※1 記憶を失っている時の名前は変換できません。
180.御庭番式恩返し (蒼紫・夢主・右近)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
武尊は魚の煮付けを口に運んでいた。
「うん、醤油で甘く煮込んである。おいしい、おいしい・・・でも何の魚だろう?」
と、つい独り言を言っていると蒼紫が、
「これは【鯉の甘煮】と言って会津では昔から食べられているそうだ。滋養強壮に良いとされている。それから、」
それから鯉には乳の出が良くなる効用がある、と言おうとした蒼紫だったが今の武尊にそれを言うのはどうかと出かけた言葉を飲み込んだ。
珍しくウンチクの途中で言葉を止めた蒼紫に武尊は、
「『それから』どうしたの?。」
と聞いたが蒼紫は何でもないと汁物に手を伸ばした。
「滋養強壮なら疲れているから私に丁度いいかな。」
と言って武尊は続いて香の物に箸を伸ばそうとした時、あっ、と声を出して自分の懐に手をやった。
そして先程右近からもらったゆべしを出した。
「何だそれは。」
「すっかり忘れてた。さっき翁さんからもらった胡桃ゆべし。後で蒼紫と半分こしようと思っていたのを忘れてた。」
武尊は御膳の空いている場所にそれを置いて御飯を手に取った。
食事中にあれこれ言いたかった武尊だった(言わないと二人きりのシンとした状況に間が持たないと思っていた)が、後は食事のおいしさを噛みしめるように食べていたらいつの間にか完食していた武尊だった。
「ごちそう様でした。」
残念ながら胡桃ゆべしはお腹いっぱいで、また後から頂こうと武尊の手帳の上へ移動となった。
かなりゆっくり食べたのにまだまだ夜は長い。
東京から思いつめて会津まで。ほぼ歩き詰めだった武尊ってとって久しぶりにゆったりとした、そして贅沢な時間。
お腹がいっぱいとあって本当は寝転がりたい。
だがそれは蒼紫の前だとさすがに恰好悪すぎだと再び体操座りをして自分の膝にもたれかかった。
「疲れたのなら横になればいい。」
蒼紫が予想外の言葉を掛けてくれたがこんな所で横になった後の蒼紫の行動に不安を感じた武尊は、
「大丈夫、横になったらきっと寝ちゃうからこのままでいい。もう少しお腹が落ち着いたらもう一度露天風呂に行きたいし。」
と言った。
「そんなに気にいったのか。」
「うん、ものすごくよかった。」
武尊がそう言うと蒼紫は障子を開けて廊下に出た。
「何処かに行くの?」
思わずそう聞いた武尊だったが蒼紫は、
「いや、座禅を組むだけだ。」
と言って冷たい空気が入らないように障子を閉めた。
部屋に一人だけになって思わずほっとした武尊だった。
蒼紫とは【禅友】という事になっているが武尊は今は座禅という気分ではなかった。
かと言って一人でいても何もすることはない。
武尊はふとこの宿に着いた時の疑問点を聞いてみようと障子の向こう側の蒼紫に座禅の途中で悪いなぁと思いつつも話しかけた。
「蒼紫・・聞いていい?」
「嗚呼。」
「どうして宿帳の名前は【クサカベ カン】って言うの?」
武尊の問いに少し間をおいて返事が返ってきた。
だがその返事は少し謎かけの様だった。
「武尊、【葵】という字は徳川家の家紋だという事は知っているな。であるが故にその字は幕府直轄の組織に関係がある事を示すことが多かった。葵屋も例外ではない。」
なるほどふむふむと武尊は思いつつ蒼紫の話に耳を傾けた。
「では武尊、【葵】という文字を分解してみろ。どうなる。」
「え!?・・どうなるって・・・。」
うーん、と考え込む武尊に蒼紫は考える時間を与えた。
「葵、あ・お・い・・、ア・オイ・・・AOI・・・・。うーん・・(漢字分解したとしたら、くさかんむりはついてるけどその下って何だろ・・。)」
武尊は腕を組んでしばらく考えたがどうにもわからず、
「蒼紫、降参です。」
とギブアップした。
すると、障子の向こうより
「【葵】は分解すると【艸部(そうぶ)】と【癸(みずのと)】に分けることができる。【艸部】の【艸】は知ってのとおり【草】という意味、従って【艸部】を【草部】と書き【くさかべ】と読み、下の【癸】はそのまま【ミズノト】という音用い【ミズ】は【氵】(さんずい)に【ノト】はそのまま【ノ】をなるべく平たく右上に書きその下に【ト】を【十】として書くと【汗】という字になる。だから隠密御庭番衆が御公儀の用件で偽名を使う場合は【クサカベ カン】の名を使う、というわけだ。分かるか。」
と、蒼紫が説明した。
(わかりません。)
武尊は心の中で即答した。
たぶん紙に書いて説明してくれたなら分かるのだろうが【クサカベ】以降の話はついて行けなかった。
「ん、んんー。よく分からないけど分かった。なるほどね。」
と、とにかく葵という文字が起源で隠密御庭番衆は暗号でその名前を使っていたということが分かったのでもういいやと武尊はちょっと適当に返事をした。
するとスッと障子が開らき、
「曖昧な返事だ。手を出せ武尊。」
と蒼紫が言った。
(いっ!?)
嫌とは言えず、何だろうかと武尊は仕方なく片手を手のひらを上に向けて出した。
「こういうものは紙に書いて残すわけにはいかぬからな。」
と蒼紫は言い、武尊の手を取り、武尊の手のひらに【葵】という文字を書いてもう一度最初から説明し始めた。
「これが【そうぶ】・・で、これが【みずのと】ここまではいいな。」
蒼紫はここまで言って武尊の顔を見て武尊が分かっているか確認した。
武尊はうんうんと頷くしかなかった。
手のひらを滑るように動く蒼紫の指先がくすぐったかったが、それよりも蒼紫のきれいな指先に見とれた武尊だった。
「・・・・という事だ。」
どうやら説明は終わったらしいが武尊にはほとんど聞こえていなかった。
それでも最後までうんうんと頷き、
「ありがとう蒼紫。・・私ちょっと冷えたからもう一度露天風呂行ってくるね。」
と武尊は行って、まだ自分の片手を支えている蒼紫の手を振りほどくように武尊は立ち上がると露天風呂へ向かった。
蒼紫は武尊が行ってしまうと小さくため息をつき、また座禅を組み瞑想を始めた。
「うん、醤油で甘く煮込んである。おいしい、おいしい・・・でも何の魚だろう?」
と、つい独り言を言っていると蒼紫が、
「これは【鯉の甘煮】と言って会津では昔から食べられているそうだ。滋養強壮に良いとされている。それから、」
それから鯉には乳の出が良くなる効用がある、と言おうとした蒼紫だったが今の武尊にそれを言うのはどうかと出かけた言葉を飲み込んだ。
珍しくウンチクの途中で言葉を止めた蒼紫に武尊は、
「『それから』どうしたの?。」
と聞いたが蒼紫は何でもないと汁物に手を伸ばした。
「滋養強壮なら疲れているから私に丁度いいかな。」
と言って武尊は続いて香の物に箸を伸ばそうとした時、あっ、と声を出して自分の懐に手をやった。
そして先程右近からもらったゆべしを出した。
「何だそれは。」
「すっかり忘れてた。さっき翁さんからもらった胡桃ゆべし。後で蒼紫と半分こしようと思っていたのを忘れてた。」
武尊は御膳の空いている場所にそれを置いて御飯を手に取った。
食事中にあれこれ言いたかった武尊だった(言わないと二人きりのシンとした状況に間が持たないと思っていた)が、後は食事のおいしさを噛みしめるように食べていたらいつの間にか完食していた武尊だった。
「ごちそう様でした。」
残念ながら胡桃ゆべしはお腹いっぱいで、また後から頂こうと武尊の手帳の上へ移動となった。
かなりゆっくり食べたのにまだまだ夜は長い。
東京から思いつめて会津まで。ほぼ歩き詰めだった武尊ってとって久しぶりにゆったりとした、そして贅沢な時間。
お腹がいっぱいとあって本当は寝転がりたい。
だがそれは蒼紫の前だとさすがに恰好悪すぎだと再び体操座りをして自分の膝にもたれかかった。
「疲れたのなら横になればいい。」
蒼紫が予想外の言葉を掛けてくれたがこんな所で横になった後の蒼紫の行動に不安を感じた武尊は、
「大丈夫、横になったらきっと寝ちゃうからこのままでいい。もう少しお腹が落ち着いたらもう一度露天風呂に行きたいし。」
と言った。
「そんなに気にいったのか。」
「うん、ものすごくよかった。」
武尊がそう言うと蒼紫は障子を開けて廊下に出た。
「何処かに行くの?」
思わずそう聞いた武尊だったが蒼紫は、
「いや、座禅を組むだけだ。」
と言って冷たい空気が入らないように障子を閉めた。
部屋に一人だけになって思わずほっとした武尊だった。
蒼紫とは【禅友】という事になっているが武尊は今は座禅という気分ではなかった。
かと言って一人でいても何もすることはない。
武尊はふとこの宿に着いた時の疑問点を聞いてみようと障子の向こう側の蒼紫に座禅の途中で悪いなぁと思いつつも話しかけた。
「蒼紫・・聞いていい?」
「嗚呼。」
「どうして宿帳の名前は【クサカベ カン】って言うの?」
武尊の問いに少し間をおいて返事が返ってきた。
だがその返事は少し謎かけの様だった。
「武尊、【葵】という字は徳川家の家紋だという事は知っているな。であるが故にその字は幕府直轄の組織に関係がある事を示すことが多かった。葵屋も例外ではない。」
なるほどふむふむと武尊は思いつつ蒼紫の話に耳を傾けた。
「では武尊、【葵】という文字を分解してみろ。どうなる。」
「え!?・・どうなるって・・・。」
うーん、と考え込む武尊に蒼紫は考える時間を与えた。
「葵、あ・お・い・・、ア・オイ・・・AOI・・・・。うーん・・(漢字分解したとしたら、くさかんむりはついてるけどその下って何だろ・・。)」
武尊は腕を組んでしばらく考えたがどうにもわからず、
「蒼紫、降参です。」
とギブアップした。
すると、障子の向こうより
「【葵】は分解すると【艸部(そうぶ)】と【癸(みずのと)】に分けることができる。【艸部】の【艸】は知ってのとおり【草】という意味、従って【艸部】を【草部】と書き【くさかべ】と読み、下の【癸】はそのまま【ミズノト】という音用い【ミズ】は【氵】(さんずい)に【ノト】はそのまま【ノ】をなるべく平たく右上に書きその下に【ト】を【十】として書くと【汗】という字になる。だから隠密御庭番衆が御公儀の用件で偽名を使う場合は【クサカベ カン】の名を使う、というわけだ。分かるか。」
と、蒼紫が説明した。
(わかりません。)
武尊は心の中で即答した。
たぶん紙に書いて説明してくれたなら分かるのだろうが【クサカベ】以降の話はついて行けなかった。
「ん、んんー。よく分からないけど分かった。なるほどね。」
と、とにかく葵という文字が起源で隠密御庭番衆は暗号でその名前を使っていたということが分かったのでもういいやと武尊はちょっと適当に返事をした。
するとスッと障子が開らき、
「曖昧な返事だ。手を出せ武尊。」
と蒼紫が言った。
(いっ!?)
嫌とは言えず、何だろうかと武尊は仕方なく片手を手のひらを上に向けて出した。
「こういうものは紙に書いて残すわけにはいかぬからな。」
と蒼紫は言い、武尊の手を取り、武尊の手のひらに【葵】という文字を書いてもう一度最初から説明し始めた。
「これが【そうぶ】・・で、これが【みずのと】ここまではいいな。」
蒼紫はここまで言って武尊の顔を見て武尊が分かっているか確認した。
武尊はうんうんと頷くしかなかった。
手のひらを滑るように動く蒼紫の指先がくすぐったかったが、それよりも蒼紫のきれいな指先に見とれた武尊だった。
「・・・・という事だ。」
どうやら説明は終わったらしいが武尊にはほとんど聞こえていなかった。
それでも最後までうんうんと頷き、
「ありがとう蒼紫。・・私ちょっと冷えたからもう一度露天風呂行ってくるね。」
と武尊は行って、まだ自分の片手を支えている蒼紫の手を振りほどくように武尊は立ち上がると露天風呂へ向かった。
蒼紫は武尊が行ってしまうと小さくため息をつき、また座禅を組み瞑想を始めた。