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170.青木ヶ原 (蒼紫・操・御庭番衆)
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操にとっても目の前で起こっている事は衝撃的だった。
ずっとずっと会いたかった仲間。
小さい頃自分と遊んでくれた変わらぬ四人の笑顔。
「みんな!」
操が叫ぶと四人は操の方を向いた。
「操様、お元気そうで何よりです。」
般若の感無量で満足そうな声が操の耳元に聞こえた。
その声は少し震えていた。
蒼紫も操も目の前に見えている像が喋ったのでさらに驚いた。
「こ・・これは?」
立ったまま夢でも見ているのかと蒼紫は目の前のありえない現実に困惑した。
だがそれがありえない事であろうがなかろうが願い続けていた最後の部下達の堂々たる姿、その笑みに蒼紫は胸がつまった。
「御頭、なんて顔してるんですかい。俺達が不遇に死んだとでも思っていたんですか。」
式尉が少しにやりとしながら蒼紫に語りかけた。
(式尉・・。)
それでも何も言えない蒼紫に今度は火男が、
「部下は御頭を守って当たり前ですだ。俺達は本懐を遂げたんですぜ。いつもの堂々とした態度で褒めてくだせぇよ、御頭。」
と言った。
(火男・・。)
「そうそう、俺達に謝んないで下さいよ、御頭らしくないですぜ。」
(癋見・・。)
「蒼紫様・・我らの為に心を砕きすぎです。この般若、顔を焼いて以来涙が流せぬ身でございましたが今此の両目は涙で溢れております。今となっては蒼紫様のその御心の方が我等にとって最強の称号などより添えてもらって嬉しいものでございます。」
(般若・・。)
「抜刀斎は我等も認める男、そして蒼紫様も唯一認めた男。勝負の結果だけを見れば蒼紫様の望んだものにならなかったのかもしれませんが我等としては、こうやって【我等の蒼紫様】として会いに来てくださったことが一番。そして我等が願うのは蒼紫様、操様、残された御庭番衆の幸、ただそれだけでございます。どうか新時代をお幸せに生きてください。それが蒼紫様をお守りした我等の願い、それが我等の幸せでございます。」
蒼紫は今まで御頭である自分が四人の面倒をみなければと思っていた。
だが自分をみていてくれた、自分の幸せを願ってくれていたのは四人の部下の方だったの方だったのだと知り胸が震えた。
そして部下から話しかけられたのならば答えなければならない、そういう思いが蒼紫の口から言葉を引き出した。
「・・俺の事は心配無用だ。操も十六になった、もう子供ではない。葵屋も操や翁や皆がいればこれからも上手くやっていくだろう。」
蒼紫がそう言ったのに、
「へっ、だから御頭から目が離せねぇて。」
と式尉が言った。
「式尉!こら、口が過ぎるぞ。」
と癋見が横で慌てた。
「折角の機会なんだぜ、この際言い残しがないようにしておかなきゃよ。」
式尉は癋見に怖い顔をして上から圧をかけた。
「そうですぜ御頭、何でも自分一人で背負い込んでよ、こっちの気苦労も察してくださいよ。御頭を一人にするとあぶなかっしくてあの世でもオチオチ休んでられませんぜ。今も聞いてりゃ御自分の幸せなんて全然考えてねぇみてぇだし。」
と、火男は式尉と顔を見合わせて首を振った。
そして式尉は般若を突いた。
(分かっておるわ!黙っとれ!)
般若は背中で式尉にそう言った。
「いいですか、蒼紫様。もう一度言いますがこれからは【操様】と【御一緒】に葵屋を盛り立てて我等の分までお幸せになってください。それが我等の幸せ。」
「般若君、まかせて!この巻町操、命に代えても葵屋を守るわ!」
操は蒼紫様と一緒なら何でもすると胸をドンと叩いて意気込んだ。
一方蒼紫はまた口をつぐんで俯いた。
蒼紫の表情は前髪で見えない。
般若は自分達の願いを納得してもらったものだと安心したのだが、再び顔をあげた蒼紫の顔を見て四人は息をのんだ。
揺るがない意志を持ち任務遂行を命ずる時の隠密御庭番衆御頭の顔。
この顔で話す蒼紫の言葉は絶対だ。
「お前らの要望はよく分かった。・・言いたいこともな。だが俺は隠密御庭番衆最後の御頭として今生の間、勤め上げねばならんことがある。これをやり遂げるのが今の俺の使命だ。何か文句があるならあの世で聞いてやる。それまで待ってろ。」
決して表面には表さない蒼紫の優しさを理解できるのは長年部下として蒼紫と共にいたから。
その優しさに触れるのも部下として感無量なわけであるがやはり本能的に戦う事しか生きる術を持たぬ者達は蒼紫のいざ往かんとするときの御頭の顔には惚れ惚れしてこれ以上は何も言えなかった。
(ほらみろ、火男が焚きつけるから御頭本気になったじゃないか~!)
(そんな事言ってもよ、こっちだって一番言いたいこと言わなきゃ成仏できねぇってもんだろ!そもそも焚きつけたのは俺だけじゃねぇって、式尉や般若もだぜ。)
ヒソヒソ慌てる凸凹コンビの生前と同じ姿に賑わいがあるとこの場の蒼紫の鋭い視線は少し和らいだ。
そう、もう彼らは生きていないのだ。
そう思うと懐かしさと寂しさ、二つの思いが蒼紫の胸の中に同時に沸き起こり四人に向かって
「ここに来てよかった・・これがたとえ夢、幻であろうが御前達が悲しみに暮れているのではないという事が分かった。」
と言った。
四人はその言葉に満ち足りた表情を浮かべた。
その時また般若達を取り巻いていた霧が揺らぎ始めた。
蒼紫の話が終わったら今度は自分が積もる話を話そうと思っていた操だったが、あれよあれよという間に四人の姿が足もとから薄くなっていく。
「般若君!式尉さん!火男!癋見!」
操は思わず般若に走り寄った操の腕は般若を通り抜けた。
「!」
驚く操に般若は昔のように諭すように操に話しかけた。
「操様、どうやらここまでのようです。短い間でしたが夢の中でなく、こうやってお会い出来てようございました。」
「いや!いやよ般若君!みんな!行かないで!」
操の目に涙が浮かぶ。
般若も操の涙には心が痛んだが、
「操様、今回はお連れするわけにはいきません。どうか我等の分まで蒼紫様を頼みますぞ・・。」
と言った。
「般若君!」
般若は面をつけていたがそれでも操は般若が微笑んでいるような気がした。
四対二。
それぞれ残りわずかな時間、それぞれ向かいあい互いを見つめた。
消えゆく刹那、れでお別れですと四人は蒼紫と操に向かって深々と礼をするとその姿は見えなくなった。
霧は跡形もなく消え、また辺りは何事もなかったかのように静寂な森に戻った。
「蒼紫様・・般若君達は逝ってしまったの?」
「いや、まだだろう。今のもきっとこの御札の力なのだろう・・・。」
実、理解出来ない出来事に蒼紫は困惑しながらも心に整理がついたような気がした。
この不可思議な現象を突きつめたい気持ちはあるがそこは今は目を瞑り、蒼紫はここに来た目的を果たさんと墓石を除けはじめた。
「私も蒼紫様を手伝います!」
操は墓石を除いた場所に指を突き立てた。
皆で一緒に京都に帰るんだ、その思いで冷たい土を掘ろうとする操の手を蒼紫はそっと包み込んだ。
「蒼紫様・・。」
思わず操は蒼紫を見上げると蒼紫は首を静かに横に振っていた。
「操・・男には誇りというものがある。醜く朽ちていく姿をあいつらは操に見られたくはないだろう。これは俺がやる。」
「でも・・。」
「分かってやれ。その代り操にはやってもらいたいことがある。」
と、蒼紫は結んでいる腰の布をほどくと、近くの木に飛び上がり枝に結びつけた。
「この森は迷いやすい。あれを目印に迷わぬように薪を集めてくれ。首もそのまま京都に持ってゆく訳にもゆかぬ上、この場で荼毘(だび)に付すつもりだ。その後骨を拾うので勘弁してくれ。」
そう言われて操は分かりましたと立ち上がった。
蒼紫は頷いた。
土の中から掘り出した朽ちかけた四つの首を蒼紫は用意した白い布で包んでその場で荼毘に付した。
樹海の間を暫くの間、細く白い煙が空へ真っ直ぐ立ちのぼった。
余談雑談:
(蒼紫を悲しいまま別れたあの四人ともう一度合わせてあげたい!)
これは長編を書こうと思った時から絶対入れたい場面だと思ってました。
挿絵は原作コミック最終巻と結果的に似てしまったかな・・と思う節があります。
まあ、御庭番衆の絆、蒼紫の帰る場所というテーマということになると、シーン的にも似てしまったというのは有るのでしょう・・。
昨日そこを読み返した時初めてあの四人を蒼紫に会わせない話も有りか・・と思いました。
それは蒼紫があの四人のとの死別を蒼紫なりに昇華したから、と自分は解釈したわけで・・。
そう思うと原作は何て奥深い・・!
と感動し直したわけでありますが、この長編では当初の予定通り再会する形で進めました。
さて、操ちゃん・・蒼紫に手を触れられて多分舞い上がっているのではと思うのですがこの続きはまた・・。
********
(おまけ)
それでは今回は御札の効力が切れた後の四人の会話をお楽しみ下さい。
式尉が般若をじっと見下ろす。
般若:「な、なんだ式尉。言いたいことがあったらはっきり言え。」
式尉:「いや・・般若なら絶対言うかと思ったんだが言わなかったんだなと思ってよ。」
般若:「何んの事だ。」
式尉:「『蒼紫様に【操様】を【めとって】葵屋を継いでください、ってさ。」
火男:「そうだよな。俺も絶対言うと思ってたぜ、今までの勢いからするとよ。」
癋見:「まったく般若は肝心な所で。押しが弱いんだからよ。」
ゴン。
鈍い音がしたと同時に癋見が痛てぇと叫んだ。
コォォォと鼻息が荒いのか息が荒いのか、面の口元から煙を吐く般若。
式尉:「ま、あの場でそう言って御頭に即否定されたら元も子も無いからな。」
火男:「しばらく様子を見るしかねぇでな。」
式尉:「俺は御頭が幸せになるんだったら相手は操様でなくてもいいと思ってるんだぜ。」
その言葉はその場に居る全員に武尊の姿を思い出させた。
般若:「ば、馬鹿を言うな!誰があんな女・・私は絶対認めんぞ!」
癋見:「まったく素直じゃないんだからよ般若は。本当は認めてるんだろあの女の事を。」
ゴン!
前より大きな音が響いたと同時に前より大きな叫び声があがった。
・・・・どうやらまだしばらくこの四人は成仏することが出来ないようだ。
2014.11.07
ずっとずっと会いたかった仲間。
小さい頃自分と遊んでくれた変わらぬ四人の笑顔。
「みんな!」
操が叫ぶと四人は操の方を向いた。
「操様、お元気そうで何よりです。」
般若の感無量で満足そうな声が操の耳元に聞こえた。
その声は少し震えていた。
蒼紫も操も目の前に見えている像が喋ったのでさらに驚いた。
「こ・・これは?」
立ったまま夢でも見ているのかと蒼紫は目の前のありえない現実に困惑した。
だがそれがありえない事であろうがなかろうが願い続けていた最後の部下達の堂々たる姿、その笑みに蒼紫は胸がつまった。
「御頭、なんて顔してるんですかい。俺達が不遇に死んだとでも思っていたんですか。」
式尉が少しにやりとしながら蒼紫に語りかけた。
(式尉・・。)
それでも何も言えない蒼紫に今度は火男が、
「部下は御頭を守って当たり前ですだ。俺達は本懐を遂げたんですぜ。いつもの堂々とした態度で褒めてくだせぇよ、御頭。」
と言った。
(火男・・。)
「そうそう、俺達に謝んないで下さいよ、御頭らしくないですぜ。」
(癋見・・。)
「蒼紫様・・我らの為に心を砕きすぎです。この般若、顔を焼いて以来涙が流せぬ身でございましたが今此の両目は涙で溢れております。今となっては蒼紫様のその御心の方が我等にとって最強の称号などより添えてもらって嬉しいものでございます。」
(般若・・。)
「抜刀斎は我等も認める男、そして蒼紫様も唯一認めた男。勝負の結果だけを見れば蒼紫様の望んだものにならなかったのかもしれませんが我等としては、こうやって【我等の蒼紫様】として会いに来てくださったことが一番。そして我等が願うのは蒼紫様、操様、残された御庭番衆の幸、ただそれだけでございます。どうか新時代をお幸せに生きてください。それが蒼紫様をお守りした我等の願い、それが我等の幸せでございます。」
蒼紫は今まで御頭である自分が四人の面倒をみなければと思っていた。
だが自分をみていてくれた、自分の幸せを願ってくれていたのは四人の部下の方だったの方だったのだと知り胸が震えた。
そして部下から話しかけられたのならば答えなければならない、そういう思いが蒼紫の口から言葉を引き出した。
「・・俺の事は心配無用だ。操も十六になった、もう子供ではない。葵屋も操や翁や皆がいればこれからも上手くやっていくだろう。」
蒼紫がそう言ったのに、
「へっ、だから御頭から目が離せねぇて。」
と式尉が言った。
「式尉!こら、口が過ぎるぞ。」
と癋見が横で慌てた。
「折角の機会なんだぜ、この際言い残しがないようにしておかなきゃよ。」
式尉は癋見に怖い顔をして上から圧をかけた。
「そうですぜ御頭、何でも自分一人で背負い込んでよ、こっちの気苦労も察してくださいよ。御頭を一人にするとあぶなかっしくてあの世でもオチオチ休んでられませんぜ。今も聞いてりゃ御自分の幸せなんて全然考えてねぇみてぇだし。」
と、火男は式尉と顔を見合わせて首を振った。
そして式尉は般若を突いた。
(分かっておるわ!黙っとれ!)
般若は背中で式尉にそう言った。
「いいですか、蒼紫様。もう一度言いますがこれからは【操様】と【御一緒】に葵屋を盛り立てて我等の分までお幸せになってください。それが我等の幸せ。」
「般若君、まかせて!この巻町操、命に代えても葵屋を守るわ!」
操は蒼紫様と一緒なら何でもすると胸をドンと叩いて意気込んだ。
一方蒼紫はまた口をつぐんで俯いた。
蒼紫の表情は前髪で見えない。
般若は自分達の願いを納得してもらったものだと安心したのだが、再び顔をあげた蒼紫の顔を見て四人は息をのんだ。
揺るがない意志を持ち任務遂行を命ずる時の隠密御庭番衆御頭の顔。
この顔で話す蒼紫の言葉は絶対だ。
「お前らの要望はよく分かった。・・言いたいこともな。だが俺は隠密御庭番衆最後の御頭として今生の間、勤め上げねばならんことがある。これをやり遂げるのが今の俺の使命だ。何か文句があるならあの世で聞いてやる。それまで待ってろ。」
決して表面には表さない蒼紫の優しさを理解できるのは長年部下として蒼紫と共にいたから。
その優しさに触れるのも部下として感無量なわけであるがやはり本能的に戦う事しか生きる術を持たぬ者達は蒼紫のいざ往かんとするときの御頭の顔には惚れ惚れしてこれ以上は何も言えなかった。
(ほらみろ、火男が焚きつけるから御頭本気になったじゃないか~!)
(そんな事言ってもよ、こっちだって一番言いたいこと言わなきゃ成仏できねぇってもんだろ!そもそも焚きつけたのは俺だけじゃねぇって、式尉や般若もだぜ。)
ヒソヒソ慌てる凸凹コンビの生前と同じ姿に賑わいがあるとこの場の蒼紫の鋭い視線は少し和らいだ。
そう、もう彼らは生きていないのだ。
そう思うと懐かしさと寂しさ、二つの思いが蒼紫の胸の中に同時に沸き起こり四人に向かって
「ここに来てよかった・・これがたとえ夢、幻であろうが御前達が悲しみに暮れているのではないという事が分かった。」
と言った。
四人はその言葉に満ち足りた表情を浮かべた。
その時また般若達を取り巻いていた霧が揺らぎ始めた。
蒼紫の話が終わったら今度は自分が積もる話を話そうと思っていた操だったが、あれよあれよという間に四人の姿が足もとから薄くなっていく。
「般若君!式尉さん!火男!癋見!」
操は思わず般若に走り寄った操の腕は般若を通り抜けた。
「!」
驚く操に般若は昔のように諭すように操に話しかけた。
「操様、どうやらここまでのようです。短い間でしたが夢の中でなく、こうやってお会い出来てようございました。」
「いや!いやよ般若君!みんな!行かないで!」
操の目に涙が浮かぶ。
般若も操の涙には心が痛んだが、
「操様、今回はお連れするわけにはいきません。どうか我等の分まで蒼紫様を頼みますぞ・・。」
と言った。
「般若君!」
般若は面をつけていたがそれでも操は般若が微笑んでいるような気がした。
四対二。
それぞれ残りわずかな時間、それぞれ向かいあい互いを見つめた。
消えゆく刹那、れでお別れですと四人は蒼紫と操に向かって深々と礼をするとその姿は見えなくなった。
霧は跡形もなく消え、また辺りは何事もなかったかのように静寂な森に戻った。
「蒼紫様・・般若君達は逝ってしまったの?」
「いや、まだだろう。今のもきっとこの御札の力なのだろう・・・。」
実、理解出来ない出来事に蒼紫は困惑しながらも心に整理がついたような気がした。
この不可思議な現象を突きつめたい気持ちはあるがそこは今は目を瞑り、蒼紫はここに来た目的を果たさんと墓石を除けはじめた。
「私も蒼紫様を手伝います!」
操は墓石を除いた場所に指を突き立てた。
皆で一緒に京都に帰るんだ、その思いで冷たい土を掘ろうとする操の手を蒼紫はそっと包み込んだ。
「蒼紫様・・。」
思わず操は蒼紫を見上げると蒼紫は首を静かに横に振っていた。
「操・・男には誇りというものがある。醜く朽ちていく姿をあいつらは操に見られたくはないだろう。これは俺がやる。」
「でも・・。」
「分かってやれ。その代り操にはやってもらいたいことがある。」
と、蒼紫は結んでいる腰の布をほどくと、近くの木に飛び上がり枝に結びつけた。
「この森は迷いやすい。あれを目印に迷わぬように薪を集めてくれ。首もそのまま京都に持ってゆく訳にもゆかぬ上、この場で荼毘(だび)に付すつもりだ。その後骨を拾うので勘弁してくれ。」
そう言われて操は分かりましたと立ち上がった。
蒼紫は頷いた。
土の中から掘り出した朽ちかけた四つの首を蒼紫は用意した白い布で包んでその場で荼毘に付した。
樹海の間を暫くの間、細く白い煙が空へ真っ直ぐ立ちのぼった。
余談雑談:
(蒼紫を悲しいまま別れたあの四人ともう一度合わせてあげたい!)
これは長編を書こうと思った時から絶対入れたい場面だと思ってました。
挿絵は原作コミック最終巻と結果的に似てしまったかな・・と思う節があります。
まあ、御庭番衆の絆、蒼紫の帰る場所というテーマということになると、シーン的にも似てしまったというのは有るのでしょう・・。
昨日そこを読み返した時初めてあの四人を蒼紫に会わせない話も有りか・・と思いました。
それは蒼紫があの四人のとの死別を蒼紫なりに昇華したから、と自分は解釈したわけで・・。
そう思うと原作は何て奥深い・・!
と感動し直したわけでありますが、この長編では当初の予定通り再会する形で進めました。
さて、操ちゃん・・蒼紫に手を触れられて多分舞い上がっているのではと思うのですがこの続きはまた・・。
********
(おまけ)
それでは今回は御札の効力が切れた後の四人の会話をお楽しみ下さい。
式尉が般若をじっと見下ろす。
般若:「な、なんだ式尉。言いたいことがあったらはっきり言え。」
式尉:「いや・・般若なら絶対言うかと思ったんだが言わなかったんだなと思ってよ。」
般若:「何んの事だ。」
式尉:「『蒼紫様に【操様】を【めとって】葵屋を継いでください、ってさ。」
火男:「そうだよな。俺も絶対言うと思ってたぜ、今までの勢いからするとよ。」
癋見:「まったく般若は肝心な所で。押しが弱いんだからよ。」
ゴン。
鈍い音がしたと同時に癋見が痛てぇと叫んだ。
コォォォと鼻息が荒いのか息が荒いのか、面の口元から煙を吐く般若。
式尉:「ま、あの場でそう言って御頭に即否定されたら元も子も無いからな。」
火男:「しばらく様子を見るしかねぇでな。」
式尉:「俺は御頭が幸せになるんだったら相手は操様でなくてもいいと思ってるんだぜ。」
その言葉はその場に居る全員に武尊の姿を思い出させた。
般若:「ば、馬鹿を言うな!誰があんな女・・私は絶対認めんぞ!」
癋見:「まったく素直じゃないんだからよ般若は。本当は認めてるんだろあの女の事を。」
ゴン!
前より大きな音が響いたと同時に前より大きな叫び声があがった。
・・・・どうやらまだしばらくこの四人は成仏することが出来ないようだ。
2014.11.07