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165.満月 (剣心・薫・弥彦・夢主)
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『蘭子、何をしている、夜風は冷たいだろう、中に入れ。』
『あ、兄様、おかえりなさい。大丈夫、まだそんなに寒くないし。ほら見て、大きな満月でしょ、一人じゃつまらないからずっと月をを見ていたの。何だか懐かしい気がして。』
『懐かしいだと?ふっ、変な事を言う。竹取物語でもあるまいに。』
『おかしいな、、人は月まで行けたような気がしたんだけどな・・。』
『ははっ、そんな事があるわけないだろ。夢を見たにしても壮大な夢だな。それより蘭子・・・・明日からまた頼む・・。』
『・・今回も?』
『ああ・・すまない・・だから早く休んでくれ。あれは体に負担をかけるからな・・。』
**********
「・・ははっ、兄様の顔、こんなにはっきりと思いだしたの久しぶりだ。それにあの頃は未来の記憶の方が断片的だったからな。」
何故この場面を思い出したのだろうと、突如再生された記憶の断片を見て、武尊はなんとなく苦笑した。
今夜の大きな月があの時の大きな月とダブったからだろうかと武尊は月を見上げた。
兄と呼んでいた市彦を、母成峠で十六夜丸になる前に見たのが最後、本当に今頃どうしているのか。
生きているのか死んでいるのか、それをこれから確かめに行くんだと武尊は自分のやるべき事を再確認した。
そして引き続き以前の自分について思いを馳せた。
「昔(幕末)は歴史を変えてしまうようなことをしていたかもしれないのに、その時何が起こっていたのか何も知らないんだ私・・。」
満月の後は十六夜。
あの頃は満月が来るのが嫌だった。
臭くて不味いあの薬を飲まなければいけなかったのと十六夜丸になってわけのわからない事をしていたのを思い出すと今尚気が重くなる。
武尊は月の光が直接当たらない部屋の奥に移動して壁にもたれて座った。
そして影をはっきりと地面に落とす庭の木を見ながら武尊は思った。
(たとえ兄様に再会したとしてももう、あの時のように十六夜丸にはならない、なる理由がもうない。・・だって川路は悪くなかったんだもん。)
それに・・・。
もう道具として扱われるのは嫌だ。
道具といえば、どうしても未来の自分、いや、クローン人間である自分達を思い出してしまう。
自分は道具ではない。
ちゃんとした人間でないとしても・・・せめて人間らしく生きたい。
そう強く思った。
(一はこんな私を愛してくれた・・・。)
一人でも自分を認めてくれた人がいる世界、だからせめてここ(明治十一年)では、この世界では人間でいたい・・・と、武尊はぐっと目を閉じて願った。
このまま斎藤の思い出を追い眠りにつきたいと武尊は思ったが、寝すぎた所為か全然眠くない。
しかたがないのでもう一度目を開き、ぼんやりと庭を眺めた。
月の白い光が庭木の葉を照らす。
純和風の庭でファンタジーというのはミスマッチだと思いながらも武尊はその淡い光が自分をどこかへ誘っていく・・そう、昔の記憶の中へと誘っていくような気がした。
そしてまた脳裏に浮かんできた映像を追いかけた。
「あれは確か・・・。」
************
武尊の記憶に浮かんできたのは戊辰戦争が始って、旧幕府軍を追って官軍が会津へと進撃を始めるという情報を市彦から聞き、自分達も薩摩の部隊を追って江戸を離れようとしている時のことだった。
『蘭子。』
『はい。』
『・・今後もし俺に万が一のことがあれば京都の天ヶ岳の奥に陶芸家の男が一人住んでいる。そこを訪ねろ。あの男ならきっと蘭子を守れるはずだ。』
『・・え?天ヶ岳?その人って兄様の知り合いなんですか?・・って万が一なんて言わないで下さいよ。それに一人で京都なんて無理ですって!(道、そもそも全然わからないから!お金もないし!)』
『その男とは一度会ったことがあるだけだが俺も武士の端くれ、あの男が只者ではないのを感じた。それからこれは少ないが道中の足しぐらいにはなるだろう。持っていろ。』
『ちょっ・・本気で言ってるの?今更そんな事言うなんて!』
『分かっている・・蘭子には本当にすまないと思っている・・・・・だが・・川路だけは・・許すことができん。』
『・・・もし・・その兄様の願いが叶ったら・・・どこか人の来ない田舎で二人で静かに暮らそうよ・・時々兄様の鬼のような顔・・見るのつらいから・・。』
『蘭子・・。』
『それでいいよ、私。私は・・たとえ自分の意志じゃないとしても十六夜丸になるのを了承して沢山人の命奪ったんだもの、供養してあげなきゃ・・・。(それに・・すべてが終わった時は鷹の事も話して・・・・私も責任とるから。)だから万が一の事なんて言わないで。』
『いや・・今後の戦局は激しいものになるだろう。何かの折に巻き込まれないとも限らん。とりあえず、これを受け取れ。そしてもう一つだけ言っておかなければならないことがある。安西には気をつけろ、奴に近づくな。』
『安西って、あのお坊さん?最初の御屋敷にいた。』
『そうだ、あいつはお前の秘密を知っている。』
『・・!』
記憶のドラマはそこで止まり武尊はハッとした。
「安・・西・・・。いたわ、そんな名前の人。そういえばどうしたんだろ?秘密を知ってるってもちろん薬の事・・だよね?」
自問自答の中で武尊は斎藤と蒼紫と市彦以外に自分の秘密を知る者がいるという事を思い出して一瞬目の前が真っ暗になった。
「な、なんでこんな肝心な事、忘れていたんだろ・・。信じられない!でも安西ってお坊さんだったよね。お坊さんに何が出来るっていうんだ?それに今更私に会ったって分かるわけ・・・・。」
と言いかけて武尊は思わず自分の顔の傷を手で押さえた。
昔と容姿が変わっていないと言われる上にいつの間にかついていて消えない三本の傷。
会えば一発で分かってしまうだろう。
「だけど・・会えばでしょ?京都のどこのお寺かわからないお坊さんにばったり出くわすなんて、そんな奇跡、いや、まぐれなんて一だけで十分なんだから。」
と、武尊はぶつくさ呟いた。
そんな奴なんてもちろん会いたくもない、そうだ、お坊さんの恰好をした人がいたらとりあえず顔の傷が見えないようにしようと武尊は思った。
それから武尊は市彦の言葉から比古の姿を思い浮かべた。
(こんな所で初恋の人に心を奪われて・・・その人と別れて腑抜けになっている姿を見られたらなんて言われるだろう・・。でも・・兄様も比古さんの事を只者でないって見抜いてたなんてさすが武士だよねぇ。それにしてもあの時点で兄様が自分に何かあったら比古さんの所へ行けって言っていたのも今にして思えばこれも何かの比古さんとの縁なのかもしれないな・・。)
武尊はふぅと息を吐いて、一息置いて突然、
「あーっ!」
と叫んだ。
「そう言えば比古さん、私が山を下りる前に確か兄様が来て金子と薬を置いていったって言ってた!ということは兄様の足取りで最後に分かっているのは比古さんの所ってこと!?会津に行く意味ないじゃん!うわ~。」
今まで溜めてきた会津に行くんだという意気込みがプシュ~と萎んでいくような感じだった。
武尊はため息をつきながら考えた。
「でも、比古さんの話では兄様は薬と金子を置いたらすぐに帰って行ったっていう話だし、手がかりはそこでなくなってるだよね、やっぱり会津へは行ってみるべきなのかなぁ・・。」
あーあ、と武尊は頭の後ろで腕を組みゴロンと畳に横たわった。
そして暗い天井を見つめた。
『あ、兄様、おかえりなさい。大丈夫、まだそんなに寒くないし。ほら見て、大きな満月でしょ、一人じゃつまらないからずっと月をを見ていたの。何だか懐かしい気がして。』
『懐かしいだと?ふっ、変な事を言う。竹取物語でもあるまいに。』
『おかしいな、、人は月まで行けたような気がしたんだけどな・・。』
『ははっ、そんな事があるわけないだろ。夢を見たにしても壮大な夢だな。それより蘭子・・・・明日からまた頼む・・。』
『・・今回も?』
『ああ・・すまない・・だから早く休んでくれ。あれは体に負担をかけるからな・・。』
**********
「・・ははっ、兄様の顔、こんなにはっきりと思いだしたの久しぶりだ。それにあの頃は未来の記憶の方が断片的だったからな。」
何故この場面を思い出したのだろうと、突如再生された記憶の断片を見て、武尊はなんとなく苦笑した。
今夜の大きな月があの時の大きな月とダブったからだろうかと武尊は月を見上げた。
兄と呼んでいた市彦を、母成峠で十六夜丸になる前に見たのが最後、本当に今頃どうしているのか。
生きているのか死んでいるのか、それをこれから確かめに行くんだと武尊は自分のやるべき事を再確認した。
そして引き続き以前の自分について思いを馳せた。
「昔(幕末)は歴史を変えてしまうようなことをしていたかもしれないのに、その時何が起こっていたのか何も知らないんだ私・・。」
満月の後は十六夜。
あの頃は満月が来るのが嫌だった。
臭くて不味いあの薬を飲まなければいけなかったのと十六夜丸になってわけのわからない事をしていたのを思い出すと今尚気が重くなる。
武尊は月の光が直接当たらない部屋の奥に移動して壁にもたれて座った。
そして影をはっきりと地面に落とす庭の木を見ながら武尊は思った。
(たとえ兄様に再会したとしてももう、あの時のように十六夜丸にはならない、なる理由がもうない。・・だって川路は悪くなかったんだもん。)
それに・・・。
もう道具として扱われるのは嫌だ。
道具といえば、どうしても未来の自分、いや、クローン人間である自分達を思い出してしまう。
自分は道具ではない。
ちゃんとした人間でないとしても・・・せめて人間らしく生きたい。
そう強く思った。
(一はこんな私を愛してくれた・・・。)
一人でも自分を認めてくれた人がいる世界、だからせめてここ(明治十一年)では、この世界では人間でいたい・・・と、武尊はぐっと目を閉じて願った。
このまま斎藤の思い出を追い眠りにつきたいと武尊は思ったが、寝すぎた所為か全然眠くない。
しかたがないのでもう一度目を開き、ぼんやりと庭を眺めた。
月の白い光が庭木の葉を照らす。
純和風の庭でファンタジーというのはミスマッチだと思いながらも武尊はその淡い光が自分をどこかへ誘っていく・・そう、昔の記憶の中へと誘っていくような気がした。
そしてまた脳裏に浮かんできた映像を追いかけた。
「あれは確か・・・。」
************
武尊の記憶に浮かんできたのは戊辰戦争が始って、旧幕府軍を追って官軍が会津へと進撃を始めるという情報を市彦から聞き、自分達も薩摩の部隊を追って江戸を離れようとしている時のことだった。
『蘭子。』
『はい。』
『・・今後もし俺に万が一のことがあれば京都の天ヶ岳の奥に陶芸家の男が一人住んでいる。そこを訪ねろ。あの男ならきっと蘭子を守れるはずだ。』
『・・え?天ヶ岳?その人って兄様の知り合いなんですか?・・って万が一なんて言わないで下さいよ。それに一人で京都なんて無理ですって!(道、そもそも全然わからないから!お金もないし!)』
『その男とは一度会ったことがあるだけだが俺も武士の端くれ、あの男が只者ではないのを感じた。それからこれは少ないが道中の足しぐらいにはなるだろう。持っていろ。』
『ちょっ・・本気で言ってるの?今更そんな事言うなんて!』
『分かっている・・蘭子には本当にすまないと思っている・・・・・だが・・川路だけは・・許すことができん。』
『・・・もし・・その兄様の願いが叶ったら・・・どこか人の来ない田舎で二人で静かに暮らそうよ・・時々兄様の鬼のような顔・・見るのつらいから・・。』
『蘭子・・。』
『それでいいよ、私。私は・・たとえ自分の意志じゃないとしても十六夜丸になるのを了承して沢山人の命奪ったんだもの、供養してあげなきゃ・・・。(それに・・すべてが終わった時は鷹の事も話して・・・・私も責任とるから。)だから万が一の事なんて言わないで。』
『いや・・今後の戦局は激しいものになるだろう。何かの折に巻き込まれないとも限らん。とりあえず、これを受け取れ。そしてもう一つだけ言っておかなければならないことがある。安西には気をつけろ、奴に近づくな。』
『安西って、あのお坊さん?最初の御屋敷にいた。』
『そうだ、あいつはお前の秘密を知っている。』
『・・!』
記憶のドラマはそこで止まり武尊はハッとした。
「安・・西・・・。いたわ、そんな名前の人。そういえばどうしたんだろ?秘密を知ってるってもちろん薬の事・・だよね?」
自問自答の中で武尊は斎藤と蒼紫と市彦以外に自分の秘密を知る者がいるという事を思い出して一瞬目の前が真っ暗になった。
「な、なんでこんな肝心な事、忘れていたんだろ・・。信じられない!でも安西ってお坊さんだったよね。お坊さんに何が出来るっていうんだ?それに今更私に会ったって分かるわけ・・・・。」
と言いかけて武尊は思わず自分の顔の傷を手で押さえた。
昔と容姿が変わっていないと言われる上にいつの間にかついていて消えない三本の傷。
会えば一発で分かってしまうだろう。
「だけど・・会えばでしょ?京都のどこのお寺かわからないお坊さんにばったり出くわすなんて、そんな奇跡、いや、まぐれなんて一だけで十分なんだから。」
と、武尊はぶつくさ呟いた。
そんな奴なんてもちろん会いたくもない、そうだ、お坊さんの恰好をした人がいたらとりあえず顔の傷が見えないようにしようと武尊は思った。
それから武尊は市彦の言葉から比古の姿を思い浮かべた。
(こんな所で初恋の人に心を奪われて・・・その人と別れて腑抜けになっている姿を見られたらなんて言われるだろう・・。でも・・兄様も比古さんの事を只者でないって見抜いてたなんてさすが武士だよねぇ。それにしてもあの時点で兄様が自分に何かあったら比古さんの所へ行けって言っていたのも今にして思えばこれも何かの比古さんとの縁なのかもしれないな・・。)
武尊はふぅと息を吐いて、一息置いて突然、
「あーっ!」
と叫んだ。
「そう言えば比古さん、私が山を下りる前に確か兄様が来て金子と薬を置いていったって言ってた!ということは兄様の足取りで最後に分かっているのは比古さんの所ってこと!?会津に行く意味ないじゃん!うわ~。」
今まで溜めてきた会津に行くんだという意気込みがプシュ~と萎んでいくような感じだった。
武尊はため息をつきながら考えた。
「でも、比古さんの話では兄様は薬と金子を置いたらすぐに帰って行ったっていう話だし、手がかりはそこでなくなってるだよね、やっぱり会津へは行ってみるべきなのかなぁ・・。」
あーあ、と武尊は頭の後ろで腕を組みゴロンと畳に横たわった。
そして暗い天井を見つめた。