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161.空はいつまでも蒼く(エピローグ) (斎藤・夢主)
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斎藤はすぐさまポケットを探って煙草を取り出すと火をつけた。
武尊は見慣れたその仕草ももう最後かと穏やかに斎藤を見ていると斎藤は武尊の髪を黙って撫でた。
斎藤は懐中時計を取り出して時間を確認した。
もうじき乗船時間が締め切られる。
海より来る風が静かに二人の髪を揺らした。
「そろそろ一に渡したい物、渡さなくっちゃ。」
武尊は風呂敷からあのカシミアのマフラーを取り出すと、背伸びをしてふわりとそれを斎藤の首に巻いた。
「向こうは冬、しばれるから・・・。」
白い雪に閉ざされる大地に思いを馳せ、武尊はそう言った。
「どうかお元気で。」
斎藤は自分に別れを告げて口元を何とか微笑ませた武尊を見ながら首にまわされたマフラーに手をやった。
「これは・・?」
斎藤は首に触れた初めて感触の素材に片方の手袋を脱いで撫でながら言った。
「うん、それはカシミアと言って山羊の毛だったかな・・。寒い所で育った動物の毛で編んだ襟巻なの。今はちょっと暑いと思うけど冬は少しは温かいと思うよ。」
「いい品だ。大事にする。」
これまで触れたこともないような柔らかい手触り、しなやかさ、艶。
そして飾らないが安らぎを覚える白い色のマフラーに斎藤は武尊そのものを感じた。
斎藤はその実用的な贈り物を喜んだ。
そして斎藤も、
「俺からも武尊にもらってもらいたいものがある。」
と言った。
「ん?」
武尊は予想だにしなかった斎藤の言葉に一瞬目を丸くした。
(贈り物?って何だろ?そのカバンに入ってるのかな?一の着物の布で作った巾着でもう十分なのに。)
と武尊が思っていると、
斎藤は昨日持って来た刀袋を手に取り武尊に差し出した。
「受け取れ。」
「ええっ!?」
もらってもらいたい物というのがまさか刀だとは思わなくて、武尊は固まった。
「それって刀じゃ・・・。」
武尊がある意味【刀恐怖症】であることは斎藤は知っている。
では何故刀を受け取れというのかと武尊は斎藤の真意を推し量るように斎藤を見た。
「別にこれで人を斬れとは言っていない。」
と言いながら斎藤は刀袋から刀を取り出した。
実際ずっと使っていたのだろう、年期の入った黒の鞘の脇差、そして家紋が入っていた。
(家紋?)
何か云われのある刀なのだろうかと武尊は思わず興味を持って覗き込んだ。
「これは葉っぱ?」
「【丸に九枚笹】・・・。斎藤の家紋だ。」
と斎藤は静かに答えた。
「・・・。」
武尊は口を半開きにしたまま思わず斎藤を見上げた。
「刀は武士の魂、これは戊辰戦争が終わるまで俺がずっと差していた物だ。俺の代わりに武尊の傍に置いてやって欲しい。武尊を守る物としてな。」
斎藤の予備の刀にしては短すぎるものをどうして持って来たのだろうと思っていたがやっと今その理由を武尊は知った。
「これは脇差だが一尺九寸六分ある。武尊が扱うには長すぎない長さだ。」
と、斎藤は再び刀袋にしまって武尊に差し出した。
斎藤に見つめられ武尊は無意識に腕を伸ばした。
そしてそれを掴んだ。
斎藤は刀を掴んだ武尊の手に自分の手を重ね力強く握った。
そして武尊を力強く見ながら、
「生きろよ。」
と言って手を放した。
「一・・・。」
気持ちはありがたいが武尊としては心中複雑でそれ以上言葉が出ない。
斎藤は武尊の気持ちを察してふっと微笑んだ。
「別れは言わんぞ。いずれ会うんだからな俺達は。」
そう言って最後にもう一度武尊の髪をくしゃりと指ですいた。
「時間だな。」
斎藤は呟くようにそう言った。
武尊は見慣れたその仕草ももう最後かと穏やかに斎藤を見ていると斎藤は武尊の髪を黙って撫でた。
斎藤は懐中時計を取り出して時間を確認した。
もうじき乗船時間が締め切られる。
海より来る風が静かに二人の髪を揺らした。
「そろそろ一に渡したい物、渡さなくっちゃ。」
武尊は風呂敷からあのカシミアのマフラーを取り出すと、背伸びをしてふわりとそれを斎藤の首に巻いた。
「向こうは冬、しばれるから・・・。」
白い雪に閉ざされる大地に思いを馳せ、武尊はそう言った。
「どうかお元気で。」
斎藤は自分に別れを告げて口元を何とか微笑ませた武尊を見ながら首にまわされたマフラーに手をやった。
「これは・・?」
斎藤は首に触れた初めて感触の素材に片方の手袋を脱いで撫でながら言った。
「うん、それはカシミアと言って山羊の毛だったかな・・。寒い所で育った動物の毛で編んだ襟巻なの。今はちょっと暑いと思うけど冬は少しは温かいと思うよ。」
「いい品だ。大事にする。」
これまで触れたこともないような柔らかい手触り、しなやかさ、艶。
そして飾らないが安らぎを覚える白い色のマフラーに斎藤は武尊そのものを感じた。
斎藤はその実用的な贈り物を喜んだ。
そして斎藤も、
「俺からも武尊にもらってもらいたいものがある。」
と言った。
「ん?」
武尊は予想だにしなかった斎藤の言葉に一瞬目を丸くした。
(贈り物?って何だろ?そのカバンに入ってるのかな?一の着物の布で作った巾着でもう十分なのに。)
と武尊が思っていると、
斎藤は昨日持って来た刀袋を手に取り武尊に差し出した。
「受け取れ。」
「ええっ!?」
もらってもらいたい物というのがまさか刀だとは思わなくて、武尊は固まった。
「それって刀じゃ・・・。」
武尊がある意味【刀恐怖症】であることは斎藤は知っている。
では何故刀を受け取れというのかと武尊は斎藤の真意を推し量るように斎藤を見た。
「別にこれで人を斬れとは言っていない。」
と言いながら斎藤は刀袋から刀を取り出した。
実際ずっと使っていたのだろう、年期の入った黒の鞘の脇差、そして家紋が入っていた。
(家紋?)
何か云われのある刀なのだろうかと武尊は思わず興味を持って覗き込んだ。
「これは葉っぱ?」
「【丸に九枚笹】・・・。斎藤の家紋だ。」
と斎藤は静かに答えた。
「・・・。」
武尊は口を半開きにしたまま思わず斎藤を見上げた。
「刀は武士の魂、これは戊辰戦争が終わるまで俺がずっと差していた物だ。俺の代わりに武尊の傍に置いてやって欲しい。武尊を守る物としてな。」
斎藤の予備の刀にしては短すぎるものをどうして持って来たのだろうと思っていたがやっと今その理由を武尊は知った。
「これは脇差だが一尺九寸六分ある。武尊が扱うには長すぎない長さだ。」
と、斎藤は再び刀袋にしまって武尊に差し出した。
斎藤に見つめられ武尊は無意識に腕を伸ばした。
そしてそれを掴んだ。
斎藤は刀を掴んだ武尊の手に自分の手を重ね力強く握った。
そして武尊を力強く見ながら、
「生きろよ。」
と言って手を放した。
「一・・・。」
気持ちはありがたいが武尊としては心中複雑でそれ以上言葉が出ない。
斎藤は武尊の気持ちを察してふっと微笑んだ。
「別れは言わんぞ。いずれ会うんだからな俺達は。」
そう言って最後にもう一度武尊の髪をくしゃりと指ですいた。
「時間だな。」
斎藤は呟くようにそう言った。