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204.イキサツ(1) (斎藤・夢主)
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「うん・・次にマーティンに会ったのは横浜だった。一がいったん東京に戻った日。」
「・・・。」
自分が東京へ戻っている間に武尊がそんな異人に会っていたとはまったく考えもしていなかった斎藤だった。
「本当に偶然だったんだけど・・。」
と、武尊はあの日を思い出すように遠い眼をした。
蒼い空、きらめく海。
そんな景色が見える丘にある教会。
「一を駅で見送った後、一に北海道で何か役に立つものでもないかなと思って街中でいろいろ探したんだけどこれと思う物がなくて・・
諦めて歩いているうちに洋館の部屋から見えた教会の屋根が見えたからなんとなく魅かれて足が向いたの。
そうしたら教会からオルガンの音色がしたから中をそっと覗いてみたらマーティンがオルガンを弾いていたの。もっとも最初はそれがマーティンだとは分からなかったけれど。」
「オルガン?」
斎藤は聞きなれない言葉を繰り返した。
「ええと・・マーティンは多分すごい音楽家だからいろんな楽器が弾けるんだと思う。教会にあるオルガンっていうのはものすごく大きくて鍵盤を鳴らすと音が教会内に荘厳に響くの。」
と、武尊は両手を大きく回してその大きさを表現した。
「西洋の音楽の事はよく分からんがそこにあの老人がいたということなんだな。」
「うん、でもこっそり聞いているつもりだったんだけど入口のおばさんに見つかってそのおばさんが騒ぐものだからマーティンにもみつかっちゃったという話。」
「ほお・・。」
その様子が目に見えるようだと斎藤は武尊の慌てっぷりが想像出来た。
武尊は思い出すようにトツトツと話を進めた。
「教会には他にもおばさん達がいて・・もちろんみんな外国人なんだけどその日は次の日曜のチャリティバザーとミサの準備をしていて・・・・
・・キリスト教の国ではチャリティバザーっていって困った人の為に皆で助け合いましょうっていう行事が時々あって、家で不要になったものとかを持ち寄って売って売り上げを教会に寄付したしするんだけど・・
・・一に渡したカシミアのマフラーもそこで見つけたの。バザーは翌週だから今すぐ売って欲しいって無理を言って・・それを見たマーティンが私の為に話をつけてくれたから買う事が出来たの。」
それを聞いた斎藤は、
「なるほど、それでか。」
と呟いた。
「え?どういうこと?」
不意に納得の言葉を口にした斎藤のその意味が分からず武尊は聞いた。
それと同時に斎藤があのマフラーを使ってくれているのかどうか気になった。
十一月の北海道ともなれば上着なしでは流石に寒いのではないかと武尊は斎藤の夏と変わらない格好を見てそう思った。
(確かに制服は生地の厚さからいって冬用だと思うんだけど寒くないのかな・・それとも明治人って寒さに強い?)
そんな事を考え斎藤を見ていると斎藤は武尊にフッと笑った。
「ん?」
武尊がそんな斎藤の表情に目を丸くすると斎藤はゆっくりと制服の前ボタンを開き始めた。
げっ、いったい何を始めるんだとびっくりしている武尊に斎藤は、
「そういう経緯があったのなら納得がいく。」
と自分の腹を叩いた。
「あっ!」
武尊は思わず叫んだ。
斎藤の腹部には紛れもなく武尊があげたあのカシミアの白いマフラーが巻かれていた。
「首巻じゃなくて・・は・・腹巻に?」
思わずスットンキョウな声を出してしまった武尊に斎藤ククッと笑って、
「函館では風よけに首に巻いたんだがな、向こうに比べるとこっちは暖かくて昨日からこうして腹に巻いている。意外に良いぞ。」
と言った。
「そ・・そうだったんだ。」
使ってくれている、しかもしっつかり身につけていることは非常に非常に嬉しい事だったけれどもちょっと微妙な気持ちの武尊だった。
「よかったね、お腹が暖かくて。」
と、ちょっと引きつった笑いを斎藤に返しながら武尊は自分の言った言葉を思い出した。
『私の・・大事な人が・・遠い所に行ってしまうんです・・・。』
武尊はそう言ってマーティンの前で涙をこぼしたのだった。
そしてハッとした。
「一、もしかして函館ではそのマフラー首にしてた?」
「今そう言っただろ。そうだな、武尊も察したようだが今の話からすると俺がしていたマフラーを見て武尊が買ったものだと分かり武尊と繋がりがあると考えた、と推測すればこの待遇も理由がつく。」
それだけじゃない、と武尊は思った。
マーティンが函館にいた理由は分からないがそこで斎藤のしているマフラーを見て、斎藤が自分の大事だと言った人だと分かったのではないかということ。
(マーティン・・。)
マーティンは娘を確かに愛していた。
その娘に似ているいうだけで武尊の為に斎藤にもいろいろ良くしているんだと。
そう思うと武尊はちょっぴり切なくなった。
いくつになっても父は娘のことを大事に思っているということに。
(お父さん・・か。)
武尊は心の中でそう呟いた。
2015.09.27
「・・・。」
自分が東京へ戻っている間に武尊がそんな異人に会っていたとはまったく考えもしていなかった斎藤だった。
「本当に偶然だったんだけど・・。」
と、武尊はあの日を思い出すように遠い眼をした。
蒼い空、きらめく海。
そんな景色が見える丘にある教会。
「一を駅で見送った後、一に北海道で何か役に立つものでもないかなと思って街中でいろいろ探したんだけどこれと思う物がなくて・・
諦めて歩いているうちに洋館の部屋から見えた教会の屋根が見えたからなんとなく魅かれて足が向いたの。
そうしたら教会からオルガンの音色がしたから中をそっと覗いてみたらマーティンがオルガンを弾いていたの。もっとも最初はそれがマーティンだとは分からなかったけれど。」
「オルガン?」
斎藤は聞きなれない言葉を繰り返した。
「ええと・・マーティンは多分すごい音楽家だからいろんな楽器が弾けるんだと思う。教会にあるオルガンっていうのはものすごく大きくて鍵盤を鳴らすと音が教会内に荘厳に響くの。」
と、武尊は両手を大きく回してその大きさを表現した。
「西洋の音楽の事はよく分からんがそこにあの老人がいたということなんだな。」
「うん、でもこっそり聞いているつもりだったんだけど入口のおばさんに見つかってそのおばさんが騒ぐものだからマーティンにもみつかっちゃったという話。」
「ほお・・。」
その様子が目に見えるようだと斎藤は武尊の慌てっぷりが想像出来た。
武尊は思い出すようにトツトツと話を進めた。
「教会には他にもおばさん達がいて・・もちろんみんな外国人なんだけどその日は次の日曜のチャリティバザーとミサの準備をしていて・・・・
・・キリスト教の国ではチャリティバザーっていって困った人の為に皆で助け合いましょうっていう行事が時々あって、家で不要になったものとかを持ち寄って売って売り上げを教会に寄付したしするんだけど・・
・・一に渡したカシミアのマフラーもそこで見つけたの。バザーは翌週だから今すぐ売って欲しいって無理を言って・・それを見たマーティンが私の為に話をつけてくれたから買う事が出来たの。」
それを聞いた斎藤は、
「なるほど、それでか。」
と呟いた。
「え?どういうこと?」
不意に納得の言葉を口にした斎藤のその意味が分からず武尊は聞いた。
それと同時に斎藤があのマフラーを使ってくれているのかどうか気になった。
十一月の北海道ともなれば上着なしでは流石に寒いのではないかと武尊は斎藤の夏と変わらない格好を見てそう思った。
(確かに制服は生地の厚さからいって冬用だと思うんだけど寒くないのかな・・それとも明治人って寒さに強い?)
そんな事を考え斎藤を見ていると斎藤は武尊にフッと笑った。
「ん?」
武尊がそんな斎藤の表情に目を丸くすると斎藤はゆっくりと制服の前ボタンを開き始めた。
げっ、いったい何を始めるんだとびっくりしている武尊に斎藤は、
「そういう経緯があったのなら納得がいく。」
と自分の腹を叩いた。
「あっ!」
武尊は思わず叫んだ。
斎藤の腹部には紛れもなく武尊があげたあのカシミアの白いマフラーが巻かれていた。
「首巻じゃなくて・・は・・腹巻に?」
思わずスットンキョウな声を出してしまった武尊に斎藤ククッと笑って、
「函館では風よけに首に巻いたんだがな、向こうに比べるとこっちは暖かくて昨日からこうして腹に巻いている。意外に良いぞ。」
と言った。
「そ・・そうだったんだ。」
使ってくれている、しかもしっつかり身につけていることは非常に非常に嬉しい事だったけれどもちょっと微妙な気持ちの武尊だった。
「よかったね、お腹が暖かくて。」
と、ちょっと引きつった笑いを斎藤に返しながら武尊は自分の言った言葉を思い出した。
『私の・・大事な人が・・遠い所に行ってしまうんです・・・。』
武尊はそう言ってマーティンの前で涙をこぼしたのだった。
そしてハッとした。
「一、もしかして函館ではそのマフラー首にしてた?」
「今そう言っただろ。そうだな、武尊も察したようだが今の話からすると俺がしていたマフラーを見て武尊が買ったものだと分かり武尊と繋がりがあると考えた、と推測すればこの待遇も理由がつく。」
それだけじゃない、と武尊は思った。
マーティンが函館にいた理由は分からないがそこで斎藤のしているマフラーを見て、斎藤が自分の大事だと言った人だと分かったのではないかということ。
(マーティン・・。)
マーティンは娘を確かに愛していた。
その娘に似ているいうだけで武尊の為に斎藤にもいろいろ良くしているんだと。
そう思うと武尊はちょっぴり切なくなった。
いくつになっても父は娘のことを大事に思っているということに。
(お父さん・・か。)
武尊は心の中でそう呟いた。
2015.09.27