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173.凶星の集う時 (海軍少尉・夢主・影宮・観柳・斎藤・永倉)
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現れた海軍少尉は武尊と同じ世代だろうか、二十代半ばに見えるガタイのよい青年だった。
神谷道場に現れた海軍少尉はそこにいた四人を一通り眺めた。
その視線を四人が追うと最終的に武尊で止まった。
(え・・?私?)
やはり夜会で海軍の軍人を撃ち殺した事が面倒な事を招いたかと武尊は心の中で舌打ちした。
「誰に用事でござろうか。」
剣心が海軍少尉に話しかけると、武尊は武尊が思ったよりもずっと丁寧に自己紹介をした。
「失礼、私は海軍兵学校の山本少尉だ。土岐殿に用件があって参った。」
「・・私ならもうじき手が空く。少し待ってくれ。」
武尊は大八車から最後の味噌を下ろすと海軍少尉に目で合図し、剣心達に挨拶なしで大八車を弾いて神谷道場の門を後にした。
ガラガラガラ。
大八車の車輪が小石を踏みつけて音が鳴る。
武尊は少し経ってから自分の横について来ている少尉に聞いた。
「どうして私があそこにいると分かったんですか?」
「簡単な事ですよ、警視庁にあなたの居場所を聞いてそこを訪ねただけです。もっともその主はすでに転勤になっていると分かって私も少し焦りましたが、大家に聞いたら今日あなたが大八車を借りたという事が分かり、その目撃情報を追って来ただけです。」
「・・・。」
武尊はパトラッシュのように大八車を引きながら内心まずったと思っていた。
(もっと早く、少なくとも一日早く自分が神谷道場へ行って用事を済ませ、会津へと旅立っていればこの海軍少尉と会わずに済んだのに。)
だが今更そんな事を思ってもしょうがない。
「で・・、何の用事なんですか?私は海軍とは無関係の人間なんですが。」
と、武尊は自分の疑問をぶつけた。
本当にその理由が知りたかった。
態度が横柄な軍人にしては気になるほど下手に出る話し方も気になったからだ。
「そうですね、土岐殿と自分は初見ですしね。そう思われても当然です。自分も上司から話があるまではあなたみたいな人がいるとは思ってもいませんでしたから。」
「私みたい?」
武尊は意外な言葉に驚いて少尉の方を見た。
「ええ、実は今回自分は特命を受けましてね・・是非あなたの協力をお願いしたいのですが。」
少尉のその話し方に武尊は嫌な予感がした。
「ちょっと待ってください。若しかしてそれを聞いてしまったら、あれですか。もう後戻りは出来ないとかって言われてしまう事になってしまうんですか?聞きたくない、聞きたくない。どうかお引き取り下さい。」
武尊はがらがらごろごろと大八車を押した。
「ふふ、面白い方ですね。かと言ってこのまま帰るわけにはいきません。子供の使いではないのですからね。大丈夫です、もちろん他言無用の事ですが、あなたが喋るとは思わない。」
「勝手に信用してもらっても困るんですけど。」
武尊は少尉に振り向きもせず前を向いて答えた。
少尉はそんな武尊にそのまま話を続けた。
「あなたは射撃がお得意なんだそうですね。以前夜会で我々の同僚を撃った腕前はそれは見事だったと上官から知らされました。」
その話かと武尊はウンザリした。
「・・今ごろ海軍を代表して敵討ちですか?」
「まさか。あの場合はどう考えても彼らが悪いのであって、あなたは警官として任務を全うしたのですからたとえ私が海軍の一員であっても仇を討とうなどとは考えてませんよ。」
「そうですか・・。」
武尊は少尉の返答に一応安堵した。
「では何故私のところに?」
話は振出に戻った。
少尉は話を続けた。
「本題はこれからです。私も一応射撃の腕前には自信があるんですが、あの夜会に出席した上官からあなたのその射撃の腕前の事を聞きましてね・・・勝負しませんか。」
これには武尊も驚いて少尉を振り返ると少尉はにやりと笑っていた。
「・・しませんよ、軍の中の話に私は関係ないし、・・警視庁で聞いたんでしょ?私がすでに警官でないという事も。だったらどっちが上手だとかというあなたの自己満足につき合う義理はない。」
「そう言うと思いました。ええ、もちろん私だって自己満足の為ならあなたと勝負したりはしませんよ。他人同士の私達が勝負することは無意味ですからね。ですがある事情で腕のいい射手がいるんですよ。ですからこうやってあなたの腕前を調べに来たんです。」
「ということはあなたは海軍一の射撃の腕前の方?」
「ま、そう言う事になりますが。」
「わからないな・・あなたが海軍一でいいじゃないですか。わざわざ海軍と無縁な私を探さなくても。どうしてもというのなら陸軍や警察で勝負なさったらいいのではないですか?」
「陸軍とはもう済ませました。もちろん私の勝ちでした。そして警察に行ったところあなたの腕前がずば抜けて良いという話を聞いたもので。どうです?自分の腕を試したくはないですか?」
「全然。」
武尊はそっけなく答えた。
武尊にとって射撃スキルをあげることは生き残るためであって、決してその腕前を自慢をするためでも披露するわけでもなかった。
武尊は少しだけ昔を思い出してやるせない気持ちになった。
それなのにまだ海軍少尉は武尊にアプローチをかけてくる。
「これは困りましたね。射撃好きは皆自分の腕を披露したいのだとばかり思っていましたが。では私と勝負して勝ったら十円の賞金を進呈するというのはどうです?勝ったら儲けものじゃありませんか?」
「私は勝負はしないと言っているでしょう。それに勝負しても私は負けるんですから意味はありませんよ。」
「それはワザと負けるという事ですか?・・困りましたね・・本当に・・。」
「お分かり頂けましたらどうかお引き取り下さい。」
そう言ってひたすら大八車を押す武尊だった。
海軍少尉は勝負して勝ったら十円ももらえるというおいしい話にも全く乗って来ない武尊に苛立ちを覚えたのだが、他にいい案が浮かばない。
そのまま武尊について行くうちに藤田家近くの大家の家まで来てしまった。
武尊は御礼を言ってそれを返納して藤田家へ戻ろうとした時、外で待っていた少尉が再び武尊に接近してきた。
「あれ、お帰りになったんじゃなかったんですか?」
「手ぶらで帰るわけにはいきませんよ。」
少尉は肩をすくめ、首を横にふりヤレヤレといった仕草をしながら武尊に近づき2、3mの所まで来るとガチャリと撃鉄を起し持っていた短銃を武尊に向けた。
「飴がだめなら何とやらという言葉を御存知かな?御同行願おうか。」
銃口は武尊の頭を狙っていた。
(どうする・・・自分、どうする・・。)
武尊の心の中を冷や汗が流れた。
【振り切る】
【闘う】
【叩きのめす】
相手が引き金を引く前にどの選択肢も可能だと武尊は思ったが・・。
(くっ・・。)
っと武尊は心の中で悔しがった。
ここで相手に危害を加えると後々面倒な事になりそうだという事を何より武尊は危惧した。
「いいだろう、一緒に行こう。だがこちらにも条件がある。」
と武尊は条件を提示しつつ渋々同行を了承した。
「十円を二十円にしろとかと言うのか?そういう御都合のいい話は今更言える立場ではないと思うが。」
「そんな事じゃない。私の事をあなたに話した上官と会いたい。そして私を使いたい理由を直接聞きたい。」
銃口を目の前に武尊は屈するどころか凛とした態度で海軍少尉に向き合った。
脅せば安易について来ると思っていた少尉は驚いて武尊の姿に目を見張った。
「俺は同期の中でも割と見かけがごつくてな、凄んだ相手は結構縮み上がるもんだが、あなたの心臓はなかなかだな。よし、いいだろう。ついて来てくれると言うのならこの様な物はしまうか。会いたいという上官は忙しいので会えるかどうかは分からんがとりあえず来てくれるということでいいんだな。」
「ああ。」
「ではこっちだ武尊殿。」
そう言った少尉の後をついて行くと行き先はなんと藤田家だった。
「武尊殿を探している途中でこいつをちょっと置かせてもらったんだ。」
と、勝手口を入るとそこには馬がいた。
「さあ、行くぞ。馬には乗れるか。」
と少尉は言ったがその言葉は武尊の耳に半分しか入らず武尊は馬の足元を凝視していた。
(ああ・・・馬糞がいっぱい・・・帰ったら始末しないと・・折角旅立ちの準備万端だったのに・・・今日は最悪の日だ。)
神谷道場での自分の扱いといい、海軍から面倒な事に巻き込まれそうな予感といい、今日の運勢はきっと大凶だと武尊は肩を落としてため息を一つついたのであった。
神谷道場に現れた海軍少尉はそこにいた四人を一通り眺めた。
その視線を四人が追うと最終的に武尊で止まった。
(え・・?私?)
やはり夜会で海軍の軍人を撃ち殺した事が面倒な事を招いたかと武尊は心の中で舌打ちした。
「誰に用事でござろうか。」
剣心が海軍少尉に話しかけると、武尊は武尊が思ったよりもずっと丁寧に自己紹介をした。
「失礼、私は海軍兵学校の山本少尉だ。土岐殿に用件があって参った。」
「・・私ならもうじき手が空く。少し待ってくれ。」
武尊は大八車から最後の味噌を下ろすと海軍少尉に目で合図し、剣心達に挨拶なしで大八車を弾いて神谷道場の門を後にした。
ガラガラガラ。
大八車の車輪が小石を踏みつけて音が鳴る。
武尊は少し経ってから自分の横について来ている少尉に聞いた。
「どうして私があそこにいると分かったんですか?」
「簡単な事ですよ、警視庁にあなたの居場所を聞いてそこを訪ねただけです。もっともその主はすでに転勤になっていると分かって私も少し焦りましたが、大家に聞いたら今日あなたが大八車を借りたという事が分かり、その目撃情報を追って来ただけです。」
「・・・。」
武尊はパトラッシュのように大八車を引きながら内心まずったと思っていた。
(もっと早く、少なくとも一日早く自分が神谷道場へ行って用事を済ませ、会津へと旅立っていればこの海軍少尉と会わずに済んだのに。)
だが今更そんな事を思ってもしょうがない。
「で・・、何の用事なんですか?私は海軍とは無関係の人間なんですが。」
と、武尊は自分の疑問をぶつけた。
本当にその理由が知りたかった。
態度が横柄な軍人にしては気になるほど下手に出る話し方も気になったからだ。
「そうですね、土岐殿と自分は初見ですしね。そう思われても当然です。自分も上司から話があるまではあなたみたいな人がいるとは思ってもいませんでしたから。」
「私みたい?」
武尊は意外な言葉に驚いて少尉の方を見た。
「ええ、実は今回自分は特命を受けましてね・・是非あなたの協力をお願いしたいのですが。」
少尉のその話し方に武尊は嫌な予感がした。
「ちょっと待ってください。若しかしてそれを聞いてしまったら、あれですか。もう後戻りは出来ないとかって言われてしまう事になってしまうんですか?聞きたくない、聞きたくない。どうかお引き取り下さい。」
武尊はがらがらごろごろと大八車を押した。
「ふふ、面白い方ですね。かと言ってこのまま帰るわけにはいきません。子供の使いではないのですからね。大丈夫です、もちろん他言無用の事ですが、あなたが喋るとは思わない。」
「勝手に信用してもらっても困るんですけど。」
武尊は少尉に振り向きもせず前を向いて答えた。
少尉はそんな武尊にそのまま話を続けた。
「あなたは射撃がお得意なんだそうですね。以前夜会で我々の同僚を撃った腕前はそれは見事だったと上官から知らされました。」
その話かと武尊はウンザリした。
「・・今ごろ海軍を代表して敵討ちですか?」
「まさか。あの場合はどう考えても彼らが悪いのであって、あなたは警官として任務を全うしたのですからたとえ私が海軍の一員であっても仇を討とうなどとは考えてませんよ。」
「そうですか・・。」
武尊は少尉の返答に一応安堵した。
「では何故私のところに?」
話は振出に戻った。
少尉は話を続けた。
「本題はこれからです。私も一応射撃の腕前には自信があるんですが、あの夜会に出席した上官からあなたのその射撃の腕前の事を聞きましてね・・・勝負しませんか。」
これには武尊も驚いて少尉を振り返ると少尉はにやりと笑っていた。
「・・しませんよ、軍の中の話に私は関係ないし、・・警視庁で聞いたんでしょ?私がすでに警官でないという事も。だったらどっちが上手だとかというあなたの自己満足につき合う義理はない。」
「そう言うと思いました。ええ、もちろん私だって自己満足の為ならあなたと勝負したりはしませんよ。他人同士の私達が勝負することは無意味ですからね。ですがある事情で腕のいい射手がいるんですよ。ですからこうやってあなたの腕前を調べに来たんです。」
「ということはあなたは海軍一の射撃の腕前の方?」
「ま、そう言う事になりますが。」
「わからないな・・あなたが海軍一でいいじゃないですか。わざわざ海軍と無縁な私を探さなくても。どうしてもというのなら陸軍や警察で勝負なさったらいいのではないですか?」
「陸軍とはもう済ませました。もちろん私の勝ちでした。そして警察に行ったところあなたの腕前がずば抜けて良いという話を聞いたもので。どうです?自分の腕を試したくはないですか?」
「全然。」
武尊はそっけなく答えた。
武尊にとって射撃スキルをあげることは生き残るためであって、決してその腕前を自慢をするためでも披露するわけでもなかった。
武尊は少しだけ昔を思い出してやるせない気持ちになった。
それなのにまだ海軍少尉は武尊にアプローチをかけてくる。
「これは困りましたね。射撃好きは皆自分の腕を披露したいのだとばかり思っていましたが。では私と勝負して勝ったら十円の賞金を進呈するというのはどうです?勝ったら儲けものじゃありませんか?」
「私は勝負はしないと言っているでしょう。それに勝負しても私は負けるんですから意味はありませんよ。」
「それはワザと負けるという事ですか?・・困りましたね・・本当に・・。」
「お分かり頂けましたらどうかお引き取り下さい。」
そう言ってひたすら大八車を押す武尊だった。
海軍少尉は勝負して勝ったら十円ももらえるというおいしい話にも全く乗って来ない武尊に苛立ちを覚えたのだが、他にいい案が浮かばない。
そのまま武尊について行くうちに藤田家近くの大家の家まで来てしまった。
武尊は御礼を言ってそれを返納して藤田家へ戻ろうとした時、外で待っていた少尉が再び武尊に接近してきた。
「あれ、お帰りになったんじゃなかったんですか?」
「手ぶらで帰るわけにはいきませんよ。」
少尉は肩をすくめ、首を横にふりヤレヤレといった仕草をしながら武尊に近づき2、3mの所まで来るとガチャリと撃鉄を起し持っていた短銃を武尊に向けた。
「飴がだめなら何とやらという言葉を御存知かな?御同行願おうか。」
銃口は武尊の頭を狙っていた。
(どうする・・・自分、どうする・・。)
武尊の心の中を冷や汗が流れた。
【振り切る】
【闘う】
【叩きのめす】
相手が引き金を引く前にどの選択肢も可能だと武尊は思ったが・・。
(くっ・・。)
っと武尊は心の中で悔しがった。
ここで相手に危害を加えると後々面倒な事になりそうだという事を何より武尊は危惧した。
「いいだろう、一緒に行こう。だがこちらにも条件がある。」
と武尊は条件を提示しつつ渋々同行を了承した。
「十円を二十円にしろとかと言うのか?そういう御都合のいい話は今更言える立場ではないと思うが。」
「そんな事じゃない。私の事をあなたに話した上官と会いたい。そして私を使いたい理由を直接聞きたい。」
銃口を目の前に武尊は屈するどころか凛とした態度で海軍少尉に向き合った。
脅せば安易について来ると思っていた少尉は驚いて武尊の姿に目を見張った。
「俺は同期の中でも割と見かけがごつくてな、凄んだ相手は結構縮み上がるもんだが、あなたの心臓はなかなかだな。よし、いいだろう。ついて来てくれると言うのならこの様な物はしまうか。会いたいという上官は忙しいので会えるかどうかは分からんがとりあえず来てくれるということでいいんだな。」
「ああ。」
「ではこっちだ武尊殿。」
そう言った少尉の後をついて行くと行き先はなんと藤田家だった。
「武尊殿を探している途中でこいつをちょっと置かせてもらったんだ。」
と、勝手口を入るとそこには馬がいた。
「さあ、行くぞ。馬には乗れるか。」
と少尉は言ったがその言葉は武尊の耳に半分しか入らず武尊は馬の足元を凝視していた。
(ああ・・・馬糞がいっぱい・・・帰ったら始末しないと・・折角旅立ちの準備万端だったのに・・・今日は最悪の日だ。)
神谷道場での自分の扱いといい、海軍から面倒な事に巻き込まれそうな予感といい、今日の運勢はきっと大凶だと武尊は肩を落としてため息を一つついたのであった。