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180.御庭番式恩返し (蒼紫・夢主・右近)
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随分暗くなって部屋の行燈の灯りが目立つようになった頃、武尊は行燈の近くにいって手帳とにらめっこしていた。
「どうした。」
ぎくっ!急に背後から声がして武尊の心臓が縮みあがった。
武尊が振り向くと背後に蒼紫がいつものの顔をして立っていた。
「び、びっくりしたぁ・・。何でもないよ、ちょっとカレンダーを眺めていた・・って、えっと・・ぉ・・。」
カレンダーなんて言っても分かってもらえないと、この時代の言葉を探そうとするがびっくりした為適切な言葉がすぐに浮かんでこない。
見られることを想定してなかった武尊の手帳には手書きで月ごとのカレンダーは算用数字で1、2、3・・と日付が左から右へ数段に分けて書かれてあった。
もごもごしている武尊の手帳を蒼紫が覗きこんだ。
「これは洋算の数字か?」
「洋算?・・あ、ああ~、そっか・・。」
そういえば、と武尊はまたもや日本の歴史を振り返った。
算用数字が使われ始めたのは明治になって西洋式の教育を取り入れるようになってからの事。
(数字だけじゃなくて他にも左から右にいろいろメモってるからなぁ・・まずった。)
しかし背後からばっちり手帳に鋭い視線を投げかけている蒼紫に今更下手に弁明して誤魔化すなんてことは出来ないだろう。
三国志の話といい、天気の話といい、この男の知識は自分より遥かにキャパが大きいのである。
(インテリだもんね・・ほら・・興味津々っていう顔してるもん・・。)
武尊は蒼紫の顔を見上げてそう思った。
「これは今月の日付を書いたもので、今日は何日だったっかなって思って見てたの。来月の十日には東京に戻らないといけないから。」
と説明しながら武尊は次のページをめくった。
そこには《11月》というタイトルと日付が10月と同じように書いてあり、山本少尉と約束した日には丸がつけてあった。
武尊は比古と約束した期限の12月までを月別に日にちを書いていた。
「暦の一種か。初めて見る仕様だが分からないこともない。」
ふむ、と蒼紫は手を顎に当てて考え込んだ。
武尊はふと背後に立つ蒼紫から匂う温泉のほんわかした温もりの香りに蒼紫の湯上りしたての色気を思いもよらず感じてしまった。
(近いよ蒼紫・・・、この距離微妙・・。)
自分を好きだと言い切った男はそれ以来何となくそれ以前より自分との時の距離が縮んでいる。
(確かに蒼紫は命の恩人で、私を好きだっていう事は聞いたけど、私達って【友】だよね、にしてはこの距離。わざとかな・・?)
武尊はちらりと蒼紫を見るがその表情から何を考えているのかまったく分からない。
武尊は意識するとなんとなく気まずくなり、
「あとは東京へ戻るだけだし、少しゆっくり出来そうでよかった。」
と、言って手帳を閉じた。
「そうだな、折角良い湯に来ていることだ、少しでも傷がよくなると良いな。」
蒼紫は自分がつけた武尊の背中の大きな傷を気にしていた。
あれだけの傷はおそらく完全に消えることはないであろうが少しでも薄くなればと蒼紫は思っていた。
「・・傷の具合はどうだ。」
「あ・・あれはもう大丈夫、痛まないから傷は塞がっていると思うし・・気にかけてくれてありがとう。」
「嗚呼・・。」
武尊は気を使ってくれる蒼紫に礼を言い立ち上がってメモ帳を他の荷物の所に置いた。
「もうすっかり暗くなったね。」
「嗚呼・・。」
外は提灯の灯りが暗闇に浮かび幻想さを増していた。
武尊は湯上りの熱も冷めて風も冷たく感じたので障子を閉めて始めていると二枚目の障子を閉めようとした時に自分の手の上にもう一つの手が重ねられた。
「蒼・・。」
大きくて暖かな蒼紫のきれいな手に思わずドキッとした武尊は振り返って蒼紫の顔を見て思わずその場に固まった。
「手が冷たい、早く丹前を着ろ。温泉に来て風邪をひいては何にもならん。」
「・・うん、ありがとう。」
蒼紫の手をすり抜けるようにその場を逃れると武尊は丹前を羽織った。
その間に蒼紫は障子を全部閉めた。
「蒼紫は暑くない?少し開けとこうか。」
「いや、大丈夫だ。」
部屋に立ちっぱなしの二人。
武尊は蒼紫に
(早くどこかに座ってよー、そしたら私は距離を置いてどこかに座るのにぃ。)
と思って待っていたが蒼紫は立ったまま全く動く気配がない。
ずっと立っているのも変なので武尊は行燈の明るい所に体操座りをした。
すると蒼紫がすっと武尊の所へやって来た。
(やっぱり来たーぁ!それに距離もやっぱり近い・・。)
武尊はちょっと気まずく思ったが蒼紫は武尊の足元にしゃがみ、
「足首の具合はどうだ。」
と言いながら武尊の足首に触れた。
「大丈夫だって、蒼紫は心配しすぎる。」
武尊は大丈夫だと蒼紫の手を払いのけようとしたが蒼紫は靴擦れした所を避け武尊の足首をひょいと持ち上げた。
「うわっ。」
武尊はバランスを崩しそうになり後ろに手を着いて支えざるをえなかった。
蒼紫はそんな武尊をちらっと見ただけで足首に視線を戻し軽く回して関節の具合を見ていた。
「そうだな、思ったより悪くない。だがここがゆるいな、やはりニ、三日はここで休んだ方がいい。」
蒼紫がそう言った時、
「失礼します。夕餉をお持ちいたしました。」
と、障子が開いた。
足首を持たれたままの格好で武尊は右近と目が合った。
(ひーっ!こんな恰好の所を!なんてタイミングの悪い!!)
誤解しなければいいなと武尊は思った。
蒼紫は、
「武尊、夕餉だ。」
と言うと武尊の足を下ろした。
右近はお膳を二つ向い合せに並べるともう一つの部屋の行燈もこちらに持って来て灯りをつけた。
「明るい方がようございましょう。また後程参ります。」
と、余分な事は何一つ言わず戻って行った。
大き目の膳に載った夕餉は宿泊場所に違わす立派なものだった。
「蒼紫、私お腹ぺこぺこ。食べようか。」
「そうだな。」
「いただきます。」
藤田家で時尾の手料理以来のちゃんとした食事に武尊はほっとした気分になった。
たとえ蒼紫でも誰かと一緒にゆっくりと食事をすることがこんなに心を豊かにするなんて、と思うと思わずニコニコ顔になる。
「どうした。」
武尊の顔の変化に思わず蒼紫がそう聞いてしまうほどに。
「誰かと食べる食事っておいしいから。」
武尊がそう答えると蒼紫も
「そうだな。」
と、しんみり答えた。
「どうした。」
ぎくっ!急に背後から声がして武尊の心臓が縮みあがった。
武尊が振り向くと背後に蒼紫がいつものの顔をして立っていた。
「び、びっくりしたぁ・・。何でもないよ、ちょっとカレンダーを眺めていた・・って、えっと・・ぉ・・。」
カレンダーなんて言っても分かってもらえないと、この時代の言葉を探そうとするがびっくりした為適切な言葉がすぐに浮かんでこない。
見られることを想定してなかった武尊の手帳には手書きで月ごとのカレンダーは算用数字で1、2、3・・と日付が左から右へ数段に分けて書かれてあった。
もごもごしている武尊の手帳を蒼紫が覗きこんだ。
「これは洋算の数字か?」
「洋算?・・あ、ああ~、そっか・・。」
そういえば、と武尊はまたもや日本の歴史を振り返った。
算用数字が使われ始めたのは明治になって西洋式の教育を取り入れるようになってからの事。
(数字だけじゃなくて他にも左から右にいろいろメモってるからなぁ・・まずった。)
しかし背後からばっちり手帳に鋭い視線を投げかけている蒼紫に今更下手に弁明して誤魔化すなんてことは出来ないだろう。
三国志の話といい、天気の話といい、この男の知識は自分より遥かにキャパが大きいのである。
(インテリだもんね・・ほら・・興味津々っていう顔してるもん・・。)
武尊は蒼紫の顔を見上げてそう思った。
「これは今月の日付を書いたもので、今日は何日だったっかなって思って見てたの。来月の十日には東京に戻らないといけないから。」
と説明しながら武尊は次のページをめくった。
そこには《11月》というタイトルと日付が10月と同じように書いてあり、山本少尉と約束した日には丸がつけてあった。
武尊は比古と約束した期限の12月までを月別に日にちを書いていた。
「暦の一種か。初めて見る仕様だが分からないこともない。」
ふむ、と蒼紫は手を顎に当てて考え込んだ。
武尊はふと背後に立つ蒼紫から匂う温泉のほんわかした温もりの香りに蒼紫の湯上りしたての色気を思いもよらず感じてしまった。
(近いよ蒼紫・・・、この距離微妙・・。)
自分を好きだと言い切った男はそれ以来何となくそれ以前より自分との時の距離が縮んでいる。
(確かに蒼紫は命の恩人で、私を好きだっていう事は聞いたけど、私達って【友】だよね、にしてはこの距離。わざとかな・・?)
武尊はちらりと蒼紫を見るがその表情から何を考えているのかまったく分からない。
武尊は意識するとなんとなく気まずくなり、
「あとは東京へ戻るだけだし、少しゆっくり出来そうでよかった。」
と、言って手帳を閉じた。
「そうだな、折角良い湯に来ていることだ、少しでも傷がよくなると良いな。」
蒼紫は自分がつけた武尊の背中の大きな傷を気にしていた。
あれだけの傷はおそらく完全に消えることはないであろうが少しでも薄くなればと蒼紫は思っていた。
「・・傷の具合はどうだ。」
「あ・・あれはもう大丈夫、痛まないから傷は塞がっていると思うし・・気にかけてくれてありがとう。」
「嗚呼・・。」
武尊は気を使ってくれる蒼紫に礼を言い立ち上がってメモ帳を他の荷物の所に置いた。
「もうすっかり暗くなったね。」
「嗚呼・・。」
外は提灯の灯りが暗闇に浮かび幻想さを増していた。
武尊は湯上りの熱も冷めて風も冷たく感じたので障子を閉めて始めていると二枚目の障子を閉めようとした時に自分の手の上にもう一つの手が重ねられた。
「蒼・・。」
大きくて暖かな蒼紫のきれいな手に思わずドキッとした武尊は振り返って蒼紫の顔を見て思わずその場に固まった。
「手が冷たい、早く丹前を着ろ。温泉に来て風邪をひいては何にもならん。」
「・・うん、ありがとう。」
蒼紫の手をすり抜けるようにその場を逃れると武尊は丹前を羽織った。
その間に蒼紫は障子を全部閉めた。
「蒼紫は暑くない?少し開けとこうか。」
「いや、大丈夫だ。」
部屋に立ちっぱなしの二人。
武尊は蒼紫に
(早くどこかに座ってよー、そしたら私は距離を置いてどこかに座るのにぃ。)
と思って待っていたが蒼紫は立ったまま全く動く気配がない。
ずっと立っているのも変なので武尊は行燈の明るい所に体操座りをした。
すると蒼紫がすっと武尊の所へやって来た。
(やっぱり来たーぁ!それに距離もやっぱり近い・・。)
武尊はちょっと気まずく思ったが蒼紫は武尊の足元にしゃがみ、
「足首の具合はどうだ。」
と言いながら武尊の足首に触れた。
「大丈夫だって、蒼紫は心配しすぎる。」
武尊は大丈夫だと蒼紫の手を払いのけようとしたが蒼紫は靴擦れした所を避け武尊の足首をひょいと持ち上げた。
「うわっ。」
武尊はバランスを崩しそうになり後ろに手を着いて支えざるをえなかった。
蒼紫はそんな武尊をちらっと見ただけで足首に視線を戻し軽く回して関節の具合を見ていた。
「そうだな、思ったより悪くない。だがここがゆるいな、やはりニ、三日はここで休んだ方がいい。」
蒼紫がそう言った時、
「失礼します。夕餉をお持ちいたしました。」
と、障子が開いた。
足首を持たれたままの格好で武尊は右近と目が合った。
(ひーっ!こんな恰好の所を!なんてタイミングの悪い!!)
誤解しなければいいなと武尊は思った。
蒼紫は、
「武尊、夕餉だ。」
と言うと武尊の足を下ろした。
右近はお膳を二つ向い合せに並べるともう一つの部屋の行燈もこちらに持って来て灯りをつけた。
「明るい方がようございましょう。また後程参ります。」
と、余分な事は何一つ言わず戻って行った。
大き目の膳に載った夕餉は宿泊場所に違わす立派なものだった。
「蒼紫、私お腹ぺこぺこ。食べようか。」
「そうだな。」
「いただきます。」
藤田家で時尾の手料理以来のちゃんとした食事に武尊はほっとした気分になった。
たとえ蒼紫でも誰かと一緒にゆっくりと食事をすることがこんなに心を豊かにするなんて、と思うと思わずニコニコ顔になる。
「どうした。」
武尊の顔の変化に思わず蒼紫がそう聞いてしまうほどに。
「誰かと食べる食事っておいしいから。」
武尊がそう答えると蒼紫も
「そうだな。」
と、しんみり答えた。