※1 記憶を失っている時の名前は変換できません。
232.最大の難題 (蒼紫・夢主)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「なぜ九条が十六夜丸を知っているかっていうのは・・。」
武尊の脳裏には会津で会った九条の姿よりももっと昔の九条の姿が映っていた。
「人には言わない欲しいんだけど・・」
蒼紫が頷くのを見て武尊は話し始めた。
「丁度幕末の頃なんだけど私、記憶を無くしていたことがあってその時兄に拾われたの。」
「拾われた?義理の兄ではなかったのか。」
確かに蒼紫は以前、嵐山の庵で武尊に兄がいるとは聞いていたがその時は『本当の兄ではない』と聞いていただけだったのでてっきり血がつながっていないだけだと思っていたのだ。
幕末といえどもあの頃出会った十六夜丸はすでに今の武尊と同じ姿。
すでに成人している女を拾うとはおかしな話だと思った蒼紫は不可解だと表情で示した。
それを見て武尊は、
「私が妹に似ているからってことでそう呼ばされただけなの。」
と付け足した。
そうだったのかと思った蒼紫は同時に、
「武尊の家族はどうした?」
と聞いた。
武尊は一瞬黙った後、
「・・いないよ。父も母も、もちろん兄妹も。」
「・・そうか。」
と言った。
蒼紫が見た武尊の顔は少し悲しげに笑っていたように見えた。
もちろん蒼紫は武尊の身内はすべて何らかの理由で死んだのだと受け取った。
そして武尊はまた話を続けた。
「私には記憶がないので他に行く所もなく、そのまま兄に言われるままにお世話になるしかなかったんだけど、しばらくして私の身体が悪いんだということで薬を飲まされた・・それがあの薬で飲んだ後の記憶がしばらくない私は私に何が起きているのかしばらくの間全く知らなかった。」
「記憶がない、か・・。」
薬を飲んで記憶がない時の武尊はすなわち十六夜丸。
蒼紫の脳裏に十六夜丸の姿が浮かぶ。
今更ながらだがこうやって目の前の武尊と比べてみると姿は同じで在りながらなんと別人なのだろうと蒼紫は思う。
(いや、あの薬は武尊を喰らう魔物なのだ・・。)
診療所での武尊の様子を思い出して蒼紫はそう思った。
武尊はじっと自分を見つめる蒼紫の視線が何だかたまらず、湯呑見つめ、少し間を置いてからまた話し始めた。
「私が連れて行かれた所は京都の中の石庭のある少し大きなお寺で・・そこの一部屋を私は与えられて住んでいたの。他にも何人かいてその中の一人が九条だった・・当時は会津で会った時のような恰好ではなく、お坊さんみたいな恰好だったからまさか彼だと思わなくて・・。」
あの石庭を思い出すとついあの頃の情景がよみがえって来る。
兄の事、鷹の事。
そして九条・・いや、安西という男の事。
武尊がその情景を追って黙っていると蒼紫が、
「他にも数人いたと言ったな。そいつらも十六夜丸の事を知っているのではないのか。」
と聞いた。
武尊は軽く首を横に振りながら、
「ううん、多分知らないと思う。兄が別れる前に言ったの、安西に気をつけろって。」
と言った。
「安西?誰だ、そいつは。」
「それが九条、昔はそう呼ばれていた。」
「・・。」
「だから、今あの薬と十六夜丸の事を知っているのは私の知る限り、斎藤さんと蒼紫とそして・・九条・・。」
蒼紫と武尊は互いにじっと相手の目を見ていたが蒼紫が一呼吸置き、
「九条・・か。」
と呟くと目を閉じた。
何かを考えている様子の蒼紫に武尊も黙って湯呑を見つめ、また一口すすった。
武尊の脳裏には会津で会った九条の姿よりももっと昔の九条の姿が映っていた。
「人には言わない欲しいんだけど・・」
蒼紫が頷くのを見て武尊は話し始めた。
「丁度幕末の頃なんだけど私、記憶を無くしていたことがあってその時兄に拾われたの。」
「拾われた?義理の兄ではなかったのか。」
確かに蒼紫は以前、嵐山の庵で武尊に兄がいるとは聞いていたがその時は『本当の兄ではない』と聞いていただけだったのでてっきり血がつながっていないだけだと思っていたのだ。
幕末といえどもあの頃出会った十六夜丸はすでに今の武尊と同じ姿。
すでに成人している女を拾うとはおかしな話だと思った蒼紫は不可解だと表情で示した。
それを見て武尊は、
「私が妹に似ているからってことでそう呼ばされただけなの。」
と付け足した。
そうだったのかと思った蒼紫は同時に、
「武尊の家族はどうした?」
と聞いた。
武尊は一瞬黙った後、
「・・いないよ。父も母も、もちろん兄妹も。」
「・・そうか。」
と言った。
蒼紫が見た武尊の顔は少し悲しげに笑っていたように見えた。
もちろん蒼紫は武尊の身内はすべて何らかの理由で死んだのだと受け取った。
そして武尊はまた話を続けた。
「私には記憶がないので他に行く所もなく、そのまま兄に言われるままにお世話になるしかなかったんだけど、しばらくして私の身体が悪いんだということで薬を飲まされた・・それがあの薬で飲んだ後の記憶がしばらくない私は私に何が起きているのかしばらくの間全く知らなかった。」
「記憶がない、か・・。」
薬を飲んで記憶がない時の武尊はすなわち十六夜丸。
蒼紫の脳裏に十六夜丸の姿が浮かぶ。
今更ながらだがこうやって目の前の武尊と比べてみると姿は同じで在りながらなんと別人なのだろうと蒼紫は思う。
(いや、あの薬は武尊を喰らう魔物なのだ・・。)
診療所での武尊の様子を思い出して蒼紫はそう思った。
武尊はじっと自分を見つめる蒼紫の視線が何だかたまらず、湯呑見つめ、少し間を置いてからまた話し始めた。
「私が連れて行かれた所は京都の中の石庭のある少し大きなお寺で・・そこの一部屋を私は与えられて住んでいたの。他にも何人かいてその中の一人が九条だった・・当時は会津で会った時のような恰好ではなく、お坊さんみたいな恰好だったからまさか彼だと思わなくて・・。」
あの石庭を思い出すとついあの頃の情景がよみがえって来る。
兄の事、鷹の事。
そして九条・・いや、安西という男の事。
武尊がその情景を追って黙っていると蒼紫が、
「他にも数人いたと言ったな。そいつらも十六夜丸の事を知っているのではないのか。」
と聞いた。
武尊は軽く首を横に振りながら、
「ううん、多分知らないと思う。兄が別れる前に言ったの、安西に気をつけろって。」
と言った。
「安西?誰だ、そいつは。」
「それが九条、昔はそう呼ばれていた。」
「・・。」
「だから、今あの薬と十六夜丸の事を知っているのは私の知る限り、斎藤さんと蒼紫とそして・・九条・・。」
蒼紫と武尊は互いにじっと相手の目を見ていたが蒼紫が一呼吸置き、
「九条・・か。」
と呟くと目を閉じた。
何かを考えている様子の蒼紫に武尊も黙って湯呑を見つめ、また一口すすった。