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178.温泉宿 (夢主・蒼紫)
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「う・・さむっ。」
武尊がふと目を覚ましたのは明け方。
夜中にコートを着込んで、刀をナップサックごと抱いて焚き木の側でうたた寝をしていた所だった。
「さすが十月の東北の山は冷える・・わ。」
胸元に抱いた斎藤の脇差に北海道はもっと寒いのだろうと斎藤に思いを馳せる。
「ねぇ・・、十六夜丸があなたを庇って撃たれたって所ってどこ?教えてよ・・。」
遠く斎藤を想い、刀に問えども返事はない。
「そうだよね・・刀が喋るわけないか。それにしてもここはどの辺だろう。間違いなく峠に近くにいると思うんだけど・・。」
昨日から特に過去に繋がるようなものは発見出来ないままの武尊だったが峠までは行ってみようと歩き出した。
じっとしていると寒いので歩きながら昨日買っておいた大福を取り出して食べた。
すると、大福にぽつりと雨粒が落ちてきた。
「うわ・・雨だ・・。ついてないなぁ。」
雨はすぐに本降りになって来た。
武尊はなるべく濡れそうにない木の下で雨を避けていたがそれでも雫がぽたぽたと武尊の頭やコートを濡らした。
「寒・・・っ。」
秋の冷たい雨だった。
息が吐くたびに白く煙る。
雨音の中武尊は色づく木々をただ見ていた。
運がいいのか雨は半時ほどで止んだ。
武尊は引き続き山道を進むことにした。
猪苗代湖畔から母成峠へ行くには二つのルートがある。
亀ヶ城(猪苗代城)方面から向かう道と、湖の東の熱海から入る道がある。
武尊は会津からだと遠回りになるが湖畔沿いを東へ行き、昔と同じように熱海までから母成峠に続く道を歩いていた。
山道に入ってからすれ違ったのは数人足らず。
水はけが悪いのか、先程の雨で道はかなりぬかるんでいるうえに靴擦れの所為で思う様に足取りは進まず武尊は気が滅入りながら昨日と同じように過去の痕跡がないか見ながら歩いた。
「・・以前はこの方向から母成峠に向かったはず・・っていっても敵に見つからないように道じゃなくて山の中を歩いたからなぁ・・やっぱり見つからないのかも。」
何もめぼしいものはないと立ち止まって前を見ればどこまでも続くアップダウンの同じような道。
「疲れた・・峠まで行ったらそのまま猪苗代に下りてどこか宿に入って温まろう。温泉なんかがあればいいんだけどなぁ・・。」
武尊は露天風呂がある温泉宿を夢に描いてため息をついた。
そして十年前のあるかないのかも分からない十六夜丸の痕跡を見つけるなんて砂浜で一粒の砂金を見つけるような所詮無理な事だったと落胆する気持ちが武尊の足取りを更に重くしてゆく。
かじかむ手に息をハァハァかけながら武尊はひたすら歩いた。
ぬかるんだ粘土質の上に積もった落ち葉を武尊が踏みつける度にぐにょっと動く。
靴は泥だらけだ。
「やだなぁ、こんな道。汚れるし歩きにくいし・・。」
武尊は泣きそうになった。
一人で歩くこんな悪路がまるで自分の人生だと。
もし斎藤と別れずに北海道へ付いていったら、あるいは十六夜丸は他人だと、昔の事を記憶の底に封印して忘れてしまえば幸せになれたのか。
と、自問自答するがすぐに、
「だめだ・・。」
と呟いた。
どうやら自分は誰かに狙われているというのを武尊は思い出した。
「その為に時尾さんを危ない目に合わせてしまった・・。」
斎藤の幸せを守るのなら一緒にいてはいけない事だと武尊は自分に言い聞かせた。
(これが多くの人を殺した罰かも・・例え自分が知らぬ所でっていうのはあるかもしれないけど私が殺ったことには変わりない・・ってことかな。)
いいよそれでも・・
こんな私でも幸せな時間を与えてもらえたし・・・
これ以上贅沢言ったらそれこそバチがあたるよね・・
所詮私はこの世にあるまじき存在だから・・・
雨は小降りにそしていつの間にか止んでいたが、時折武尊の頬を水が流れ落ちた。
そして雨の代わりに今度は霧が立ち込めてきた。
武尊がふと目を覚ましたのは明け方。
夜中にコートを着込んで、刀をナップサックごと抱いて焚き木の側でうたた寝をしていた所だった。
「さすが十月の東北の山は冷える・・わ。」
胸元に抱いた斎藤の脇差に北海道はもっと寒いのだろうと斎藤に思いを馳せる。
「ねぇ・・、十六夜丸があなたを庇って撃たれたって所ってどこ?教えてよ・・。」
遠く斎藤を想い、刀に問えども返事はない。
「そうだよね・・刀が喋るわけないか。それにしてもここはどの辺だろう。間違いなく峠に近くにいると思うんだけど・・。」
昨日から特に過去に繋がるようなものは発見出来ないままの武尊だったが峠までは行ってみようと歩き出した。
じっとしていると寒いので歩きながら昨日買っておいた大福を取り出して食べた。
すると、大福にぽつりと雨粒が落ちてきた。
「うわ・・雨だ・・。ついてないなぁ。」
雨はすぐに本降りになって来た。
武尊はなるべく濡れそうにない木の下で雨を避けていたがそれでも雫がぽたぽたと武尊の頭やコートを濡らした。
「寒・・・っ。」
秋の冷たい雨だった。
息が吐くたびに白く煙る。
雨音の中武尊は色づく木々をただ見ていた。
運がいいのか雨は半時ほどで止んだ。
武尊は引き続き山道を進むことにした。
猪苗代湖畔から母成峠へ行くには二つのルートがある。
亀ヶ城(猪苗代城)方面から向かう道と、湖の東の熱海から入る道がある。
武尊は会津からだと遠回りになるが湖畔沿いを東へ行き、昔と同じように熱海までから母成峠に続く道を歩いていた。
山道に入ってからすれ違ったのは数人足らず。
水はけが悪いのか、先程の雨で道はかなりぬかるんでいるうえに靴擦れの所為で思う様に足取りは進まず武尊は気が滅入りながら昨日と同じように過去の痕跡がないか見ながら歩いた。
「・・以前はこの方向から母成峠に向かったはず・・っていっても敵に見つからないように道じゃなくて山の中を歩いたからなぁ・・やっぱり見つからないのかも。」
何もめぼしいものはないと立ち止まって前を見ればどこまでも続くアップダウンの同じような道。
「疲れた・・峠まで行ったらそのまま猪苗代に下りてどこか宿に入って温まろう。温泉なんかがあればいいんだけどなぁ・・。」
武尊は露天風呂がある温泉宿を夢に描いてため息をついた。
そして十年前のあるかないのかも分からない十六夜丸の痕跡を見つけるなんて砂浜で一粒の砂金を見つけるような所詮無理な事だったと落胆する気持ちが武尊の足取りを更に重くしてゆく。
かじかむ手に息をハァハァかけながら武尊はひたすら歩いた。
ぬかるんだ粘土質の上に積もった落ち葉を武尊が踏みつける度にぐにょっと動く。
靴は泥だらけだ。
「やだなぁ、こんな道。汚れるし歩きにくいし・・。」
武尊は泣きそうになった。
一人で歩くこんな悪路がまるで自分の人生だと。
もし斎藤と別れずに北海道へ付いていったら、あるいは十六夜丸は他人だと、昔の事を記憶の底に封印して忘れてしまえば幸せになれたのか。
と、自問自答するがすぐに、
「だめだ・・。」
と呟いた。
どうやら自分は誰かに狙われているというのを武尊は思い出した。
「その為に時尾さんを危ない目に合わせてしまった・・。」
斎藤の幸せを守るのなら一緒にいてはいけない事だと武尊は自分に言い聞かせた。
(これが多くの人を殺した罰かも・・例え自分が知らぬ所でっていうのはあるかもしれないけど私が殺ったことには変わりない・・ってことかな。)
いいよそれでも・・
こんな私でも幸せな時間を与えてもらえたし・・・
これ以上贅沢言ったらそれこそバチがあたるよね・・
所詮私はこの世にあるまじき存在だから・・・
雨は小降りにそしていつの間にか止んでいたが、時折武尊の頬を水が流れ落ちた。
そして雨の代わりに今度は霧が立ち込めてきた。