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172.翁心親心 (操・翁・お増・蒼紫・黒・漬物屋)
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「蒼紫様ー!」
今度こそ蒼紫様を笑わせるんだと操はニコニコ顔で蒼紫の部屋にやって来た。
昼食を翁より早く終えた操はお近を相手に思いついた小話を練習していたのだった。
意気揚々と蒼紫の部屋を訪れたのは良かったがが部屋は空っぽだった。
「なぜ?なぜ蒼紫様はいないの~ぉ!」
と、操が目をうるうるさせていると、洗濯物を抱えて通りかかったお増が、
「あら、蒼紫様なら先程翁と出かけたわよ。」
と、さらりと言って通り過ぎた。
「はうぁ!」
操は白くなって固まった。
*******
「蒼紫や、ここが京の数ある漬物屋でも千枚漬け本家と言われる大店じゃ。」
と、翁と蒼紫がとある漬物店の前で立っているとすぐに
「これは葵屋の翁殿、ようこそおいでくださいました。本日は何を御用意させていただきましょうか。」
と声がかかった。
「ぼちぼちと思って来たんじゃが、千枚漬けはもう置いてありますかな。」
「千枚漬けにはまだちぃと早ようございますな。後十日もすればええ聖護院のカブラが取れてきますやろ、そのころまたおいで下さいまし。」
「そうか、ちと早かったか。それなら今日はこの赤カブ麹漬でももらっていこうかの。」
「へぇ、ありがとうございます。それでは少々お待ちくださいまし。」
と、店の者が準備をしている間に翁が蒼紫に
「ここは時期になると店頭で千枚漬けの実演ぱふぉーまんすをするのじゃ。もっとも味付けについては一子相伝という事で教えてはくれんと思うがの。」
と説明した。
「翁、お待たせしました。いやあ、葵屋さんのお漬物の方がええ味しはりますのにわざわざありがとうございます。」
「なぁに、たまにはうちのもんにもいい味を勉強させなくてはのと思っておりますんでのぅ。そうそう、今年は葵屋でも千枚漬けを作ろうと思いましてな。」
「おお、いよいよ葵屋さんもですか。」
「うむ。といっても、よいのが出来るかどうかわかりませんがのう。あ、そうそう、この者が今回千枚漬けを担当する蒼紫という者。実演時期にこちらに寄りますからなにとぞよしなにお願いしますぞ。」
(なっ!)
翁のいきなりの紹介に蒼紫は驚いた。
(いつ俺が作ると言った!)
四乃森蒼紫、齢二十五。
今まで数々の困難な任務をつつがなくこなしてきた彼だったが、漬物というのは未だかつて作ったことなどない。
寝耳に水とはまさにこの事、驚いて翁を見るが翁はにんまり顔。
蒼紫が『この爺・・』と心の片隅で思ったかどうだかは知らないが、裏の顔【御頭】の時と違って表の自分は葵屋の居候並。
反論したいが出来ないで言いたいことが喉元で渦を巻いていると、漬物屋が
「おお、こちらの方は葵屋の御方でしたか。てっきり白尉さんか黒尉さんがお作りになるのかと思いましたが、そうですか、こちらの若い方が・・よろしゅう頼みます。」
勝手に事を進められて空いた口が塞がらない蒼紫に翁が、
「これ、蒼紫。挨拶ぐらいせんか。」
と追討ちをかけた。
翁め・・と思いながらも蒼紫は
「葵屋の四乃森・・蒼紫です。よろしくお願いします。」
と、会釈をした。
「こちらこそ宜しゅうお願いします。いやあ、葵屋さんにこないなええ男衆がおったとは知りまへんでしたわ。」
「ほっ、ほっ、ほっ。まあ、儂の若いころには負けますがの。それではまた宜しく頼みます。」
と、翁は漬物を片手にそこを後にした。
漬物屋から少し離れると、蒼紫はすかさず翁に言った。
「翁、あのような場所であの言葉、どういうつもりだ。」
翁は蒼紫からそう言われることは百も承知の上、いや、そう言わせるようにわざと話を振ったのだ。
「蒼紫や、その事について儂も話がある。どれ、茶でも飲まんか。」
「・・・・。」
蒼紫にも薄々分かる。
翁が話そうとしているのは葵屋の事。
そしてそれは自分が御庭番衆であるが以上、避けては通れない事だと。
なので蒼紫は翁の後に続いて甘味処の暖簾をくぐった。
今度こそ蒼紫様を笑わせるんだと操はニコニコ顔で蒼紫の部屋にやって来た。
昼食を翁より早く終えた操はお近を相手に思いついた小話を練習していたのだった。
意気揚々と蒼紫の部屋を訪れたのは良かったがが部屋は空っぽだった。
「なぜ?なぜ蒼紫様はいないの~ぉ!」
と、操が目をうるうるさせていると、洗濯物を抱えて通りかかったお増が、
「あら、蒼紫様なら先程翁と出かけたわよ。」
と、さらりと言って通り過ぎた。
「はうぁ!」
操は白くなって固まった。
*******
「蒼紫や、ここが京の数ある漬物屋でも千枚漬け本家と言われる大店じゃ。」
と、翁と蒼紫がとある漬物店の前で立っているとすぐに
「これは葵屋の翁殿、ようこそおいでくださいました。本日は何を御用意させていただきましょうか。」
と声がかかった。
「ぼちぼちと思って来たんじゃが、千枚漬けはもう置いてありますかな。」
「千枚漬けにはまだちぃと早ようございますな。後十日もすればええ聖護院のカブラが取れてきますやろ、そのころまたおいで下さいまし。」
「そうか、ちと早かったか。それなら今日はこの赤カブ麹漬でももらっていこうかの。」
「へぇ、ありがとうございます。それでは少々お待ちくださいまし。」
と、店の者が準備をしている間に翁が蒼紫に
「ここは時期になると店頭で千枚漬けの実演ぱふぉーまんすをするのじゃ。もっとも味付けについては一子相伝という事で教えてはくれんと思うがの。」
と説明した。
「翁、お待たせしました。いやあ、葵屋さんのお漬物の方がええ味しはりますのにわざわざありがとうございます。」
「なぁに、たまにはうちのもんにもいい味を勉強させなくてはのと思っておりますんでのぅ。そうそう、今年は葵屋でも千枚漬けを作ろうと思いましてな。」
「おお、いよいよ葵屋さんもですか。」
「うむ。といっても、よいのが出来るかどうかわかりませんがのう。あ、そうそう、この者が今回千枚漬けを担当する蒼紫という者。実演時期にこちらに寄りますからなにとぞよしなにお願いしますぞ。」
(なっ!)
翁のいきなりの紹介に蒼紫は驚いた。
(いつ俺が作ると言った!)
四乃森蒼紫、齢二十五。
今まで数々の困難な任務をつつがなくこなしてきた彼だったが、漬物というのは未だかつて作ったことなどない。
寝耳に水とはまさにこの事、驚いて翁を見るが翁はにんまり顔。
蒼紫が『この爺・・』と心の片隅で思ったかどうだかは知らないが、裏の顔【御頭】の時と違って表の自分は葵屋の居候並。
反論したいが出来ないで言いたいことが喉元で渦を巻いていると、漬物屋が
「おお、こちらの方は葵屋の御方でしたか。てっきり白尉さんか黒尉さんがお作りになるのかと思いましたが、そうですか、こちらの若い方が・・よろしゅう頼みます。」
勝手に事を進められて空いた口が塞がらない蒼紫に翁が、
「これ、蒼紫。挨拶ぐらいせんか。」
と追討ちをかけた。
翁め・・と思いながらも蒼紫は
「葵屋の四乃森・・蒼紫です。よろしくお願いします。」
と、会釈をした。
「こちらこそ宜しゅうお願いします。いやあ、葵屋さんにこないなええ男衆がおったとは知りまへんでしたわ。」
「ほっ、ほっ、ほっ。まあ、儂の若いころには負けますがの。それではまた宜しく頼みます。」
と、翁は漬物を片手にそこを後にした。
漬物屋から少し離れると、蒼紫はすかさず翁に言った。
「翁、あのような場所であの言葉、どういうつもりだ。」
翁は蒼紫からそう言われることは百も承知の上、いや、そう言わせるようにわざと話を振ったのだ。
「蒼紫や、その事について儂も話がある。どれ、茶でも飲まんか。」
「・・・・。」
蒼紫にも薄々分かる。
翁が話そうとしているのは葵屋の事。
そしてそれは自分が御庭番衆であるが以上、避けては通れない事だと。
なので蒼紫は翁の後に続いて甘味処の暖簾をくぐった。