※1 記憶を失っている時の名前は変換できません。
173.凶星の集う時 (海軍少尉・夢主・影宮・観柳・斎藤・永倉)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「うおっ!」
「ぐがっ!」
暗闇の中、隙を突かれ斎藤の拳を腹に喰らった二人の男がドシャっと砂浜に倒れた。
「阿呆が。ひよっ子以前の腕前で俺に刀を向けるとは百年早い。」
深夜の砂浜。
月は下弦、月明かりはまだない。
空には瞬く星が埋め尽くされて星明りが海を照らす。
斎藤がパンパンと手を払っていると、
「終わったかーぁ!」
と、岩の向こうで永倉の声がした。
「嗚呼、眠気覚ましにもならん奴らだ。」
斎藤は呟きながら永倉の方へ向かった。
「ひい、ふう、みい・・・とお。」
永倉の部下に寄って集められた雑魚を永倉は指を指しながら数えた。
「十人か。よし、他に仲間がいないかもう一度よく探せ!」
と、永倉は部下に命じながら気絶している男達の懐を探った。
「割符があるはずなんだが・・。」
ゴソゴソ。
「おっ、あったぞ。」
永倉は割符を取り出し、その手を上にあげ割符の裏表をくるくると見た。
「斎藤、灯りをくれ。」
「嗚呼。」
星明りでは割符に書かれた文字ははっきり読めず、斎藤はマッチを擦って永倉に向けた。
「ありがとよ。」
もういい、と永倉が合図をすると斎藤は残りの火で自分の煙草に火を点けた。
「ぼちぼち時間だな。こっちもそろそろ準備するか。割符も手に入ったしな。」
*********
斎藤は函館に着いた翌日、函館警察署で今回の事件の概要を聞いた。
永倉の話にもあったが函館管区で勃発している阿片中毒者と思われるものによる村の襲撃事件。
少ない状況証拠だったが斎藤の考察による怪しい場所のガサ入れにより、阿片密売組織の末端を吊し上げる事が出来た。
「あーあ、お前らついてないなぁ。明治で一番怖い警官が尋問に当たるんだからよぅ・・。」
永倉が気の毒でたまらないともっともな顔で留置所に入っている捕縛した奴等に前振りした後、斎藤がカツンカツンと足音を響かせその前に立ちバキバキを指を鳴らした。
捕縛の際にすでに斎藤にボコボコにされていた男達はその音だけで震えあがって斎藤の質問に素直に答えたのだった。
それによってもたらされた情報、それは近々鯨島沖で阿片の取引があるという情報。
漁民に扮して張り込みすること数日、先ほど島に現れた不審な男達を捕縛したところだった。
永倉は斎藤と船を漕ぐ仲間を連れ、聞きだした時間に合わせて小船を漕ぎだした。
しばらく船を漕ぐと沖の方から灯りが見えてきた。
「どうやらあれらしいな。」
こちらも捕縛した男から得た情報通りに準備した灯りを右に三回、左に三回大きく回すと向うの船が永倉達の方に向かって来た。
「この間と面 が違うな。」
船をすぐ側まで寄せた相手の頭らしい黒髭の男は斎藤や永倉の顔を見て怪しんだ。
「なに、あいつはちょいとヘマをやらかして引退したのさ。今は俺が組長だ。割符もちゃんとあるぜ。」
と、永倉は割符をその男に投げた。
割符はピッタリ合った。
「よし、いいだろう・・これが今回の分だ。」
と、割符と風呂敷包みを永倉達の船に放り込んだ。
「確認させてもらうぜぇ。」
永倉は斎藤に手で合図をすると斎藤は風呂敷包みを開いた。
中には例の淫らな浮世絵の本が十数冊入っていた。
「間違いない。」
斎藤がそう永倉に告げると永倉は
「次はいつになる。」
と聞いた。
「次は未定だ。翌月初めには影宮様も函館にいらっしゃる。その時にこれまでの成果を御覧になってから今後の事をお決めになる。それまでお前達はサツにばれないように気をつけてろ、いいな。」
そう言って黒髭達は永倉達の船から離れようとした時、永倉が笑いを堪えきれずにププっと噴出しながら、
「だとよ。どうする、斎藤。」
と聞いた。
斎藤は笑いもしないで、どちらかというとつまらなさそうな顔をして、
「勘の悪い阿呆どもを相手にしていると疲れるな。」
と言った。
「どういう意味だ!」
黒髭が眼をむいて斎藤を睨んだ。
そんな黒髭に
「言葉通りってことだよ。ちぃたぁ役に立つ情報を持ってそうだしな。おう、お前ら、こちとら函館警察の者だ、大人しく御縄につけ!」
永倉がダンと船底を蹴って黒髭達を指差した。
何っ、と相手の男達は顔色を変えて急いで逃げようと船を漕ぎ始めたが時すでに遅し、斎藤が間髪入れず相手の船に飛び乗った。
その衝動で二つの船が大いに揺れた。
「相手は一人だ!やっちまえぇ!」
黒髭は懐に隠し持っていた短刀を抜いて斎藤に向けた。
黒髭の船も黒髭の他に一名と船漕ぎが二名の計四名。
黒髭の怒号に斎藤は四人に囲まれた。
「永倉さん、いいんですか!藤田警部補ヤバいですよ!」
永倉の部下で船を漕いでいる二人が心配した。
「いいから見てろって。新撰組三番隊組長の実力ってもんをお前達もしっかり目に焼き付けておけよ・・・っと、斎藤ー!一人ぐらい生かしておけよー!」
永倉が船から手を振って叫んだ。
その間にも二人の男が斎藤によって海へと投げ込まれた。
「回収しに行くぞ。」
永倉は部下に指示して海に浮かぶ男達の方へ行くように指示した。
十月の北海道の海、それは凍るように冷たい。
早くしないとあっという間に手足が動かなくなって沈んでしまう。
永倉達が回収を急いでいる間に、最後に残った黒髭も顎に斎藤の拳を喰らって船底に倒れ込んだ。
「勘も悪いが腕も相当悪かったか・・阿呆が。」
白目をむいて倒れている黒髭を見ながら斎藤は煙草に火を点け、永倉が自分を回収するのを待った。
こうして今夜、永倉と斎藤の活躍で多数の密売組織の人間を捕縛し成果をあげたのであった。
2014.11.25
「ぐがっ!」
暗闇の中、隙を突かれ斎藤の拳を腹に喰らった二人の男がドシャっと砂浜に倒れた。
「阿呆が。ひよっ子以前の腕前で俺に刀を向けるとは百年早い。」
深夜の砂浜。
月は下弦、月明かりはまだない。
空には瞬く星が埋め尽くされて星明りが海を照らす。
斎藤がパンパンと手を払っていると、
「終わったかーぁ!」
と、岩の向こうで永倉の声がした。
「嗚呼、眠気覚ましにもならん奴らだ。」
斎藤は呟きながら永倉の方へ向かった。
「ひい、ふう、みい・・・とお。」
永倉の部下に寄って集められた雑魚を永倉は指を指しながら数えた。
「十人か。よし、他に仲間がいないかもう一度よく探せ!」
と、永倉は部下に命じながら気絶している男達の懐を探った。
「割符があるはずなんだが・・。」
ゴソゴソ。
「おっ、あったぞ。」
永倉は割符を取り出し、その手を上にあげ割符の裏表をくるくると見た。
「斎藤、灯りをくれ。」
「嗚呼。」
星明りでは割符に書かれた文字ははっきり読めず、斎藤はマッチを擦って永倉に向けた。
「ありがとよ。」
もういい、と永倉が合図をすると斎藤は残りの火で自分の煙草に火を点けた。
「ぼちぼち時間だな。こっちもそろそろ準備するか。割符も手に入ったしな。」
*********
斎藤は函館に着いた翌日、函館警察署で今回の事件の概要を聞いた。
永倉の話にもあったが函館管区で勃発している阿片中毒者と思われるものによる村の襲撃事件。
少ない状況証拠だったが斎藤の考察による怪しい場所のガサ入れにより、阿片密売組織の末端を吊し上げる事が出来た。
「あーあ、お前らついてないなぁ。明治で一番怖い警官が尋問に当たるんだからよぅ・・。」
永倉が気の毒でたまらないともっともな顔で留置所に入っている捕縛した奴等に前振りした後、斎藤がカツンカツンと足音を響かせその前に立ちバキバキを指を鳴らした。
捕縛の際にすでに斎藤にボコボコにされていた男達はその音だけで震えあがって斎藤の質問に素直に答えたのだった。
それによってもたらされた情報、それは近々鯨島沖で阿片の取引があるという情報。
漁民に扮して張り込みすること数日、先ほど島に現れた不審な男達を捕縛したところだった。
永倉は斎藤と船を漕ぐ仲間を連れ、聞きだした時間に合わせて小船を漕ぎだした。
しばらく船を漕ぐと沖の方から灯りが見えてきた。
「どうやらあれらしいな。」
こちらも捕縛した男から得た情報通りに準備した灯りを右に三回、左に三回大きく回すと向うの船が永倉達の方に向かって来た。
「この間と
船をすぐ側まで寄せた相手の頭らしい黒髭の男は斎藤や永倉の顔を見て怪しんだ。
「なに、あいつはちょいとヘマをやらかして引退したのさ。今は俺が組長だ。割符もちゃんとあるぜ。」
と、永倉は割符をその男に投げた。
割符はピッタリ合った。
「よし、いいだろう・・これが今回の分だ。」
と、割符と風呂敷包みを永倉達の船に放り込んだ。
「確認させてもらうぜぇ。」
永倉は斎藤に手で合図をすると斎藤は風呂敷包みを開いた。
中には例の淫らな浮世絵の本が十数冊入っていた。
「間違いない。」
斎藤がそう永倉に告げると永倉は
「次はいつになる。」
と聞いた。
「次は未定だ。翌月初めには影宮様も函館にいらっしゃる。その時にこれまでの成果を御覧になってから今後の事をお決めになる。それまでお前達はサツにばれないように気をつけてろ、いいな。」
そう言って黒髭達は永倉達の船から離れようとした時、永倉が笑いを堪えきれずにププっと噴出しながら、
「だとよ。どうする、斎藤。」
と聞いた。
斎藤は笑いもしないで、どちらかというとつまらなさそうな顔をして、
「勘の悪い阿呆どもを相手にしていると疲れるな。」
と言った。
「どういう意味だ!」
黒髭が眼をむいて斎藤を睨んだ。
そんな黒髭に
「言葉通りってことだよ。ちぃたぁ役に立つ情報を持ってそうだしな。おう、お前ら、こちとら函館警察の者だ、大人しく御縄につけ!」
永倉がダンと船底を蹴って黒髭達を指差した。
何っ、と相手の男達は顔色を変えて急いで逃げようと船を漕ぎ始めたが時すでに遅し、斎藤が間髪入れず相手の船に飛び乗った。
その衝動で二つの船が大いに揺れた。
「相手は一人だ!やっちまえぇ!」
黒髭は懐に隠し持っていた短刀を抜いて斎藤に向けた。
黒髭の船も黒髭の他に一名と船漕ぎが二名の計四名。
黒髭の怒号に斎藤は四人に囲まれた。
「永倉さん、いいんですか!藤田警部補ヤバいですよ!」
永倉の部下で船を漕いでいる二人が心配した。
「いいから見てろって。新撰組三番隊組長の実力ってもんをお前達もしっかり目に焼き付けておけよ・・・っと、斎藤ー!一人ぐらい生かしておけよー!」
永倉が船から手を振って叫んだ。
その間にも二人の男が斎藤によって海へと投げ込まれた。
「回収しに行くぞ。」
永倉は部下に指示して海に浮かぶ男達の方へ行くように指示した。
十月の北海道の海、それは凍るように冷たい。
早くしないとあっという間に手足が動かなくなって沈んでしまう。
永倉達が回収を急いでいる間に、最後に残った黒髭も顎に斎藤の拳を喰らって船底に倒れ込んだ。
「勘も悪いが腕も相当悪かったか・・阿呆が。」
白目をむいて倒れている黒髭を見ながら斎藤は煙草に火を点け、永倉が自分を回収するのを待った。
こうして今夜、永倉と斎藤の活躍で多数の密売組織の人間を捕縛し成果をあげたのであった。
2014.11.25