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170.青木ヶ原 (蒼紫・操・御庭番衆)
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東京では左之助をめぐって大変な事態となっていた一方、始発で新橋を発った蒼紫と操は・・・。
***********
蒼紫と二人きりで乗る陸蒸気、それは操にとって夢のような時間だった。
座席は二人掛けが向かい合わせになっている。
横浜から来た時はすでに先客が窓側に座っていたのだが、今回は窓側の席が空いていた為操は窓側の席に飛び込んだ。
蒼紫は操の正面にゆっくりと座った。
ついでに言えば、横浜から来た時は席がうまい具合に空いておらず蒼紫は操の斜め後ろの席に別れて座っていたのであった。
出発すると蒼紫は窓に肘を付き、視線遠く景色を眺めた。
操も景色を見ていたのだがふと正面を向くと蒼紫の憂いを帯びた顔が直に見える。
(こうやって側で蒼紫様を見ていると、蒼紫様が帰って来たって実感できるわぁ。やっぱり蒼紫様ってかっこいいわよね、誰が何と言っても。)
葵屋にいた時でさえ操はこんなに蒼紫の顔を近くに見ることはなかなかない。
今は無条件でこの位置に居れる事が嬉しくて操は景色を見るより蒼紫を見る時間の方が多かった。
操が自分の顔を見つめていることに気が付いている蒼紫だったがそのまま窓の外を見つめていた。
瞳に流れゆく景色を写しながら蒼紫はあの晩の事を回想した。
・・志々雄真実との死闘が終わり葵屋へ帰って来た時、駆け寄って来た操に蒼紫は抱きつかれた。
涙を流し自分の帰還をただ喜んだその娘が昔葵屋に残してきた子供、操だとその時初めて蒼紫は認識できた。
修羅と化していた時には姿は見えてはいても認識できなかった操という娘。
(無事大きくなってくれた。これも翁や皆のお蔭だ。)
大恩ある先代御頭の忘れ形見の成長を見て蒼紫は安堵をしたものだった。
そして思った。
般若達を引き連れて葵屋を出て放浪した数年間の自分をたとえ残された者達の為とはいえ、観柳の元で働いていた姿など見せずに済んでよかったと・・。
(いや、それよりも・・。)
蒼紫は遠くなりゆく横浜の海に武尊を想った。
(武尊・・・。)
この帰路は蒼紫にとってなにより大事な旅路。
樹海に残した四人を連れて帰る為の旅路。
(分かっている・・俺は御頭だ。御庭番衆と部外者など比べるまでもない。だが・・。)
思慮にふける端整な蒼紫の横顔を見ながら操は思った。
(蒼紫様って昔から口数が少ない方だったけど・・葵屋に戻って来て数ヶ月経つけどこんなに口数少なかったっけ・・今も難しい顔してるけどきっと私が蒼紫様を微笑ませてみせるんだから。)
優しかった兄のような存在だった男は今や立派な青年の姿に。
(蒼紫様・・。)
操にとって、強くて優しい憧れの存在の蒼紫。
【一番想っている人】という意味が【好き】から少しづつ変化している自分に気づかないまま・・。
互いにそれぞれの想いを胸に横浜で下車、二人は小田原の宿場へ向かった。
横浜から小田原まで約五十キロ、蒼紫達は夕方前に到着した。
「蒼紫様、本当に今日はここに泊まるんですか?私ならまだまだ歩けますよ。」
かつて京都に帰る路銀がなくなり追いはぎを働いた宿場。
あははっ、顔覚えてる人がいたらちょっとまずいかも・・と操は愛想笑いして次の宿場まで行きましょうという雰囲気を蒼紫に振りまいた。
しかし蒼紫は、
「嗚呼、だが明日は箱根越えで早く宿を発つ。無駄に進むのは体力の消耗にもつながりかねん。休める時には休め。」
と言った。
操は別に追いはぎ働いた奴等やその事を知ってる人達の仕返しが怖いのではなかった。
ただ、誇りある御庭番衆がそのようなことをしたのがバレた時の事を考えるとかなりまずいと操は内心冷や冷やだった。
蒼紫様と二人っきりで宿泊だと心が躍る一方、いつばれるかもしれないということで気が置けなかった。
実際泊まったのは二十畳ほどもある大部屋で、その一角に二人は場所を取り休んだのであるが操は寝るまで蒼紫がすぐ傍にいるので大興奮だった。
蒼紫があまりにも無口なので操は自分が緋村と出会ったのはこの宿場だったのだと何度も話そうになったのだが、どのみちその話は追いはぎの話につながるので言うに言えないまま横になっていると眠気が襲ってきた。
抑え気味とはいえ、蒼紫の歩く速さに見えを張ってついてきた分だけ疲れていたのだろう、操はすぐにクークーと小さないびきをかいて寝てしまった。
蒼紫はそれを見て静かに目を閉じた。
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蒼紫と二人きりで乗る陸蒸気、それは操にとって夢のような時間だった。
座席は二人掛けが向かい合わせになっている。
横浜から来た時はすでに先客が窓側に座っていたのだが、今回は窓側の席が空いていた為操は窓側の席に飛び込んだ。
蒼紫は操の正面にゆっくりと座った。
ついでに言えば、横浜から来た時は席がうまい具合に空いておらず蒼紫は操の斜め後ろの席に別れて座っていたのであった。
出発すると蒼紫は窓に肘を付き、視線遠く景色を眺めた。
操も景色を見ていたのだがふと正面を向くと蒼紫の憂いを帯びた顔が直に見える。
(こうやって側で蒼紫様を見ていると、蒼紫様が帰って来たって実感できるわぁ。やっぱり蒼紫様ってかっこいいわよね、誰が何と言っても。)
葵屋にいた時でさえ操はこんなに蒼紫の顔を近くに見ることはなかなかない。
今は無条件でこの位置に居れる事が嬉しくて操は景色を見るより蒼紫を見る時間の方が多かった。
操が自分の顔を見つめていることに気が付いている蒼紫だったがそのまま窓の外を見つめていた。
瞳に流れゆく景色を写しながら蒼紫はあの晩の事を回想した。
・・志々雄真実との死闘が終わり葵屋へ帰って来た時、駆け寄って来た操に蒼紫は抱きつかれた。
涙を流し自分の帰還をただ喜んだその娘が昔葵屋に残してきた子供、操だとその時初めて蒼紫は認識できた。
修羅と化していた時には姿は見えてはいても認識できなかった操という娘。
(無事大きくなってくれた。これも翁や皆のお蔭だ。)
大恩ある先代御頭の忘れ形見の成長を見て蒼紫は安堵をしたものだった。
そして思った。
般若達を引き連れて葵屋を出て放浪した数年間の自分をたとえ残された者達の為とはいえ、観柳の元で働いていた姿など見せずに済んでよかったと・・。
(いや、それよりも・・。)
蒼紫は遠くなりゆく横浜の海に武尊を想った。
(武尊・・・。)
この帰路は蒼紫にとってなにより大事な旅路。
樹海に残した四人を連れて帰る為の旅路。
(分かっている・・俺は御頭だ。御庭番衆と部外者など比べるまでもない。だが・・。)
思慮にふける端整な蒼紫の横顔を見ながら操は思った。
(蒼紫様って昔から口数が少ない方だったけど・・葵屋に戻って来て数ヶ月経つけどこんなに口数少なかったっけ・・今も難しい顔してるけどきっと私が蒼紫様を微笑ませてみせるんだから。)
優しかった兄のような存在だった男は今や立派な青年の姿に。
(蒼紫様・・。)
操にとって、強くて優しい憧れの存在の蒼紫。
【一番想っている人】という意味が【好き】から少しづつ変化している自分に気づかないまま・・。
互いにそれぞれの想いを胸に横浜で下車、二人は小田原の宿場へ向かった。
横浜から小田原まで約五十キロ、蒼紫達は夕方前に到着した。
「蒼紫様、本当に今日はここに泊まるんですか?私ならまだまだ歩けますよ。」
かつて京都に帰る路銀がなくなり追いはぎを働いた宿場。
あははっ、顔覚えてる人がいたらちょっとまずいかも・・と操は愛想笑いして次の宿場まで行きましょうという雰囲気を蒼紫に振りまいた。
しかし蒼紫は、
「嗚呼、だが明日は箱根越えで早く宿を発つ。無駄に進むのは体力の消耗にもつながりかねん。休める時には休め。」
と言った。
操は別に追いはぎ働いた奴等やその事を知ってる人達の仕返しが怖いのではなかった。
ただ、誇りある御庭番衆がそのようなことをしたのがバレた時の事を考えるとかなりまずいと操は内心冷や冷やだった。
蒼紫様と二人っきりで宿泊だと心が躍る一方、いつばれるかもしれないということで気が置けなかった。
実際泊まったのは二十畳ほどもある大部屋で、その一角に二人は場所を取り休んだのであるが操は寝るまで蒼紫がすぐ傍にいるので大興奮だった。
蒼紫があまりにも無口なので操は自分が緋村と出会ったのはこの宿場だったのだと何度も話そうになったのだが、どのみちその話は追いはぎの話につながるので言うに言えないまま横になっていると眠気が襲ってきた。
抑え気味とはいえ、蒼紫の歩く速さに見えを張ってついてきた分だけ疲れていたのだろう、操はすぐにクークーと小さないびきをかいて寝てしまった。
蒼紫はそれを見て静かに目を閉じた。