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161.空はいつまでも蒼く(エピローグ) (斎藤・夢主)

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乗船した斎藤は雪代縁の捕獲に出た時のように甲板の最尾へ出た。



斎藤が乗ったのは商船だが他にも斎藤と同じように船路を行く者がいるのだろう。



武尊の周りにも数人見送りに来ていた。



武尊はその中で斎藤の姿が見えると大きく手を振った。





ボォォー。





汽笛が大きくなって船は出発した。



小さくなる人影。



互いに見えなくなるまでその場に立っていた。











やがて周囲の人は一人二人と離れていき、その場は武尊だけになった。



船が見えなくなっても武尊はしばらくその場に立ちつくしていた。



「一・・・。」



武尊が小さな声で呟くと不意に周りの音が聞こえだした。



かもめの声、少し離れた所の人のざわめき・・・そして波の音。



武尊は自分が現実に帰って来た事を意識した。



一瞬今までの事は夢ではないかと思ったが、手にしっかり握られていた刀袋が夢ではない事を示していた。



武尊は周りを見回して丁度いい石に腰を下ろした。



天上には青い空。



武尊は空を見上げて、そしてため息をついた。





「終わった・・・私の恋・・・私の全て。」





武尊は横浜に来てからの事を走馬灯のように思い出した。



本当に偶然、いや、奇跡的に斎藤に会った事。



その場で部下になった事。



いきなり幕末の仇、川路に会った事。



藤田の家で夫婦共々大事にしてもらった事。



文字の勉強を必死でやった事。



ついでに格闘のいろはも教え込まれた事。



夜会襲撃事件に武器密輸事件。



神社で斎藤と蒼紫に斬られて重傷を負った事。



十六夜丸の事。



お茶会で襲われ時尾を巻き込んだ事。



そして斎藤の異動に横浜で狂わされるほど愛された数日間。





「・・いろいろあったなぁ。」



武尊はこの一ヶ月、振り返ればいろいろな事があり過ぎたと思った。



痛い思いもしたけどすべてが幸せだった武尊は思った。



沢山もらった人の優しさ。



「私には十分過ぎたぐらいだ・・・。」



その瞬間に研究所の所長の厭らしい顔が思い出された。



自分は虫以下の扱いだと言われた時はこんな自分を作った所長を、研究所を、人類をそして自分をも呪った。



「生き物って進化したらだんだん良くなっていくんじゃないの?昔の人の方がいい人じゃん・・そりゃすべての人とは言わないよ。夜会の海軍軍人なんて最低だったからね。」



武尊はぶつくさと独り言を言い、そしてまたため息を一つついた。



「・・・そうは言っても私も沢山殺してるんだから所詮同じ穴のムジナってとこか。」



自分の記憶にない殺人とある殺人。



十六夜丸だけが悪いとはもう言えない。それでも十六夜丸がなんだったのか知らなければ前へ進めないと武尊は思う。



(そう・・・東京に来たのは十六夜丸と言われた自分を探す為、人斬りだった師匠のお弟子さんに話を聞くため。・・・幸せな自分はここまで。これからはこの幸せは心の底に鍵をして沈める・・・。私は年末までに答えを探さなくてはいけないんだから。)



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