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228.花・花・花 (夢主・蒼紫・操)

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武尊の部屋の障子が急に明るくなった。


曇りがちだった空が急に晴れたからだ。


障子越しに差し込むやわらかな光が暖かくて武尊は障子に近づき、冷たい自分の手の平で光を受けた。


直ぐに直射日光の方が暖かいのではないかと思い障子を開けた。




外の方が気温が低かったがやっぱり直射日光の力は偉大だった。


武尊は廊下で立って日光浴をしようと思ったが、庭のピンクの花が沢山落ちているのが気になって、出ていた下駄をひっかけて庭へ下りた。



昨日の雨に打たれて落ちたのだろう。


武尊はそう思った。



こんなに綺麗に手入れをされた料亭の庭に、変色し、みすぼらしく落ちた花ビラがあるのはよろしくないと、ふとそう思った武尊は木の下の苔を傷つけないようにそれらを拾い始めた。



すべてを拾い集め終わる頃に、



「どうした。」



と蒼紫の声がした。


武尊は丁度よかったと蒼紫の方に振り向いて、



「これ、どうしよう。」



と両手いっぱいの拾った花を見せた。



「それはそこに入れておけばいい。」



と蒼紫は壁際に置いてある大きな竹籠を指差した。



武尊は蒼紫が指差した籠にそれらを入れると、



「ありがとう。」



と蒼紫にお礼を言った。


すると蒼紫は少し笑みを浮かべて武尊を見た。



「なに・・私何か笑われるような事した?」



武尊が真顔でそう言うと蒼紫は、



「いや・・礼を言うのはこちらの方だ。拾ってくれたんだろ。俺も朝見て気になっていたんだ。」



と言った。



「ふーん・・別に大したことないよ。ちょっと拾ってみようと思っただけだから。」



武尊は別に蒼紫が言ったからというわけではないが良い事をしたのかな、と少し嬉しくなった。


そして、



「これ・・何の花?綺麗だね。」



と、聞いた。



蒼紫はもう一足あった下駄を履くと庭に下りてきて武尊の横に立ちながら、



「これは山茶花(さざんか)だ。」



と言い腕を組んだ。



「へー、これがサザンカなんだ。いい匂いがする。」



「そうだな。」



そう言って二人は山茶花の木を少し眺めた。





そのうち武尊の方がハッと気がついて、蒼紫から少し離れる。


蒼紫は武尊を静かな視線で見送った。



「だ、だめだからね・・。」


「何がだ。」


「こんなに近いのは。」


「何を怯えている。」


「怯えてなんかないよ、ただ・・あまり近いと誤解を招くといけないから・・。」



武尊がそう言葉を濁すと蒼紫は、



「俺が武尊を【友】であると皆に言った以上、誰も何も言わん。」



と言った。


武尊はその話には異議ありと思ったがこの話は蒼紫と話すとややこしくなるのは目に見えていたのでせめて話題を変えようと、



「サザンカはいい匂いがするね。」



と言った。


蒼紫は少し間を置き、



武尊は山茶花が好きなのか。」



と聞いた。



「んー、綺麗だしいい匂いがするけど、とりわけ好きっていうわけじゃない。」




武尊は本当、こんな話ならどうして普通に喋れるんだろうと思いながら答えた。



「好きな花はあるのか。」



続けざまの蒼紫の問いに武尊は少し考え、東京でキンモクセイの垣根がある家の横を通った時の事を武尊はふと思い出し、そして頭の中で他の花と比べて、



「・・桜や梅も好きだけど、私はキンモクセイがいい、あの甘い匂いが好き・・金色の小さな花も可愛いし。」



と言った。


武尊はそう言った後に蒼紫がすぐ何か言うかと言葉待っていたがなかなか返ってこないので思わず蒼紫の顔を見た。


すると蒼紫は、



「いや・・意外だったと思ってな。」



と本当に意外そうな顔をしたので武尊は、



「そうかなぁ。」



と言った。


そして更に、



「あ、ドクダミもいいかも。役に立つし。」



というと蒼紫は増々驚きの表情を見せたかと思うと、・・普通に笑った。



「あ、何で笑うの!?」



思わずそう聞き返す武尊に蒼紫は笑って悪いと思ったのか笑うのをやめ、それでも嬉しいのか顔を明るくして言った。



「女は牡丹や芍薬、若しくは百合が好きなのかと思っていたが・・。」



と言い、更に、



「俺は・・武尊のそういう所が好きなのかもしれないと思ってな。」



と少し目を細めた。


その視線に武尊は、




(まずい!この話題もまずい!)



と、とにかく蒼紫の興味を自分から引き離そうと脳をフル回転させ、



「じゃあ、蒼紫は何が好きなの?」



と聞いてみた。


すると蒼紫はいつものクールな顔に戻り、



「そうだな・・確かに桜は儚く美しいと思った花はあるが、それを好きだと思う感情はこれまで持ち合わせてはいなかった。」



と言った。


蒼紫の言いように少し違和感を感じながらも武尊は、



「じゃあ今は?」



と素朴に聞いてみた。


すると蒼紫は、



「そうだな、武尊が金木犀(きんもくせい)がいいと言うのなら俺もそうするか。」



と言った。



「だめだよ。」


「だめなのか?」



そんな主体性のない考えではだめだという意味で言ったのに、蒼紫の少し寂しさ漂うおうむ返しに、武尊はつくづく自分でも甘いと思いつつ悩んだ。


武尊に蒼紫の好みまで強く否定する理由などない。



「別に、、だめじゃないよ。」



武尊はすぐに言い直した。



「そうか。」



と答えた蒼紫の返事はどことなく安心したようだと武尊は思った。



「それより、」



武尊は切り出した。



「蒼紫が東京で調べたこと・・聞きたい。」



蒼紫はすぐに武尊の聞きたい内容を察した。



「嗚呼、では俺の部屋で・・。」



と、言いかけた時、



「蒼紫様ー!いつ出発するの?」



と蒼紫の姿を見た操は大きな声で廊下を歩いて来た。
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