「タケル、シンバシ　ツイタ、オキテ。」



すっかり爆睡してしまった武尊はかふぇおじさんに起こされて何とか無事新橋に到着することが出来た。



がばっと起きて次の瞬間ピンポンダッシュのように駆け出した武尊だったが汽車から降りてから少しぼーっと立っていた。



「タケル、コンナトキハ　カフェ　イカガ？」



かふぇおじさんは今日武尊が武尊の大事な人と別れたという事を知っている。



暗く曇る武尊の表情からそれがかなりこたえていると分かって武尊に優しく声をかけた。



「え？」



カフェとはドイツ語で【Kaffee】、つまりコーヒーの事。



おじさんまだいたのと思いつつもコーヒー狂の武尊はこのあいだのおいしかったサイフォンコーヒーを思い出し、無意識にコクリと頷いた。







コーヒーに釣られて武尊はかふぇおじさんの後を黙ってついて行く。



かふぇおじさんも武尊の心情を察してか話しかけてはこなかった。



歩いているうちにだんだん武尊の思考能力が戻って来た。



（あれ？コーヒーってかふぇおじさんの家で飲ませてくれるのかな？確か家って築地だったよね。新橋から築地ってどのくらいかかるのよ！？）



何時間も歩くのかと少しうんざりした武尊だったが、



（あれ？もう着いたの？）



と思うほど、２ｋｍほど新橋駅から北東に進んだ頃だろうか、思いのほか早く外国人居留区に着いた。