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179.東の翁 (蒼紫・夢主・右近)
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「・・・蒼紫。」
翁を見送った武尊は蒼紫に声をかけた。
「何だ。」
「今の人は御庭番衆の人なんでしょ。」
蒼紫に対する態度や廃刀令が出ている中で刀を見ても平然としている様子を見るとそう考えざるを得ないと武尊は思った。
「嗚呼・・笹川右近、通称【東の翁】。隠密御庭番衆で【くノ一指南方】を務めた男だ。特に優れた資質を持ったくノ一を育てていた。」
「くのいち指南・・。」
そんな役柄があったのかと武尊はこれまた驚いたが、未来においても女スパイはあの手この手でターゲットの相手に取り入って情報を引き出していることを考えれば、江戸時代のくノ一だってそれなりの事をしていてもおかしくないなと武尊は思った。
酒宴の席で悪代官に近づくお色気ムンムンの御庭番衆のくノ一の図・・・時代劇のワンシーンを武尊は想像した。
ただ、何をどのようにして教えたのか、武尊は質実剛健の文字そのもののような温泉宿の主人の顔からは想像出来ないと思ったがそこは御庭番、表面を中身と別の者にすることが出来るのではないか・・・と、そんな思いでつい蒼紫を見た。
イケメン顔なのに無口無表情・・の事が多いこの男も本当は何を考えているのか武尊には計りかねるものがある。
今回もわざわざ自分を【迎えに来た】という。
何故だろうと武尊は思った。
蒼紫は自分が警官として働いていたという事は知っている。
(まさか無賃で雇われてるとは考えないだろうから大金でなくても京都に帰るぐらいは何とかなるとは思わなかったのかな。)
今の武尊には蒼紫がただ武尊に会いたいが為、自分の懐に入れ京都に連れて帰りたいというだけで会津まで来たとは思いもしなかった。
武尊が少し思案しながら視線を庭に移すと蒼紫も庭を見つめ昔を思い出すようにして言った。
「俺も子供の頃からいろいろと右近から教わったものだ。」
蒼紫のその言葉を聞き、思わず蒼紫との距離を後ずさりでじわっと3cmぐらいあけた武尊だった。
(いろいろって・・話の流れからいくと女についての知識ってこと?)
武尊は京都で川に落ちた後、蒼紫によって指だけで狂喜のほどに逝かされたことがついこの間の事のように思い出され、心臓がドクっと鳴った。
思えばこの男の態度・性格・行動、全てにおいてよくよく考えてみれば時折理解不能というかかなりの変わっている、良く言えば大胆不敵だが一つ間違うと変人の達人だと武尊は思った。
自分のピンチにいつも何故か現れる(そのお陰で命があるということで武尊にとっては恩人ともいえる存在なのだが)のはいいが、何故かその後に武尊の予測できない蒼紫の行動が起こる。
二度ある事は三度あるということわざではないが、今回も山の中で気を失っている中を助けられた。
横にいる蒼紫の気配を感じながら、
(まさか・・ね。今回は何事もありませんように。)
と思わず願ってしまう武尊であった。
そう願いつつも、いつの間にか武尊は蒼紫が自分の近くにいる事に違和感をあまり感じていない事に気がついた。
(二度も裸を見られてしまった相手だからかなぁ・・いや、そうじゃない、影みたいなんだ蒼紫は・・。)
きっと世間からはまるで違う世界、御庭番衆という特殊な集団の中で御頭という特別な任務と地位を担った、恐らくものすごい男が自分の隣にいるにもかかわらずそれを自分が意識しないでいることが出来るのは蒼紫がそこにいながらも決して自らが主張することがない影のような存在だからかもしれない。
と、武尊は思った。
「どうした。」
急に物思いにふけるような顔をしはじめた武尊に蒼紫が声をかけた。
「あ、いや・・別に・・・・・・蒼紫は黒い服が似合うな・・って思って。」
まるで本当の影みたいだと危く口走りそうになった武尊だった。
「これも忍び装束だからな・・洋服の型を取り入れたこいつはこの季節、コートの下に着るのには一番都合がいいからな。」
蒼紫が今来ているのは観柳邸の頃に着ていた物と同じデザインの物。
「そっか。」
武尊がそう言うと蒼紫は手に持った二本の小太刀を持って床の間へ行った。
何をするのかと武尊が見ていたら、蒼紫は床の間の掛け軸がある側の一段高くなっている場所を手前から引っ掻けて引くと板の間が引き出しのように開いた。
「あ!」
武尊が驚いて声を出すと蒼紫は、
「これは敵に攻め込まれた時の為に武器をしまっておく隠し棚だ。あの翁の事だ、これくらいの仕掛けはしてある。」
と言って自分の小太刀をそこに収めた。
「武尊はどうする。」
と、蒼紫は武尊のナップサックに目をやった。
刀が入っていると言わなくても見る人が見ればそれが刀だという事はすぐに分かる。
刀袋に入れていたので直接泥はついていないが雨がしみて錆びてはいけないから袋から出さなければと武尊は思っていたけれど蒼紫の前で斎藤が自分の代わりだと武尊に預けたその刀を出すのは武尊にとって複雑な気持ちだった。
かと言ってこのまま濡れた袋に入れておくわけにもいかない。
ナップサックと刀袋は泥を落としたいと思っていたので結局出さねばならない状況にあった。
財布と刀だけは取られるわけにいかないし、かと言って刀を持って風呂とかに行けるわけではない。
背に腹は代えられず、
「じゃあお願いします・・。」
と、武尊は刀を取り出し蒼紫に渡した。
「脇差か、なかなかいい物だ。」
と刀を受け取った蒼紫だったが鞘の家紋を見て一瞬目を見開いたが素知らぬ顔ですぐにそのまま隠し棚へ自分の小太刀と共に収めた。
「ありがとう。」
武尊が礼を言って残りの荷物を袋から出していると右近が浴衣と丹前と数枚の手ぬぐいを持ち戻ってきた。
翁を見送った武尊は蒼紫に声をかけた。
「何だ。」
「今の人は御庭番衆の人なんでしょ。」
蒼紫に対する態度や廃刀令が出ている中で刀を見ても平然としている様子を見るとそう考えざるを得ないと武尊は思った。
「嗚呼・・笹川右近、通称【東の翁】。隠密御庭番衆で【くノ一指南方】を務めた男だ。特に優れた資質を持ったくノ一を育てていた。」
「くのいち指南・・。」
そんな役柄があったのかと武尊はこれまた驚いたが、未来においても女スパイはあの手この手でターゲットの相手に取り入って情報を引き出していることを考えれば、江戸時代のくノ一だってそれなりの事をしていてもおかしくないなと武尊は思った。
酒宴の席で悪代官に近づくお色気ムンムンの御庭番衆のくノ一の図・・・時代劇のワンシーンを武尊は想像した。
ただ、何をどのようにして教えたのか、武尊は質実剛健の文字そのもののような温泉宿の主人の顔からは想像出来ないと思ったがそこは御庭番、表面を中身と別の者にすることが出来るのではないか・・・と、そんな思いでつい蒼紫を見た。
イケメン顔なのに無口無表情・・の事が多いこの男も本当は何を考えているのか武尊には計りかねるものがある。
今回もわざわざ自分を【迎えに来た】という。
何故だろうと武尊は思った。
蒼紫は自分が警官として働いていたという事は知っている。
(まさか無賃で雇われてるとは考えないだろうから大金でなくても京都に帰るぐらいは何とかなるとは思わなかったのかな。)
今の武尊には蒼紫がただ武尊に会いたいが為、自分の懐に入れ京都に連れて帰りたいというだけで会津まで来たとは思いもしなかった。
武尊が少し思案しながら視線を庭に移すと蒼紫も庭を見つめ昔を思い出すようにして言った。
「俺も子供の頃からいろいろと右近から教わったものだ。」
蒼紫のその言葉を聞き、思わず蒼紫との距離を後ずさりでじわっと3cmぐらいあけた武尊だった。
(いろいろって・・話の流れからいくと女についての知識ってこと?)
武尊は京都で川に落ちた後、蒼紫によって指だけで狂喜のほどに逝かされたことがついこの間の事のように思い出され、心臓がドクっと鳴った。
思えばこの男の態度・性格・行動、全てにおいてよくよく考えてみれば時折理解不能というかかなりの変わっている、良く言えば大胆不敵だが一つ間違うと変人の達人だと武尊は思った。
自分のピンチにいつも何故か現れる(そのお陰で命があるということで武尊にとっては恩人ともいえる存在なのだが)のはいいが、何故かその後に武尊の予測できない蒼紫の行動が起こる。
二度ある事は三度あるということわざではないが、今回も山の中で気を失っている中を助けられた。
横にいる蒼紫の気配を感じながら、
(まさか・・ね。今回は何事もありませんように。)
と思わず願ってしまう武尊であった。
そう願いつつも、いつの間にか武尊は蒼紫が自分の近くにいる事に違和感をあまり感じていない事に気がついた。
(二度も裸を見られてしまった相手だからかなぁ・・いや、そうじゃない、影みたいなんだ蒼紫は・・。)
きっと世間からはまるで違う世界、御庭番衆という特殊な集団の中で御頭という特別な任務と地位を担った、恐らくものすごい男が自分の隣にいるにもかかわらずそれを自分が意識しないでいることが出来るのは蒼紫がそこにいながらも決して自らが主張することがない影のような存在だからかもしれない。
と、武尊は思った。
「どうした。」
急に物思いにふけるような顔をしはじめた武尊に蒼紫が声をかけた。
「あ、いや・・別に・・・・・・蒼紫は黒い服が似合うな・・って思って。」
まるで本当の影みたいだと危く口走りそうになった武尊だった。
「これも忍び装束だからな・・洋服の型を取り入れたこいつはこの季節、コートの下に着るのには一番都合がいいからな。」
蒼紫が今来ているのは観柳邸の頃に着ていた物と同じデザインの物。
「そっか。」
武尊がそう言うと蒼紫は手に持った二本の小太刀を持って床の間へ行った。
何をするのかと武尊が見ていたら、蒼紫は床の間の掛け軸がある側の一段高くなっている場所を手前から引っ掻けて引くと板の間が引き出しのように開いた。
「あ!」
武尊が驚いて声を出すと蒼紫は、
「これは敵に攻め込まれた時の為に武器をしまっておく隠し棚だ。あの翁の事だ、これくらいの仕掛けはしてある。」
と言って自分の小太刀をそこに収めた。
「武尊はどうする。」
と、蒼紫は武尊のナップサックに目をやった。
刀が入っていると言わなくても見る人が見ればそれが刀だという事はすぐに分かる。
刀袋に入れていたので直接泥はついていないが雨がしみて錆びてはいけないから袋から出さなければと武尊は思っていたけれど蒼紫の前で斎藤が自分の代わりだと武尊に預けたその刀を出すのは武尊にとって複雑な気持ちだった。
かと言ってこのまま濡れた袋に入れておくわけにもいかない。
ナップサックと刀袋は泥を落としたいと思っていたので結局出さねばならない状況にあった。
財布と刀だけは取られるわけにいかないし、かと言って刀を持って風呂とかに行けるわけではない。
背に腹は代えられず、
「じゃあお願いします・・。」
と、武尊は刀を取り出し蒼紫に渡した。
「脇差か、なかなかいい物だ。」
と刀を受け取った蒼紫だったが鞘の家紋を見て一瞬目を見開いたが素知らぬ顔ですぐにそのまま隠し棚へ自分の小太刀と共に収めた。
「ありがとう。」
武尊が礼を言って残りの荷物を袋から出していると右近が浴衣と丹前と数枚の手ぬぐいを持ち戻ってきた。