・そうか、まだ斎藤が持っているのか。確かにその方がいいかもしれん。」
蒼紫の視線も武尊の目を鋭く見つめていた。
武尊はここで目を反らしては負けだと全身の気力で蒼紫の視線に耐えた。
と、突然少し緩んでいた蒼紫の手の力がまたぐっと武尊の手を強く押さえたかと思うと、蒼紫は武尊に言った。
「・・俺は、ずっと考えていた。
何故御庭番衆が激動の幕末で活躍の場もなくこのような屈辱を味合わなければいけなかったのか。
何故観柳のような屑に雇われようと思ってしまったのか。
何故般若、式尉、火男、癋見を失う事になってしまったのか。
俺は常に考えたあげく最良だと思われる選択をしてきたと思っていたのに、俺は守るべき徳川も部下もすべて失った。
これが運命だというのなら俺は何の為に生き、何のためにここにいる。
亡き者を弔うだけの身であれというのはこの世を生きるには空しくないか。」
蒼紫のこんなに強い感情を見たのは武尊は初めてだった。
蒼紫の思いが今までになく真剣だったというのは武尊にも分かった。
事の重大さというか、今ものすごく大事なことを自分は聞いているのではないかと武尊の心臓は早鳴った。
このまま蒼紫を負の気持ちにさせておいてはいけないと武尊は必死で自分の気持ちを訴えた。
「そんな事はない!蒼紫は何度でも私の命を救ってくれた!蒼紫がいたから私はこうして生きている!
それに葵屋の皆がいるじゃない!みんな蒼紫が守るべき大事な人達だから蒼紫はここにいるんじゃないの?」
蒼紫は言葉の調子をいつものように戻し、
「・・葵屋の皆は俺がいなくてもこの新時代にもそれぞれが十分にやっていける。」
と言った。
武尊は『でも操ちゃんには蒼紫が必要・・』と言おうとしたが蒼紫の言葉の方が先だった。
「だが、武尊は違った。・・俺の功績を過大評価するわけではないが、武尊の言う通り俺がいなければ武尊は今生きているのかどうかわからない。
何度も・・俺は武尊の生き死にの境に立ち会った。
もちろん俺自身、武尊を助けたいという気持ちがあったことは紛れもない事実だ。
だがこうも何度も関わるのは俺が武尊を助けるのは天から担った役目なのだと思えて仕方がないのだ。
ならばこれからも力を貸すのが俺の務め、九条が武尊を狙っているならば尚の事だ。」
蒼紫の言葉に武尊はぐうの音も出なかった。
自分の危機を蒼紫は紛れもなく何度も救った。
思えばこんなに何度も何度も数か月前に会った人物に命を救われるなんて運命的と言わなくてなんというのだろう。
武尊の心は揺れた。
友として蒼紫の幸せを願う。
自分は願うのだ、本当に。
そのためには自分から離れて一日も早く自分を好きだという馬鹿な想いは忘れて操ちゃんと幸せになって欲しいのに。
どうして蒼紫はこんな風に話しを持ち掛けてくるのだろうか。
普段の蒼紫から創造もつかない心の内を聞いてしまった武尊は自分の気持ちが言い出せなかった。
事は自分の思った通りには本当に転ばないものだと武尊は痛感した。
そして今武尊には蒼紫の言葉以上に蒼紫を説得できる言葉が見つからなかった。
そうして武尊が何も言えないでいると、
「一人で勝算はあるのか。」
と蒼紫が言った。
武尊は心のもやもやを吹っ切るように蒼紫に言った。
「・・・。」
武尊の様子をずっと伺ってきた蒼紫は口を閉じて黙った。
「どうしたの?蒼紫、そんなに真剣に考えなくていいよ、九条の事がこんなに詳しく分かったんだもの、ありがとう。お礼を言わなくっちゃね。」
武尊はいつものように笑って言った。
「何を考えている・・。」
武尊に出会って三ヶ月以上になる。
蒼紫にも武尊の性格や思考が分かるようになっていた。
武尊の表情から武尊が何かを抱えている事は蒼紫にはお見通しなのだ。
「別に何にも。さてっと、服が乾いたら早く操ちゃんと美味しいものめぐりに行きたいなぁ。」
と言って武尊は空になった湯呑をお盆に乗せて、ついでに勝手場へ持って行って洗おうと、
「お茶、御馳走様でした。」
と言いながら蒼紫の湯呑を片付けようと手を伸ばしたその時、
「まだ話しは終わっていない。」
と、蒼紫に伸ばした手を掴まれた。
反射的に手を引っ込めようとしたがそれは無駄だった。
見開いた武尊の瞳はより近くなった蒼紫の顔を見ることになった。
「武尊の兄が持っているという例の薬、何故武尊が持っていた。」
「!」
武尊はまずい事をきかれたと見開いた瞳を更に見開いた。
どう誤魔化すか、言い訳するかを必死で考えた。
「少し預かってくれって言われてたの、兄から・・。私は使い方を知らなかったし、他に使える人はいないと思っていたから特に何も考えてなかった。」
【言葉の中に少しでも本当の事が混じれば嘘がばれにくい】
嘘が下手で正直過ぎる武尊に斎藤が教えた言葉の技法だ。
【そしてしっかり相手の目を見ろ】
武尊は教わった通りに蒼紫の目を真っ直ぐ見つめた。
蒼紫は掴んだ武尊の手の力を少しだけ緩めた。
「・・まだ他に薬は持っているのか。」
「あの時に斎藤さんに全部持っていかれたっきり返してもらってない。」
「・・そうか、まだ斎藤が持っているのか。確かにその方がいいかもしれん。」
蒼紫の視線も武尊の目を鋭く見つめていた。
武尊はここで目を反らしては負けだと全身の気力で蒼紫の視線に耐えた。
と、突然少し緩んでいた蒼紫の手の力がまたぐっと武尊の手を強く押さえたかと思うと、蒼紫は武尊に言った。
「・・俺は、ずっと考えていた。
何故御庭番衆が激動の幕末で活躍の場もなくこのような屈辱を味合わなければいけなかったのか。
何故観柳のような屑に雇われようと思ってしまったのか。
何故般若、式尉、火男、癋見を失う事になってしまったのか。
俺は常に考えたあげく最良だと思われる選択をしてきたと思っていたのに、俺は守るべき徳川も部下もすべて失った。
これが運命だというのなら俺は何の為に生き、何のためにここにいる。
亡き者を弔うだけの身であれというのはこの世を生きるには空しくないか。」
蒼紫のこんなに強い感情を見たのは武尊は初めてだった。
蒼紫の思いが今までになく真剣だったというのは武尊にも分かった。
事の重大さというか、今ものすごく大事なことを自分は聞いているのではないかと武尊の心臓は早鳴った。
このまま蒼紫を負の気持ちにさせておいてはいけないと武尊は必死で自分の気持ちを訴えた。
「そんな事はない!蒼紫は何度でも私の命を救ってくれた!蒼紫がいたから私はこうして生きている!
それに葵屋の皆がいるじゃない!みんな蒼紫が守るべき大事な人達だから蒼紫はここにいるんじゃないの?」
蒼紫は言葉の調子をいつものように戻し、
「・・葵屋の皆は俺がいなくてもこの新時代にもそれぞれが十分にやっていける。」
と言った。
武尊は『でも操ちゃんには蒼紫が必要・・』と言おうとしたが蒼紫の言葉の方が先だった。
「だが、武尊は違った。・・俺の功績を過大評価するわけではないが、武尊の言う通り俺がいなければ武尊は今生きているのかどうかわからない。
何度も・・俺は武尊の生き死にの境に立ち会った。
もちろん俺自身、武尊を助けたいという気持ちがあったことは紛れもない事実だ。
だがこうも何度も関わるのは俺が武尊を助けるのは天から担った役目なのだと思えて仕方がないのだ。
ならばこれからも力を貸すのが俺の務め、九条が武尊を狙っているならば尚の事だ。」
蒼紫の言葉に武尊はぐうの音も出なかった。
自分の危機を蒼紫は紛れもなく何度も救った。
思えばこんなに何度も何度も数か月前に会った人物に命を救われるなんて運命的と言わなくてなんというのだろう。
武尊の心は揺れた。
友として蒼紫の幸せを願う。
自分は願うのだ、本当に。
そのためには自分から離れて一日も早く自分を好きだという馬鹿な想いは忘れて操ちゃんと幸せになって欲しいのに。
どうして蒼紫はこんな風に話しを持ち掛けてくるのだろうか。
普段の蒼紫から創造もつかない心の内を聞いてしまった武尊は自分の気持ちが言い出せなかった。
事は自分の思った通りには本当に転ばないものだと武尊は痛感した。
そして今武尊には蒼紫の言葉以上に蒼紫を説得できる言葉が見つからなかった。
そうして武尊が何も言えないでいると、
「一人で勝算はあるのか。」
と蒼紫が言った。